建設業は、工事の着工から竣工までにかかる時間の長さから、一般企業とは異なる会計基準が採用されています。
この記事では、建設業の会計の特徴について解説します。
建設業の会計は、一般企業の会計と比べて勘定科目が異なるほか、建設業独自の認識基準が設けられているなど、たくさんのことを覚えなければなりません。
建設業で会計担当者は業務をスムーズに進めるためにも、参考にしてください。
建設業の会計とは
建設業の会計は、建設業の特殊性から、一般企業とは異なる会計基準が採用されている点が特徴です。
一般企業の場合、製品を作り始めてから完成し納品するまで長くても数ヶ月程度で終わるため、基本的に一つの期で会計処理が可能です。
一方で、建設業は、工事の開始から完成・引き渡しまで時間がかかり場合によっては期をまたぐこともあります。
この特殊性を考慮したうえで、建設業では一般企業と異なる会計基準が設けられています。
この基準のことを「建設業会計」といいます。
勘定科目の違い
一般企業の会計と建設業会計の大きな違いが勘定科目です。
以下のように、科目によって名称が異なるケースもあるため、建設業会計をする際には注意しなければなりません。
完成工事高 | ・一般会計では売上高に該当 ・工事が完了した際に得られる収益 |
完成工事原価 | ・一般会計では原価に該当 ・材料費、労務費、外注費、経費の4つで構成 |
完成工事未収入金 | ・一般会計では売掛金に該当 ・引き渡し済みの工事において現金として回収できていないお金 |
未成工事支出金 | ・一般会計では仕掛品に該当 ・引き渡すまでに発生した工事原価未引き渡しのうち、工事進行基準が採用されるものに適用 |
工事未払金 | ・一般会計では買掛金に該当 ・未払いの材料費など、工事費の中で支払われていないお金 |
未成工事受入金 | ・一般会計では前受け金に該当 ・引渡しよりも前に発注者から受領した場合に発生 |
完成工事総利益 | ・一般会計では売上総利益に該当 ・完成工事高から完成工事原価を差し引いたもの |
建設業会計で使用される認識基準
建設業会計は、勘定科目だけでなく、認識基準も一般企業における会計とは異なります。
一般企業における会計の場合、売上は商品が引き渡されたタイミングで、費用は各費用が発生したタイミングで認識されます。
しかし、建設業の場合、引き渡しまでに時間がかかることもあり、一般企業の会計とは異なる「工事進行基準」と「工事完成基準」という2つの認識基準が採用されています。
工事進行基準
工事進行基準とは、工事が進行している最中に売上・経費を計上する認識基準です。工事が終わっていなくても、期末がきたら収益や費用を認識したうえで損益計算書に反映させます。
着工から竣工まで全く計上していないと、工事が終わってから赤字と判明する可能性がありますが、工事進行基準ではそのような心配がありません。
2009年以前は、工事完成基準が採用されていましたが、2009年以降は原則として工事進行基準が採用されています。
なお、工事の請負金額が10億円を超えるなど、一定の条件を満たしている場合は工事進行基準が強制的に適用されます。
工事完成基準
工事完成基準とは、工事が完成してから利益を確定させる認識基準です。
工事が進行している最中に発生する費用は「未完成工事支出金」として一旦計上され、工事が完成した際に細かい仕訳を行います。
引き渡すまで具体的な収益と費用が損益計算書に反映されないため、工事が終わって初めて赤字が発覚するなど、請負側に大きなリスクが伴う方法です。
未完成工事支出金に注意
建設業会計では、「未完成工事支出金」の扱いに注意しなければなりません。未完成工事支出金とは、工事がまだ終わっていない段階で会計処理をするために使用される勘定科目です。
未完成工事支出金には、施工費や材料費、仮設設備費、外注費、廃材処分費、従業員の賃金や契約を結ぶ際に使用する印紙代といった費用を1つにまとめられています。工事完成後に計上する際には仕訳をし直さなければなりません。
工事完成後にそのままの状態で計上してしまい、仕訳漏れが出ると、修正申告となる可能性があるため、注意してください。
工事が完成していないにもかかわらず、未完成工事支出金として処理している費用を経費計上することもできません。また、決算の際に業績をよく見せるために、完成していない工事の売上を計上すると誤った決算報告となります。
建設業で効率的な会計業務を行うポイント
建設業の会計は、一般企業の会計とはさまざまな点で異なり複雑であるため、経理・会計担当者にかかる負担は大きいといえます。
担当者の負担を軽減するために、専用の会計システムの導入を検討してはどうでしょうか。
特におすすめなのがクラウド型の会計システムです。
クラウド型のシステムは、インターネット環境さえあれば利用でき、オフィスはもちろん外出先や現場からシステムにアクセス可能です。リモートワークを導入するにもスムーズな移行が可能となります。
また会計システムによっては、情報の自動取得にも対応しています。例えば、クレジットカードやインターネットバンキングを利用している銀行口座のデータを自動取得することも可能です。
さらに取得したデータを自動で仕訳し、経理・会計業務にかかる工数の大幅な削減にもつなげられます。
担当者は、システムが収集し仕分したデータを確認するだけで済み、業務負担も軽減できます。よりリアルタイムで会計処理ができ、売上の確認や資金繰りなども確認しやすくなるはずです。
まとめ
今回は、建設業の会計の概要や一般企業の会計と異なる勘定科目、認識基準などについて解説しました。
建設業は、工事の着工から竣工まで時間がかかることもあり「建設業会計」と呼ばれる特殊な会計基準が導入されています。
また、認識基準に関しても、工事進行基準と工事完成基準という2種類があるため、建設業会計を初めてする場合は、一般企業の会計との違いを理解しておかなければなりません。
複雑な手続きに伴い担当者にかかる負担も大きくなる可能性があるため、専用の会計システムの導入も検討してみてはどうでしょうか。
なお、会計業務だけでなく、自社で発生するそのほかの業務の効率化を図りたい場合は業務全般を効率化できるシステムを導入してください。
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