歩掛りは、現場ごとに適した積算・見積り金額を割り出すために必要な指標です。
しかし積算担当者として経験が浅い方の中には、歩掛りついてしっかり理解していないという方もいるのではないでしょうか。
本記事では、積算担当者が知っておくべき歩掛りの必要性や国交省が公表している標準歩掛り、歩掛りを活用する際の注意点や使用するときのメリットを解説します。
歩掛りついて、理解していない積算担当者は最後まで読んでください。
目次
歩掛り(ぶがかり)とは
歩掛り(ぶがかり)とは、1つの作業を完了するまでの時間を数値化した指標で、積算・見積り価格と根拠となります。
建設工事の積算・見積りは、全く同条件でおこなうことはできません。
使う材料や作業環境、作業をおこなう職人さんが毎回異なるため工事ごとの条件に合わせた積算や見積りが必要です。
歩掛りを用いると、工事ごとの条件に合わせた適切な積算・見積り価格の算出が可能となります。
歩掛りの必要性
歩掛りの活用で、工事条件に合わせた積算・見積りが可能です。
材料費の積算は「単価×数量」で簡単に求められます。
一方で、施工費を含む労務費の単価は前述したように現場ごとの条件によって異なります。
しかし現場ごとに毎回異なる基準で積算・見積りをおこなっていると、本当に正しい金額を算出できているのかわかりません。
同じ職種の工事でも、難易度の高い低いや職人の技術によって作業にかかる時間は異なります。
ベテランの職人さんであれば1人8時間で完了する作業も、経験の浅い職人さんであれば作業完了までに2人で16時間かかることもあるでしょう。
つまりベテランの職人さんであれば1人工で完了する作業、経験の浅い職人さんであれば2人工で完了する作業を想定しています。
人工とは、1人の職人さんが1日8時間でおこなえる作業量を示します。
単純に作業時間だけで積算するとベテランの職人さんの方が作業時間が短いため施工費が安く、経験の職人さんの方が施工費が高く積算できてしまいます。
単純な作業時間だけでは、実情にあった労務費を求めることはできません。
職人さんの技量や現場の内情を加味して適切な作業量を設定しているのが歩掛りです。
歩掛りを用いると、これまで「なんとなく」で済ませていた積算•見積りを根拠を持っておこなえるようになります。
積載や見積りの根拠がないと、工事を受注できても利益が残らない、他社よりも金額が高くなりそもそも工事ができないといった事体が想定できます。
工事を受注して適正な利益を残すためには、歩掛りを用いて適した労務単価を積算•見積り金額に落とし込むことが重要です。
歩掛りの計算方法
歩掛りを計算するためには、人工についての理解が必要です。
前述したように人工とは、1日8時間で一人の職人さんがおこなえる作業量のことです。
例えば1人で4時間かかると想定される作業人工は0.5となります。
- 1人×4時間÷8時間=0.5人工
算出された人工(歩掛り)に、数量や労務単価(作業員ごとの報酬単価)をかけると労務費を算出できます。
ただし歩掛りは、作業内容や作業の難易度などによって異なります。
歩掛りを企業と独自に設定しているケースもありますが、多くの会社では後述する「公共建築工事標準単価積算基準」を参考にしています。
国交省が示している歩掛りの設定基準
国交省は「公共建築工事標準単価積算基準」にて標準歩掛りを定めています。
実際に国交省がどのような基準で標準歩掛を定めているのか気になる方もいるでしょう。
国交省は下記の3つを基準として標準歩掛りを定めています。
年齢
1つ目の設定基準は年齢です。
標準歩掛では「健康な青年や壮年」を想定しています。
そのため健康ではない方や初老・中年の職人さんが現場に入るケースでは、人工を調整しなければなりません。
実際に建設業界は高齢化が進んでいるため、標準歩掛りが想定している人工では作業が終わらない可能性があります。
会社や協力業者の実情に合わせて、歩掛りの変更が必要です。
資格
2つ目の設定基準は資格です
工事現場では、必ず資格保有者を1人配置しなければいけません。
実際に作業をおこなう職人さんの中に有資格者と無資格者が混在しています。
有資格者だと1日で終わる作業も、無資格者がおこなえば1.5日かかる作業があるでしょう。
そのため歩掛りを算出する際は、作業員の資格の有無を確認してからおこなわなければなりません。
実務経験
3つ目の設定基準は実務経験です。
資格の有無と同様に、ベテランの職人さんと見習いの職人さんとでは歩掛り異なります。
歩掛り算出の際は、職人さんの実務経験も考慮しましょう。
歩掛り使用時の2つの注意点
歩掛りを使用する際の注意点は下記の2つです。
歩掛りは大変便利ですが、万能ではありません。
後述する注意点を理解して、正しく歩掛りを活用しましょう。
標準歩掛りは会社の状況に合わせて調整する
標準歩掛りは、会社の状況に合わせて調整しましょう。
前項でも説明したように、標準歩掛りはある一定の人を想定して決められています。
自社で適用する場合には、標準歩掛りが想定している人材がいない可能性があります。
想定されている人材がいないときは、自社の状況に合わせた柔軟な調整が必要です。
定期的に見直す
自社用に設定した歩掛りは定期的に見直しましょう。
建設工事は同じ工事が1つとしてありません。
また社内の状況も日々変わっていきます。
変化する状況に合わせて部掛かりも定期的に見直さないと、適切な積算・見積り金額の算出はおこなえません。
歩掛りを見直す期間を設定して、常に適切な部がかりで積算・見積りがおこなえる環境を整えましょう。
歩掛りを使用する3つのメリット
歩掛りを使用するメリットは下記の3つです。
赤字工事を防止できる
歩掛りの活用で赤字工事を防止できます。
歩掛りを使用しないと積算・見積り金額に根拠が持てないため、算出された金額が適正なのか判断ができません。
適正な価格を算出できないと、安価で工事を受注してしまい赤字工事となる可能性が高まります。
しかし歩掛りを活用すると、根拠を持って積算・見積り金額の算出をおこなえるため、赤字となる恐れのある工事の受注を避けられます。
正しい工程管理がおこなえる
歩掛りを用いると、正しい工程管理がおこなえます。
歩掛りを使わないと正しい工数がわからないため、精度の高い工程表の作成ができません。
工程表の精度が高くなければ、想定していたスケジュールが狂いやすくなります。
特に住宅以外の規模の大きい現場を担当するときは、不測の事態が生じやすいため歩掛りを用いた精度の高い工程表で、工程管理をおこなう必要があります。
施主からの信頼が得られる
歩掛りを使って適切な積算・見積り金額を算出して、根拠のある見積りを提出できると施主からの信頼が高まります。
施主に金額の根拠を聞かれた際に答えられないと、下記のように思われる恐れがあります。
- 適当に積算しているのでは
- 市場価格より高い金額を提示されているのでは
また他社との違いを指摘された際も、金額が異なる理由の説明が可能です。
まとめ
本記事では、積算担当者が知っておくべき歩掛りの必要性や国交省が公表している標準歩掛り、歩掛りを活用する際の注意点や使用するときのメリットを解説しました。
歩掛りは、1つの作業を完了するまでの時間を数値化した指標です。
歩掛りを活用すると、根拠を持った積算・見積り金額の算出がおこなえます。
自社に適切な利益を残すためには、歩掛りを活用して積算・見積り金額の精度を高めましょう。
また自社に適切な利益を残すためには、工務店に特化した業務管理システムの導入がおすすめです。
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