ペロブスカイト太陽電池の家庭用システムは、住宅向け太陽光発電の新たな選択肢として注目を集めています。
軽量かつ柔軟性があり、従来のシリコン型とは異なる特性を持つこの次世代技術は、住宅設計の可能性を大きく広げる可能性を秘めています。
本記事では、ペロブスカイト太陽電池の基礎知識から実用化の現状、そして工務店や住宅オーナーにとってのメリットについて詳しく解説します。
目次
ペロブスカイト太陽電池とは?

太陽光発電の新たな可能性を広げる「ペロブスカイト太陽電池」が注目を集めています。
従来のシリコン型とは異なる特性を持ち、住宅への設置方法も多様化できる新しい太陽電池について概要を解説します。
次世代の太陽電池として注目される理由
ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池とは異なる構造と素材を用いた新しいタイプの太陽電池です。
従来主流だった結晶シリコン型に比べて、製造工程がシンプルでコストを抑えやすく、軽量で柔軟性に富んでいる点が大きな特長です。
このような特性により、これまで太陽光パネルの設置が難しかったビルの壁面や窓、複雑な屋根形状の住宅にも対応できる可能性が広がっています。
また、曇りや日陰といった低照度環境でも比較的安定した発電効率を維持できる点も注目されている理由です。
今後、建築や住宅業界において新たなソリューションとなり得る技術として期待が高まっています。
構造と仕組みの概要
ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト構造」と呼ばれる独特な結晶構造を持つ材料を使って発電します。
具体的には、光を受けて発電する受光層、電気を効率的に運ぶ電荷輸送層、そして発電した電気を取り出す電極層の三層構造で構成されています。
この構造のシンプルさは製造工程の簡略化にもつながり、塗布や印刷など低温・低圧な製造方法が可能です。
これによって、従来のシリコン型と比べて大幅なコスト削減が見込まれ、今後の量産体制が整えば、住宅用の導入ハードルも一段と下がると予想されています。
ペロブスカイト太陽電池は家庭用として実用化は進んでいる?

ペロブスカイト太陽電池の家庭用実用化は着実に進展しています。
大手メーカーの実証実験から一般家庭への導入時期まで、最新動向を紹介します。
2025年現在の実証実験・開発状況
2025年時点で、ペロブスカイト太陽電池の家庭用導入に向けた取り組みは、すでに複数の大手企業によって本格的に始まっています。(参照:国内初、ペロブスカイト太陽電池を建物外壁に設置した実証実験開始)
また、パナソニックHDも世界初のガラスとペロブスカイト太陽電池一体型の建材を開発し、スマートタウン内で実証実験を実施しています。(参照:世界初、ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池 Fujisawa サスティナブル・スマートタウン内で長期実証実験を開始)
製品形態も多様化しており、屋根に貼り付けるシートタイプや、採光性を保ったまま電力を得られる透明な窓ガラスタイプなど、さまざまなニーズに応える商品が多数開発されており、実用化が期待されている状態です。
一般家庭への導入はいつから?
ペロブスカイト太陽電池の一般住宅への本格的な導入は、実証実験段階であり、本格的な商品化はまだ先の見通しです。
とはいえ、すでに一部のモデル住宅や自治体と連携した実証施設では、実際にペロブスカイト太陽電池を設置した実験が始まっており、社会実装への流れは確実に進んでいます。
各地で進められている実証プロジェクトは家庭用普及の重要な前段階であり、今後数年のうちに住宅市場でも導入事例が徐々に増えていくと見られています。
工務店としてはこうした流れを踏まえたうえで、近い将来に提案可能な新技術として今から情報収集を進めておくことが、他社との差別化につながるでしょう。
ペロブスカイト太陽電池が家庭用に向く理由

新技術であるペロブスカイト太陽電池には、住宅への設置に適した特性がいくつもあります。
従来の太陽光パネルにはない特長を活かした提案がこれからの差別化ポイントになるでしょう。
軽量で施工がしやすい
ペロブスカイト太陽電池の最も大きな特長のひとつが、圧倒的な軽さです。
ペロブスカイト太陽電池の重さは1〜2㎡あたり1〜2kgであり、従来の太陽光パネルが10〜20kgであることと比べると10分の1程度の重さです。
そのため木造住宅にも負担をかけずに設置でき、今まで設置が難しかった住宅への設置や耐震性を気にする施主にとっても、安心して導入できる決め手となるでしょう。
また、フィルム状や薄膜タイプの製品も開発されており、現場での搬入や取り付けもスムーズにおこなえるようになります。
これにより、工事全体の効率化やコスト削減にもつながり、施工現場での柔軟な対応がしやすくなります。
デザインの自由度が高い
従来の太陽光パネルは基本的に住宅の屋根に載せる前提のデザインでした。
一方でペロブスカイト太陽電池は、それとはまったく異なる考え方で活用できます。
たとえば、外壁やバルコニーの手すり、さらには窓ガラスに組み込む形で設置することも可能で、住宅のデザインを損なわずに電力を得られます。
そのため、意匠にこだわった住宅を提案する工務店にとっては、デザイン性を損なわずにエネルギー性能を高める選択肢として、施主の満足度向上に貢献できるはずです。
発電効率の高さと価格のバランス
ペロブスカイト太陽電池は従来型の太陽光発電システムと比べて、発電効率が26.7%向上したというデータが発表されています。(出典:次世代型太陽電池戦略(案)|経済産業省)
限られた屋根面積でも十分な発電量が確保できる点は、都市部や狭小住宅などでの提案にも強みとなります。
従来型の太陽光発電は屋根の広さによっては十分な電力が確保できず、太陽光発電の導入ハードルになっていました。
省スペースで効果が出ることで、営業としても施主により太陽光発電の導入を勧めやすくなるはずです。
ペロブスカイト太陽電池と既存の家庭用太陽光と何が違う?

ペロブスカイト太陽電池と既存の家庭用太陽光電池の違いをまとめました。
比較項目 | 従来の結晶シリコン型 | ペロブスカイト太陽電池 |
---|---|---|
構造 | 硬質・重量がある | フィルム状・軽量 |
重量 | 屋根への負担が大きい | 従来型の数分の一の軽さ |
設置場所 | 主に屋根上に限定 | 屋根・壁面・窓など多様な場所に対応 |
形状の自由度 | 限定的 | 高い(曲面などにも対応可能) |
発電効率 | 約17〜20% | 研究段階で20%以上を達成 |
製造方法 | 高温・高圧処理が必要 | 塗布・印刷など低温処理で可能 |
製造コスト | 高い | 量産時には低コスト化が見込まれる |
施工の容易さ | やや困難(重量物の設置) | 容易(軽量で取り扱いやすい) |
ペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン型の違いは多岐にわたりますが、最も大きい違いはその構造的な柔軟性と重量の差です。
従来の太陽光パネルは硬質で重く設置場所が限られていましたが、ペロブスカイト型はフィルム状で非常に軽く、屋根以外の場所にも柔軟に取り付けることができます。
また、実験段階ながらも発電効率は20%を超える成果が報告されており、現時点での結晶シリコン型(およそ17〜20%)に匹敵、あるいはそれを上回る可能性も秘めています。
製造コストについても塗布や印刷による製造方法が可能なため、量産時にはこれまでの太陽光発電システムよりも低価格で提供できる可能性もあるでしょう。
ペロブスカイト太陽電池の導入時に知っておきたい注意点

ペロブスカイト太陽電池にはメリットだけでなく、いくつかの課題や注意点も存在します。
現時点での主な課題と、施主への説明ポイントを確認しておきましょう。
耐久性と寿命の課題
ペロブスカイト太陽電池は、まだ開発と実証の段階にあるため耐久性については課題がある状況です。
特に、紫外線や湿気といった外的要因による劣化に対する対策が必要とされており、現在も各社で改良が進められています。
製品によっては保護フィルムや樹脂コーティングを組み合わせた仕様も登場しており、耐用年数15〜20年を目指す実証も始まっています。
ただし、導入を検討する際には保証内容や設置環境に適した仕様かどうかを、事前にしっかりと確認しなければなりません。
補助金制度や安全基準の整備状況
ペロブスカイト太陽電池は家庭用での実用化が進んでおらず、制度面もまだ整っていません。
現在経済産業省を中心に、JIS規格の策定や技術認証制度の導入が進められている段階であり、すべての製品が補助金対象となっているわけではない点に注意しましょう。
たとえば、施主の負担を軽くする補助金の適用可否などについても不透明であり、実用化されたあとも自治体によって補助の対象になるかわからないため、常時最新情報にアンテナを貼っておく必要があります。
営業担当者としては、「補助金の対象になる可能性がある」という期待値を適切に伝えつつ、将来の制度変更にも対応できる柔軟な姿勢をもつようにしましょう。
ペロブスカイト太陽電池の導入を検討するなら

ペロブスカイト太陽電池の今後の提案に向けて、どのような施主に向いているのかまた今からできる準備について考えてみましょう。
先進的な工務店だからこそ取り組める新技術として位置づけることができます。
こんな工務店・施主におすすめ
高性能かつデザイン性を求める施主に提案するなら、ペロブスカイト太陽電池は非常に相性のよい選択肢です。
たとえば、ZEH住宅を標準化している工務店や、高意匠なデザイン住宅を数多く手がけている企業には特におすすめの選択肢といえます。
また、外壁改修や屋根リフォームを検討している施主に対しても、エネルギー性能の向上と見た目の美しさを両立できる提案が可能な点は強みです。
今できる準備と情報収集
現時点では、すぐに導入できる製品はないものの、将来的な提案に向けて準備を進めておく価値は十分にあります。
具体的にはペロブスカイト技術を扱う企業との接点をもち、展示会や勉強会などを通じて最新動向をキャッチアップしていくことが重要です。
また、施工講習や実証事業への参加など、技術面の知見を高めておくことで、いざというときに自信を持って提案できる体制を整えておきましょう。
まとめ
新たな太陽光発電の選択肢として注目されるペロブスカイト太陽電池の可能性と現状を整理しました。
技術革新の波を商機に変えるための基礎知識として活用ください。
ペロブスカイト太陽電池は、これまでの常識を覆す可能性を秘めた新技術です。
軽量で柔軟、かつデザイン性の高い設置が可能なこの太陽電池は、従来の課題を乗り越える選択肢として、今後ますます注目を集めるでしょう。
さらにペロブスカイト太陽電池は実用化されれば低コストでの導入が可能で、今までの太陽光発電システムの高価さに難色を示していた施主にもアプローチしやすくなります。
また、施主のネックが費用のみであれば太陽光リースという選択肢もおすすめです。
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