トライブリッド蓄電池システムとは、太陽光発電のエネルギーを最大限に活用できる最新技術です。
V2Hの需要が増えつつある今、次に注目される機器であることは間違い無いでしょう。
この記事では、トライブリッドの概要と導入に必要な機器一覧、導入メリットとデメリットについて紹介します。
目次
トライブリッドとは
トライブリッドとは、太陽光発電とV2H、蓄電池を併用した電力活用方法です。
新しい電力活用法について知識をつけて、万が一施主から問い合わせがあった際に、問題なく回答できるようにしておきましょう。
トライブリッド蓄電池システム
トライブリッド蓄電池システムとは、太陽光パネルで発電した電力を蓄電池に充電し、V2Hシステムを通じて電気自動車への充電を可能とする機器です。
従来のハイブリッドシステムは、太陽光発電と蓄電池の併用を意味し、電気自動車への充電機能を搭載していませんでした。
しかし、トライブリッド蓄電池システムであれば、3つのシステムを併用して、電気自動車への急速充電も可能となります。
また、最初は太陽光発電と蓄電池のみ導入し、電気自動車購入後にV2Hを追加するなど、柔軟な使い方ができます。
電力の最大限の有効活用が可能
トライブリッド蓄電池システムの魅力は、電力を最大限に有効活用できることです。
例として、以下4つのパターンでの電力活用方法を比較してみましょう。
パターン | メリット | デメリット |
---|---|---|
太陽光発電システムのみ | ・日中のみ発電し、電力を自家消費または売電できる | ・節電の時間帯は日中のみ ・夜間は電力が使えない |
太陽光発電システムと蓄電池 | ・太陽光パネルで発電した電力を蓄電池へ貯めておける ・時間帯に関係なく電力を活用できる | ・家庭用蓄電池の容量は10kWh程度のため、蓄電容量が少ない ・電気自動車への充電には、別途設備導入が必要 |
太陽光発電システムとV2Hのみ | ・太陽光パネルで発電した電力を電気自動車のバッテリーに蓄電できる ・電気自動車の急速充電ができる ・給電スポットで電気自動車のバッテリーに蓄電し、家庭で給電できる | ・電気自動車を使用している際には、蓄電できない ・電気自動車のバッテリーの劣化速度が、V2H不使用の場合と比べて速くなるリスクがある |
トライブリッド蓄電システムの場合 | ・家庭から電気自動車への給電はもちろん、電気自動車から家庭への給電ができる ・電気の変換時のロスが少ない ・太陽光パネルで発電した電力を、蓄電池と電気自動車の双方に蓄電できる ・蓄電池が実質2つになるため、停電対策になる ・電力会社からの電力購入料を最小限に抑えられるため、電気料金対策になる | ほぼなし |
電力の活用という観点で見れば、トライブリッド蓄電池システムが最も優秀であることがわかります。
【補足】トライブリッドとV2Hの違い
トライブリッドとV2Hを混同する施主も多いため、改めて違いを把握しておきましょう。
トライブリッドとは、太陽光発電システムと蓄電池、V2Hシステムの3つのシステムを併用したものです。
反対にV2Hとは、家庭用電気と電気自動車の電流を変換するための機器で、家庭と電気自動車の双方向の電力の行き来を可能にします。
簡単にいうと、家庭から電気自動車へ給電したり、反対に電気自動車から家庭へ給電できるようにするシステムです。
トライブリッドはV2Hのメリットに加えて、太陽光パネルで発電した電力を蓄電池に貯められます。
そのためより一層の電力活用や停電対策ができ、電力料金の節約に役立ちます。
トライブリッドに必要なもの
トライブリッドを実現するために必要なものを紹介します。
太陽光発電システム
太陽光発電システムとは、屋根などにソーラーパネルを設置し太陽光を利用して発電するためのシステムです。
トライブリッドにおける発電機の役割を果たすため、非常に重要な役割の設備です。
V2H
V2Hシステムとは、家庭と電気自動車の異なる電流を変換して、双方向に行き来できるようにするシステムです。
家庭から電気自動車への給電、また電気自動車から家庭への給電を可能にします。
電気自動車に搭載されているバッテリーを蓄電池代わりにできるため、停電対策や節電に有効です。
蓄電池
蓄電池とは太陽光パネルで発電した余剰電力を蓄えておくためのシステムです。
日中に太陽光パネルで発電した電力を蓄電し、夜間に自家消費すれば電力消費量を抑えて、電気料金の節約につながります。
また、日頃は電力会社から購入したエネルギーを使用し、停電時に蓄電池の電力を活用して電気を賄うことも可能です。
トライブリッドパワーコンディショナー
トライブリッドパワーコンディショナーとは、太陽光パネルと蓄電池、V2Hを連携させるための制御装置です。
ここまで紹介した各種の機器はそれぞれ電流が異なるため、相互利用のためには電流の変換が必要です。
トライブリッドパワーコンディショナーによって電流を変換させ、電力を各機器で使用できます。
トライブリッドのメリット
トライブリッドを導入するメリットは以下の4つです。
電力を有効活用
トライブリッド蓄電システム最大のメリットは、電力の有効活用です。
太陽光パネルで発電した電力を蓄電池に貯めておき、電気自動車の充電に活用できます。
日中に電気自動車を使用している場合、蓄電池がなければ電力会社から電力を購入して充電が必要です。
しかし、トライブリッド蓄電池システムであれば夜間に太陽光パネルで発電した電力を活用して電気自動車を充電できるため、電力の購入が不要となります。
さらに、停電時には蓄電池と電気自動車双方からの給電が可能であり、V2H単体での導入よりも長期間の停電にも対応できます。
蓄電池やV2H機器の増設が可能
トライブリッド蓄電システムでは、蓄電池やV2Hを用途に合わせて増設できます。
例として、ニチコンのトライブリッド蓄電池システムは、初期設備として以下の3つのみの導入で運用可能です。
- トライブリッドパワーコンディショナー
- 蓄電池
- 太陽光パネル
その後家族が増えて電力使用量が増えたら蓄電池を増設してより多くの電力を蓄え、活用できます。
さらに、電気自動車を購入したら追加でV2Hの設置が可能です。
これまでのV2Hシステムやハイブリッド型の蓄電システムでは、機器同士の連携の関係から増設が気軽にできないケースがありました。
しかし、トライブリッド蓄電池システムであれば、家族構成や生活スタイルの変化に応じて、節電対策を増設できます。
節電による電気料金の削減
トライブリッド蓄電池システムの導入により、節電による電気料金の削減が期待できます。
ニチコン株式会社の調査によると、電気自動車を購入した場合の燃料代は走行距離12,000kmで月間20,400円です。
トライブリッド蓄電システムを導入した場合、電気自動車の充電に電力会社から電力を購入する必要がないため、20,400円が無料となります。
さらに、日中に発電した電力を自家消費すれば、夜間の家庭での電力使用量を抑制できるため、電気料金の節約につながります。
停電対策
トライブリッド蓄電システムにより、停電対策ができる点も魅力です。
万が一停電が発生した際に、太陽光パネルで発電した電力を自家消費に切り替えれば、停電中でも電気が使えます。
さらに、太陽光パネルでの発電が止まる夜間でも蓄電池や電気自動車の電力を家庭へ給電できるため、家族で安心して過ごせます。
トライブリッドのデメリット
トライブリッド蓄電池システムには節電や停電対策などのメリットがある一方で、以下のようなデメリットがある点も把握しておきましょう。
初期費用の高さ
トライブリッド蓄電池システムのデメリットは、初期費用の高さです。
例えば、トライブリッド蓄電池システムの製品一覧を紹介します。
タイプ | 容量 | シリーズ名 | メーカー希望小売価格(税抜価格) |
---|---|---|---|
トライブリッド蓄電システム | 4.9kWh/7.4kWh/9.9kWh/14.9kWh | ESS-T3シリーズ | トライブリッドパワコン¥1,200,000 蓄電池ユニット4.9kWh¥1,200,000 蓄電池ユニット7.4kWh¥1,700,000 V2Hスタンド(一体型)¥1,300,000 V2Hスタンド&V2Hポッド(3.5m)¥1,500,000V 2Hスタンド&V2Hポッド(7.5m)¥1,600,000 |
トライブリッド蓄電システム | 4.0kWh/8.0kWh | ESS-T1ESS-T2シリーズ | トライブリッドパワコン※¥1,100,000 V2Hスタンド¥1,100,000 蓄電池ユニット¥900,000 ※ESS-T1の場合。ESS-T2は¥1,000,000です。 |
容量によって価格は異なりますが、パワーコンディショナーのみで100万円以上、蓄電池ユニットも容量によっては100万円以上必要です。
さらに、V2Hスタンドの価格が110万円と、3つの機器を導入した場合は300万円以上の予算が必要となります。
ただし、トライブリッド蓄電池システムは補助金の対象となっているため、最大で60万円の補助が利用可能です。
太陽光発電やV2Hの導入に利用できる補助金については、以下の記事をご覧ください。
トライブリッド対応メーカーの少なさ
トライブリッドに対応しているメーカーはまだ日本では5つしかありません。
そのため、製品選択の幅が狭い点は施主にとってデメリットとなるでしょう。
2024年時点でトライブリッド対応しているメーカー製品
2024年7月時点でトライブリッドに対応しているメーカーは以下の5つです。
- ニチコン
- パナソニック
- シャープ
- 長州産業
- ダイヤゼブラ電機
トライブリッド製品のラインナップが最も充実しているメーカーは「ニチコン」であり、現在6種類の製品が販売されています。
太陽光パネルは別途購入が必要であるため、太陽光発電システムとの連携性を確認したうえで、メーカーを選ぶようアドバイスしましょう。
トライブリッドシステムについてよくある質問
トライブリッドシステムについてよくある質問をまとめました。
トライブリッド蓄電システムの導入費用を抑える方法はありますか?
トライブリッド蓄電システムの導入費用を抑えるには、国または自治体の補助金を利用しましょう。
電気自動車の購入についても補助金の利用が可能なため、大幅に初期費用を抑制できます。
トライブリッドで電気の自給自足は可能ですか?
トライブリッドは電気の自給自足を可能とするシステムとして注目されています。
ヤマト住建のプレスリリースによると、電力の自給自足を可能としたトライブリッド蓄電システムを搭載したモデルハウスが建設されました。
モデルハウスではブレーカーを落とした状態から、蓄電池と電気自動車の電力のみで普段通りの生活が送れることが確認できたそうです。
蓄電池の容量やライフスタイルにもよりますが、トライブリッドによる電力の自給自足は理論上可能です。
電力を自給自足するオフグリッドについては、以下の記事をご覧ください。
まとめ
トライブリッド蓄電池システムにより、電力の自給自足(オフグリッド)生活が可能となります。
まだまだ新しい電力活用方法ですが、情報感度の高い施主から問い合わせが入る機会も増えるはず。
ぜひこの機会にトライブリッド蓄電池システムについて知識をつけて、環境や節電への意識が高い施主へ提案できるようにしておきましょう。
また、トライブリッドでは太陽光パネルの導入が必須ですが、トライブリッド蓄電池システム自体の購入費用が高いため、予算オーバーが懸念されます。
そのようなときは、太陽光発電システムのリースがおすすめです。
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