塗装工事の見積書は、業者が書き方を理解して、正確でわかりやすいものを作成しなければなりません。
施主が複数の業者を比較するため、信頼性のある見積書を提示できるかどうかが受注の成否を左右します。
本記事では、塗装工事の見積書の基本的な書き方や費用相場、作成を効率化するツールまで詳しく解説します。
目次
塗装工事見積書とは?

塗装工事の見積書は、工事の内容や費用を明確に記載し、施主と業者の間で契約をスムーズに進めるための重要な書類です。
ここでは、塗装工事の見積書が必要な理由や、作成の基本的な流れについて詳しく解説します。
塗装工事見積書が必要な理由
塗装工事の見積書は、以下の3つの理由から必要です。
工事内容を明確にし、認識のズレを防ぐ
塗装工事には、高圧洗浄・養生作業・塗装作業などさまざまな工程があります。
施主は見積書がないと具体的な作業内容を把握できず、「何にいくらかかっているのか」がわかりません。
見積書に詳細を明記すれば、施主と業者の間で認識を統一し、工事の進行をスムーズにできます。
施主が安心して業者を選べる
塗装工事は高額になるケースが多く、施主は複数の業者を比較して選びます。
見積書の記載が丁寧で具体的な業者ほど信頼され、受注の可能性が高くなるでしょう。
内容が曖昧な見積書は「本当に適正価格なのか?」と疑問を持たれ、契約につながりにくくなります。
業者の利益を確保し、適正価格を提示できる
見積りが不正確だと、工事中に追加費用が発生し、利益が減ってしまう場合があります。
また、施主に対して正当な価格を説明できないと、価格交渉で不利になる場合もあるでしょう。
正確な見積書を作成すれば、業者も適正な利益を確保しながら、施主の納得を得やすくなります。
塗装工事見積書作成の基本的な流れ
塗装工事の見積書を作成する際は、以下の流れで進めます。
1.現地調査を行う
見積書を作成する前に、必ず現地調査を実施します。建物の状態や塗装が必要な面積、傷み具合を確認し、必要な工事内容を判断するためです。
現地調査では以下の点をチェックします。
- 外壁や屋根の劣化状況(ひび割れ、チョーキング現象の有無)
- 塗装面積の測定(正確な㎡数を計算)
- 周辺環境(近隣への影響、工事のしやすさ)
2.塗料・工事内容を決定する
塗料は、耐久性・価格・仕上がりの質を考慮し、アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素などの種類から選定します。
工事内容は、塗装する箇所や工程ごとに細かく分類し、必要な作業をリストアップします。
3.見積書を作成する
現地調査のデータを基に、塗装面積・塗料の単価・人件費・足場代などを算出し、見積書を作成します。
塗装工事見積書で押さえるべき基本項目

塗装工事の見積書を作成する際、記載すべき基本項目があります。
ここでは、塗装工事の見積書に必ず記載すべき基本項目について解説します。
宛名
宛名は、見積書を提出する相手の名称を正しく記載する部分です。
法人宛てには「御中」、個人宛てには「様」を使用します。
- 株式会社ABC 御中
- 田中 太郎 様
差出人情報
差出人情報は、見積書を発行する側の情報を記載する項目です。
担当者名まで記載するとより丁寧な印象を与えます。
- XYZ塗装株式会社
- 〒123-4567
- 東京都台東区1-2-3
- TEL:03-1234-5678
- 担当者:鈴木一郎
- メール:info@xyztosou.com
通し番号
見積書の通し番号は、管理をしやすくするために付ける番号です。
通し番号によって、過去の見積書を探しやすくなり、施主と業者の双方が履歴を簡単に確認できます。
- 見積書番号:No.20240201-001
発行日・有効期限
発行日は、見積書を作成した日付を記載します。
有効期限は、見積書の内容が適用される期間で、通常は2週間から1ヶ月程度が一般的です。
- 発行日:2025年3月1日
- 有効期限:2025年3月31日
支払い条件・工期
支払い条件とは、工事費用の支払い方法やタイミングを記載する項目です。
工期は、工事開始日と完了予定日を記載します。
- 支払い条件:着工前に50%、完工後に50%を銀行振込
- 振込先:〇〇銀行□□支店 普通1234567 XYZ塗装株式会社
- 工期:2025年4月1日~4月15日(天候により変更の可能性あり)
見積内容
見積内容は、工事の詳細を記載する最も重要な部分です。
作業工程ごとに項目を分け、塗装面積や単価、合計金額を明記すると、施主が理解しやすくなります。
工事項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|
高圧洗浄 | 120 | ㎡ | 300 | 36,000 |
下塗り | 120 | ㎡ | 900 | 108,000 |
中塗り | 120 | ㎡ | 1,000 | 120,000 |
上塗り | 120 | ㎡ | 1,000 | 120,000 |
足場設置 | 120 | ㎡ | 800 | 96,000 |
合計 | 480,000円 |
小計・消費税・総額
見積書には、小計・消費税・合計金額を記載します。
施主にわかりやすくするため、工事金額と消費税を明確に分けます。
- 小計:480,000円
- 消費税(10%):48,000円
- 合計:528,000円
備考
備考欄には、保証期間や特記事項を記載します。
- 保証期間:工事完了後5年間(自然剥がれの場合、無償対応)
- 注意事項:天候や気温により、工期が前後する可能性あり
- 支払いに関する注意:振込手数料は施主様のご負担となります
塗装工事見積書の書き方のポイント

塗装工事の見積書を作成する際は、記載方法の工夫が施主からの信頼につながります。
ここでは、塗装工事見積書を作成する際に押さえておくべきポイントを解説します。
工程ごとの詳細を記載
塗装工事は複数の工程で成り立っています。
単に「外壁塗装一式」と記載するだけでは、どのような作業が含まれているのかわかりません。
以下のような項目に分けて記載すると、見積書の透明性が高まり、施主の理解を得やすくなります。
工事項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|
仮設足場設置 | 120 | ㎡ | 800 | 96,000 |
高圧洗浄 | 120 | ㎡ | 300 | 36,000 |
養生作業 | 120 | ㎡ | 200 | 24,000 |
下塗り | 120 | ㎡ | 900 | 108,000 |
中塗り | 120 | ㎡ | 1,000 | 120,000 |
上塗り | 120 | ㎡ | 1,000 | 120,000 |
清掃・仕上げ | 一式 | – | – | 15,000 |
合計 | – | – | – | 519,000円 |
塗料名を記載
見積書に使用する塗料の種類を明記すれば、施主の安心感が高まります。
「外壁塗装用塗料」と記載するだけではなく、メーカー名や製品名を具体的に記載すると、業者の信頼度も向上します。
- 使用塗料:日本ペイント製 ファインSi(シリコン塗料)
塗装面積・単価を記載
見積書では、塗装する面積や使用する塗料の単価の明確な記載が重要です。
㎡単位で塗装面積を示し、単価の記載によって、根拠のある見積書となります。
工事項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|
外壁塗装(シリコン塗料) | 120 | ㎡ | 1,000 | 120,000 |
屋根塗装(フッ素塗料) | 80 | ㎡ | 2,500 | 200,000 |
雨戸塗装 | 5 | 枚 | 3,000 | 15,000 |
合計 | – | – | – | 335,000円 |
足場代を記載
塗装工事では、作業員の安全を確保し、塗装の精度を高めるために足場を設置します。
しかし、施主の中には「足場なしでできないの?」と考える人もいるため、しっかりとした説明が大切です。
工事項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|---|
足場設置 | 120 | ㎡ | 800 | 96,000 |
有効期限・保証期間を記載
見積書には、有効期限と保証期間の記載が大切です。
塗料の価格は変動するケースがあるため、見積書には必ず「有効期限〇〇日まで」と記載しておくと安心です。
また塗装工事では、工事完了後に塗膜が剥がれるなどのトラブルが発生する場合があるため、保証期間を記載することで施主に安心感を与えられます。
- 有効期限:2025年3月31日
- 保証期間:工事完了後5年間(自然剥がれの場合、無償対応)
塗装工事の見積の出し方

塗装工事の見積りは、塗装面積と塗装単価をもとに計算します。
適正な価格を算出するため、以下の手順で計算します。
1.塗装面積の計算
外壁塗装の面積は、延べ床面積に1.2~1.7倍を掛けて算出するのが一般的です。
- 100㎡×1.4(平均値)=140㎡(外壁塗装面積)
2.塗装単価の算出
使用する塗料の種類ごとに、1㎡あたりの単価を掛けます。
- 140㎡×2,000円=280,000円
3.その他の費用を加算
外壁塗装には、塗装費用に加えて足場代や人件費、諸経費が発生します。
- 外壁塗装費用:280,000
- 足場代:140㎡×800円=112,000円
- 人件費:140㎡×1,000円=140,000円
- 諸経費:50,000円
- 合計:582,000円
塗装工事にかかる費用相場

塗装工事の費用は、使用する塗料や建物の規模、作業工程によって異なります。
ここでは、主要な費用項目の相場について解説します。
塗料
塗料は、耐久性や機能性によって種類が異なり、それに応じて価格も変動します。
以下は、代表的な塗料の種類です。
- アクリル塗料1㎡あたりの単価:1,000~1,500円
- ウレタン塗料1㎡あたりの単価:1,500~2,000円
- シリコン塗料1㎡あたりの単価:2,000~3,000円
- フッ素塗料1㎡あたりの単価:3,500~5,000円
足場代
足場は作業の安全性を確保し、正確な塗装を行うために必要不可欠な設備です。
特に2階建て以上の建物では、足場なしでの作業は困難です。
- 1㎡あたり700~1,000円
- 一般的な住宅(外壁塗装の場合):80,000~150,000円
人件費
塗装工事では、職人の人件費が大きな割合を占めます。
作業内容ごとに単価が異なり、以下のような費用が一般的です。
- 高圧洗浄:1㎡あたり200~300円
- 養生作業:1㎡あたり300~500円
- 下塗り:1㎡あたり800~1,200円
- 中塗り・上塗り:1㎡あたり1,000~1,500円
その他諸経費
塗装工事には、塗料代や人件費以外にもさまざまな経費が発生します。
一般的には、総工事費の5~10%が諸経費として見積もられます。
- 養生費(塗装しない部分の保護):20,000~50,000円
- 廃材処分費(古い塗膜の除去):10,000~30,000円
- 近隣対策(防音シートや清掃費用):5,000~20,000円
- 事務手数料(見積書作成や管理費):10,000~50,000円
塗装工事見積書を効率化する便利ツール

塗装工事の見積書を作成する際、手作業での計算や入力ミスが発生すると、業務効率が低下し、正確な見積りを作るのが難しくなります。
見積書作成アプリやエクセルのテンプレート、業務管理ソフトを活用すれば、効率的かつ正確に見積書を作成できます。
見積書作成アプリ
見積書作成アプリは、スマートフォンやタブレットを使用して手軽に見積書を作成できるツールです。
特に、現場で即座に見積りを作成したい場合に便利です。
多くのアプリには、過去の見積書データを保存する機能や、クラウド管理機能が搭載されており、どこにいてもデータを確認できます。
さらに、写真を撮影するだけで塗装面積を自動計算する機能があり、見積りの精度向上に役立ちます。
エクセルテンプレート
エクセルを利用した見積書作成は、コストを抑えながら簡単に導入できる方法の一つです。
あらかじめフォーマットを作成しておけば、必要な情報を入力するだけで、短時間で見積書を作成できます。
さらに、数式を組み込めば、小計や消費税の自動計算も可能です。
エクセルのテンプレートは無料でダウンロードできるため、初心者でもすぐに活用できます。
業務管理ソフト
業務管理ソフトは、見積書作成だけでなく、工事の進捗管理や請求書の発行、顧客情報の管理まで一括で行えるシステムです。
特に、複数の案件を並行して進める塗装業者にとっては、業務の効率化に大きく貢献します。
ソフトには、見積書作成機能のほか、顧客管理や案件ごとの利益率を算出する機能なども備えられています。
また、エクセルと連携できるため、既存のデータのスムーズな移行もメリットです。
まとめ


塗装工事の見積書を作成する際は、正確な情報を記載し、施主にわかりやすい提示が重要です。
見積書の作成をスムーズに行えば、施主とのやりとりが迅速になり、受注率の向上にもつながります。
自社に合ったツールを選び、業務を効率化しながら、正確で信頼性の高い見積書を作成していきましょう。
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