ARとVRに続いて、注目度が高まっている「MR(Mixed Reality:複合現実)」。
建築現場では、完成イメージの事前擦り合わせや工事中の進捗確認に活用されています。
上手に活用することで、工事の生産性向上や技術育成を期待できる技術です。
目次
MR(Mixed Reality :複合現実)とは
MR(Mixed Reality:複合現実)は、ARとVRが発展した技術です。
CGで作成された仮想現実を、現実世界の映像にリアルタイムで重ねられます。
また、複数人で同じMR空間の情報を同時に共有することもできます。
AR(拡張現実)やVR(仮想現実)単体と比較して、人がより違和感なく体験できることを目指しています。
MR・AR・VR技術は、まとめて”XR”と呼ばれています。
【参考】複合現実(MR)とは HoloLensとは|国土交通省
VRとの違い
VR(Virtual Reality:仮想現実)は、CGなどを用いて作り上げた仮想現実空間、およびその技術の総称です。
近年、VRは商業的にも多用されています。XRの中でも、最も耳にする機会が多いでしょう。
MRとの違いは、現実世界と切り離されている点です。
現実世界に投影されるMRとは異なり、人工的に作成された特定のシチュエーションの中で、疑似体験をします。
VRなら、現実世界とかけ離れた空間に没入できるため、ゲームやフライトシミュレーションなどに活用されています。
ARとの違い
AR(Augmented Reality:拡張現実)とは、CGなどで作成した仮想現実を現実空間に投影し、拡張したもの・技術です。
一見MRと似たもののように感じますが、ARは現実世界にそのままデジタル情報を映し出す技術であり、空間把握はできません。
一方で、MRで作り出す3次元空間においては、仮想現実と現実空間の物同士が相互に影響します。
そのため、MRでは架空の物を現実空間内で配置し、自由に動かすことが可能です。
空間把握 | 現実世界 | |
---|---|---|
VR | ◎ | ×(作られた世界での疑似体験) |
AR | ×(2D投影のみ) | ◎ |
MR | ◎ | ◎ |
MRの市場展望
ARとVRを複合的に応用したMRは、次世代のコンピューティングプラットフォームとして、多方面より期待されている技術です。
日本におけるMR技術は、マイクロソフト社のMicrosoft Hololensが先駆けとなり、さまざまなソフトウェア開発が進みつつあります。
マイクロソフト社は、MRの市場規模について、2020年の61億ドル規模から、2025年には300億ドル超えの市場にまで成長すると予測しています。
先行的な技術であるARやVRと比較して、特にMRの活用方法は、まさに成長途中の段階です。
建築業界を含めたあらゆる現場での応用事例が、これからさらに広がっていくことでしょう。
建築現場でのMR市場展望
さまざまな広がりを見せるMR技術の中でも、製造業や医療、建設業界の「現場」でのMR活用が、大きな成長分野であると見込まれています。
従来の建築現場では、2Dの図面を3D化して解釈する過程を、人の頭の中で行うため、監督者と作業員の間で、認識の差が生じることが多々ありました。
MR技術なら、2Dを3Dにする過程を自動化し、実寸大で目視できます。
リアルサイズで立体的に図面確認ができるため、結果として、認識齟齬による作業のミスや手戻りを防げます。
特に、近年の建築現場では、就業者の高齢化が進行中です。
国土交通省の2016年度データには、建築業就労者の約34%が、55歳以上の高齢者層であると示されています。
まさに今、建築業界は、限られた人材で効率よく作業進捗させることが求められるフェーズです。
MR技術を上手く導入することで、生産性向上の実現に一歩近づくでしょう。
MRの活用目的
MR技術を工事現場で活用する目的はさまざまです。
ここでは、MRの2つの活用目的を紹介していきます。
活用目的①現場の生産性向上
MRを上手く導入することで、現場の生産性向上が可能です。
例えば、現地でMRを用いたシミュレーションをした上で、その場で施工時に必要な図面を作成します。
作業が始まってからは、図面の3Dモデルを現場に投影することで、作業進捗の確認や墨出しチェックを行えます。
また、施工の問題点や完成イメージとの相違を発見し、作業の手戻りを未然に防ぐことも可能です。
MRを活用すれば、施工のあらゆる局面で発生しうる手間やミスを防ぐことができ、結果的に生産性向上につながるでしょう。
活用目的②技能育成
MRを活用した研修を行うことで、よりリアルに基づいた指導による人材育成ができます。
例えば、イレギュラー発生時の安全対策シミュレーションや、リアルな作業を想定した実践講習などです。
社員教育にも効果的にMRを取り入れることで、従業員1人1人のスキル向上や、作業の安全性が改善ができます。
研修用にMR技術を搭載したソフトウェア商品もあり、導入を検討する企業が増えつつあります。
建築現場での活用方法
既に建築現場にMRを導入し、業務効率を向上できた成功事例があります。
具体的な活用方法と、それぞれの状況に適したMRソフトウェアをご紹介します。
完成イメージの事前擦り合わせ
工事が完成に近づいたタイミングで、万が一発注元のイメージと違う部分が生じてしまった場合、作業の手戻りが発生し、工期も伸びてしまいます。
例えば、完成イメージとのズレ防止には、「ホロストラクション」が活用できます。
Holostruction(ホロストラクション)とは建設業における様々な課題を解決する一つの手段として、小柳建設とマイクロソフト社が共同開発している複合現実(MR)技術を活用したHololensアプリケーションです。
【引用】Holostrucnion〜ホロストラクション〜-国土交通省
事前に現場のリアルサイズで、クライアントと完成イメージを擦り合わせられます。
イメージのズレによる手戻りを未然に防げるでしょう。
また、階段昇降機の設置イメージを確認する際には、「ホロリンク」も役立ちます。
ホロリンクでは、階段に昇降機を設置した際のイメージを、実際の階段に投影します。
ホロストラクションと同じく、工事の手戻りを防げるほか、データ処理を完全にデジタル化することで、設計上の人的ミスを回避できます。
ミスがない分、40日間ほどかかる工事の納期を、2分の1以下の約2週間まで、短縮が可能です。
工事中の進捗確認
工事進捗の確認の際にも、リアルサイズの図面データを現場に投影できるMRが活躍します。
例えば、MRソフトウェア「GyroEye Holo (ジャイロアイホロ)」なら、Microsoft Hololensをデバイスとして使用することで、現場に直接図面データを拡張可能です。
図面を3Dで投影できるので、現実の進捗と比較しながら、墨出しチェックやメンテナンスが完了します。
もちろん、デザインを検討したり、事前に完成イメージを確認する段階でも使用できます。
【参考】建築分野向けAR/VRシステム「GyroEye(ジャイロアイ)」の 新製品登場|株式会社インフォマティクス
まとめ
工事現場にMR技術を取り入れることで、ミスや手戻りを防いだり、リアルサイズでの図面確認で、スムーズな工事進捗を促すことを実現します。
他にもさまざまな業務を効率化できるため、結果として現場の生産性向上が可能です。
さらに、業務効率化ソフトと組み合わせて使うことで、より一層現場の業務効率化・生産性向上につながります。
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