近年建築業界を含め必要性が増加している顧客管理。
建築業界は業界の特性から顧客管理が進んでいないという現状がありますが、顧客管理を行うことで実現できることは多数あります。
本記事では建築業界における顧客管理について、目的や内容、方法を中心に顧客管理の導入が難しい理由や顧客管理で実現することまで解説します。
目次
そもそも顧客管理とは
一般的に顧客管理とは、氏名や連絡先などの一般的な情報から営業記録、契約中の案件の諸情報など、顧客に関するあらゆる情報を一元管理することです。
顧客管理を行うことで、既存顧客との関係を良好に保てることはもちろん、新規顧客の獲得や業務効率化を行うこともできます。
建築業界における顧客管理についてお話する前に、まず顧客管理の基本についておさらいしておきましょう。
顧客管理の目的
顧客管理の目的とは、顧客のニーズを把握することで長期的かつ良好な関係を形成・維持し、LTV(Life Time Value)を最大化させることです。
モノやサービス、情報が多く供給される現代では、獲得した顧客との取引を1度きりで終わらせずに長期にわたって利用してもらうことが重要です。
顧客管理によって顧客のニーズを把握することで、上位サービスへの乗り換えを促したり(アップセル)、ほかのサービスを紹介したり(クロスセル)できるようになります。
このように長期的かつ良好な関係を形成・維持できると顧客からの信頼や愛着(顧客ロイヤルティ)を得られるため、結果としてLTVを最大化させることが可能です。
このように顧客管理は、顧客獲得を1度きりで終わらせずに効果を最大化させるために不可欠な管理といえます。
「Life Time Value」の略で、ある顧客から生涯のうちに得られる利益のことです。なお日本語では「顧客生涯価値」と称されます。
顧客管理が必要な理由
LTVや顧客管理が必要な理由、また注目されるようになった背景としては主に以下の2つがあげられます。
- 顧客獲得・維持の難化
- 顧客管理の易化
1つ目の理由としては、新規顧客の獲得や既存顧客の維持が難しくなったことがあげられます。
人口減少に伴って消費者数も減っていく一方、インターネットの発達やスマホの普及などにより情報の供給はとどまるところを知りません。
このような状況下で消費者の購買行動パターンも「情報収集→購買」へと変化しており、企業間での競争は激化し顧客の獲得や維持は難しくなっています。
つまり、商品やサービスが増えてそれらの情報を簡単に手に入れられるようになった現代では、新規・既存に関わらず消費者は情報収集を行って比較検討した上ではじめて購入へと至るということです。
このような状況下では顧客管理により1度獲得した顧客を維持することが重要ですが、近年は顧客管理が容易になったことも注目されるようになった理由の1つといえます。
顧客数が多く把握しなければならない要素が多いほど難しくなる顧客管理ですが、IT技術が発達したことで膨大な情報を一元的に管理したり分析したりすることが容易になりました。
このように顧客の獲得や維持が難しくなった一方で顧客管理自体は容易になったことが、顧客管理が必要であり注目されている理由といえます。
建築業界における顧客管理とは
建築業界における顧客管理は基本的に一般的な顧客管理と大きな違いはありませんが、建築業界特有の性質が原因となって顧客管理や顧客管理システムの導入が進んでいないのが現状です。
ただし建築業界においても顧客管理は重要であり、顧客管理により実現することやメリットは多数あります。
ここでは建築業界における顧客管理について理解するため、以下2点を解説します。
建築業界の特殊性
建築業界には以下のような特性があり、これらが顧客管理導入の妨げとなっていると考えられます。
一品受注生産
建築は一品ごとの受注生産であるため、案件ごとに金額や規模、工期など取引内容が異なります。
また顧客ごとの異なる要望に応じて生産を行うため、ある程度の共通性はあるとしても快適性や使い勝手は顧客の判断依存となります。
このように一品受注生産である建築業界では案件ごとに取引内容やニーズが異なるため、連続性・共通性のあるデータとして集計分析を行ったりほかの案件に活用したりすることが困難です。
これらのデータを効率的に管理・運用することは、顧客の基礎情報を集めるだけのような単純な顧客管理では対応が難しいといえます。
複雑な業務進行
建築業界では複数の企業が下請け・孫請けといった関係性のもとで連携して1つの案件を完了させます。
また特にBtoBやBtoBtoCの場合、発注側も受注側も多数の部門が関わっていることが多いでしょう。
このように建築業界は他業界に比べて意思決定や情報管理に関わる部門が多いため、他業界で行われているような顧客管理の手法をそのまま取り入れることが困難です。
このような状況下で顧客情報を一元化し効率的に運用することは難しいため、顧客管理の導入を忌避する傾向があります。
顧客管理で実現すること
建築業界はその特性から顧客管理が難しい環境にありますが、それでもなお顧客管理によって実現することやメリットは多数あります。
具体的には、顧客管理によって以下のようなことが可能になります。
情報の管理・共有と対応の迅速化
顧客管理によって顧客情報を一元化して共有することで、顧客対応の迅速化が期待できます。
顧客管理を行うと顧客ニーズや特性、対応履歴など、顧客に関するあらゆる情報を一元的に管理することが可能です。
またそれらの情報をいつでもどこでも確認できます。
これにより顧客から問い合わせがあった際に迅速かつ適切な対応ができるようになります。
業務の効率化
顧客管理は直接顧客に関わる営業を効率化させることはもちろん、内部的な業務も効率化させます。
顧客管理では顧客のニーズや過去の営業履歴を一元的に管理するため有効な営業活動が期待できるほか、緊急性や重要性に基づいて管理することで効率的な営業活動が行えます。
また情報をまとめて管理し共有や分析を行うため、情報の分散による業務重複などのムダを削減することが可能です。
このように顧客管理では、直接顧客に関わる部分だけでなくさまざまな業務を効率化できます。
対応漏れの防止
顧客管理で管理する顧客情報には、過去の取引内容やそれに伴う定期点検などの情報も含まれます。
顧客管理によって点検スケジュールの記録やアラートの設定をしておくと、対応漏れを防止することが可能です。
定期点検・メンテナンスは数年ごとに行われるものであるため対応漏れが起きてしまうことは決して珍しい話ではありませんが、顧客管理を行っておくことでこうしたリスクを回避できます。
見込み顧客へのアプローチ改善
顧客管理は既存顧客の満足度を向上させるだけでなく、見込み顧客へのアプローチも改善できます。
顧客管理で取り扱う情報は顧客の属性情報だけでなく、過去に実施したイベントへの参加履歴や問い合わせ履歴も含まれます。
これらの情報を分析することで市場のニーズや有効なアプローチ方法を導き出すことができ、新規顧客の獲得につなげることが可能です。
クレームの再発防止
顧客管理ではクレーム履歴もしっかりと記録・共有することで、同様のクレーム再発を防止し顧客満足度の向上につなげられます。
顧客ごとにクレームを記録し誰でも確認できるようにすることで、担当が変わったり問い合わせを受けたりと初めての対応でもリスクを抑えて対応することが可能です。
またクレームを分析することでクレームに発展しやすいケースなどを導き出すこともできます。
このように顧客管理を行うことで、個別的にも全体的にもクレームの発生・再発を防止して顧客満足度の向上が期待できます。
建築業界における顧客管理の方法
顧客管理の方法としては、主に以下の2つがあげられます。
エクセルによる管理
顧客管理方法の1つは、Microsoftのエクセルを使った管理方法です。
既に利用している企業が多いため導入コストを抑えられる一方、情報量が多くなると管理や共有が難しくなるといったデメリットがあります。
顧客管理の難易度が高い建築業界で利用するためには難点が多いといえるでしょう。
CRMツールによる管理
CRMとは「Customer Relationship Management」の略で顧客管理を指す言葉ですが、顧客管理用のツールをCRMツールと呼びます。
CRMツールは顧客管理を目的に開発・提供されているため、多くの情報が記録できるうえ共有機能にも優れています。
詳しくは以下の記事をご確認ください。
まとめ
今回は建築業界における顧客管理について、その目的や内容、方法を中心に、顧客管理の導入が難しい理由や顧客管理で実現することまで解説しました。
建築業界は生産体制や業務進行といった特性から顧客管理の難易度は高い一方、顧客単価も大きく顧客との長期的な関係性も重要であるためその必要性は大きい業界といえます。
このため建築業界で顧客管理を行うのであれば、やはり顧客管理用に開発・提供されるCRMツールを導入することをおすすめします。
また工務店の業務全般を効率化できるものを導入すると、さらに効果的に顧客管理を行うことができるでしょう。
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