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建設ディレクターの仕事内容は?新設された背景と期待できる効果も紹介

建設ディレクターの仕事内容は?新設された背景や期待できる効果も紹介

建設業の労働環境は、労働人口の減少や高齢化、働き方改革法案の適用など厳しい状況が続いていると言えるでしょう。

このような現状の中、新しい働き方として誕生したのが「建設ディレクター」です。

まだそれほど馴染みのない職務ですが、これまで建設業に就業する方が少なかった女性や、若年層の方にも注目されており今後さらなる伸長が期待されています。

この記事では、建設ディレクターが新設された背景にある建設業の問題点や仕事内容、業界にもたらす効果や今後の展望について紹介しています。

建設ディレクターについて関心がある方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

本記事は下記のような方におすすめです
  • 建設ディレクターの仕事内容を知りたい
  • 建設ディレクターに必要とされるスキルは?
  • 業界にもたらす効果について知りたい

建設ディレクターとは

建設ディレクターとは

建設ディレクターとは、経営者、現場技術者、オフィススタッフの三者による円滑な協同体制の構築と継続をサポートする新しい職務です。

これまで現場技術者が一手に担ってきた業務を、情報技術やコミュニケーション能力を活かして代行することが中心になりますが、同時に経営サイドの要望を現場に反映したり、オフィススタッフが効率的にデータ処理したりするための調整も行います。

建設ディレクターの具体的な業務は以下のものが挙げられます。

  • 情報化施工のための電子情報の作成と整理
  • 工事写真データの整理や必要書類の作成
  • 施工実務の役割分担や手順の準備と管理

以上のような現場作業と事務的作業の両方をサポートすることで、現場技術者の業務の効率化と作業負担の軽減を目指すのが建設ディレクターの仕事です。

現状の建設業界が抱える3つの問題点

現状の建設業界が抱える3つの問題点

建設ディレクターは、現状の建設業界が抱えている3つの問題点を解消するために新設されました。これまでにない新たな働き方を創出するものとして期待されています。

ここではまず、現状の建設業界が抱える3つの問題点について解説します。

現状の建設業界が抱える3つの問題点
  • 現場技術者が煩雑な書類整理に追われている
  • 現場とオフィスの情報共有ができていない
  • ITを利用した人材の雇用が進んでいない

現場技術者が煩雑な書類整理に追われている

引用元:厚生労働省|毎月勤労統計調査 令和4年度分結果確報

上記の表でも分かるように、建設業界が抱えている問題点の一つに、産業全体の平均と比較して高い水準で長時間労働であることが挙げられます。

特に現場技術者は、日中の勤務時間は現場の管理に費やされ、現場の終業後に工事施工に関するデータの整理や処理に追われます。

また建設業界は慢性的な人手不足に陥って余裕をもった人材配置は難しく、現場技術者の残業は多くなり、休日は思うように取れないのが実状です。

さらに建設業の労働時間の上限規制が2024年4月から施行されるため、建設ディレクターなどのサポート体制の確立が急がれます。

現場とオフィスの間の情報共有ができていない

オフィススタッフが現場支援をしようとするとき課題となるのは、オフィスからは現場が見えにくいということです。さまざま業務を共有するにあたっては「業務の可視化」が重要ですが、オフィスと現場では時間的な距離の遠さがあり一体的な把握は難しいです。

結果的に現場技術者とオフィススタッフとの間のコミュニケーションが不十分になり、円滑な分業体制が確立できにくくなっています。

そこで建設ディレクターが中心となり、ICT(情報通信技術)を通じて、オフィススタッフにリアルタイムで現場の状況を把握してもらうことが重要になります。一例としては、現場に定点カメラを設置したり、現場スタッフにウェアラブルカメラを装着したりすることなどが挙げられます。

ITを利用した人材の雇用が進んでいない

引用元:国土交通省|建設業の現状

建設DXなど、ITを利用した建設業の就労環境の改善による新しい人材の雇用が期待されて久しいですが、上記の表でも分かるように現状は思うように進んでいません。

理由の一つに、先進技術を活用したプロセスを実際の業務に活かすことができる人材が足りていないということが挙げられます。

この先進技術を実際の業務に活かす役割を果たすのが、現場作業に精通し、同時にオフィス業務にも理解がある建設ディレクターです。

建設ディレクターが調整役となり、現場とオフィスそれぞれに適切な役割分担を提案して、IT環境を最適化しながら過重労働を軽減することが新しい人材の雇用につながります。

建設ディレクターに必要とされるスキル

建設ディレクターに必要とされるスキル

建設ディレクターは現場とオフィスをつなぎながら、先進的なIT技術を駆使して、業務の効率化と品質の向上を目指すのが職務です。そのため建設ディレクターには、コミュニケーション能力、ICT技術、事務処理能力の3つが必要とされています。

建設ディレクターに求められるスキル
  • コミュニケーション能力
  • ICT技術
  • 実務処理能力

コミュニケーション能力

経営、現場、オフィスという3つの職域をつなぐ立場の建設ディレクターは、多くの場面で高いコミュニケーション能力が求められます。

建設ディレクターの職域の詳細は各企業で違ってきますが、総合評価入札の審査申請や積算などでは経営サイド、写真整理や出来形管理、安全書類などでは現場技術者、施工データや出勤簿の管理などではオフィススタッフとの調整が必要になります。

また現場関連では、発注者や近隣住民と折衝しなければならないこともあるでしょう。

建設ディレクターは、さまざまな場面で相手の立場に寄り添い、最善の対応を一緒に検討していけるようなコミュニケーション能力が求められます。

ICT技術

公共工事・大規模工事を中心に、さまざまな電子化が進んでいるため、建設ディレクターにとってICTの活用は必須となっています。

ICTの活用とは、電子化された工事書類や写真データの作成や整理、3DCADを利用した現場図面、3Dスキャナーによる三次元地形データの作成、ドローンによる現場撮影などです。またICT技術は日々更新されているため、常に最新の状態にアップデートされている必要もあります。

建設ディレクターがこれらの業務を担当することで現場技術者の負担は軽くなり、より綿密な現場管理や若手の育成など自身の専門職に専念することができます。

また専門性の高いICT技術によって作成された工事成果品は、現場技術者だけでなく、工事発注者にとっても分かりやすく信頼性の高いものとして評価されるでしょう。

実務処理能力

建設ディレクターは、現場とオフィスの効率化のためのサポートを行う立場のため、その両方において一定の実務処理能力が必要となります。

たとえば現場であれば、工程、品質、安全、原価、環境という施工管理の基本を理解して、必要書類の作成やチェックができることです。オフィスワークでは、帳票管理や請求管理、協力会社への支払いなどの処理能力です。

これらの業務について実務経験があり、実際の作業の流れやポイントを把握していなければ効率化のための提案はできません。

現場やオフィスの「仕事環境の整備」について考えるときも、実際に作業する者の立場で考えるためには実務処理の経験が必要になるでしょう。

建設ディレクターが業界にもたらす効果

建設ディレクターが業界にもたらす効果

建設業の慢性的な人手不足は、就労者が長時間労働になる要因の一つであり、その削減のために推進されてきたのが「働き方改革」です。建設ディレクターは、この「働き方改革」に適応した新しい職務となっています。

建設ディレクターが業界にもたらす効果を3つ挙げ、それぞれについて説明します。

建設ディレクターがもたらす3つの効果
  • 現場技術者の過重な負担を軽減
  • 施工管理の質の向上と技術継承に集中
  • オフィスとの円滑なコミュニケーション

現場技術者の過重な負担を軽減

建設業界では、現場の管理業務と煩雑な書類作成業務を、現場技術者一人で担うというのが慣習化されてきました。これが現場技術者の長時間労働による疲弊につながり、若年技術者の成長を妨げる要因ともされてきたのです。

そこで新しくつくられたのが建設ディレクターという職務です。まず現場技術者の広範な業務範囲を再設定し、建設ディレクターに業務の一部を振り向けることで長時間労働削減を実現します。

また現場技術者が行う施工管理においても、ICTに精通した建設ディレクターのサポートを受けながら最大限に効率化することも可能です。

施工管理の質の向上と技術継承に集中

現場技術者の書類整理やデータ処理などの労働時間が軽減されることで、技術者本来の役割である施工管理の質の向上や技術継承に集中できることになります。

建設現場では、安全や品質などの施工管理はもとより、原価管理による適正な利益の確保も現場責任者である技術者の大切な責務です。原価など、コストに関した問題は誰にでも管理を任せられるというものではありません。

また建設業界全体の高齢化による技術継承の問題においても、現場技術者の存在は大きなものがあります。

現場技術者以外でも可能な業務は建設ディレクターに任せ、現場技術者は施工管理の質の向上と技術継承に集中できることも大きな効果の一つと言えるでしょう。

オフィススタッフとの円滑なコミュニケーション

現場とオフィスをつなぎ、2つの部署の業務範囲を再構築するときも、建設ディレクターが中心となってコミュニケーションを推進できるという効果があります。

大抵の場合、オフィススタッフは現場での実務経験がないことが多いです。逆に、現場技術者でオフィスワークについて深く理解しているケースは限られるでしょう。

しかし、どちらの業務にも一定以上の知識と実務経験がある建設ディレクターであれば、双方の立場や業務の流れを理解しながら円滑なコミュニケーションのイニシアティブをとることが可能です。

建設ディレクターを支える環境づくり

建設ディレクターを支える環境づくり

建設ディレクターという働き方は、人手不足や高齢化などの問題を抱える建設業界に大きな効果をもたらすと考えられます。しかし、建設ディレクター新設の効果を一時的なものに終わらせないためには、関係者全体による協力体制の構築が必要です。

建設ディレクターを支えるポイント
  • 定着させるための環境づくり
  • 業務の分業体制の仕組みづくり
  • 全社的なデジタル環境の整備

定着させるための環境づくり

建設ディレクターが技術者と連携し、技術者の時間外労働を軽減するという取り組みを定着させるには、新しい環境をつくるため関係者全員の意識改革から始めなければなりません。

社内での研修やチームマネジメントで、定着させるための環境づくりが必要になります。

また建設ディレクターが新しい取り組みを行う際に直面した問題点を、関係者全体で検討するという機会も必要になるでしょう。

業務の分業体制の仕組みづくり

業務を再設定して、技術者の負担を軽減するためには、業務を標準化しなければなりません。

標準化とは業務を分析し、業務内容を可視化することです。

これは業務が特定の担当者に依存する属人化を防ぎ、チームによる分業体制を確立する仕組みづくりでもあります。

仕組みづくりのポイントは、関係者全員が参加するミーティングで、建設ディレクターへどのような業務を移管するのかを決定することです。

全社的なデジタル環境の整備

建設ディレクターという新しい職務の導入を契機に、全社的なデジタル環境の整備づくりを目指してはいかがでしょうか。建設業で用いられているデジタル技術の主なものをまとめました。

  • BIM/CIM|3次元モデルを利用した情報共有による効率化を実現
  • ICT建機|情報通信技術を取り入れた建設機械で自動操作が可能
  • AI|現場の解析や構造設計の安全性確認、職人技術のデータ化で用いる
  • クラウド|図面や資料などのデータをシームレスに共有・管理できる
  • ドローン|安全性を保ちながら効率的に測量データを取得できる

このようなデジタル環境を整備することにより、建設ディレクター導入との相乗効果が期待できます。

まとめ

ここまで、建設業の新しい職務として注目されている建設ディレクターについて解説してきました。

建設ディレクターの定義と仕事内容、求められるスキル、導入によりもたらされる効果、今後の展望などについてです。

建設ディレクターという職務は、政府の「働き方改革」に合致するだけでなく、就労者の意識変革や先進的な技術が導入しやすくなるなど、企業にとって価値ある職域であると言えるでしょう。

業務の効率化に中心的な立場で働く建設ディレクターに、ぜひ検討していただきたいのが建設業の業務効率化に特化したシステムの導入です。

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【引用】AnyONE

この記事の監修者

中島崚真 (一級建築士 日本建築学会 会員)

1976年生福岡県出身。空間は人の感情に共鳴する。揺れ動く心と高鳴る胸の鼓動、揺り動かされる感情のデザインを意識して設計活動をしている。
design creation office FIVE COLOR[S] INK 一級建築士事務所

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