各業界のIT化が進んだことにより、人力で対応するシーンは減り、業務の効率化が促されています。
建設業界も、同じようにIT化が進んでおり、その代表的なものが「ICT施工」です。
本記事では、ICT施工とはそもそも何なのか、またメリット・デメリットに関して徹底解説していきます。
目次
ICT施工とは?
ICT施工は、建設工事の生産工程にICT(情報通信技術)を用いて、各工程の効率化と高精度化を促します。
- 調査
- 設計
- 施工
- 監督
- 検査
- 維持管理
そしてICT施工の工程で得られた電子情報を、他の工程に用いることで、生産工程全体の生産性と安全性が向上します。
導入の背景
ICT施工導入の理由として、建設業界の就業者数減少と高齢化が挙げられます。
上の図(左)を見ても、1997年をピークに就業者数が徐々に減少していることがわかります。
新たな担い手の数が減っているため、年を追うごとに労働者の年齢層も上がっている状態です。
2017年時点で、55歳以上が約34%、29歳以上が約11%と、全産業と比較しても建設業の若年層の割合は低くなっています。
建設業界は「きつい・汚い・危険」の「3K」の印象が強いため、若者離れが進んでいるといえます。
国土交通省はそうした建設業界の働き方改革・生産性向上の取り組みとして、業務の効率化につながるICT施工の導入を推進しています。
ICT施工のメリット
ICT施工には多くのメリットがあります。代表的なものは以下の6つです。
施工効率・精度の向上
ICT施工では、施工の効率と精度を高められます。
通常の施工では、施工状況の目視確認や丁張りはオペレーターの力量に左右されてしまうため、現場によっては施工の精度は高くありません。
例えば、ドローンを利用して起工測量し、作成された3次元設計データを基に作業を進めることで、オペレーターの目視や検測作業が不要になります。
検測回数が減少すれば、大幅な工期短縮とコストの削減につながるため、効率的な施工が可能です。
また、建機に様々なデータを与えるトータルステーション(TS)を採用すれば、誤差1cm以内とされる精度の高い正確な測位データを送信し、建機を自動制御できます。
高精度に制御された建機により、仕上げ面精度が向上するため、正確性の高い施工を行えるでしょう。
工期短縮
ICT施工の導入で、工期を大幅に短縮できます。
仮に測量をオペレーターの目視で行うとすれば、確認作業が多く、短い時間では終わりません。
しかし、ICT施行の一種であるドローンの撮影による3次元データの測量と、それに伴う設計は、短時間で終了します。
設計図面との差分から、切り土、盛り土などの施工量を自動算出し、施工計画作成にかかる時間も短くなります。
また、算出した正確なデータに基づいた建機のオペレーター操作支援や自動制御等で、建機の1日当たりの稼働率を増やすことが可能です。
正確なデータで、建機が止まることなく作業が進むので、修正なしで高精度の工事を完了させられます。
安全性向上
ICT施工を行うと、建機周辺に作業員を配置する必要がなくなり、業務の安全性が高まります。
通常、工事の際に測量や作業補助、監督・指導など、作業員や現場監督が建機の周辺で業務を行なっています。
建機周辺での業務は常に危険が付きまとい、建機の誤操作等による事故が起こることもあります。
実際に、令和元年の工事事故発生件数の内訳を見ると、建設機械の稼働に関連した人身事故や資機材などの落下や下敷きで負傷するという労働災害が発生しています。
ICT施工では、建機との接触等で起こる労災事故の防止が可能です。
ICTを活用した建機の自動制御により、建機の近くで働く現場作業員の数が減るので、安全性が向上します。
熟練者・オペレーター不足への対応
建設業界の人手不足により、建設業界の熟練者・オペレーターは貴重な存在となっています。
例えば、ドローンで得た3次元データの活用で、正確なデータ収集とトータルステーションを用いた建機の自動制御が可能です。
経験の浅いオペレーター・技術者でも建機を扱え、精度の高い施工を行えます。
人員削減
ICT施工の活用により、作業補助や検測がなくなり、人員の削減が可能です。
ドローン撮影で得られた3次元データを用いることで、現場の丁張り設置や排土板操作など、今まで必要だった建機周辺の補助作業が不要になります。
また、ICT建機に自動制御を導入すれば、建機を操作するオペレーターの必要性も下がります。
夜間工事や大規模工事など、作業員や施工管理者に負担が大きい現場に自動制御を導入したICT建機を使用すれば、労働環境の改善に役立ちます。
CO2削減
ICT施工での建機の効率的な稼働は、無駄な作業を省き燃料の使用量が減るため、CO2の削減につながります。
建機の操縦方法には自動制御、もしくは支援操作で行うタイプがあります。
どちらも3次元データを基にした正確なデータを活用しており施工精度が高いため、計画通りの施工が可能です。
データを用いることで、検測や補助員の移動の際に発生する待ち時間でのアイドリングもなくなります。
効率的な建機の稼働で、使用燃料は少なくなり、結果としてCO2の排出量が抑えられます。
ICT施工のデメリット・注意点
ここまで、ICT施工に関してのメリットを述べてきましたが、現場への導入が始まったばかりの施策であるため、デメリットも存在します。以下の4つが代表的な例です。
人材育成
ICT施工は、人材育成に時間がかかるというデメリットがあります。
導入されて間もない施策のため、対応できる技術者の数は不足しています。
3次元データを扱える人材は少なく、確認して修正できる人材の育成が必要です。
しかし、ICT人材を育成する指導体系はまだ確立されていません。
地方自治体では、ICT担当者による研修カリキュラムの作成等のICT教育のサポートを行なっていますが、教育方法の確立や普及には、まだまだ時間がかかります。
ネットワーク・ソフトウェアの環境整備
ICT施工で扱う各種データは容量が大きいため、膨大なデータを処理できるスペックを持ったパソコンを用意しなければなりません。
また、ネットワーク環境によっては、メール送信等も困難な場合があります。
通信が途切れてしまうような環境下では、ICT施工の効果を発揮できないので、通信環境の整備も必要になります。
設備投資コスト
ICT施工は、導入に当たり設備投資が必要です。
ICT施工用の建機は、高機能のシステムを搭載しているため高額です。レンタル料も、従来のものより割高です。
さらに、維持費も継続的にかかります。技術の進歩によりシステムのアップデートが必要なためです。
気象条件の影響
ICT施工は、気象条件に影響されてしまいます。
ドローンでの撮影時に強風や突風があれば、風の影響を受け、正確な地形の測量ができません。
また、3Dレーザースキャナーを用いて測量をする際も天候が影響します。
日差しが強ければ影になった部分があったり、水たまりや雪で地面が覆われていたりすれば、鮮明に地形を撮れないため計測ができません。
まとめ:ICT施工とは?建設業務を効率化するメリットと注意点を解説!
今回は、ICT施工の導入にあたっての利点と、不安要素についてまとめました。
ICT施工は、建設現場の業務を効率化し、安全で高精度な工事を実現します。
特に労働環境のイメージが芳しくない建設業界において、業務の効率化は人材確保のためにも急務と言えます。
また、業務効率や生産性の向上には、ICT施工の導入だけでなく、業務効率化ソフトの導入もおすすめです。
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