近年、太陽光発電の売電価格は年々下落傾向にあります。一方で電気料金は高騰し、家庭の負担は増す一方です。
そんな中、「太陽光発電はもう儲からないのでは?」という声も聞かれます。
しかし、実はこの状況下でこそ太陽光発電の自家消費によって得られるメリットは大きくなります。
本記事では、売電価格の推移と現状、そして11年目以降の賢い選択肢についてわかりやすく解説します。
目次
売電価格の低下と「太陽光発電はもう儲からない?」という誤解

売電価格は年々下がっているが、電気代は上がっている現実があります。
2025年度の住宅用太陽光発電(10kW未満)のFIT買取価格は15円/kWhと、2024年度の16円/kWhから1円下落しました。(出典:買取価格・期間等|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー)
これだけを見ると「太陽光発電はもう儲からない」と思われがちです。
しかし、この考え方は実は誤解です。
なぜなら、売電価格が下がる一方で、電気料金は高騰し続けているからです。
つまり太陽光発電で作った電気を売るより自分で使う方が経済的メリットが大きくなっています。
太陽光発電の売電価格はどれくらい?推移と現状を解説

太陽光発電の売電価格について2025年までの推移と、今後の見通しについて解説します。
FIT制度開始当初の売電価格(〜2012年)
FIT制度が開始された2012年は、売電価格が42円/kWhという高価格でスタートしています。
この高額な買取価格こそ、太陽光電池の導入を推進する後押しとなっていたことは間違いありません。
FIT制度により太陽光発電の導入量は急拡大し、FIT開始前の約5GWに対し、開始後の2017年には約39GWもの累積導入量を記録しています。
この42円という高い買取価格により、多くの家庭や事業者が太陽光発電の導入に踏み切ったといえるでしょう。
現在の売電価格(2024年度時点)
2012年から比較すると、現在の売電価格は大きく下落しているといえます。
2025年の10kW未満のFIT買取価格は2024年から1円下がり、15円/kWhとなりました。
年度 | 売電価格(円/kWh) |
---|---|
2012年度 | 42 |
2013年度 | 38 |
2014年度 | 37 |
2015年度 | 33 |
2016年度 | 31 |
2017年度 | 28(30) |
2018年度 | 26(28) |
2019年度 | 24(26) |
出典:過去の買取価格・期間等|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー
なお、ここまでの推移をまとめるとFIT価格は下落傾向にあることは間違いありません。
売電価格は今後上がる?将来的な見通し
売電価格が上がるかどうかだけに着目すると、今後価格が昔に戻る可能性は低いでしょう。
しかし、売電価格を算定する会議では「諸外国に比べて発電コストが高い」ことが課題とされており、売電価格を通じてコストダウンの圧力をかけています。
つまり、売電価格を安価にすることで発電コストも下げるように、調整をかけているということです。
また、政府の基本方針としても太陽光エネルギーなどの再生可能エネルギーの売電よりも、自家消費を推奨する方針であり、今後売電価格が回復するような政策等が実施される可能性は低いでしょう。
売電価格の低下で太陽光は損?

売電価格が低下した今、「太陽光発電を導入すると損をする」という風潮がありますが、事実でしょうか。
電気代が高騰した今だからこそ、施主にアピールできる太陽光発電のメリットを紹介します。
電気料金は高騰中|家庭の負担は年々増加
現在、電気代は燃料費統制や再エネ賦課金の増加により、年々高騰している状態です。
上記の表からもわかるように、家庭向けの電気料金は2010年と比べると最大で約59%上昇しており、平均単価は34円/kWhに上がっています。
電気を多く使う家庭ほどその影響を受けており、家計を圧迫している状態です。
売電より自家消費が得になる理由
2025年時点の太陽光発電の売電価格は1kWhあたり15円です。
この売電価格で住宅用の4kWhの太陽光発電システムを導入している家庭が得られる経済的なメリットを、売電した場合と自家消費した場合で比較してみます。
単純に計算すれば、1kWhの電力を売電した場合は15円、自家消費すれば34円節約できることになります。
一般家庭では年間の発電量が4,000〜5,000kWhとなるため、これをすべて売電したと考えた場合の収入は60,000〜75,000円程度です。
一方ですべて自家消費した場合に節約できる金額は、単純計算で136,000〜170,000円となります。
つまり、売電よりも自家消費した方がお得となります。
電力会社により電気料金は変動します。あくまで目安としての参考値です。
停電対策にも有効!蓄電池・V2Hの活用
太陽光発電は経済性だけでなく、停電対策になるというメリットがあります。
蓄電池を併用すれば電力を貯蓄し、万が一大規模停電があった場合などに、必要最低限の家電は動かせます。
さらに、V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、電気自動車のバッテリーから家庭に電力を供給することができます。
これにより、停電時でも長時間の電力確保が可能です。
太陽光発電がどのように停電対策に役立つかは、こちらの記事をご覧ください。
太陽光発電の売電価格は10年後どうなる?11年目以降の対策と選択肢

太陽光発電の売電価格は今後どうなっていくかを解説します。
FIT制度終了後の売電はどうなる?
住宅用太陽光発電は、設置から10年間にわたり固定価格での売電が保証されています。
この制度は「FIT(固定価格買取制度)」と呼ばれ、2012年から本格的にスタートしました。
しかし、11年目以降は「卒FIT」と呼ばれる段階に入り、買取価格や契約内容が自由化されます。
現在卒FIT後の売電価格は平均8円/kWh前後で、FIT期間中と比べると大幅に低下しています。
たとえば、東京電力が提供する「再エネ買取標準プラン」では8.5円/kWhと設定されています(2025年5月時点)。
このため、11年目以降も売電収入を期待するなら、事前に売電先の選定や契約内容の確認が必要です。
卒FIT後の売電先と価格相場
卒FITを迎えた家庭向けに、さまざまな事業者が売電サービスを提供しています。
代表的な企業としては、東京電力、ソフトバンクでんき、Looopなどが挙げられます。
これらの事業者は、それぞれ独自の条件や価格設定をおこなっており、選ぶ先によって収入に差が出る点も注意が必要です。
買取価格の相場はおおむね6〜10円/kWhであり、FIT制度の買取単価(16〜42円/kWh)と比べて半額以下となるケースもあります。
特典としてポイント付与や契約時のキャッシュバックなどを設けている企業もあるため、比較検討は必須です。
卒FIT後は「使う」選択が得
売電価格が大きく下がる一方で、家庭の電気料金は30円/kWhを超える水準にあります。
この価格差を踏まえると、「売るよりも自分で使った方が得」という考え方が主流になりつつあります。
とくに昼間に発電した電力をそのまま消費できれば、1kWhあたり30円前後の節約効果が見込めます。
さらに、蓄電池を設置すれば、余剰電力を夜間に使うことも可能です。
V2H(電気自動車から家庭への給電)と組み合わせれば、電力の自給自足レベルを大きく高めることができます。
経済性と防災性の両面で、卒FIT後は使う選択が合理的です。
実際いくら稼げる?売電収入の平均と10年後の回収目安

次に、太陽光発電の導入で実際にいくら稼げるのか売電収入の目安と10年後の回収目安について解説します。
平均的な家庭の売電収入(4kW設置時)
住宅における平均的な太陽光パネルの設置容量は、4.5kW前後が一般的です。
この容量の太陽光パネルからの発電容量は一般的に4,000〜5,000kWh程度で、このうちの7割が売電に回されて、3割は自家消費に回ります。
つまり、上記の条件で売電収入を計算すると売電で得られる収入は2,800〜3,500kWh×15円=42,000〜52,500円となります。
投資回収期間の目安
太陽光発電の導入には、工事費込みでおおよそ100万〜130万円の初期費用がかかります。
ただし、自治体による補助金を活用すれば、実質負担額は約90万円台まで抑えることも可能です。
たとえば、4.5kWのシステムを導入した家庭では、年間の経済効果(売電+電気代節約)で約13万円程度が見込まれます。
この場合、10年間で初期費用をほぼ全額回収できる試算となり、以降は電気代の削減によって黒字が積み上がっていきます
太陽光発電の導入コストと国・自治体の支援制度

最後に太陽光発電の導入コストと国や自治体の支援制度について解説します。
導入費用の目安
「太陽光発電について|資源エネルギー庁」によると、住宅用太陽光発電の設置費用の設置コストは20.8万円程度となっています。
一般的な住宅用の太陽光パネルは4kWシステムが多いため、本体費用は83.2万円程度、工事費用などを含めると120万円程度の予算がかかります。
さらに、蓄電池やV2Hを導入する場合はプラスで100万円程度の費用が必要です。
太陽光発電や蓄電池、V2Hなどの導入費用については、こちらの記事を参考にしてください。
補助金・支援制度の活用で初期費用を抑える
導入費用の負担を軽減するため、国や自治体による補助金制度を活用しましょう。
たとえば東京都では「災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業」にて、太陽光発電設備に関しての補助金を申請できます。
2025年5月時点で国からの補助金については発表されていませんが、各自治体での助成事業が実施される可能性が高いため、お住まいの自治体に問い合わせをして、工務店の方でも把握しておくようにしましょう。
PPA・リースなど初期費用ゼロで導入する方法も
太陽光発電の導入コストが高く施主が導入を躊躇うケースでは、PPAや太陽光リースを提案しても良いでしょう。
まずPPAとは太陽光設備を第三者が設置し、初期費用ゼロで電力を買い取るという仕組みです。
自家消費方とも組み合わせが可能で、経済的な負担を抑えつつ再エネ活用を進めることができるとして注目を集めています。
また、太陽光リースを活用すれば初期費用無料で太陽光発電設備を設置、運用できます。
施主は月々のリース料を分割して支払う仕組みとなっており、一括での費用負担を抑えられるでしょう。
まとめ
太陽光発電の売電価格は今後も下落傾向が続くと見られています。
一方で電気料金は上昇し続けており、自家消費による経済的メリットは年々大きくなっています。
施主から「太陽光発電はもうメリットがないの?」と聞かれた場合には、自家消費による経済メリットを伝えることで、納得して太陽光発電の導入を検討してもらえるはずです。
さらに、V2Hや蓄電池による停電時の対応なども訴求できます。
コストを抑える方法として、各自治体の補助金や太陽光リースの利用も併せて提案しつつ、負担を抑えて再エネ活用を提案しましょう。
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