人材不足が課題になっている建設業界では、従業員を増やすための施策を考える必要があります。
建設の現場で人手不足が進むと、工事の遅延や品質の低下を起こす可能性が高いです。
しかし、建設業の経営者は「どのように人材を確保すればいいのかわからない」という悩みもあるでしょう。
当記事では、建設業の従業員を増やす対策方法や定着率向上のテクニックまで詳しく解説します。
目次
建設業の従業員を増やす適切なタイミング
建設業の従業員を増やすときは、以下のようなタイミングがおすすめです。
元請けから現場人員増加を依頼されたとき
元請けからの要求により、現場人員増加を依頼されることがあります。
人員増加の依頼は業績が認められたことを意味しているため、期待に応えるためにも従業員を増やすことが大切です。
現場数が増加したとき
現場数が増えたことにより、現在の従業員数だけでは対応できないこともあります。
特に大規模な工事を担当する場合、人材不足は重大な問題となります。
また、現場では従業員が病欠・怪我によって参加できないケースもあるため、余裕のある人材配置が必要です。
大規模プロジェクトが確定したとき
大規模プロジェクトの参加が確定したときは、新しい従業員を増加させる必要があります。
規模によっては大人数の従業員が必要になるため、現在の状態ではうまく進められないことも考慮しなくてはいけません。
また、自社における対応範囲によっては専門的なスキルが必要になることもあるため、有資格者の人材獲得が必要となります。
プロジェクト内容が確定した段階で人員確保のために動き出しましょう。
建設業が従業員不足になる5つの原因
建設業が従業員不足になるときは、以下のような5つの原因が考えられます。
1.離職率の高さ
建設業は長時間労働や体力の負担が多いため、離職率の高い業界です。
厚生労働省が発表した「建設業(技術者制度)をとりまく現状」によると、大卒者で約3割、高卒者で約4〜5割程度となっています。
離職者の多くは労働環境や待遇面、仕事内容などに不満を持つケースが多いため、事業者としては働く環境の改善が必要になるでしょう。
2.職人の高齢化
建設業で働く職人の多くは、高齢化が進んでいる傾向にあります。
国土交通省が発表した「建設業を巡る現状と課題」によると、建設業で働く55歳以上の割合は35.9%、一方で29歳以下の割合は11.7%です。
高齢の職人が引退した場合に技術の継承ができないリスクが高い点は、建設業界でも懸念されています。
建設事業者は若手を入職させるための手立てを打ち、技術継承へ取り組む必要があります。
3.3Kイメージ
建設業では3Kのイメージが残っていることから、人材の獲得が難しくなっています。
3Kとは、きつい・汚い・危険の3要素を組み合わせた言葉です。
建設の仕事には事務作業をメインとする職種もありますが、現場労働は過酷で体力仕事という面がピックアップされがちです。
求職者からのネガティブなイメージを払拭するためにも、労働環境の改善やポジティブな面をアピールする取り組みが必要になるでしょう。
4.雇用条件の悪さ
雇用条件の悪い環境では、建設業に従業員を増やすことは難しくなります。
企業によって採用している雇用条件は異なりますが、技能労働者の半数以上は日給制を取り入れることが多いです。
そのため、収入を増やすには働く日数を増やさざるを得ず、なかなか週休2日などより良い労働環境を担保できません。
また、資格手当がない企業や福利厚生面が充実していない企業もまだまだ多く、若者がより雇用条件の良い企業へ流れやすい点も問題です。
5.拘束時間の長さ
建設業は従業員の拘束時間が長いため、人材の獲得が難しい業界となっています。
作業を行う現場が遠方になることも多く、移動時間も拘束されるため時間と体力を消耗します。
また、工事の納期によっては長時間の残業になることもあり、休日出勤を余儀なくされる可能性も高いです。
拘束時間の長さを改善するためには、作業効率を向上させるための取り組みが必要になるでしょう。
建設業の従業員を増やす対策
建設業の従業員を増やすには、以下のような対策方法があります。
労働環境の改善
従業員が働きやすい環境を整えるには、労働環境の改善が重要です。
給与や仕事内容、待遇、福利厚生などを改善することで、求職者に好印象を与えられます。
建設業ならではの危険なイメージを払拭するためには、定期的な安全教育を徹底することも大切です。
また、万が一の怪我に備えて、休憩室や医務室を用意する必要もあります。
はじめから全てを改善することは難しいため、少しずつ労働環境を見直していくようにしましょう。
建設DXの推進
建設業の作業効率を向上させるためにも、DX化を進めることは大切な取り組みです。
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、事業にデジタル変革をもたらす取り組みを指します。
例えば建設業の場合、工事の工程や資材状況などを管理できるITツールを導入すれば、必要な情報を好きなタイミングでチェックできます。
従業員の作業管理やシフト管理ができるツールもあるため、全体的な作業効率を向上可能です。
これから建設業で働く従業員に作業効率を向上できる取り組みについてアピールすれば、魅力を感じた人材の獲得へとつながるでしょう。
教育制度の見直し
新しい従業員に長く働いてもらいたいなら、教育制度の見直しが重要です。
建設業では仕事を見て学ぶというスタイルが残っていることもあり、技術習得の厳しさを感じた従業員の離職が進んでしまいます。
そこで、研修制度を設けることで、一から建設業の働き方を学んでもらえます。
もしこれまで従業員の研修を行っていなかった場合、教育マニュアルを作成しながら教えるべき要素の整理が必要です。
ほかにも従業員の心身をサポートするためにも、メンタルヘルスケアの取り組みも大切です。
定期的なカウンセリングから従業員のストレスや不満を緩和させれば、定着率アップにもつながるでしょう。
評価制度の構築
従業員の評価制度を構築すれば、モチベーションのアップにつながり離職率を低下できます。
会社から正当な評価をしてもらえれば、前向きな姿勢で長く働いてもらえます。
従業員の業績を適切に評価することで、キャリアアップの機会を与えることが可能です。
また、建設業では専門的なスキルが求められることもあるため、資格取得サポートを行えば従業員の成長を促進できるようになるでしょう。
女性・外国人・高齢者の雇用
建設業の従業員を増やすには、雇用の幅を広げることも有効な手段です。
若い男性だけでなく、女性や外国人、高齢者などを雇用することで従業員を増やせます。
特に外国人雇用は2022年に国土交通省が業務区分を19区から3区分に変更したことで、建設業の訓練や各種研修制度が充実しました。(【参考】業務区分の統合に係る関係資料【特定技能制度(建設分野)】)
日本の定住している外国人は年々増加傾向にあるため、グローバルな従業員を確保すれば人材不足の課題解決へとつなります。
また、女性用トイレや産休制度の整備により女性の雇用を促進する企業も増えてきました。
さらに高齢の技術者の雇用によりこれまでの経験、ノウハウを若い従業員に伝えることが可能です。
多様性が充実した環境を構築することで、オープンな働き方ができる企業として求職者にアピールできるようになるでしょう。
建設業の従業員を増やすには求人媒体の見直しも重要
建設業の従業員を増やすには、使用中の求人媒体を見直すことも重要です。
人材獲得につながる求人媒体として、以下のようなものがあります。
求人サイト
求人サイトから求人を出すことで、建設業に興味・関心のある求職者にアピールできます。
求人サイトを利用するときは掲載費用を支払い、一定期間求人を掲載する流れです。
サポートが充実している求人サイトなら、求人票の出し方についてアドバイスを受け取れます。
求職者から魅力のある求人を出すことで、多くの応募を得られます。
求人票は会社側だけの立場で考えず、求職者の目線に立ちながら作成するようにしましょう。
ホームページ
自社の求人用ホームページを作成し、従業員を獲得することもできます。
求職者の多くは企業の詳細情報を調査してから応募するため、ホームページがあればどのような会社なのか理解してもらえます。
仕事内容や社内の雰囲気、待遇・福利厚生などを具体的に記載しておくことで、入社後のミスマッチを防止可能です。
インターネットには初心者でも簡単にホームページを作成できるサービスがあるため、自社の詳細情報を求職者に知ってもらうためにも用意しておくと良いでしょう。
SNS
SNSで自社の公式アカウントを作成し、求職者にアプローチする方法もあります。
XやFacebook、Instagram、TikTokなどの代表的なSNSからコンテンツを発信することで、自社に興味・関心を持ってもらえます。
魅力や求人情報なども発信できるため、求職者との設定を増やすことが可能です。
また、SNSでは広告出稿もでき、細かなターゲティングをして効率良く求職者からの応募を増やせます。
近年SNSから情報を調べるユーザーが増えているため、建設業の魅力を伝えるためにも活用してみましょう。
建設業で従業員を増やすためにかけるべきなコスト
建設業で従業員を増やすためには、以下のようなコストをかけましょう。
人件費
新たな従業員を獲得するためにも、採用担当者の人件費は必ず必要です。
建設業では少数精鋭で作業をしている企業も多いですが、新しい従業員を獲得するためには面接対応や日程調整、会社説明会の実施などが求められます。
社内で担当者を決定しても問題ありませんが、優秀な従業員を獲得するなら経験がある採用担当者を用意しなくてはいけません。
外部の人事担当サービスを利用すれば、自社のリソースを使うことなく採用活動を進められます。
採用活動費
採用活動費には、求人サイトの掲載費用や広告費用、説明会の開催費用などが該当します。
規模感によって必要なコストは大きく変動するため、十分な予算確保が必要です。
採用活動が長引くほど費用も高くなるため、どれくらいの期間で実施するのか決めることも大切です。
従業員を増やすときは、はじめに予算を決定した上で採用活動費をうまく使っていくようにしましょう。
福利厚生費
新しい従業員を採用後、福利厚生費のコストも発生します。
研修費用をはじめ歓迎会、資格取得サポート、住宅手当といった費用が該当します。
従業員を定着させるためには高額な費用がかかるため、細かなサポートが必要です。
福利厚生費の予算確保が難しい場合、国や自治体が展開している補助金の活用をおすすめします。
ただし、補助金の申請にはそれぞれ書類の準備が必要なので、公式サイトから応募要項を確認しながら進めることが大切です。
条件によっては受け取れる補助金も存在するため、予算をおさえたいときはチェックしておきましょう。
まとめ
今回は、建設業の従業員を増やす対策方法や定着率向上のテクニックまで詳しく解説しました。
建設業は労働環境の厳しさから従業員を増やすことが難しく、雇用条件の悪さや拘束時間の長さも問題となっています。
従業員を増やすためには労働環境を改善し、DX化の推進や教育制度の見直し、評価制度の構築、多様な人材募集などの取り組みが必要です。
建設業で従業員を増やすときのコストとして、人件費や採用活動費、福利厚生費に費用をかけることも大切です。
ただし、一度に対策方法を全て実施することは難しいため、現場や社内の状況を考慮しながら徐々に改善することをおすすめします。
また、経営者の独断で実施するのではなく、従業員の意見を聞きながら最適な方法を実施していくことが大切です。
ぜひ当記事でご紹介した方法を試し、自社の従業員を増やすための施策を実施してみましょう。
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