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建設業における電子契約を徹底解説!メリットや注意点も

建設業における電子契約を徹底解説!メリットや注意点も

建設業界では、近年のデジタル化の波により、電子契約の導入が進んでいます。

電子契約は、契約書をデジタル形式で作成・署名・保管する方法で、紙の契約書と比べて多くの利点があります。

しかし、導入にあたっては、法的な要件など運用上の注意点を理解しておかなくてはなりません。

本記事では、建設業における電子契約について、法的要件や導入メリット、注意点についてくわしく解説します。

本記事は下記のような方におすすめです
  • 建設業で電子契約の導入を検討したい
  • 建設業における電子契約のメリットを理解したい
  • 建設業で電子契約を導入する際の注意点と対策を知りたい

電子契約とは

電子契約とは、従来の紙の契約書を電子データとして取り扱う契約方法です。

紙の契約書の場合、契約書を印刷し、署名・押印を行い、郵送して相手方に送る必要があります。

一方、電子契約では、インターネットを通じた電子データの交換によって契約が成立するため、時間やコストの削減に大いに役立ちます。

新型コロナウイルスの影響で、リモートワークが普及した現代において、紙の契約書のやり取りは非効率的です。

電子契約は、契約書の作成から締結までがオンラインで完結するため、非常に利便性が高い方法といえます。

建設業での電子契約の現状と背景

建設業界における電子契約の現状と、その背景にある法改正や適用範囲についてくわしく見ていきます。

建設業での電子契約の現状と背景
  • 建設業法改正による電子契約の導入経緯
  • 建設業における電子契約の適用範囲

建設業法改正による電子契約の導入経緯

2001年の建設業法改正

建設業における電子契約の導入は、まず2001年の建設業法改正が大きな転機となります。

それまで、建設工事の請負契約は、建設業法第19条により次のように書面交付が義務づけられていました。

建設業法第19条1項

建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従 って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は 記名押印をして相互に交付しなければならない。(第19条2項)請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

引用:建設業法 | e-Gov法令検索

つまり、契約の内容を記載した書面に署名または記名押印し、双方が交付しなければなりませんでした。

しかし、2001年4月の改正により、以下の第3項が追加されます。

建設業法第19条3項

建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。

引用:建設業法 | e-Gov法令検索

この改正によって、相手方の承諾を得て技術的な要件を満たせば、電子契約の利用が可能となりました。

2018年のグレーゾーン解消制度

2018年には、さらに重要な進展がありました。それが「グレーゾーン解消制度」の導入です。

グレーゾーン解消制度は、新しいビジネスモデルや技術が既存の法律に適合しているかどうかを確認するための仕組みです。

この制度を利用して、電子契約サービスの適法性が確認され、建設業界でも安心して電子契約を導入できるようになりました。

【参考】:電子契約サービスに係る建設業法の取扱いが明確になりました|経済産業省

この結果、多くの建設業者が電子契約を導入し、契約業務の効率化とコスト削減を実現しています。

2020年の建設業法施行規則の改正

さらに2020年には、建設業法施行規則が改正され、電子契約に関する技術的基準が見直されます。

この改正では、電子契約の要件として「見読性」「原本性」に加えて、新たに「本人性」が明確に定められました。

建設業法施行規則第13条の4、2の3

当該契約の相手方が本人であることを確認することができる措置を講じていること。

引用:建設業法施行規則|e-Gov法令検索

建設業における電子契約の適用範囲

建設業における電子契約の適用範囲は広がっており、多くの契約が電子化可能です。

具体的には、以下の書類が電子契約の対象となっています。

  • 工事請負契約書
  • 発注書
  • 売買契約書
  • 賃貸借契約書
  • 保証契約書

これらの契約書は、従来の紙の契約書と同じ法的効力を持つため、企業は安心して利用できます。

建設業法における電子契約の要件

建設業法における電子契約の要件

電子契約を建設業で導入するためには、契約の適切性を保証するためにいくつかの法的要件を満たさなくてはなりません。

3つの法的要件である「見読性」「原本性」「本人性」についてくわしく説明します。

建設業法における電子契約の要件
  • 見読性
  • 原本性
  • 本人性

見読性

見読性とは、契約書が誰でも簡単に読める状態である要件です。

例えば、建設工事の請負契約書には、工事の詳細、金額、工期など多くの情報が含まれます。

これらの情報が、デジタル形式で明確に表示される状態が必要です。

クラウド上で管理される電子契約書は、必要なときにすぐにアクセスして内容を確認できるため、契約当事者双方にとって利便性が高くなります。

原本性

原本性とは、契約書が改ざんされていない状態を保証する要件です。

電子契約においては、契約書の原本性を保つために電子署名が使用されます。

具体的には、電子契約書を作成した後に電子署名を付与して、公開鍵暗号方式によって、契約書の改ざんを防止します。

この結果、契約書が作成者によって正しく作成され、第三者による改ざんがない状態の証明が可能です。

本人性

本人性とは、契約の相手方が確実に本人である状態を確認する要件です。

電子契約では、契約書に電子署名を付与する際に、契約当事者が本人である点を確認します。

これを実現するために、電子契約システムを導入する際は、信頼性の高い第三者機関から発行される電子証明書が必要です。

この結果、契約相手が確実に本人である状態が保証され、契約の信頼性が保たれます。

建設業で電子契約を導入するメリット

建設業における電子契約の導入には、多くのメリットがあります。具体的なメリットについてくわしく見ていきます。

建設業で電子契約を導入するメリット
  • 印紙税などのコストの削減
  • 業務の効率化
  • コンプライアンスの強化

印紙税などのコストの削減

建設業における電子契約の導入は、印紙税などのコストを大幅に削減する効果があります。

紙の契約書を使用する場合、契約書に貼付する収入印紙が必要ですが、特に建設業では、高額な契約が多く、印紙税の負担が大きくなりかねません。

例えば、1億円を超える契約書には10万円の印紙税がかかりますが、電子契約では不要になり、企業によっては年間数千万円のコスト削減が可能です。

また、印紙税以外にも、紙の契約書を印刷するための用紙代やインク代、郵送費などのコストも削減できます。

これらの費用は、積み重なると大きな金額となりますが、電子契約の導入によって不要となるでしょう。

工事請負契約書で使用する収入印紙とは?役割から税額まで解説

業務の効率化

電子契約は、業務の効率化にも大いに役立ちます。

紙の契約書を使用する場合、契約書の印刷、署名、押印、郵送、返送など、多くの手続きが必要です。

電子契約の導入によって、これらの手続きをオンラインで完結できます。

例えば、紙の契約書では数日から1週間かかっていた手続きが、電子契約では数分で完了できます。

また、新型コロナウイルスの影響で多くの企業がリモートワークを導入していますが、紙の契約書では物理的なやり取りが必要です。

電子契約なら、場所を問わずに契約手続きを行えるため、リモートワークの環境下でもスムーズに業務を進められるでしょう。

コンプライアンスの強化

電子契約は、コンプライアンスの強化にも貢献します。

紙の契約書の場合、物理的な管理が必要であり、紛失や改ざんのリスクがあります。

一方で電子契約では、契約書をクラウド上で安全に保管でき、アクセス権限の設定によって、不正な閲覧や改ざんの防止が可能です。

例えば、電子署名やタイムスタンプを利用すれば、契約書の真正性を保証し、誰がいつ契約書にアクセスしたかのログも記録されます。

さらに、クラウド上での契約書の一元管理によって、必要な時に迅速に契約書を検索・閲覧でき、監査対応がスムーズに行えます。

企業の内部統制を強化して不正を防止し、法令遵守の徹底によって契約の信頼性を高められるでしょう。

建設業で電子契約を導入する際の注意点

建設業で電子契約を導入する際の注意点

電子契約の導入は多くのメリットをもたらしますが、適切に運用するためにはいくつかの注意点があります。

建設業で電子契約を導入する際の注意点
  • 電子契約システムの選定ポイント
  • 社内ルールの整備
  • 取引先との合意

電子契約システムの選定ポイント

電子契約システムを選ぶ際には、以下の点がポイントとなります。

  • システムの安全性
  • システムの使いやすさ
  • 他システムとの連携

システムの安全性

電子契約には、高いセキュリティが求められるため、電子署名法に準拠したシステムの選択が推奨されます。

電子署名法に基づく電子署名は、契約書の改ざんを防止し、契約者が本人である状態を証明します。

システムの使いやすさ

建設業では多くの契約が交わされるため、簡単に操作できるシステムが必要です。

クラウド型電子契約サービスは、直感的な操作が可能で、多くの企業に採用されています。

他システムとの連携

電子契約システムは、他の業務システムとの連携も検討すべきです。

既存の会計システムや文書管理システムとスムーズに連携できる電子契約システムの選択によって、業務全体の効率化が図れます。

おすすめの契約書管理システムは、こちらで紹介しています。

社内ルールの整備

電子契約を導入する際には、電子契約の利用範囲を明確にするなどの社内ルールの整備も不可欠です。

例えば、以下の内容についてあらかじめ取り決めます。

  • どの種類の契約書を電子契約で処理するのか
  • どの部署がどのような手続きを行うのか
  • 承認フローの順番はどうするのか

さらに、社内教育も重要です。電子契約の仕組みや操作方法、法的要件について社員に理解してもらうための研修も必要でしょう。

取引先との合意

電子契約を導入するためには、取引先に電子契約のメリットを説明し、合意を得なければなりません。

例えば、印紙税の削減や業務効率化、セキュリティの向上といった具体的な利点を説明します。

取引先から合意が得られれば「クラウドサイン利用に関する合意書」などの形式で、具体的な利用条件や手続きを文書化します。

取引先によっては、電子契約に対して懸念を持つかもしれませんが、セキュリティ対策や法的有効性について丁寧に説明し、不安の解消に努めましょう。

まとめ

まとめ

建設業界における電子契約の導入は、法改正や技術の進展に伴い、急速に普及しています。

多くの建設業者が電子契約を導入し、そのメリットを享受しています。

最新の法制度や技術動向を常に把握し、適切な対応によって、より効率的で安全な契約管理が実現できるはずです。

電子契約を効果的に活用し、業務効率化を進め建設業界全体の生産性向上に寄与していきましょう。

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この記事の監修者

せいた

保有資格:建設業経理士1級、国際会計修士(専門職)、日商簿記2級、宅地建物取引士

大学卒業後、スーパーゼネコンに13年間勤務。
経理や財務に8年間、民間建築工事の現場管理に5年間携わる。施工実績は20件に及ぶ。