建築積算士とは、建築工事における積算業務の専門家です。
積算業務に携わっている方は、1度は「建築積算士」という資格を耳にしたことがあるでしょう。
本記事では、建築積算士の仕事内容や取得するメリット、試験の難易度・受験料、建築積算士の年収について解説します。
目次
建築積算士とは?
建築積算士とは、公益社団法人 日本建築積算協会の主催する試験に合格すると得られる資格です。
試験の合格には下記の知識が求められます。
- 生産プロセス
- 工事発注スキーム
- 設計図書構成
- 工事費構成
- 積算業務内容
- 数量積算基準
- 標準内訳書式
- 主要な市場価格
- データ分析と積算チェック
- 施工技術概要
- LCC・VE概要
- 環境配慮概要
建築積算士の業務は、図面に基づいて材料の数量や工事費の適正価格の算出です。
建築工事は高額になりがちで、数千万から数億円の工事は珍しくありません。
そのため専門家による正しい積算価格を算出できないと、適正な利益を残すことは難しいです。
また相場よりも高い積算価格を算出すると、そもそも工事が受注できず売上の確保すらできません。
建築積算士と似た資格に「建築積算士補」があります。
建築積算士補とは、2009年に創設され建築積算士の前段階の資格です。
建築積算士補は、建築のコストに関して基礎的な知識を学んだ学生を送り出すことを使命としています。
資格の取得には、認定校で「建築積算講座」を受講し単位を取得後、資格試験に合格して登録をおこなう必要があります。
建築積算士の仕事内容
建築積算士の仕事内容は、先述したように設計図書に基づいて建築物に必要な材料の数量、工事費の算出です。
詳しくは民間工事と公共工事の2つにわけて解説します。
民間工事
民間工事では、用意された設計図書に基づいて、積算価格の算出をおこないます。
民間工事であっても、入札して工事会社を決定するのが一般的です。
ただし公共工事のように厳格な決まりはなく、施主(発注者)が自由にルールを設定できます。
そのため、民間工事では金額だけでなく以下の要素も有札結果に影響を与えます。
- これまでの受注実績
- 経営者同士の仲
また設計業務も併せて受注する場合は、コスト管理業務を担うケースもあります。
コスト管理業務は、予算の範囲内で施主の希望をどのように叶えるか検討することです。
公共工事
公共工事では、国や地方自治体の積算基準に基づいて、入札のための積算価格の算出をおこないます。
公共工事は税金を使っておこなわれるため、公正・公平に工事会社が選ばれなければなりません。
そのため緊急時や少額工事を除いて、公共工事の工事会社は競争入札で選ばれます。
競争入札では工事に参加資格のある会社がそれぞれ価格を提示して、最も安い価格を提示した会社が工事を落札できる仕組みです。
競争入札では、適切な積算価格を算出できないと「受注ができない」「提示価格が安すぎて利益が残らない」という事態になりかねません。
建築積算士は、発注機関の積算基準を読み込んで、積算業務をおこなわなければなりません。
建築積算士のメリット
建築積算士を取得するメリットは以下の4つです。
建築積算士の取得には、試験に合格しなければならず、かつ費用もかかります。
しかし上記に見合ったメリットがあるため、積算業務に携わっている方は建築積算士の取得を目指してください。
積算業務の専門知識の証明
建築積算士の取得で、積算業務に対する客観的知識の証明がおこなえます。
施主(発注者)は建築業界の専門家ばかりではありません。
そのため資格を保有していれば、年齢が若い方であっても建築の専門家として信頼を得やすいです。
施主から信頼を得られると、意見が通りやすくなり仕事が進みやすくなります。
資格手当
建築積算士を取得すると、会社によっては資格手当が支給されます。
月5,000円支給されると年間では60,000円の収入アップです。
また月10,000円支給されると、年間で120,000円の収入アップにつながります。
すぐに収入アップを目指したい方は、会社の規定を確認の上で建築積算士の取得を目指してください。
転職で評価されやすい
建築積算士の取得によって、転職市場で評価されやすい人材になります。
建築積算士は、公共工事の発注元によっては、加点の対象となります。
例えば国土交通省の「測量・建設コンサルタント等業務競争参加資格審査」では、建築積算士は2点の加点対象です。
また沖縄県では、主観項目(技術者)で2点の加点評価が受けられます。
そのため、建築積算士を保有している方は転職市場で評価されやすいです。
また施工管理から内勤の仕事へキャリアチェンジしたい方にもおすすめの資格です。
施工管理はときに「やめとけ」と言われるほど、大変な仕事のため転職や部署異動を考えている方もいるでしょう。
建築積算士を取得すれば、積算業務に対して一定の知識があると証明できるため、積算職や積算部(課)への転職・部署異動が叶いやすくなります。
建築コスト管理士のステップアップにつながる
建築積算士は、建築コスト管理士のステップアップにつながります。
建築コスト管理士とは、工事の初期段階からコストマネジメントをおこなえる建築コストに関する専門家です。
建築コスト管理士は、積算業務より幅広い業務において求められます。
建築コスト管理士は建築積算士の上位資格です。
積算業務のスペシャリストを目指したい方は、建築積算士を取得してから建築コスト管理士を目指してください。
建築積算士の難易度・受験料
先述したように建築積算管理士の取得のためには、試験に合格しなければなりません。
試験の合格率はおよそ6割です。
簡単に合格できる試験ではありませんが、勉強時間を確保して勉強すれば合格できる試験といえるでしょう。
また2023年度の受験料は27,500円(消費税込み)です。
ただし建築積算士補と学生会員の受験料は、半額の13,750円です。
【参考】公益社団法人 日本建築積算協会認定 2024年度建築積算士試験
建築積算士の年収
建築積算士の年収は、大手求人サイトを確認すると400万円〜900万円のレンジが一般的でした。
建築積算士の年収は、会社の規模・残業時間などによって大きく異なるため、詳しく知りたい方はご自身の希望の年収や条件に合わせて、求人情報を確認することをおすすめします。
まとめ
本記事では、建築積算士の仕事内容や取得するメリット、試験の難易度・受験料、建築積算士の年収について解説しました。
建築積算士は、積算業務をおこなうならば取得したい資格です。
建築積算士を取得するメリットは下記の4つです。
- 積算業務の専門知識の証明
- 資格手当
- 転職で評価されやすい
- 建築コスト管理士のステップアップにつながる
建築積算士の試験の合格率はおよそ6割のため、勉強時間を確保しなければ合格が難しい試験です。
建築業界は、長時間労働が問題となっており「勉強時間の確保が難しい」と悩む方もいるでしょう。
勉強時間の確保には、工務店向けの業務効率化システムを導入して、生産性を向上させ労働時間を短縮する方法がおすすめです。
しかし「自分では自社に合うシステムを選べない」と考える方もいるでしょう。
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