耐震基準適合証明書は、住宅ローン控除の適用要件のひとつでした。
しかし、令和4年の改正で新築物件は住宅ローン控除に耐震基準適合証明書が不要となっています。
工務店側は、主に中古物件のリフォームや改修工事の相談で、耐震基準適合証明書の依頼を受けることがあるでしょう。
本記事では、耐震基準適合証明書と住宅ローン控除の関連性、証明書発行で受けられる控除や軽減措置、申請方法について解説します。
目次
新築物件の住宅ローン控除に「耐震基準適合証明書」は不要
新築物件の住宅ローン控除に「耐震基準適合証明書」は原則不要です。
以前は耐震基準適合証明書が住宅ローン控除の適用要件に指定されていました。
しかし、令和4年の法改正によって、ほぼ不要となっています。
ここからは令和3年までの控除の内容と制度改訂について、また耐震基準適合証明書を発行するメリットを解説します。
令和3年までの「耐震基準適合証明書」による控除
令和3年までは、以下の2つの条件に当てはまらない住宅については、住宅ローン控除に「耐震基準適合証明書」が必要でした。
- 築20年以内の木造住宅(非耐火建築物)
- 築25年以内のマンション
上記の条件対象外の物件は、耐震基準適合証明書がないと耐震性があると認められませんでした。
条件に当てはまる物件は、耐震基準適合証明書がなくとも税金控除の対象です。
令和4年から「耐震基準適合証明書」がほぼ不要に制度改訂
令和4年以降から、住宅ローン控除の適用要件から、”耐震性を有する書類の提出”という項目が除外されました。
耐震基準は昭和57年に改正されており、それ以降に建築された住宅を購入する人は、耐震基準適合証明書の発行や取得、提出が不要とされています。
そのため、今後新築物件を購入する施主は、住宅ローン控除に耐震基準適合証明書を発行する必要がありません。
万が一施主から質問があれば答えられるよう、頭に入れておきましょう。
ただし、中古物件を購入した際のリフォームで、耐震基準適合証明書の発行を依頼されることがあります。
中古物件の場合は耐震基準適合証明書の取得で不動産価値が上がる可能性があるため、希望される施主も多いです。
不動産売却時の耐震証明
耐震基準適合証明書は、原則昭和57年以前に建てられた物件に対して必要となります。
昭和57年以前の物件は、耐震基準が改正前の基準で建築されており、現在の基準に適合しないためです。
昭和57年以前の物件を購入した場合は、耐震基準適合証明書の発行前に、耐震補強工事が必要です。
補強工事をしたうえで、証明書を取得すれば住宅ローン控除の対象となります。
耐震補強工事は義務ではありませんが、住宅ローン控除を受けるために必要です。
ローン控除だけで補強工事費用が賄えるわけではありません。
しかし、以下のような控除・軽減措置の対象になるため、工務店側からメリットとして提示すると良いでしょう。
- 住宅ローン控除
- 住宅取得資金贈与の特例
- マイホーム取得資金の相続時精算課税の特例
- 登録免許税軽減の特例
- 不動産取得税軽減措置
- 固定資産税軽減措置
- 地震保険割引
耐震基準適合証明書の取得の概要
耐震基準適合証明書の申請は、工務店で代行するケースが多いです。
申請先や発行の流れを、工務店側も頭に入れておきましょう。
耐震基準適合証明書を申請する場合の申請先、必要書類を把握しておき、スムーズな申請ができるようにしておいてください。
耐震基準適合証明書の申請先一覧
耐震基準適合証明書の申請先は、以下のとおりです。
- 指定確認検査機関
- 登録住宅性能評価機関
- 建築士事務所に所属する建築士
- 住宅瑕疵担保責任保険法人
証明書は誰でも提出できるわけではなく、建築士や検査機関など、認められた申請先を通さなければなりません。
自社で取引のある建築士がいる場合は、その建築士へ依頼するケースが多いでしょう。
買主・売主双方が発行可能
耐震基準適合証明書は、買主・売主どちらも発行できます。
買主が物件を売却する際に、付加価値をつけるために発行するケースも多いです。
また、物件の取得者が住宅ローン控除や取得税の軽減措置のために発行することもあります。
新築住宅の場合は証明書発行希望はほぼありませんが、中古物件のリフォームや補強工事を請け負った際に、買主または売主から申請を依頼されるケースが多いです。
証明書取得前に用意する書類
耐震基準適合証明書を取得する際は、以下の書類を用意しましょう。
①計算明細書
②住民票
③残高証明書
④登記事項証明書、売買契約書等(家屋の取得年月日、家屋の取得対価の額、家屋の床面積が50㎡以上で
あることを明らかにする書類)
⑤給与等の源泉徴収票※ ※給与所得者の場合
⑥耐震改修工事の請負契約書
⑦以下のいずれかの書類
ⅰ.建築物の耐震改修の計画の認定申請書
ⅱ.耐震基準適合証明申請書(家屋の引渡しまでに申請が困難な場合は、仮申請書)
ⅲ.建設住宅性能評価申請書(耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)についての評価に限る。)
(家屋の引渡しまでに申請が困難な場合は、仮申請書)
ⅳ.既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約の申込書
⑧以下のいずれかの書類
・(⑦でⅰ又はⅱを提出する場合)耐震基準適合証明書
・(⑦でⅲを提出する場合)建設住宅性能評価書(耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)に係る評
価が等級1、等級2又は等級3であるものに限る。)
・(⑦でⅳを提出する場合)既存住宅売買瑕疵保険付保証明書
適用する特例は4種類あり、特例に応じて必要書類が異なるため、必要書類を事前に確認しておきましょう。
上記書類の発行に時間がかかるケースもあるため、依頼を受けた時点で準備しておくことをおすすめします。
耐震基準適合証明書を取得する流れ
次に、耐震基準適合証明書を取得するまでの流れを解説します。
耐震基準適合証明書は、原則所有権移転前に申請・発行します。
例外として、所有権移転後に証明書と取得する場合と双方の流れを把握しておきましょう。
所有権移転前の場合
一般的な、所有権移転前に耐震基準適合証明書を発行する場合の流れを解説します。
主に耐震検査の許可を申請
まず物件の売主に耐震検査の許可を得る必要があります。所有権が移転していない以上、他人の物件で勝手に検査はできません。
売主に合意をとったうえで、耐震検査の申請をおこないます。
建築士に依頼文書を送付
売主の合意が得られたら、建築士に依頼文書を送付します。
費用や問題について打診し、依頼を受けた建築士と相談したうえで、検査が実施される流れです。
耐震診断の実施
売買対象の物件で耐震診断を実施します。
耐震基準を満たしている場合は、次の証明書申請の手順となりますが、基準以下の場合は補強工事が必要です。
建築士が耐震基準適合基準証明書を発行
耐震基準を満たしている場合は、建築士が証明書を発行します。耐震基準を満たしていない場合は、改修工事が必要です。
工事は所有権移転後におこなうため、所有権移転後の流れを参照してください。
所有権移転後改修工事を実施する場合
耐震基準を満たしていない場合、または売主から耐震検査の合意が得られない場合は、所有権移転後に仮申請をおこなう必要があります。
所有権移転後に申請書を発行する際は、以下の流れです。
仮申請をおこなう点が所有権移転前の申請と異なるため、頭に入れておきましょう。
耐震基準適合証明書仮申請
所有権移転前に耐震基準適合証明書の仮申請を済ませる必要があります。
所有権移転後に、検査はできません。必ず仮申請をおこなっておきましょう。
所有権移転登記
売買契約が成立したら、所有権移転登記をおこないます。
改修工事の実施
所有権移転登記が終わったあとに、改修工事の実施をしましょう。
耐震基準を満たしていない住宅の場合は、改修工事が終わらない限り、適合証明書の発行はできません。
建築士に依頼文書を送付
修工事後に建築士に依頼文書を送付し、費用や諸問題などについて打診します。
耐震診断の実施
耐震診断を実施し、耐震基準に適合していると認められれば、証明書発行が可能です。
耐震基準適合証明書の発行
検査結果の基準を確認した上で、耐震基準適合証明書を発行します。
原則耐震基準適合証明書の発行は、所有権移転前に申請しなければなりません。
万が一所有権移転後に申請を出したいと言われても、契約前にさかのぼって申請はできないため、工務店側も時系列を把握しておく必要があります。
まとめ
住宅ローン控除には、原則耐震基準適合証明書は必要ありません。
ただし、昭和57年以前に建造された中古物件の場合は、上記証明書が必要なケースもあります。
工務店側も、耐震基準や証明書の発行の流れについて把握しておく必要があるでしょう。
しかし、人員が少ない中小規模の工務店では、皆が耐震基準の勉強をしたり、発行の手順を把握することは難しいかもしれません。
そのような時は、現状の業務時間を短縮し、作業時間を確保する必要があります。
「どうやったら現状の業務を効率化できるかわからない」という方もいるでしょう。
本記事でおすすめする業務効率化の方法は、工務店向けの業務効率化システムの導入です。
建築現場博士がおすすめする工務店・建築業界の業務効率化ソフトはAnyONEです。
導入実績2,700社超の業界No.1基幹システムで、国交省「第一回 長期優良住宅先導的モデル事業」に採択されています。
エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。