中小企業が生産性を向上させるときには、設備投資として「ものづくり補助金」を利用できます。
ものづくり補助金を利用すれば、新しい設備を導入できるため多くの仕事を受注可能です。
しかし、建設業の経営者は「ものづくり補助金を申請できるのかわからない」という悩みもあるでしょう。
当記事では、2024年度版建設業におけるものづくり補助金の活用方法や採択事例、注意点などを解説します。
ものづくり補助金に採択されるコツについてもご紹介するため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
建設業でものづくり補助金は申請可能
結論からいうと、建設業でものづくり補助金は申請可能です。
ものづくり補助金の申請には審査があり、通過した企業を採択結果として公表しています。
採択結果はものづくり補助金総合サイトからチェックでき、令和6年5月20日時点では18次まで申請されています。
建設業において、第11次〜第15次までの採択率は54.9%と製造業・学術研究専門サービス業に次いで高いです。
それではものづくり補助金の事業目的や申請枠・金額について、詳しく説明します。
ものづくり補助金の事業目的
ものづくり補助金の事業目的は、中小企業が将来的な制度変更へ対応するために生産性を向上させる設備投資を支援することです。
例えば、インボイス制度に対応するための電子契約書サービスや電子保存システムの導入といったもことも設備投資に該当します。
建設業の場合、生産性を向上させるための建設機械や建材製造などを申請できます。
申請は必ずしも通過するわけではありませんが、申請条件を満たすことで採択率を向上できるようになるでしょう。
ものづくり補助金の申請枠・金額
ものづくり補助金には「省力化(オーダーメイド)枠」、「製品・サービス高付加価値枠」のうち通常類型と成長分野進出類型(DX・GX)、「グローバル枠」などの種類があります。
枠の種類によって受け取れる補助金額は異なり、実施事業の要件も変わります。
一般的な通常枠の場合、受け取れる金額は100万円〜1,250万円です。
「製品・サービス高付加価値枠」の通常類型の詳細については、下記の表を参考にご覧ください。
通常類型の詳細 | 詳細 |
---|---|
概要 | 革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資などを支援 |
補助金額(従業員数別) | 5人以下:100万~750万円 6~20人:100万~1,000万円 21人以上:100万~1,250万円 |
補助率 | 1/2小規模企業者・小規模事業者・再生事業者・新型コロナ回復加速化特例は2/3 |
建設業におけるものづくり補助金の対象経費
建設業では、システム構築費や専門家経費などをものづくり補助金の対象経費にできます。
システム構築費には、建設に利用するソフトウェア・システムの購入・レンタルといった経費が該当します。
例えば、施工管理の情報をまとめるソフトウェアやリモートワークに対応したITツールなどは経費として申請できる可能性が高いです。
システム構築費の申請条件としては、1つ以上かつ単価50万円(税抜)以上の設備投資が必要となっています。
次に専門家経費は、建設業務を遂行させるために依頼した専門家へ支払う経費です。
例えば、独自の建設開発を行うための弁理士の依頼料やEDI導入のコンサルティング費用などが該当します。
専門家経費は1日5万円が上限となっており、専門家のノウハウが必要になる場合は補助金として申請できます。
建設業でものづくり補助金を申請するときは、どんなものが対象経費になるのかを調査しておくようにしましょう。
ものづくり補助金の申請方法
こちらでは、ものづくり補助金の申請方法についてご紹介します。
まずは申請書類を準備するために、事業計画書を作成します。
ものづくり補助金の事業計画書はA4サイズで10枚以内となっているため、7〜8割以上の作成が必要です。
公募要領については、ものづくり補助金総合サイトの公募要領ページを参考にご覧ください。
次にインターネットを利用した電子申請から、申請手続きをおこないます。
事業者は「GビズIDプライムアカウント」の取得が求められているため、ものづくり補助金総合サイトの電信申請マニュアルをチェックしてください。
通常枠の場合、補助事業終了後の実績報告には期限があるため計画的に進める必要があります。
補助事業の完了後、実施報告を事務局に提出して承認されると補助金を受け取れる流れです。
実績報告には数回の修正作業が必要になるなる場合があるため、事務局とやりとりをしながら完了へと進む流れとなっています。
建設業におけるものづくり補助金の採択事例
建設業では、これまでものづくり補助金の採択事例がいくつも存在します。
こちらでは、建設業におけるものづくり補助金の採択事例についてご紹介します。
同じような支援を求めている事業者は、ぜひ参考にご覧ください。
i-Constructionの導入
i-Constractionとは、建設プロセス全体を3次元データによって連携させるものです。
ドローンやセンサーを活用することで、三次元測量や三次元点検データを可視化する取り組みとなっています。
企業によっては3D建設機械を導入し、正確な位置情報を取得できる油圧ショベルを取り入れて図面通りに作業を進められているかチェックできるようになりました。
i-Constructionの導入はシステム構築費に該当するため、ものづくり補助金の対象経費として申請できます。
建設業務の生産性向上や人員のコスト削減、工程の短縮といった効果を得ることが可能です。
金属製品の品質改善
建設資材のなかには鉄筋やネジといった金属製品があり、品質改善のためにものづくり補助金を採択した事例もあります。
例えば精密加工や製造環境の分野において、特殊ネジ加工製品の受注拡大を目指した旋盤工程の改善として採択されています。
ほかにもネジの修正を行うための設備がない企業は、CNC普通旋盤を導入することで経常利益を増やすための事業計画を策定してものづくり補助金に採択した事例もあります。
生産工程の見直しや品質向上として、金属製品製造業で採択されていました。
高性能舗装工事システムの導入
高速道路や空港の滑走路といった舗装工事をおこなっている企業は、建設機械の精度や人員不足などの課題を解決するためにものづくり補助金に採択された例があります。
ものづくり補助金によって「アスファルトフィニッシャー」という建機を導入し、高精度な施工に成功しています。
アスファルトを効率良く敷き詰められるようになり、作業効率も大幅に向上しました。
橋型クレーンの導入
コンクリートを取り扱う企業では、大型コンクリート工場製品の製造プロセスを強化するためにものづくり補助金を採択している事例があります。
ものづくり補助金によって橋型クレーンを導入し、プレキャスト工法による建設を実現しました。
大型コンクリートの生産体制が整理されたことから、大型製品の新製品開発依頼に対応できるようになっています。
建設業がものづくり補助金を活用するときの注意点
建設業がものづくり補助金を活用するときは、以下のような点に注意してください。
電子申請が必要である
ものづくり補助金は、ものづくり補助事業公式ホームページから電子申請が必要です。
申請手続きだけでなく、交付申請や変更申請、実績報告なども電子申請が必要となっています。
紙の書類はプリンターを使用してスキャンし、電子化する必要があります。
電子申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要になるため、GビズIDサイトの手順に従いながらログインしてください。
GビズIDプライムアカウントは無料で作成できるため、ものづくり補助金の電信申請を行うためにも手続きを済ませておきましょう。
補助事業の実施場所に気をつける
建設業は補助事業が移動することがあるため、ものづくり補助金を申請するときは補助事業の実施場所に気をつけましょう。
ものづくり補助金は採択後に補助事業を変更できないため、実施場所を決めておく必要があります。
例えば補助事業の実施場所を東京で申請すると、ほかの県では補助事業を実施できません。
もしほかの県で補助事業を行うと、採択が取り消しになる可能性が高いです。
ものづくり補助金の申請内容は、法人名やメールアドレスを除いて変更が難しいです。
そのためものづくり補助金を申請するときは補助事業の実施場所に十分注意するようにしましょう。
台数増加に利用できない
ものづくり補助金は、機械の台数増加として利用することはできません。
建設用機械を経費とする場合、導入した機械を使用して生産性向上やコスト削減といった成果が求められます。
機械装置等を取得しなければならない必要性を事業計画書としてまとめ、ものづくり補助金の必要性をアピールすることが大切です。
事業計画について相談が必要な場合、経営革新等支援機関(認定支援機関)に依頼するようにしましょう。
受給後にも報告書の提出義務がある
ものづくり補助金は、受給後にも事業化状況報告の提出義務があります。
補助事業終了後5年間で毎年報告作業をしなければなりません。
事業化状況報告から、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準に満たしているか確認されます。
受給した企業が未達の場合、補助金の返還が求められるため注意が必要です。
詳しくはものづくり補助事業公式ホームページの事業化状況・知的財産権等報告ページを参考にご覧ください。
建設業者がものづくり補助金に採択される3つのコツ
建設業者がものづくり補助金に採択されるには、以下のような3つのコツがあります。
具体的な数字を示す
ものづくり補助金の補助事業に取り組むときは、課題や成果といった具体的な数字を示すようにしましょう。
補助金の財源は税金にあるため、数字から具体的根拠を示せなければ支給が難しくなります。
課題や成果の数字を示すには、社内外からデータ収集・分析をしながら事業計画書に反映させる必要があります。
社外のデータについては、行政や調査機関が分析した1次データを活用しましょう。
専門家のサポートを受ける
ものづくり補助金の採択率を向上させるには、専門家のサポートを受けるようにしましょう。
専門家へサポートを依頼することで、独自のノウハウから補助金を申請するための方法をアドバイスしてもらえます。
最新の制度や手続きに関する情報も提供してもらえるため、スムーズに申請作業を済ませられます。
ただし、インターネットには悪質な業者も少なからず存在するため、相談する企業は入念な調査が必要です。
専門家の公式ページから採択実績をチェックし、信頼性が高い相手からサポートを受けるようにしましょう。
加点項目を満たしておく
加点項目とは、補助金の申請に対して審査の加点を受けられる要件を指します。
ものづくり補助金では、以下のような分類で加点項目が設定されています。
- 成長性加点:「経営革新計画」の承認を取得している事業者
- 政策加点:創業・第二創業後5年以内の事業者、パートナーシップ構築宣言を行なっている事業者
- 災害等加点:「事業継続力強化計画」の認定を取得している事業者
- 賃上げ加点:事務局に誓約書を提出している事業者
- 女性活躍等の推進の取り組み加点:えるぼし加点、くるみん加点等
審査には減点項目も存在しますが、過去に同一または類似の補助金交付決定を受けた方以外は深く理解する必要はありません。
まとめ
今回は、建設業におけるものづくり補助金の活用方法や採択事例、注意点、採択されるコツなどを詳しく解説しました。
ものづくり補助金は幅広い業界で活用でき、建設業でも採択することが可能です。
建設業では、システム構築費や専門家経費などをものづくり補助金の対象経費にできます。
申請条件を満たしているなら、ものづくり補助金の申請方法をもとに手続きを行うようにしましょう。
ぜひ当記事でご紹介した内容をもとに、ものづくり補助金を建設業に活用してください。
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