「ウッドショック」が住宅業界を震撼させています。
日本においては昨年2020年の後半頃からその影響がささやかれ始めたこの現象ですが、「一体どういったものでどのような対策ができるのか」と気になっている方もいるでしょう。
今回はそのようなウッドショックについて、下記の3点を中心に、ウッドショックが起こった背景や今後の対策にも触れながらわかりやすく解説します。
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目次
ウッドショックとは
ウッドショックとは、木材調達が困難になり木材価格が急騰している現象を指します。
アメリカでは2020年の夏頃から始まり、日本においては今年2021年の3月頃から木材価格への影響が顕著になりました。
住宅建材など多くの木材を輸入に頼っている日本への影響は大きく、工務店やハウスメーカーを中心にが打撃を受けているのが現状です。
まずはこの現象を理解するために、ウッドショックについて以下のポイントを把握しておきましょう。
木材価格が約1.5倍に
ウッドショックによる木材価格への影響ですが、前年2020年と比べて国内では約1.5倍、アメリカではなんと約5倍の影響が出ています。
日本国内において価格上昇の影響が見られ始めたことは2021年に入ってからですが、短期間でも急速な価格の高騰を見せています。
また輸入材価格の急騰の影響を受けて国産材への需要が高まった結果、国産材の価格にも同様に約1.5倍の影響が出ています。
今回のウッドショックは3度目
このように大きな影響を及ぼしているウッドショックですが、実は3度目のもので木材関係者からは「第3次ウッドショック」と呼ばれています。
初のウッドショックは1990年代に起こりました。アメリカのフクロウ保護を目的とした森林伐採規制やカナダの過伐調整に加えてマレーシアの規制も重なり、木材供給が追い付かなくなったことが原因です。
米材や南洋材の価格が高騰した結果として、欧州材の輸入が本格的になったのもこの時期です。
第2次ウッドショックは2006年頃に起こりました。リーマンショック直前の好景気に際して、中国や新興国を中心に住宅建設ラッシュなど木材消費が急増したことで木材の供給不足が発生しました。
では、3度目となるウッドショックが起こった理由について、詳しく見ていきましょう。
ウッドショックの背景
第3次ウッドショックが起こった背景は以下の3つであると考えられています。
アメリカ、中国での木材需要の急増
今回のウッドショックの背景の1つとしては、アメリカや中国で木材の需要が急増していることがあげられます。
アメリカではコロナウイルスの影響による在宅勤務の増加と低金利政策により、郊外を中心とした戸建住宅の需要が急増しました。
2019年に北米で起こった木材業界のストライキによる生産数の減少も、戸建住宅需要の急増に対応しきれていない原因だと考えられています。
またコロナウイルスに早期対応した中国も、経済回復に伴い木材の需要が増加しています。
これらの事情から日本向けの輸入材の供給量が減少、価格も高騰している状況です。
コンテナ不足
世界的にコンテナが不足していることも今回のウッドショックの背景といえます。
コロナウイルスによるロックダウンなどにより荷動きが減少した結果、海運業界では一時コンテナを返却・売却する事態に陥り輸送用コンテナの数が激減しました。
経済回復が始まった後もコンテナの数は以前より減少している状況であり、その結果諸外国から木材を輸入できない状況が続いています。
木材自給率の低さ
木材を海外から仕入れることができない状況が続いていますが、日本がウッドショックの影響を大きく受けていることは木材自給率の低さに起因します。
林野庁の木材需給表(令和元年)によると製材用材の自給率は51.0%に留まり、約半分を輸入材に頼っている状態です。
米中の木材需要の増加や世界的なコンテナ不足など外的な要因が大きいウッドショックですが、日本の木材事情という内的な要因が日本への影響に拍車をかけたといえるでしょう。
日本林業の課題:国産材の増加が難しい原因
ウッドショックの背景のうち、日本の木材自給率の低さについては「国産材の増産で対応できるのでは?」と考えられた方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、今回のウッドショックに対応できるような国産材の増産は難しいです。
国土面積の約70%が森林でありOECD加盟国の中でも3番目に森林率が高い森林大国である日本ですが、以下3つの原因により国産材の増産は難しいといえます。
森林所有者と木材生産業者
まずネックとなることは、森林所有者と木材生産業者が別々であるという林業の仕組みです。
林業では一般的に、木材生産業者が森林所有者と契約をして伐採や搬出をおこないます。
日本に森林が多いことは先述の通りですが、その一方で木材生産業では業界の長期的な低迷により人手不足が続いています。
このような理由により、林業の仕組み自体が今回のような急な需要に対応することが難しいといえます。
日本林業は補助金頼み
日本林業が補助金頼みだということも増産が難しい原因の1つであるといえます。
豊富な森林を持つ日本ですが、日本の山の多くは傾斜が急であり木を伐り出す際にはかなりのコストがかかります。
そのため日本の林業では、補助金に頼りながら需要量に見合うだけの量を伐り出しています。
たとえ急な需要の増加があったとしても補助金なしで伐り出すことは難しい状況です。
減産体制と先行きの不透明さ
日本林業はもともと減産体制にあったということと、ウッドショックの先行きが不透明だということも、増産を妨げる理由といえます。
先述の通り需要量に見合った分だけの生産が基本であり、またウッドショック以前は国産材へのシフトも期待できる状況になかったため、日本林業はもともと減産体制にありました。
また今回のウッドショックによる国産材の価格高騰に関してもいつまで続くのか見通しが立っておらず、そのような状況下では生産して売り出すまでに時間のかかる木材の増産には中々踏み切れません。
減産体制を進めてきた日本林業が先行きの不透明な需要に対応できていない状況にあるといえます。
住宅業界への影響
対応も難しく影響も小さくないウッドショックですが、住宅業界へは価格と工期に影響が出ています。
住宅価格への影響
気になる住宅価格への影響ですが、実はそこまで大きなものになるとは考えられていません。
先述の通り住宅に必要な木材は輸入材が多く、梁や柱に使用される集成材や内装に使用される合板類の5割前後が輸入材です。
ただしそれらの価格への影響は限定的で、一般的な木造住宅では全体価格の中でウッドショックの対象となる木材が占める割合は約1割と言われています。
このため住宅価格への影響は約数十万円とそこまで大きいとは考えられません。
しかし、規模や予算によっては設計やデザイン、坪数などを変更する必要が出てくる可能性がある点には注意が必要です。
工期への影響
ウッドショックの住宅への影響としては、価格よりもむしろ工期への影響が深刻な問題であるといえるでしょう。
先述の通り米中を中心に世界中で木材を取り合う状況となっており、日本でも深刻な木材不足が発生しています。
特に年間の建設数の見通しが確定的でない中小規模の工務店などへの影響は大きく、契約後に必要数を発注するという流れでは追いつかないという状況が発生しています。
工期が遅れるだけでなく最悪建てられないという状況も起こりつつあり、ウッドショックの工期への影響は大きいといえます。
まとめ
今回はウッドショックについて、その背景や日本林業の課題に触れながら解説しました。
住宅業界への影響としては価格や工期に少なからず影響があり、施主とのトラブルになる可能性も十分に考えられます。
このようなトラブルへの回避策として、合意書を用意することで事前に契約後の価格変更や工期変更の可能性について説明する工務店も出てきています。
影響も大きく対応も難しいウッドショックですが、使用する木材の変更やデザイン変更の提案、また合意書の利用など、できる対応を積み重ねることが求められます。
1㎥辺り約5万2千円→約6万5千円【前年比約1.25倍】
1㎥辺り約5万円→約8万千円【前年比約1.62倍】