V2Hシステムは停電対策に有効な仕組みとして、注目されています。
電気自動車のバッテリーを蓄電池代わりに利用し、家庭への電力供給が可能です。
本記事では、V2Hを停電時に非常電源として活用した事例やライフラインの復旧目安、電気自動車で給電できる期間の目安を解説します。
また、電気自動車のみでまかなえない電力を太陽光発電システムで補うメリットも紹介します。
目次
V2Hは停電時の非常電源として活用可能
V2Hは停電時の非常電源として活用できます。
停電時にV2Hをどのように活用できるのか、事例を交えて解説します。
V2Hとは
V2HとはVehicle To Homeの略称で、電気自動車のバッテリーに蓄電した電力を家庭用に供給することです。
V2Hシステムに蓄電機能や発電機能はついていませんが、給電ステーションで蓄電した電力をV2H経由で変換し、家庭で使用できます。
万が一停電してしまった際にV2Hシステムがあれば、バッテリー内の電力を家庭用に使用して、最低限の家電が動かせる仕組みです。
電気自動車の蓄電池を活用
電気自動車に蓄電しているエネルギーと家庭用の電力は電流が異なります。
しかし、V2Hシステムを導入すれば電気自動車の電流を変換し、家庭へ給電可能です。
万が一自宅に太陽光発電の仕組みがなくても、電気自動車を蓄電池の代わりとして使えます。
千葉県の大停電をV2Hで乗り切った事例
実際に千葉県で起きた大停電をV2Hで乗り切った事例を紹介します。
【参考】日産リーフとV2Hで2日半の停電を乗り切った 千葉 西郡さま
2019年「令和元年台風15号 千葉県大規模停電」が発生し、2日半も電力供給されない状態が続きました。
24kWhの日産リーフを所有していたため、電力復旧の目処が立たないことを確認したうえで、V2Hシステムを導入してリーフから家庭への給電を開始。
24kWhのリーフを使用し、冷蔵庫や照明、エアコンや井戸のポンプを稼働させました。
すべての家電を同時に動かせない、家族でひとつの部屋に集まって照明を節約する必要はありましたが、それ以外はほぼ普通の生活が送れたようです。
また電力復旧の目処が立たないため、リーフの充電残量が2〜3割になった時点で適宜充電ステーションへ行き充電、自宅にもち帰って電力を使用しました。
千葉県の事例からわかることは、24kwhの大容量蓄電池があれば必要な家電は最低限稼働できることです。
また、電気自動車は移動性に優れているため、充電ステーションから家庭に電力をもち帰れる機動力も魅力といえます。
このように、実際にV2Hシステムを活用すれば数日間にわたる停電も乗り切れます。
災害時のライフラインの復旧目安
災害発生時のライフライン復旧には目安が定められています。
「東京都地域防災計画 (震災編)」によると、ライフライン復旧目安は以上のとおりです。
電力は1週間程度
災害による停電が発生した場合、電力の復旧目安は1週間程度といわれています。
復旧目安とは「この期間までに復旧させるべき目安」です。
大規模災害の場合は1週間電力が供給されない可能性もあるため、長期間にわたって自宅に電力を供給する仕組みが必要とされます。
しかし、ライフライン全体で見れば電力復旧が最も早いため、電力を使用して動き、給電にも利用できる電気自動車をもっておくことで停電に最大限備えられるでしょう。
ガスは2週間程度
ガスの復旧目安は2週間程度です。
2週間の間ガスが使えない場合、調理や湯沸かし器が利用できず、お風呂に入れない可能性もあるでしょう。
その場合にV2Hがあれば電力で稼働するホットプレートなどの調理器具を活用するなどし、調理をおこなえます。
水道は最大数か月
復旧目安が最も長いライフラインは水道です。水道は復旧までに最大数か月を要する可能性があります。
水道管は地下を走っており、万が一破損があった場合地面の中から破損箇所を特定し、修理する必要があるためです。
地震などの大規模災害だと一気に複数箇所が壊れる可能性があるため、すぐに水道を復旧させられません。
長期間にわたって水が供給されないリスクもあるため、日頃から生活用水をためておくなどの対策が必要です。
電気自動車のバッテリーで給電できる目安は最大2〜4日
V2Hを活用し、電気自動車のバッテリーで給電できる目安は最大で2〜4日間です。
電気自動車のバッテリー容量やV2Hシステムの種類によって、電気自動車から給電できる期間目安は異なります。
電気自動車のバッテリー容量
停電時に電気自動車に蓄電した電力のみで給電できる目安は、バッテリー容量によって異なります。
日産のWebサイト「日産:リーフ[LEAF]電気自動車(EV)|蓄電池として何日間?」によると、60kWhのバッテリーで約4日間の給電が可能と記載があります。
一般家庭での1日あたりの使用電力量を12kWh/日です。
電気自動車のバッテリー容量はメーカーや車種によって異なりますが、20〜60kWhとなるため、単純計算で1〜5日程度は電力供給できます。
電力の変換効率なども関係してくるため、実際の給電期間は単純計算通りにいかないケースがあります。
V2H機器が全負荷型か特定負荷型か
V2H機器には種類があり、全負荷型と特定負荷型のシステムがあります。
システムが全負荷型か特定負荷型かによっても、電力供給できる期間目安が異なります。
全負荷型とは、停電が起きても家中の電力を賄えるシステムです。
分電盤を丸ごとバックアップすることで、停電時も各部屋で電力を使用できます。
反面、電力を無駄使いしてしまうデメリットがあるため、電気自動車バッテリーの電力を無駄使いしてしまう可能性も。
特定負荷型とは特定の回路のみをバックアップする仕組みで、使用電力は限られますが、電力の無駄使いを防げます。
電力の復旧目安は1週間程度で、電気自動車のバッテリーのみでは2〜4日程度しか電力供給できません。
V2H機器を設置する際は、バッテリー容量とV2H機器の種類を検討して、適切な自動車やV2H機器を選ぶように顧客に伝えましょう。
V2Hと太陽光発電システムの併用で停電時も安心
V2Hを使用して電気自動車から給電しても、2〜4日程度の給電が限界です。
近場で電力復旧した地域があれば、充電スポットへ行って電力を家に運べますが、大規模停電の場合は電気自動車への充電ができない場合もあります。
上記の問題を解決するためには、V2Hと太陽光発電システムの併用がおすすめです。
なぜV2Hシステムと太陽光発電システムを併用すべきか、その理由を解説できるようにしておきましょう。
電気自動車で不足する電力を補充
V2Hと太陽光発電を併用すれば、電気自動車で不足する電力を補充できます。
電気自動車はメーカーや車種によっては、バッテリー容量が16kWh程度で1日程度しか給電できません。
仮にバッテリー容量の大きな自動車を利用していたとしても、災害発生時にフル充電されていなければ十分に給電できないでしょう。
電気自動車で給電しきれない電力を太陽光発電で補い、仮に電力復旧が遅くなったときも停電に対応できます。
太陽光発電で発電した電力をEVに蓄電
電気自動車のバッテリーを蓄電池代わりに利用できます。
日中にソーラーパネルで発電した電力を電気自動車に蓄電し、夜間は電気自動車のバッテリーから給電して家電を動かせます。
家庭用蓄電池容量は平均10kWhですが、電気自動車のバッテリー容量は20kWh以上あるものが多く、多くの電力を蓄えられます。
そのため蓄電池がない家庭でも電気自動車を蓄電池として利用可能です。
太陽光発電システムと蓄電池を両方買う必要がないため、予算面でも依頼主のコストを下げられる点もメリットです。
V2Hと太陽光発電システムの併用はメリットも多いですが、コストがかかります。
補助金の活用や初期費用無料のリースも利用できるため、費用が気になっている施主に対して補助金やリース型太陽光発電システムも提案してみましょう。
V2H導入費用相場や最新の補助金情報については、以下の記事で解説しています。
まとめ
V2Hシステムは停電時に有用な電力供給の仕組みです。
電気自動車があれば家庭へ給電でき、実際に千葉県で発生した台風による大規模停電時にも日産リーフを使用して家電を動かして乗り切った事例があります。
もちろん電気自動車のみでは、電力復旧目安である1週間を乗り切れません。
施主に対して、V2H機器と合わせて太陽光発電システムの導入をおすすめすると良いでしょう。
費用面を気にする施主には、リース型の太陽光発電システムを提案してみてください。
とはいえ、どの太陽光リース業者が適切か迷っている方もいるはずです。
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