屋根材選びは、住宅の印象を決めるだけでなく、住宅の劣化スピードや雨漏りのしやすさなども変わるため、慎重に行わなければなりません。
しかし「屋根材は種類が多すぎて施主様に自信を持って提案できない」と悩んでいる工務店も多いのではないでしょうか。
本記事では、屋根材の選びのポイントや種類、屋根の形状について解説します。
施主様へ自信を持って屋根材の提案をできるようになりたい方は、読んでみてください。
目次
屋根材の選び方
屋根材の種類は豊富で「どのような視点で、施主様にアドバイスをおこなったらよいか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
ここでは、屋根材を選びのポイントを4つ紹介します。
- 重さ
- デザイン
- 価格
- 耐用年数
重さ
屋根の重さは住宅の耐震性に大きく関わっており、重い屋根材よりも軽い屋根材の方が耐震性が高いです。
使用できる屋根材は住宅の構造計算によって決まり、計算結果によっては重い屋根材は使用できないかもしれません。
施主様に屋根材を提案をおこなう前に、構造計算上使用できる屋根材とできない屋根材は把握しておきましょう。
デザイン
使用できる屋根材を把握できたら、次は施主様に使用したい屋根材のデザインを選んでもらいましょう。
和風の住宅に合う屋根材と洋風に合う屋根材は異なります。
屋根材だけを見てデザインを決めるのではなく、住宅の雰囲気とマッチするデザインを施主様が選べるようにアドバイスしましょう。
価格
デザインが決まったら、価格を確認しましょう。
屋根材によっては、工事費を含めた価格が2倍以上違うこともあります。
価格が予算内に収まっているのかは確認が必要です。
耐用年数
耐用年数の確認を怠ると、後悔することになりかねません。
確認のポイントは、住宅の使用予定年数と屋根材の耐用年数です。
例えば、数十年以上住宅を使用する予定なのに、メンテナンスの頻度や費用の高い屋根材を選んでしまうと、ランニングコストが高くなってしまいます。
コストパフォーマンスを重視して屋根材を選択する場合は、住宅の使用予定期間と屋根材の耐用年数とのバランスが重要です。
工事費や製品代だけでなく、メンテナンス費用などのランニングコストも含めて施主様に提案できると良いでしょう。
屋根材の種類9選
屋根材には、主に下記の9種類があります。
- トタン
- ガルバリウム鋼板
- ジンカリウム鋼板
- 銅板
- スレート
- 粘土瓦
- セメント瓦
- 陸屋根
- アスファルトシングル
トタン
トタンとは、薄い鉄板を亜鉛でメッキ加工した素材です。
以前は主流の屋根材でしたが、近年は『ガルバニウム鋼板』の登場によって住宅へ採用されることは、少なくなりました。
- 工事費を含めた価格が安い
- 軽量のため耐震性が高い
- サビが発生しやすい
- 耐用年数が短い
- 遮音性が低い
- 断熱性が低い
工事費は1m²あたり5,000〜6,000円で、耐用年数は10〜20年です。
30年住む予定の住宅にトタンを採用すると、最高で3回も葺き替えが必要となるためランニングコストがかさんでしまいます。
価格が安いからと、安易にトタンを提案することは避けてください。
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、薄い鋼板にアルミニウムと亜鉛、シリコンでメッキを施した素材です。
トタンよりもサビづらく、軽量のためとても人気があります。
- 性能と価格のバランスが良い(コストパフォーマンスが良い)
- 金属製屋根材の中ではサビにくい
- 軽量のため耐震性が高い
- 防水性が高い
- 放火性が高い
- 複雑な形状の屋根にも対応できる
- メンテナンスを怠ると、サビが発生しやすい
- 傷やへこみが付きやすい
- 遮音性が低い
- 断熱性が低い
- 定期的な塗装が必要
工事費は1m²あたり6,000〜12,000円で、耐用年数は30年程度です。
ガルバリウム鋼板は、断熱材が一体型となった製品もあり、高性能な製品を採用すると工事費が1m²あたり10,000円を超えることもあります。
耐用年数は30年程度ですが、10年に1回は塗装にてメンテナンスが必要なことには注意しましょう。
ジンカリウム鋼板
ジンカリウム鋼板はガルバリウム鋼板と同様に、薄い鋼板にアルミニウムと亜鉛、シリコンでメッキを施した素材です。
アルミニウム・亜鉛・シリコンの割合にもほとんど違いはありませんが、日本の住宅業界は2つの屋根材は下記のように区別しています。
- 表面に石粒をコーティングを施した屋根材を『ジンカリウム鋼板』
- コーティングのない屋根材を『ガルバリウム鋼板』
メリット・デメリットは、以下の通りです。
- サビにくい
- 定期的な塗装が不要
- 遮音性・断熱性がガルバニウム鋼板よりも高い
- コーティングされた石粒が落ちる
- ガルバリウム鋼板よりも重い
- ガルバリウム鋼板よりも価格が高い
工事費は1²mあたり8,000〜15,000円で、耐用年数は40年程度です。
ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板よりも高性能な屋根材です。
しかし高性能になった分、価格も上がっています。
金属製の屋根材を希望する施主様に対しては、沿岸地域などサビが発生しやすい地域は『ジンカリウム鋼板』、一般的な地域は『ガルバリウム鋼板』で提案をおこなうなど、地域の状況によっても屋根材を提案できるようになりましょう。
銅板
銅板とは銅で作られた屋根材で、伝統的な社寺仏閣に用いられてきた屋根材です。
住宅に使用されることは少ない屋根材ですが、家づくりのプロとして選択肢の1つとして知っておきましょう。
- サビが発生しにくい
- あらゆる屋根材と比較しても耐用年数が最長
- 年数が経つと味が出る
- 塗装が不要
- 軽量のため耐震性が高い
- 工事費が高額
- 施工対応できる業者が少ない
工事費は1m²あたり20,000円以上で、耐用年数は60年以上です。
銅板は耐用年数が非常に長いため、50〜100年以上使用する建物への採用をおすすめします。
銅板は住宅の屋根材としてはあまり採用されませんが、こだわりを持った施主様への提案例の1つとして知っておいて損はありません。
スレート
スレートとは、セメントと繊維素材を薄い板に加工した屋根材です。
- 工事費を含めた価格が安い
- 色やデザインにバリエーションがある
- 対応している業者が多い
- 定期的なメンテナンスが必要
- 屋根の形状によっては雨漏りが発生しやすい
- 割れやすい
工事費は1m²あたり4,000〜8,000円で、耐用年数は20〜25年程度です。
スレートは数年おきにひびのチェックや補修が必要ですが、価格と性能のバランスが取れたコストパフォーマンスの良い屋根材です。
色やデザインが豊富で人気もありますが、施主さまに提案をおこなう際は、定期的なメンテナンスが必須であることは伝えましょう。
粘土瓦
粘土瓦は、粘土を瓦の形に成形して焼いて作られる屋根材です。
- 耐用年数が長い
- 塗装が必要ない
- 遮音性が高い
- 断熱性が高い
- 防火性が高い
- 防音性が高い
- 結露が発生しにくい
- 工事費を含めた価格が高い
- 重量があるため耐震性が低い
工事費は1m²あたり8,000〜12,000円で、耐用年数は50年以上です。
瓦屋根は価格よりも、高性能な屋根材を求める方やメンテナンスの手間や費用を重視する方に提案すると良いでしょう。
セメント瓦
セメント瓦は、セメントの砂を用いて作られた屋根材です。
スレートが登場する以前は、主流の屋根材でした。
- 瓦の中では、工事費を含めた価格が安い
- 瓦のデザインを安価に取り入れられる
- 遮音性・断熱性が高い
- 粘土瓦と比較すると耐用年数が短い
- 重いため耐震性が低い
- 塗装が必要
- 現在は生産しているメーカーが少ない
工事費は1m²あたり6,000〜8,000円で、耐用年数は30年程度です。
セメント瓦は現在あまり生産されていないため、セメント瓦に対するこだわりがなければ他の屋根材を使用することをおすすめします。
陸屋根
陸屋根は、屋根勾配のない屋根のことです。
- 屋根のスペースを有効活用できる
- メンテナンスが簡単
- 居室空間を広げられる
- 屋上防水方法によって、工事費が大きく変わる
- 雨漏りしやすい
- 2階が暑くなりやすい
工事費は1m²あたり8,400~13,000円で、耐用年数は12~20年程度です。
陸屋根は、屋上で家庭菜園などを楽しみたい施主様へ提案をおこなうと良いでしょう。
アスファルトシングル
アスファルトシングルとは、薄いシートに石を吹きつけた屋根材を指します。
- 軽量のため、耐震性が高い
- 複雑な屋根の形状にも対応できる
- 防水性が高い
- 防音性が高い
- 表面の石が落ちやすい
- 風で飛散しやすい
- 藻が生えやすい
- 施工できる業者が少ない
工事費は1m²あたり5,000〜7,000円で、耐用年数は20~30年程度です。
アスファルトシングルは、曲面などの複雑な屋根の形状にも対応できるため、デザインにこだわりを持つ施主様への提案をおすすめします。
屋根の形状
屋根材を選ぶ上で、屋根の形状も重要な要素です。
屋根の形状によっては、採用できない屋根材やメンテナンスのおこないやすさなどに違いがあります。
ここでは、主要な屋根の形状を下記の3つ解説します。
- 切妻屋根
- 寄棟屋根
- 片流れ屋根
切妻屋根
切妻屋根とは、シンプルな三角屋根のことです。
和風・洋風どちらのデザインにも合うため、広く普及しています。
- 施工性が良い
- 塗装などのメンテナンス手間が掛からない
- 太陽光発電設備を設置しやすい
- 棟(三角の頂点)が劣化しやすい
- 妻側(住宅の短手)
切妻屋根は万人におすすめできる形状です。
特に環境問題への意識が高い施主様へ提案をおこなってはいかがでしょうか。
最近では住宅に太陽光発電設置を義務化するとの話もあり、太陽光発電の需要は高まっています。
また、0円で太陽光発電設備を導入も可能です。
寄棟屋根
寄棟屋根とは、4枚の屋根面で構成された屋根形状のことを指します。
- 東西南北すべての外壁面を太陽光や雨から保護できる
- 斜線制限をクリアしやすい
- 4面あるため工事費が高くなる
- メンテナンス頻度が多くなる
寄棟屋根も、万人におすすめできる屋根形状です。
特に、「デザインにこだわりたい」「高価な外壁材を使用している」施主様への提案をおすすめします。
片流れ屋根
片流れ屋根とは、屋根勾配が1方向の屋根形状のことをいいます。
- 工事費が安価
- 住宅をモダンなデザインにできる
- ロフトを設けられる
- 太陽光発電設備を取り付けやすい
- 屋根・外壁が劣化しやすい
- ケラバ(屋根の端)から雨漏りが起こりやすい
片流れ屋根は、工事費を抑えつつデザインにこだわりたい施主様への提案をおすすめします。
まとめ
本記事では、屋根材の選び方や種類、屋根の形状について解説しました。
屋根材選びは、デザインだけでなくメンテナンスの頻度・手間、雨漏りの起きやすさなどデメリットも考慮しておこなうことをおすすめします。
施主様に満足いただける提案をおこなうためにも、本記事の内容を参考にして屋根材への知識を深めてください。
屋根材だけでなく、施主様から選ばれる提案をおこなうためには常に勉強は欠かせません。
しかし「忙しい業務の中で勉強時間を確保することは難しい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
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