建築において、木材は重要な材料のひとつ。
梁や柱といった住宅の中心部分や壁や床といったあらゆる箇所に使われています。
2010年に実施された国土交通行政による「今後の暮ら し 方・住まい方に対する関心度」についてのアンケートによると、全体の8割弱が木造住宅に住んでいる、あるいは興味・関心があります。
それほど木造住宅への関心は高く、木にこだわって住宅を建てる方が多くいることがわかるでしょう。
今記事では、国産材の特長やメリット・デメリットについて解説します。
目次
国産材の特長
国産材には、外国産材にはない2つの特長があります。
品質が高く、美しい仕上りの木材が多い
国産材は品質が高く、仕上りが美しいです。
外国産材と違い、森林の手入れが行き届いているために木目が細かく、耐久性が高いです。
そのため、木材の品質と仕上がりの美しさが求められる高級木造住宅で多く使用されています。
独特な香り
国産材で有名なのが杉やヒノキで、木材独特の香りがとても強いといった特長があります。
爽やかで清純な香りがする木材だったり、独特の芳ばしい香りがする木材だったりと、種類によって違いがあり、独特な香りが好きなユーザーも。
また、香りが強いため防蟻効果や防腐効果があります。
薬剤を使わないため、身体にもやさしい安全な建材といえるでしょう。
国産材の4つのメリット
国産材には、以下の4つのメリットがあります。
日本の風土に適した建材
国産材は、日本の風土に適しています。
湿度や虫にも強く、防腐処理や防蟻処理をする必要がありません。
薬剤の使用に抵抗感があり、より長く、安心した暮らしをしていきたい施主様にぴったりです。
耐久性がある
国産材は、とても耐久性がある建材です。
平成13年に森林・林業学習館により「4種類の木材(国産材と外国産材)を8年間野ざらしにして、最終的にどうなるか」といった実験が行われました。
結果として、国産材は最初の形を残したままカビも生えず残存しましたが、外国材は形が無くなりボロボロに。
この実験から、国産材は外国材とくらべ、湿気に強く、耐久性があるといえます。
【参考】木材 野ざらし実験(国産材VS外国産材) – 森林・林業学習館
薬剤による健康被害のリスクがない
国産材には、防腐剤や消毒剤といった薬剤が含まれていないため、健康被害のリスクがありません。
薬剤は人によっては、アレルギー反応を引き起こす可能性もあります。
小さいお子様がいる家庭であれば、さらにリスクが高まるでしょう。
住宅には長く住み続けることになるため、事前に健康被害リスクのない建材を選ぶのもひとつの手で、国産材のメリットになります。
災害の防止
国産材のメリットは、災害の防止につながる点です。
国産材を多く植えて、山林を整然と維持管理することによって災害を防止できます。
理由としては2つあり、1つ目は国産材から落ちた枝や葉が、雨による地表の浸食を防ぐから。
2つ目は国産材の根が地層に張り巡らせることによって、地盤が固まり地滑りを防ぐ役割を果たすからです。
国産材の増加によって、災害の発生を未然に防ぐことにつながります。
国産材の3つのデメリット
国産材はメリットもありますが、やはりデメリットもあります。
以下で、デメリットについて解説します。
流通量が少ない
国産材は外国産材と比べ、流通量が少なくなかなか手に入りにくいといったデメリットがあります。
流通量が少ないと、建材を使用したい時でもなかなか入手することできず、建材を得るのに時間がかかってしまいます。
2014年(平成26年)に農林水産省が発表した木材流通・販売についての資料によると、流通している国産材は、全体の3割に満たないほどの自給率となっています。
だんだんと受給率は上がってはいるものの、外国産材には遠く及ばないのが現状です。
外国産に比べ、日本の狭い土地で育つ木は、径が小さい原木や曲がりの多い木が多く、必要な寸法を満たした木材を入手するのがむずかしいです。
そのため、国産材は数が少なくなかなか流通しにくい建材といえます。
加工に手間がかかる
国産材は、商品として仕上げるのにとても手間がかかります。
その理由は下記の2点です。
国産材は内側と外側の乾燥のしやすさが変わるため、バランスよく乾燥させないと、反りや曲がり、ひび割れを起こします。
商品として使用するためには、適切に乾燥させる必要があります。
また、国産材の中には、商品として仕上げるために高い加工技術が必要な木も。
高い技術をもった職人が必要なため、加工に手間がかかる原因となっています。
価格が高い
前述でも説明したように、国産材は流通量が少なく、加工するのに手間がかかります。
そのため、希少価値が高く、加工料も上乗せするため、価格が高くなかなか手が出しづらい現状です。
しかし、農林水産省が発表した資料によると、素材価格は平成26年ではピーク時の、約4分の1となっています。
長期的には価格が下がっているように感じますが、まだまだ外国産材との価格差は埋められず、手が出しやすいような価格になるにはまだ時間がかかるでしょう。
【参考】木材流通・販売-林野庁
今後の国産材の需要が高まる3つの理由
現状、今後の国産材の需要は少しずつ高まるでしょう。
理由は以下の3つです。
外国材の伐採量の減少
これまで安かった外国産材は、地球環境保護のために伐採量が減少傾向にあり、ウッドショックの影響で入手が困難な状況です。
そのため、国産材の需要が増え、流通量が増えるといえるでしょう。
森林・林業再生プランによる国産材の利用促進
農林水産省は平成21年に「森林・林業再生プラン」を策定して、2020年までに木材自給率を50%以上にする目標を掲げました。
しかし、結果的に自給率は50%に届かず、達成時期は延期されることに。
今後も自給率をあげる政策は続けられるため、長期的には需要が高まるといえるでしょう。
森林・林業再生プランとは?
「10年後の国産材自給率50%以上」を目標とし、日本の林業を盛り上げるために行う政策です。
林業経営・技術の高度化や森林資源の活用、森林・林業に関しての制度面での改革や予算の見直しが検討されています。
「CLT」を利用した新たな市場が活性化
近年注目されている「CLT」が国内で利用されることによって、林業市場が活性化して国産材の需要が高まるでしょう。
CLTとは、直交集成板のことでCross Laminated Timberの略です。
ひき板を繊維方向に直交して接着したパネルを指し、主原料がヒノキや杉となっています。
欧米ではすでに広まりを見せており、商業施設やマンションといった大型の建築物にも利用されています。
従来ではむずかしかった木造でのビル建築が可能になり、新たな市場が活性化されると注目を浴びている技術です。
国内でもCLT導入の動きが活発になっており、2016年には国会議員だった石破茂氏を会長とした「日本CLT協会」が設立されています。
CLTの導入により、林業の活性化や地方創生といった新たな市場が活性化され、需要が高まるといえるでしょう。
まとめ
今後は外国産材の輸出量が減り、価格も高くなるため国産材の需要も増えてくるでしょう。
加えて、国の政策もあるため自給率も高まります。
国産材には、外国材にはないメリットもありますが、デメリットもあります。
少しづつ需要が高まり自給率も上がることによって、デメリットが解消されると思われるため、今後の動向に注目していきましょう。