建築業界の離職率は、他業界と比べても高いと言われています。そんな建築業界に身を置く方の中には、ご自身の会社の人材の定着に課題を感じている方も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、建設業の技術者における離職率が高い原因や、人材を定着させる方法について解説します。
技術者の人材確保に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
建設業界の離職率
令和2年に厚生労働省が発表した「平成29年3月新規高卒就職者の産業別就職後3年以内の離職率」のグラフを見ても分かるように、新規高卒就職者全体の3年以内離職率が39.5%のところ、建設業の3年以内離職率は45.8%と、他産業よりも高い事が分かります。
また、同じく厚生労働省が発表した「新規高校卒業就職者の産業別離職状況」「新規大学卒業就職者の産業別離職状況」のグラフから、3年以内離職者の中でも、特に1年目に離職した技術者が多いことが分かります。
なぜ建設業の離職率が他産業よりも高いのか、ここではその原因について解説します。
離職率が高い原因
ここでは、国土交通省が発表した「企業が考える若年技能労働者が定着しない理由」のグラフを参考に、建築業の離職率が高い原因について解説します。
雇用が不安定である
離職時若年層の建設業離職者では、離職した理由として「雇用が不安定である」ことを挙げる人が最も多い結果となっています。
一方で、若年技術労働者が定着していない企業では、「雇用の不安定さ」を離職原因として考えている企業は少なく、離職者と企業間の意識の乖離が見られます。
休みがとりづらい
また、「雇用の不安定さ」や「遠方作業」に次いで、離職した理由として多く挙げられる項目は、休みが取りづらいことです。
離職理由トップ雇用の不安定さによる失業などの不安から、精神的な休みづらさがあったり、遠方作業によって移動等に時間を取られて休みが取りづらくなる結果に繋がっている可能性もあると考えられます。
労働に対して賃金が低い
厚生労働省が発表した「令和元年賃金構造基本統計調査」の表からも分かるように、製造業や運輸業・飲食サービス業と比較すると建設業は男女ともに平均賃金が高くなっています。
しかし、平均年齢や勤続年数が他業界と比べて高い割には平均賃金が低く、労働状況と賃金が見合っていないことが分かります。
このような状況から、休みが取りづらい環境で働いているにも関わらず、労働に見合う賃金を受け取れていないと考えて辞めた離職者も多いようです。
将来のキャリアアップの道筋が描けない
若年技術労働者が定着していない企業においては、離職理由として「将来のキャリアアップの道筋が描けない」ことを挙げる人は全ての項目の中で最も少ないです。
しかし、実際の離職者の離職理由を見ると、一定数が「将来のキャリアアップの道筋が描けない」と感じているようです。
現場での人間関係が難しい
若年技術労働者が定着していない企業、実際の離職者ともに、一定数の人が離職原因として挙げていることが「現場での人間関係の難しさ」です。
企業側では40.8%と多くの人が「若年技術労働者の職業意識が低い」と感じているのに対して、実際の離職者における離職理由として同項目は0%という結果にも見られます。
このことから、若年技術労働者の意識が、企業側に上手く伝わっていなかったり、上司と部下のコミュニケーションが上手く取れていないことも可能性として考えられます。
作業がきつい
若年技術労働者が定着していない企業の離職原因トップに挙がるの項目が「作業のきつさ」です。
実際の離職者も、一定数が同項目を離職理由として挙げていることから、現場作業が過酷であることは明らかです。
技術者を定着させる方法
ここでは、建設業において技術者を定着させるための方法について解説します。上記で述べた離職原因を鑑みて下記の方法を検討することで、より技術者の定着を促進することができるでしょう。
社会保険への加入
社会保険制度は、疫病、高齢化、失業、労働災害、介護などのリスクに備えて、雇用者または雇用主が事前に社会的供出をすることによって、保険によるカバーを受ける仕組みです。
日本の制度では、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5種類の社会保険制度があります。
雇用の不安定さや、労働と賃金が見合わないことなどが離職理由として高く挙がっていることを踏まえ、このような社会保険に加入することをおすすめします。
仕事内容に応じた評価
労働と賃金が見合わないことや、企業側と若年時離職者の職業意識の乖離などが離職にも繋がっています。
そのため、労働者が妥当と考えている労働量と賃金のバランスを再度確認しまししょう。
またどのような働きが称賛され、どのように評価されるとモチベーションのアップに繋がるのかを今一度改めて把握し、評価制度を整えましょう。
また、若年層技術者の職業意識をヒアリングする場を設け、認識に齟齬がないよう、企業側が技術者と定期的にコミュニケーションをはかることも有効だと考えられます。
勤務時間を管理/週休二日制の推進
建設業は他産業と比べて労働時間が長く、休日数が少ないことが課題となっています。
そのような中、「休みが取りづらい」と考えている労働者が多く、離職原因にもなってしまっています。
労働者の休みづらさを解決するため、また、労働者の健康確保のためにも、勤務時間の管理は徹底しましょう。
勤務時間の多い人に関しては、休みを取るように企業側から促す仕組みを整えると、厳しい環境において休みを取りづらいということが少なくなるでしょう。
また、他産業において一般的に取り入れられている週休2日制(月に1回以上、週に2日の休みがあるという制度)を採用することで、必然的に勤務時間を管理することになり、労働者のワークライフバランスを改善させることにも繋がります。
業務内容などから、完全週休2日制(毎週2日の休みがあるという制度)を取り入れることが厳しい場合もあるかと思います。
その場合は週休2日制をまず取り入れることで、定期的に休める、もしくは休みやすい環境を作ることができます。
業務を効率化
企業側、労働者側ともに離職原因として挙げている「作業のきつさ」を改善させる1つの方法として、業務の効率化をはかることをおすすめします。
新型コロナウイルスによってテレワークを取り入れる企業も増えたことで、業務効率化ツールが話題となっています。
建設業においても、こういったツールを導入することで、作業の負担を軽減することができます。
例えば、現場でも簡単に勤怠・シフトを自動管理できるタブレットの導入や、プロジェクトの原価管理・製造管理ツールの導入などが挙げられます。
これらのように、デジタル化が可能な作業だけでも効率化させることができれば、全体的な作業時間が減り、人の手が必要な作業に集中することができるでしょう。
その結果、労働時間も減り、休みが取りやすくなることにも繋がります。
まとめ
今回は、建設業における離職率の高さとその原因、さらには、人材を定着させるための方法について解説しました。
若年層の離職率の高さが課題となっていますが、離職率を抑えるためには保険制度の利用や評価制度の見直し、コミュニケーションの工夫など、技術者の労働環境改善が不可欠です。
ぜひ、今回の内容を参考に労働環境を見直し、人材定着の促進に取り組んでみてください。