見積書はクライアントに提供する商品・サービスに対して、必要な金額を提示するために必要な書類です。
見積書を作成しておくことで契約に必要な金額が明確化されるため、双方にとって安心材料となります。
しかし、見積書の作成を考えている担当者の方は「どれくらいの有効期限に設定すればいいのかわからない」という悩みもあるのではないでしょうか。
当記事では、見積書の有効期限を設定するべき目的から記載なしの対処方法、記載方法まで詳しく解説します。
記事後半では見積書の有効期限を設定するときの注意点まで紹介するため、ぜひ参考にご覧ください。
目次
【建設業】見積書に掲載する有効期限の一般的な目安
業種によって多少の違いはあるものの、見積書に掲載する有効期限は2週間〜6ヶ月の間で設定されるのが一般的です。
法律的には見積書に有効期限を設定する義務はないため、会社の都合や業種・業界の慣行などによって決定できます。
見積書に有効期限を設定しなかった場合、自社が提供する商品・サービスの価格が変更されたときにクライアントとのトラブルにつながる恐れがあります。
クライアントとのトラブルを回避するためにも、建設業の見積書には有効期限を設定しておくことが大切です。
見積書に有効期限を設定する2つの目的
見積書の有効期限を設定する目的として、以下の2点があります。
上記2点は、クライアントと長期的な契約を結ぶために必要な要素です。
それでは順番に解説します。
1.クライアントへ契約を促すため
クライアントは見積書に記載されている金額や納期などをチェックして取引を検討するため、有効期限を記載すれば契約の決断を促せられます。
見積書に有効期限がなければ、クライアントの検討に長い時間がかかってしまい、契約へつながらないケースもあるでしょう。
また、見積書に期限を設定すれば、何を準備しなければいけないのかを明確にしてスケジュールを立てられるようになります。
最終的な決断につながる手助けをするためにも、見積書に有効期限を設定しておく必要があります。
2.商品・サービスの価格変動に対応するため
見積書に有効期限を設定すれば、自社商品・サービスを提供するための原価が高騰しても価格変動に対応できるようになります。
業界や業種によっては社会状況によって、提供する商品やサービスの価格変更を余儀なくされるケースもあります。
例えば建設業の場合、需要の変動によって人件費が高くなる可能性も高いです。
見積書に有効期限を設定しておけば、自社商品・サービスの価格を変更してもクライアントとトラブルが発生するリスクを防ぐことが可能です。
建設業では材木や塗装といった材料が高騰することもあるため、必ず見積書には有効期限を設定しておきましょう。
見積書に有効期限の記載がないときの対処法
見積書には有効期限の記載がないこともありますが、有効な文書として利用できます。
しかし、見積書に有効期限が記載されていなければ、提供する商品・サービスの価格が変更になったときにクライアントとトラブルが発生する原因となります。
民法第525条第1項には「申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。」と記載されています。
内容を要約すると、見積書に有効期限が記載されていなくても、取引内容や業界の慣行などから相当な期間が経過すれば有効期限を設定できるというわけです。
相当な期間は個別の判断になるため、見積書の有効期限を設定するときは関係者と話し合ったうえで決定しましょう。
見積書の有効期限が過ぎたときの対処法
見積書の有効期限が過ぎてしまった場合、それまでの効力は失われてしまいます。
クライアントとの取引を継続するには、再度見積書に有効期限を設定して発行する必要があります。
しかし、契約金額や条件に変更がなければ、見積書を再発行せず契約・受注へ進んで問題はありません。
民法第524条には「申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。」という規定があるため、見積書の有効期限が過ぎてもクライアントから遅延の承諾があれば新たに申し込めます。
社会状況などの影響によって提供する商品・サービスの価格が変更されるなら、改めて見積書を発行してクライアントから承諾を得るようにしましょう。
【建設業】見積書の記載方法
建設業の見積書には、以下のような項目を記載しましょう。
見積書の発行日・発行元
見積書を発行した日にちと発行元を記入します。
いつ頃に請求書を発行したのかを明確にすることで、自社とクライアントが契約期間を把握できます。
見積書提出先の宛名
見積書を提出するクライアント企業名や住所を記入します。
規模が大きい企業の場合、担当者名や、役職名、部署名まで記載しておくことが大切です。
会社名のみの場合は「御中」、担当者名には「様」が記載されているかチェックしておきましょう。
見積作成者の情報
見積書を作成した側の会社名・担当者名を記入します。
会社の住所や電話番号、問い合わせ先などの記載も必要です。
クライアントから見積もりの相談を受けることもあるため、担当者名は必ず記載が必要です。
必要なタイミングで連絡をもらうためにも、連絡先も合わせて記載しておきましょう。
施工開始予定日
施工開始の予定日が具体的に決まっているときは、日付を記入します。
受注後に大まかな施工開始予定日が決まっている場合、受注後○週間以内などの記載が適切です。
施工場所・見積金額
施工をおこなう場所と見積金額を記入します。
法人客なら貴社指定場所、個人客なら〇〇様宅外壁などを記載します。
見積金額は全体的な合計を算出し、消費税込みの金額を記載するようにしましょう。
見積明細
見積明細では、見積の内訳を記入します。
資材費用や工事項目などを単価、数量によって合計額を記載します。
それぞれの金額を明確にすることで、クライアントが適切なのかどうかを判断できます。
個人客の場合は合計金額のみを把握することが多いですが、明細を記入しないことは親切とはいえません。
法人客は単価や数量を細かくチェックされるため、各項目に間違いがないかチェックしておきましょう。
見積有効期限
建設業界の見積書では、6ヶ月間を有効期限に設定して記入されることが多いです。
建設業では廃材の処分単価の変動が関係しており、処分金額の改定によって処分費が上がり赤字につながるケースがあります。
有効期限を設定しておけば、処分単価が上がった状況に応じて価格を変更できるようになります。
見積書の有効期限を記載するときは「本見積提出後○ヶ月」といった表記にしましょう。
見積書の有効期限を設定するときの注意点
見積書の有効期限を設定するときは、以下のような点に注意してください。
民法第523条を理解しておく
第五百二十三条 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
民事起訴法 電子政府の総合窓口e-Gov
2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
「承諾の期間」とは見積書の有効期限が該当しており、契約の申込みをおこなうと撤回ができないことをあらわしています。
そのため、契約締結後に自社やクライアントの都合で勝手に破棄することはできません。
次に「承諾の通知」について、見積書の有効期限を設定した内容に対して、期間を過ぎても内容を承諾する旨の通知が届かなければ効力を失って契約の必要性がなくなることをあらわしています。
このように民法第523条の条例は見積書の有効期限と大きな関係があるため、十分に理解したうえで設定するようにしましょう。
工事に適した有効期限を設定する
建設業では工事期間が内容によって変化するため、見積書は最適な有効期限を設定する必要があります。
一般的な期間は2週間〜6ヶ月の間で設定されますが、状況によっては長期間になることもあるでしょう。
しかし、あまりにも長い期間を有効期限に設定してしまうと、社会状況によって人件費や材料費が高騰しても価格を変更することができなくなります。
そのため工事内容や今後の社会状況を考慮して、クライアントと相談しながら見積書の最適な有効期限を設定しましょう。
提出前にチェックが必要
見積書を作成後、クライアントへ提出する前に再チェックをしておきましょう。
もし見積書に記入した単価などの金額にミスがあると、再度見積書を作り直さなくてはいけません。
また、見積書を作り直すと、クライアントからも不信感を持たれる原因となります。
見積書は発行側の都合で撤回することはできないため、提出をするときは事前に抜け漏れがないかチェックしておくようにしましょう。
まとめ
今回は、見積書の有効期限を設定するべき目的から記載なしの対処方法、記載方法、注意点まで詳しく解説しました。
見積書は有効期限を設定することで、クライアントへ契約を促して商品・サービスの価格変動に対応できるようになります。
見積書の有効期限の記載がなかったり有効期限が過ぎたりしてしまったときは、民法に従って最適な対応を取ることが大切です。
ぜひ当記事で紹介した内容をもとに、見積書の有効期限を設定して自社とクライアントが納得できる事業をはじめていきましょう。
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