左官工事は建物の仕上げ作業を重要な作業となっており、土や砂、石灰、セメントなどを使って塗り上げていきます。
左官工事は使用する素材によって工程が変わるため、内容に合わせて見積書の作成が必要です。
見積書の内容をもとに施主は依頼を検討するため、正しく記載することが大切です。
しかし、担当者によっては「どのように見積書を作成すればいいのかわからない」という悩みもあるでしょう。
当記事では、施工業者に向けて左官工事の見積書を作成する方法をわかりやすく解説します。
記事後半では作成ポイントや注意点についてもご紹介するため、ぜひ参考にご覧ください。
目次
左官工事の見積書と基礎知識

左官工事の見積書と基礎知識として、以下のようなポイントをおさえておきましょう。
単価設定の重要性
左官工事において、見積書の単価設定は顧客の満足度と収益性に重要な要素となっています。
適切な単価設定は、顧客満足度を向上させるための重要な要素のひとつです。
単価設定の適正度を上げるために、土木工事標準単価を参考にすると良いでしょう。
相場よりも低すぎたり高すぎる単価を設定してしまうと、施主からの信用を失ってしまい長期的な関係を築くことはできません。
適正な単価設定を行えば、施主はコストパフォーマンスに満足して継続的な依頼を検討してくれます。
また、単価設定は収益性にも大きく影響しており、単価を低く設定すると利益率が低下してしまいます。
逆に高い単価を設定したとしても収益を悪化させる懸念があるため、市場競争力を保つ適切な単価設定が必要です。
このように左官工事では、見積書を作成するときに適切な単価設定を行う必要があることを理解しておきましょう。
左官工事の単価表について
左官工事の単価表は、施工内容や資材、施工面積などの要素をもとに算出された費用で構成されています。
工事の品質とコスト管理において重要な指標となるため、正しい構成を理解することが大切です。
また、左官工事の単価表には、塗り方や仕上げ、処理など建築物ののさまざまな方法に関する項目が含まれます。
一般的に下地処理や足場設置、養生・高圧洗浄などの追加作業も単価表に含まれるため、正しい記載方法を理解しておくようにしましょう。
左官工事の種類
左官工事には幅広い種類があり、工事内容によってさまざまな特徴や技術があります。
一般的には壁塗りという方法があり、一般左官と呼ばれる壁を仕上げるために行う作業です。
ほかにも鋼材の耐火被覆として岩綿鏝塗りを施す作業、内幕や天井の結露対策として発泡ウレタンを使用する作業も左官工事のひとつです。
施工の仕上げ工程では職人の腕前が発揮されるため、人によって仕上がりに大きな差があります。
左官工事の作業は多岐に渡り、多様な種類と技術が建物を綺麗に仕上げています。
左官工事で使用される素材の種類
左官工事で使用される素材は、主に自然素材と人工素材の2種類があります。
自然素材は環境に優しく、調湿性や抗菌性に優れたものが多いです。
代表的な種類として、以下のようなものがあります。
- 土壁:使用する土の種類によって仕上がりの印象が変化
- 珪藻土壁:調湿性や防臭性、耐火性に強い
- 砂壁:滑らかで上品な仕上がりを実現
- 漆喰壁:防火性や防音性が高く、殺菌性に強い
人工素材は強度や耐久性に優れており、以下のような種類があります。
- プラスター壁:硬度が高くてひび割れが起きにくい
- モルタル壁:デザインが豊富で耐火性にも強い
- ジョリパット壁:外壁仕上げの主流で耐久性に強い
左官工事には幅広い素材が使われており、それぞれ特徴が異なります。
建物の用途・デザインに合わせて素材を選べば、高品質な仕上がりを目指せるでしょう。
左官工事の見積書を作成する流れ

左官工事の見積書を作成する流れは、以下の通りです。
1.数量拾い
数量拾いとは、図面から数量や枚数を算出することです。
数量や枚数によって作業の手間が変わるため、正確な数量拾いが必要です。
担当者一人だけで対応せず、複数人でダブルチェック、トリプルチェックを行うようにしましょう。
2.作業環境の確認・想定
職人が現場で作業する環境を確認します。
現場や建物が内部か外部なのかをチェックし、足場の有無、作業スペースも合わせて確認してください。
例えば足場がない環境では自分たちで足場を組む必要があるため、見積もりにも影響します。
見積もりに影響が出る要素を見つけるためにも、作業環境の確認・想定を行っておきましょう。
3.作業手間の算出
左官工事の作業手間をはじめ、作業環境によって発生する手間も合わせて算出します。
事前に作業手間の算出を行うことで、効率良く進めるための計画を立てられます。
4.材料算出
左官工事に使用する材料の単価や手間などを考慮し、具体的な数値を算出します。
見積書の金額と実際の金額に差をなくすためにも、作業環境の確認と作業手間の算出は非常に重要です。
見積書を作成するときは、図面を読みながら現場への理解・経験がある担当者が対応するようにしましょう。
左官工事の見積書の書き方

左官工事の見積書の書き方は、以下の通りです。
見積書の基本項目と作成例
見積書の基本項目として、以下の項目を記入します。
- 宛名
- 差出人の氏名
- 見積書の通し番号
- 発行日
- 見積もりの合計金額
- 見積もり内容
- 各項目の小計・消費税・合計金額
左官工事の見積書は作業の各項目を除き、一般的な書き方と同じです。
工事内容について補足説明がある場合、見積書の備考欄に記入します。
左官工事の見積書の作成例については、下記の表を参考にご覧ください。
名称 | 摘要 | 単価 | 単位 |
---|---|---|---|
モルタル塗り金鏝押え | ・壁 ACパネル下地 塗り厚15mm | 2,500円 | ㎡ |
材料費 | ・黒モルタル:3,500円 ・普通モルタル:3,000円 ・珪藻土:5,500円 ・漆喰:6,000円 | 18,000円 | ㎡ |
労務単価 | ・人件費 ・移動費 | 25,000円 | 人 |
単価表の作成方法
左官工事の単価表を作成するためには、以下の方法となります。
- 作業範囲と数量の把握:壁や床の面積、使用する材料の種類や数量などを確認
- 作業手間と材料費の算出:職人の経験や熟練度などを参考に作業時間を算出、材料費は使用する材料の種類や数量、仕入れ先によって変動するため見積もりを出す
- 単価の算出:算出した作業手間と材料費を合計し、施工面積で割る
単価表は一度作成して終わりではなく、定期的に見直しが必要です。
材料費の変動や作業時間に合わせて、単価表に反映させるようにしましょう。
左官工事の見積書はテンプレート利用がおすすめ
左官工事の見積書を一から作成する場合、手間と時間がかかり担当者の負担が大きくなってしまいます。
社内にExcelソフトを導入しているなら、施工向けのテンプレートを利用することで簡単に左官工事の見積書を作成できます。
基本的な項目について記載されているため、少し変更を加えるだけで見積書を作成可能です。
インターネット上には左官工事用のテンプレートも幅広く用意されているため、効率良く左官工事の見積書を作成したいときはぜひ活用してみましょう。
AnyONEでは、便利な見積書のテンプレートを無料で公開しています。
工務店向けに作成されており、ダウンロード後すぐに使用できて便利です。
左官工事の見積書の計算方法

左官工事の見積書を計算するためには、材料費、人件費、経費、利益の要素を考慮しましょう。
まず左官工事に使用する材料は多岐に渡るため、各材料の価格は大きく異なります。
次に作業を行う職人の人件費も必要になり、経験や技術によって価格の差も大きくな利、経験豊富な職人が対応する場合、人件費は高くなります。
そして足場設置費や運搬費など工事に関わる経費を算出し、最後に材料費、人件費、経費を差し引いた金額から利益を算出すれば、見積書の計算が可能です。
価格設定が適切かどうか判断するためには、合他社の価格や顧客の予算などの要素を考慮しながら計算するようにしましょう。
左官工事の見積書を作成するポイント

左官工事の見積書を作成するときは、以下のようなポイントをチェックしておきましょう。
余裕のあるスケジュール設定
左官工事の見積書を作成するときは、余裕のあるスケジュール設定にしておきましょう。
スケジュールに余裕を持たせられない場合、工事費が過大になるリスクがあります。
施工会社が適切な期間を持たせず見積書を作成すると、依頼主が工事内容を把握できず不確定な部分を概算で計上してしまいます。
見積もりの検証が不十分になってしまうため、根拠に基づいた価格設定ができない可能性が高いです。
ただし、スケジュールに余裕を持たせ過ぎると、人件費の負担が増えるケースも存在します。
そのため工事の見積書を作成する場合、バランスを意識してスケジュール作成するようにしておきましょう。
資材費・労務費を別途算出
左官工事の見積書を作成するときは、資材費・労務費を別途算出するようにしましょう。
工事費には使用した資材費をだけでなく、職人の人数や稼働時間に応じた費用が別途かかります。
費用を合わせてしまうと見積書の内容が不明瞭になってしまうため、施主から不信感を持たれてしまいます。
工事の見積書を作成する場合、施工で発生した費用を各項目で細かく記載することが大切です。
費用内訳を詳細に記載しておくことで、施主が内容を把握できるようになり価格交渉もスムーズに行えるようになるでしょう。
養生費や足場設置費を割り出す
左官工事では、足場設置費や養生費などが別途必要となります。
作業環境によっては養生が必要になることもあるため、必要な範囲を割り出しておく必要があります。
また、足場を自分で設置する必要もあるため、こちらも見積書に含めなくてはいけません。
養生費や足場設置費は経費として表示しますが、左官工事以外の工事にも関わるときは共通仮設工事に組み込むことをおすすめします。
単価ごとに値引き設定
施主が見積金額からの値引きを申し出てきた場合、単価ごとに値引き設定をしましょう。
一括値引きを行う施工会社も存在しますが、こちらから提示すると資材費・労務費の項目で算出した単価が無意味になっていまいます。
一括値引きを施工会社から提案することも、基本的にはおすすめしません。
クライアントから根拠のない価格設定をされたと誤解されてしまうため、単価ごとに値引き設定をしておくようにしましょう。
左官工事の見積書を提示するときの注意点

左官工事の見積書を提示するときは、以下のような点に注意してください。
一式の表現を使用しない
左官工事の見積書では「一式」という表現を使用しないようにしておきましょう。
一式でまとめてしまうと各項目の詳細な単価がわかりづらいため、施主が内容を把握しづらくなります。
各項目の内容を明確にしなければ、クライアントが見積金額に対して信用を持てなくなってしまいます。
見積書の価格を具体的に説明できるようにしておくためにも、左官工事の見積書では一式の表現を使用しないようにしておきましょう。
各項目の費用を具体的に説明
左官工事の見積書を施主に提示すると、各項目の費用について質問があることもあります。
見積書の内容について根拠のある説明ができなければ、施主から信用を得ることはできません。
各項目の価格に根拠を持たせて具体的に説明できるようにすれば、施主の納得を得た状態で施工を進めることが可能です。
各項目の値引き対応もしやすくなるため、項目別の費用設定をしておくようにしましょう。
単価相場への理解
左官工事の見積書を作成するときは、単価相場の理解を深めておくことが大切です。
各作業においてどれくらいの費用がかかるのか理解することで、適切な見積書を作成できます。
逆に各作業の費用が曖昧になっている場合、見積書の提示した価格が大きく上下してしまいます。
そのため左官工事の見積書を作成するときは、単価相場を正しく理解しておきましょう。
まとめ
今回は、左官工事の見積書を作成する方法、作成ポイント、注意点をわかりやすく解説しました。
左官工事ではさまざまな作業を行うため、各項目の単価を理解した上で適切な見積書の作成が必要です。
適切な単価設定を行うことで、顧客満足度を大幅に向上できます。
左官工事で使用する材料によっても単価は大きく変動するため、計算しながら施主が納得できる請求書を作成するようにしましょう。
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