塗装工事の契約を結ぶ前に、工事請負契約書を締結します。
読者の中には形式的に契約書を発行しているだけで、内容をしっかりと理解していない方もいるのではないでしょうか。
工事請負契約書の内容が適当だと、後々に思わぬトラブルを生む可能性があります。
本記事では、工事請負契約書の基本情報や記載するべき項目について解説します。
未然にトラブルを防ぎたい塗装工事会社の経営者は、参考にしてください。
目次
工事請負契約書とは
工事請負契約書とは、請負工事の内容が記された契約書です。
工事は契約書では、事前に契約した工事の内容を受注者が完了し、発注者が工事代金を支払うことを書面化しています。
塗装工事において工事請負契約書は、塗装工事の完了を持って工事代金を発注者から受け取るための書類とも言い換えることが可能です。
民法上は口約束でも契約は成立しますが、建設業法第19条では口約束の契約が認められておらず、書面の交付を義務付けています。
塗装工事に必要な書類
塗装工事に最低限必要な書類は以下の4つです。
工事請負契約書
工事請負契約書の交付は、建設業法で定められています。
また契約書面には発注者と受注者の双方が、署名または決め押印して交付しなければなりません。
工事請負契約書には、以下の内容を記載しなければ内容は下記の通りです。
工事契約書を発行していると以下のようなトラブルの防止が可能です。
- 工事が完了しているのに工事代金が支払われない
- 契約した内容の工事が完了していないのに、工事代金の支払いをされている
保証書
保証書とは、保証期間内に塗料の劣化や工事内容に問題があった場合、塗装工事のやり直しをおこなうと定めた書類です。
そもそも塗装工事の保証には、製品保証と工事保証の2つがあります。
製品保証とは定められた期間内に塗料が劣化した場合は、メーカーの責任になるという決まりです。
工事保証は、施工業者が示した期間内に問題が生じた場合は、工事のやり直しを保証する決まりです。
保証内容は必ず書面に残しましょう。
書面に残さないと、どのような場合に保証を受けられるのか、言った・言わないの水掛け論になってしまうからです。
また保証書を出さない塗装工事会社は、顧客から信頼できない会社と見られ、発注されない可能性も高まります。
請負代金内訳書
請負代金内訳書は、請求代金の内訳と項目が記載された書類です。
請負代金内訳書を作成する際は、顧客に提出した見積書との金額・項目に違いがないよう注意してください。
仮に見積書の内容と変える場合は、なぜ変えるのかを明確にして顧客に説明できるようにする必要があります。
変更した内容を説明できないと、顧客から不信感を抱かれ、信頼関係の構築ができなくなってしまうからです。
請負契約約款
請負契約約款とは、請負契約書の内容をさらに細かく記した書類です。
例えば請負契約約款には以下の内容が記載されます。
- クーリングオフ:契約から8日以内には解約できる決まり
- 紛争の解決方法:どの裁判所で裁判がおこなわれるかなどを記載
- 遅延損害金の規定:工事が遅れた場合に塗装工事会社が施主に支払うお金
- 契約者不適合責任:引き渡し時には気づかなかった欠陥を補修しなければならない決まり
上記の内容は書面に起こし、必ず顧客に対して説明するようにしましょう。
請負契約書約款を作成し顧客に説明していれば、無用なトラブルを避けられ、自社を守ることにもつながります。
工事請負契約書に記載するべき項目
国土交通省によると、工事請負契約書に記載するべき項目は全部で14個あります。
【参考】請負契約書に記載すべき内容-国土交通省
これらの内容に加えて、トラブルを防止するために記載するべき項目を以下3つに絞って解説します。
契約外の工事が発生したケースの規定
契約外の工事が発生した場合のケースを想定してルールを決めておきましょう。
築年数が古い建物ほど、見ただけではどのような不具合があるのか正確に把握することは難しいです。
そのため見積書の作成時点では、わからなかった不具合に対して追加工事が発生する場合があります。
追加工事が必要になった場合は、どのように協議するのか、費用請求はどうするのかといった内容を決めておきましょう。
工期が延長したケースの規定
工期が延長した場合の違約金についても記載しておきましょう。
塗装工事は雨や地震などの外的要因によって、工事が工程表通り進まないケースがあります。
また塗装工事会社のミスによって、工期が延長になるケースも考えられるでしょう。
仮に工期が延長した場合、どのようなケースでは損害賠償遅延金を支払うのかを定めておきましょう。
また工期を延長したい場合、どのような流れで工期を伸ばせるのかを決めておくことも重要です。
一般的には発注者と受注者が協議をして、再度新しい講義を決めるようにします。
近隣住民からクレームが発生したケースの規定
塗装工事をおこなっていると、以下のことに対して近隣住民からクレームが発生することがあります。
- 塗料の臭い
- 騒音
- 近隣住民の家・車に塗料がつく
クレームが原因で工事が止まってしまうケースもあります。
そのような場合、遅延損害金や違約金についてどのようにするか決めておきましょう。
塗装工事で生じるトラブルを予防する方法
塗装工事で生じるトラブルを予防する方法を以下3つ解説します。
契約書の内容を顧客に説明する
契約書の内容をあらかじめ顧客に説明しましょう。
単純に説明するだけではなく。顧客が理解できるように専門用語を使わずに説明するのがベストです。
一般顧客を相手にする場合、建設業や塗装工事に詳しい方ばかりではありません。
むしろ塗装工事の要項についてほとんど知らない方が一般的です。
そのため専門用語を使って契約書を説明されても、内容が理解されにくいです。
契約書が理解されていないと、万が一トラブルが発生した際に事態が大きくなってしまう可能性があります。
そのため契約前に契約書の内容をしっかりと説明するとともに、塗装業界に詳しくない方でもわかるような説明をおこなうようにしましょう。
契約前に塗装工事のリスクについて説明する
契約前に塗装工事のリスクについても説明しましょう。
塗装工事は天候・気候・気温によって、同じ塗料や施工方法であっても仕上がりに違いが出てきます。
そのようなリスクを説明していないと、クレームが生じる原因になります。
クレームを防止するためには、事前のリスク説明が重要です。
加えてリスク説明と一緒に、万が一意図していた仕上がりと違うものになった場合の対応方法や補修方法なども一緒に説明していると、顧客に安心感を与えられます。
見積書に細かく内訳を記載する
見積書には細かく内訳を記載しましょう。
最も悪い見積書は「塗装工事 一式」としか記載されていない見積書です。
そのような見積書ではどのような工事をおこなうのか、適正価格なのかが判断できません。
見積書には作業範囲や使う塗料、細かい工事内容を記載しましょう。
細かく記載された見積書を作成しておくと、顧客との認識のずれをなくすことができ、後々のトラブルを防止できます。
まとめ
本記事では、塗装工事の工事請負契約書について解説しました。
工事請負契約書とは、請負工事の内容が記された契約書です。
建設業法で発行が義務付けられており、受注者と発注者の双方の押印または記名が必要です。
工事請負契約書を発行しておかないと、万が一トラブルが発生した際に、事態が大きくなり訴訟にまで発展してしまう可能性があります。
そのような事態を避けるためには工事請負契約書を発行して、トラブルを未然に防ぐ対策が重要です。
塗装工事会社は本記事を参考に、工事請負契約書の内容を今一度見直してください。
【参考】建設業法-e-Govポータル