建設業では、高齢化や人材不足などの問題が深刻化しており、その解決策としてM&Aが盛んにおこなわれています。
M&Aを検討されている工務店の方も多いかと思いますが、M&Aにより具体的にどんなメリットがあるか知らない方もいるのではないでしょうか?
今回は、建設業でM&Aをおこなうメリットについて、市場動向や売却時の注意点もふまえて詳しく解説します。
目次
建設業の市場動向と現状
まずは、M&Aについて解説する前に、建設業の市場動向や現状について解説します。
ここでは、以下の2点に分けてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
建設業の市場動向
下記の表は、国土交通省発表の「建設業界の現状とこれまでの取組」内に記載されている「建設投資、許可業者数及び就業者の推移」のグラフを抜粋したものです。
まず、「建設投資額」とは建設業において投資された金額のことで、そのまま市場規模を表しています。
上記の表では、建設投資額は1992年の84兆円をピークに2011年まで低下傾向にあり、その後は2019年に至るまで回復傾向にあるという流れです。
一方で、許可業者数や就業者数はピーク時と比べると減少傾向にあり続け、許可業者数はピーク時の約23%減、就業者数はピーク時の約27%減となっています。
そのため、建設業の需要自体は近年伸びつつあるものの、業者数や就業者数が減少し続けているため、需要に対する供給体制が十分ではないといえるでしょう。
建設業の現状と課題
建設業では、近年以下の課題が山積している現状があります。
人材不足
人材不足に関しては、同じく国土交通省「建設業界の現状とこれまでの取組」で下記のデータが掲載されており、10年後(資料は2019年当時のもの)には60歳以上の大量離職が見込まれるにもかかわらず、それを補えるほどの若手の人材がいないことが記載されています。
今後も少子高齢化の流れは進んでいくと考えられているため、対策を講じない限り、建設業は人手不足が深刻化する一方となるでしょう。
労働環境の悪さ
労働環境に関しても、国土交通省の同資料で触れられており、他の産業と比較しても、年間300時間以上の長時間労働をおこなっている現状があります。
さらには、他の産業では当たり前となっている週休2日制においても、建設業では全体の技術者のうち週休2日を取れている技術者は1割にも満たないことが明らかです。
こうした労働環境の悪さは、離職率の高さにつながり、人材不足の一因ともなってしまうため、改善が必要といえるでしょう。
処遇の水準が低い
処遇の水準が低いことも建設業における課題といえます。
建設業全体としては給与は2012年〜2018年の間で上昇傾向にあるものの、製造業での給与と比べるとまだまだ低い水準にあります。
こうした処遇の水準が低いことも、建設業での人材が定着しない一因となり得るため、改善が必要となるでしょう。
建設業のM&Aの現状
近年では、建設業におけるM&Aが増加傾向にあります。
元々、建設業ではそこまでM&Aがおこなわれることはありませんでした。
建設業は地域性が強く、新しい地域に進出するケースが少なく、M&Aによるビジネスの伸長を図るケースが少ないためです。
しかし、近年では、建設需要が徐々に伸びてきていることに加え、事業拡大のために他の地域に進出する建設会社が増えてきています。
また、家電メーカーや不動産といった異業種のノウハウを採り入れて、新しいビジネスの形を作り出そうという企業も増えてきているため、M&Aが増加傾向にあります。
建設業でM&Aをおこなうメリットとは?
ここでは、建設業でM&Aをおこなうメリットについて解説していきます。
具体的には、売却側と購入側でそれぞれメリットが異なってくるため、以下のように2つに分けて解説していきます。
売却側のメリット
まず売却側には以下のメリットがあります。
最大のメリットは、売却益を期待できる点です。
売却益を活用して新規事業を立ち上げたり、自身の資産として保持することもできます。
また、建設業では人材不足による後継者不足の問題も発生しやすいですが、M&Aで社外の経営者を登用することで、解決できます。
売却後も事業を続ける場合、大手企業のグループに加われば、その企業が持つ原料の仕入れルートや人材を活用することが可能です。
原材料仕入れの適正化や、工事の作業効率化にもつながります。
購入側のメリット
一方で買い手側のメリットとしては以下の点が挙げられます。
買い手側にも複数メリットがあります。
1つは売却側の企業に所属する優秀な技術者を確保することが可能です。
建設業では、施工管理技士や現場代理人といった有資格者の数によって、工事を請け負える規模が決まります。有資格者を多く雇用していれば、それだけ多くの工事を請け負い売上や利益を拡大させられるでしょう。
自社で進出していないエリアで事業をおこなっている企業を買収すれば、新たな事業エリアを手に入れることもでき、他の業種を買収すれば異業種への進出が可能となり、新たなビジネスチャンスを生み出すこともできるでしょう。
会社を売却する際の注意点
ここでは、会社を売却する際の注意点について解説していきます。
具体的には以下の3点が挙げられるでしょう。
抱えている案件の引き継ぎ
まず、抱えている案件を引き継ぐ必要がある点に気をつけましょう。
M&A前に案件がすべて終了すれば問題ありませんが、M&A後も続く案件に関しては売り手側が買い手側もしくは同業他社に引き継ぐ必要があります。
案件を引き継ぐ場合は、費用分担などを両者で話し合い、トラブルを避けるように気をつけましょう。
許認可の引き継ぎ
2つ目は許認可の引き継ぎが必要であるという点です。
特に気をつけたいのが、事業譲渡や会社の合併・分割をおこなう場合です。
株式譲渡の場合は、売り手側の持つ建設業許可をそのまま引き継げます。
しかし、事業譲渡や会社の合併・分割の場合は、売り手側の持つ建設業許可をそのまま引き継ぐことができず、新たに買い手側が取得する必要があります。
建設業許可は申請してから認可されるまでに時間を要すため、M&Aの際にはスケジュールにも注意しておきましょう。
まとめ
建設業におけるM&Aは、後継者不足の問題解決や事業拡大を目的として、現在盛んにおこなわれています。
M&Aには多くのメリットがありますが、案件や許認可の引き継ぎなど注意すべき点もあるため、専門家と相談しながら検討していった方がいいでしょう。
また実際にM&Aをおこなう場合は、自社の情報やデータを整理しておきましょう。
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