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建設業における事業承継とは?現状や課題も詳しく解説

現在の経営者から後継者に事業を引き継ぐ手続きである「事業承継」。建設業においても経営者の高齢化の問題などから、近年、盛んにおこなわれるようになりました。

そのような事業承継ですが、具体的にどのような手続きなのか詳しく知らない方も多いのではないでしょうか?

今回は、建設業における事業承継の概要を、現状や課題もふまえて解説します。

本記事はこのような方におすすめ!
  • 建設業で事業承継を検討している方
  • 建設業における事業承継を詳しく理解したい方
  • 経営者の高齢化など経営上の課題を解決したい方

建設業における事業承継とは?

建設業における事業承継とは?

そもそも、「事業承継」とは、会社の経営を後継者に引き継ぐ手続きを指します。

事業承継は中小規模の企業でおこなわれることが多く、中小企業では社長の経営手腕によって経営状況が大きく左右されるため、事業承継は重要な経営課題となります。

また、事業承継は事業を後継者に引き継ぐだけではなく、「自社株を誰に引き継ぐか」、「どのように経営者を育てるか」という点も考えなければなりません。

そのため、事業承継は後継者と今後の経営についてしっかりと話し合い、慎重に進めていく必要があります。

建設業における事業承継の現状

建設業における事業承継の現状

近年、建設業における事業承継は増加傾向にあります。

中小規模の建設会社や工務店では、経営者の高齢化が大幅に進んでおり、次世代に経営を引き継ぐ必要があるためです。

こうした経営者の高齢化の問題には国や行政も積極的に取り組み、事業継承に関連する制度の見直しやサポートをおこなう流れが生まれています。

また、一般的に事業承継というと、親族もしくは会社の従業員などから後継者を見つけて事業を引き継ぐ形が一般的です。

しかし、近年では後継者となる人材自体が不足している問題もあり、上記の形での事業承継が難しくなっています。

そのため、他の企業に自社を売却する形でおこなわれるM&A型の事業承継も数を伸ばしています。

最近では、新規事業エリアの開拓や人材確保のためにM&Aをおこなう企業も増えており、今後もM&Aを介した事業紹介が増えていくことが予想されるでしょう。

建設業における事業承継の課題

建設業における事業承継の課題

ここでは、建設業で事業承継をおこなう際の課題について解説します。

具体的な課題としては以下の2点が挙げられます。

建設業における事業承継の課題
  • 建設業許可の引き継ぎ
  • 後継者不足

建設業許可の引き継ぎ

1つ目の課題が、建設業許可の引き継ぎ問題です。

実は建設業の事業承継をおこなう場合、建設業許可をそのまま後継者に引き継ぐことができないかもしれません。

具体的には、個人事業の場合は建設業許可を引き継ぐことができませんが、法人の場合は商業登記を変更することで引き継ぐことが可能です。

そのため、個人事業で事業承継をおこなう場合、引き継ぐ前の個人事業主が廃業届を提出してから、再度、後継者が建設業許可を申請する必要が出てきます。

また、建設業許可は後継者の選定だけではなく、「経営業務管理責任者」と「専任技術者」が在籍していることが条件とされています。

経営業務管理責任者と専任技術者が不在の場合は、建設業許可を取得できず、両役職の人材確保しておかなければならない点も注意が必要です。

後継者不足

そして2つ目の課題が、後継者となる人材の不足です。

特に問題となるのが、先ほど紹介した「経営業務管理責任者」と「専任技術者」に該当する人材が不足していることです。

建設業許可を取得して営業をおこなうためには、上記2つの役職が在籍していることが条件であることを先ほど紹介しました。

実はこの2つの役職は、建設業における事業の経験年数が一定基準に達していないと選任することができません。

後継者が上記2つの役職の選定条件を満たしていれば問題ありませんが、そうでない場合は、外部から該当する人材を確保し社内に在籍してもらなければなりません。

個人・法人ともに特に「経営業務管理責任者」の条件を満たす人材が不足するケースが多く、事業承継をおこなう際には何らかの対策をおこなう必要があります。

ちなみに、「経営業務管理責任者」と「専任技術者」の条件は以下の通りとなっています。

経営業務管理責任者の要件
  • 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。
  • 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者であること。
  • 建設業に関し6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者であること。
  • 建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有し、かつ、5年以上役員等または役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理または業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
  • 5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者

【引用】国土交通省「建設業許可の要件」

専任技術者の要件

(一般建設業の場合)

  • 指定学科修了者で高卒後5年以上もしくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者
  • 指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者または専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士もしくは高度専門士を称する者

【引用】国土交通省「建設業許可の要件」

建設業における事業承継の注意点

建設業における事業承継の注意点

ここでは、建設業における事業承継の注意点について解説します。

具体的には以下2点の課題が挙げられます。

建設業における事業承継の注意点
  • 経営上の現状と課題を引き継ぐ
  • 従業員や取引先への理解を得る

経営上の現状と課題を引き継ぐ

事業承継をおこなう場合、経営上の現状と課題を、しっかり後継者に引き継ぐ必要があります。

後継者に引き継がなかった場合、経営上の課題が残り続けたまま事業を継続し続けることとなり、場合によっては、事業承継後に会社の経営が厳しくなる恐れも。

また、事業承継をスムーズに進めるためには、後継者が経営をしやすい環境を築いておくことが大切です。

事業継承では、株式や自社に存在する経営資源なども引き継ぐため、「何を引き継がなければならないか」を明確にさせておくべできしょう。

従業員や取引先への理解を得る

従業員や取引先から理解を得ることも大切です。

企業の場合、経営者が変わることで社内の雰囲気が変わったりと、関係者に大きく影響を与えることとなります。

特に従業員に十分に説明のないまま経営者が変わった場合、社内の混乱を招くかもしれません。

また、経営者との信頼関係で続いている取引先などは注意が必要です。

こうした取引先は経営者が変わった途端に取引を打ち切られてしまう可能性もあります。

経営者が変わることによる悪い影響が出ないよう、従業員や取引先には経営者が変わることに対してしっかりと説明をし、トラブルを防ぐことが大切です。

まとめ

建設業における事業承継は、近年数が増えているものの、後継者不足の問題など課題が山積している状況です。

事業承継では、単に事業を引き継ぐだけでなく、株や経営資源なども引き継ぐため、事前に何を引き継ぐべきか明確にしておく必要があります。

経営者の交代によるトラブルを未然に防ぐためにも、従業員や取引先など関係者への説明をしっかりとおこなっておくことが大切です。