建設業界は現在、建設物価の高騰とその波紋に直面している状況です。
原材料の供給不足、労務費の上昇、そして国際情勢の変動が原因となり、建設プロジェクトのコスト見積もりや予算策定に大きな影響を与えています。
このような背景から、建設物価とは何か、建設物価は業界でどのように活用されているのかを多方面から解説します。
建設物価への理解を深める貴重な情報を提供しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
建設物価とは
建設物価とは、建設業界における資材、労務、機械などの価格情報を総合した指標です。
この指標は、建設プロジェクトのコスト見積もりや予算策定において重要な基準となります。
一般財団法人建設物価調査会が発行する「月刊建設物価」では、多様な資材や労務費の最新情報を提供しており、業界関係者にとって貴重なデータソースとなっています。
建設物価について、より詳しく見ていきましょう。
建設物価の範囲
建設物価がカバーする範囲は広く、建設資材の価格、労務費、さらには建設機械のリース料など、建設プロジェクトに必要なほぼ全てのコスト要素を含みます。
例えば、以下のような価格を表示しています
- 建設資材・・・鉄筋、コンクリート、木材、ペイント、装飾材料など
- 労務費・・・現場で働く技術者の日給、時間給など
- 建設機械リース料・・・クレーン、ブルドーザーのレンタル費用など
建設物価の情報は、国内外の経済状況や市場の供給と需要のバランスによって変動するため、建設業界ではプロジェクトの予算や計画を適宜調整しています。
市場単価方式
市場単価方式とは、実際の市場での取引価格に基づいて建設コストを算出する方法です。
国土交通省は、公共工事において市場単価方式の使用を推奨しており、建設プロジェクトでは、市場の現実を反映したコスト見積りが可能となります。
2023年のように建設物価が高騰するような状況では、市場単価方式は特に重要となり、原材料や労働力のコストの増加に迅速に対応することが求められています。
市場単価方式の採用により、建設業界は市場の変動に柔軟に対応し、経済的なリスクを最小限に抑えることができるのです。
建設物価の活用法
建設物価は、プロジェクトの見積もりから実行まで、建設業界において不可欠な役割を果たします。建設物価が、どのように活用されるのかについて確認していきます。
公共工事と民間工事での活用
建設物価の情報は、公共工事と民間工事の両方で幅広く利用されています。
公共工事の場合、国土交通省の指針に従い、市場単価方式に基づく積算が一般的です。
これは、市場での実際の価格を反映させることで、より現実的な予算策定を可能にします。
例えば、最近の道路や橋梁の建設プロジェクトでは、建設物価の最新情報を積算に反映させ、コスト増加のリスクを最小限に抑えています。
一方、民間工事においても建設物価は重要です。
例えば、大手デベロッパーが行う商業施設の建設では、建設物価を基に材料コストを予測し、プロジェクトの初期段階で適切な予算計画を立てることが一般的です。
建設物価と積算ソフトウェアとの連携
建設物価の情報は、積算ソフトウェアと連携して使用されることが多いです。
積算ソフトウェアは、建設物価のデータベースを直接参照することで、積算業務の効率を大幅に向上させます。
積算担当者は、最新の市場価格をリアルタイムで積算に取り込むことができ、より正確で迅速な見積もり作成が可能となります。
建設物価を用いた予算管理
建設物価は、プロジェクト管理と予算計画においても中心的な役割を果たします。
プロジェクトの予算策定時には、建設物価を基にした市場の現状分析が不可欠です。
プロジェクトマネージャーは、材料費や労務費の変動を予測し、予算の過不足を防ぐことができます。
特に、建設物価の高騰が予想される場合、予算計画において追加のコストを見積もる必要があるため、財務的なリスクを管理することが可能です。
また、プロジェクトの進捗に応じて、定期的に建設物価のチェックを行い、予算を見直すことで、計画通りの進行を確実にできます。
建設物価指数とは
建設物価指数は、建設業界の価格動向を数値化したもので、建設市場の状況を測るための重要なツールです。
以下、建設物価指数について、詳しく確認していきます。
時系列指数と都市間格差指数の分析
建設物価指数には「時系列指数」と「都市間格差指数」の二つがあります。
時系列指数は、特定の期間内での価格変動を示し、市場のトレンドや経済の健全性を判断する際に役立ちます。
一方、都市間格差指数は、異なる都市間の建設コストの比較を可能にし、地域間の経済格差を分析するために用いられます。
例えば、2023年9月時点での建設工事費デフレーターの時系列指数は121.6%(2015年対比)となっており、市場の時間的な価格動向を反映しています。
建設物価指数を活用するメリット
建設物価指数を活用することには、以下のメリットがあります
- 建設プロジェクトの予算策定や見積もり作成において、より正確で現実的な価格を提供できる。
- 市場のトレンドや経済状況を把握することで、将来の価格変動に対してより良く備えることができる。
- 都市間格差指数を分析することで、地域に応じた建設戦略を立てる際の重要な情報を得られる。
以上の情報は、建設業界における意思決定を支援し、より効率的な経営戦略を実行するための基盤となります。
建設物価の現状と動向
近年、建設物価はさまざまな外部要因により大きく変動しています。
その背後にある原因について詳しく確認していきます。
近年の建設物価の高騰と原因
近年、建設業界は顕著な物価高騰を経験しています。
2023年に入り、エネルギーや原材料の価格が急速に上昇していることが主な原因です。
特に、建設資材の価格は新型コロナウイルスの影響を受けており、鉄筋や鉄骨、生コンクリートなどの価格が著しく上昇しています。
このように物価が高騰している状況は、建設プロジェクトのコスト見積もりや予算計画に大きな影響を与えています。
新型コロナウイルスの影響と建設物価
新型コロナウイルスの流行は、建設物価に大きな影響を及ぼしました。
パンデミックが発生して以降、建設業界では材料の供給不足や物流の遅延が発生し、建設物価の上昇に直接的に寄与しています。
その結果、建設資材の高騰や品不足といった問題を引き起こし、建設業界全体において今もなお大きな課題となっています。
国内外の経済状況と建設物価の相互関係
建設物価は、国内外の経済状況と密接に関連しています。
2023年の建設投資見通しによれば、建設への投資は前年比2.2%増の70兆3,200億円となる見通しであり、直近10年で最も高い水準です。
これに伴い、建設資材の需要が増加していますが、同時に資源の供給不足やエネルギー価格の高騰など、国際情勢の影響も受けており、建設物価の上昇を促しています。
さらに、2024年の働き方改革関連法の建設業への適用や労働者不足の問題も、建設物価に影響を与える要因となっています。
【出典】報道発表資料:令和5年度(2023年度)建設投資見通し-国土交通省
建設物価の将来の見通し
現在の建設市場は、2024年問題や労務費の変動などさまざまな課題に直面しています。
これらの課題が、建設物価に与える影響について詳しく確認していきます。
2024年問題の影響
2024年問題は、建設業界において大きな転換点となると予想されています。
これは、働き方改革関連法の建設業への適用が完全に行われる年で、特に時間外労働の上限が厳格に定められます。
この法律の適用により、建設業界では労働時間の短縮が求められ、労働者不足をさらに深刻化させる可能性があります。
また、運送業にも法律が適用されるため、物流分野全体に影響がおよび、建設物価上昇の一因となる可能性が高いです。
このような背景から、建設業界では労働力の確保と効率化が今後の大きな課題となると予想されます。
労務費の変動と建設市場
労務費の変動は、建設市場に大きな影響を与えます。
近年、建設業界では高齢化に伴う技能労働者の不足が問題となっており、これが労務費の上昇につながっています。
2023年3月の国土交通省のデータでは、公共工事における労務単価は前年比5.2%増加しており、この原因は労働力不足と労働者の適正報酬確保によるものです。
労務費の上昇は、建設プロジェクトのコスト増加に直結するため、建設業界全体の収益性に影響を与えることが予想されます。
【出典】報道発表資料:令和5年3月から適用する公共工事設計労務単価について
今後の建設物価の予測
今後の建設物価の予測には、複数の要因が関与します。
エネルギー価格の高騰、原材料の供給不足、労働力不足、国際情勢の変動などが、建設物価に影響を及ぼす主要な要因です。
これらの要因を考慮すると、少なくとも短期間においては建設物価の上昇傾向が続くことが予想されるでしょう。
また一方で、技術革新やデジタル化の進展が建設業界の効率化を促し、中長期的には建設物価の安定化に寄与する可能性もあります。
しかしながら、国際情勢の不確実性や資源の供給問題が続く限り、建設物価の将来的な予測は非常に困難です。
まとめ
本記事では、建設物価の概要から具体的な活用法、今後の市場見通しに至るまで、多角的に解説しました。
建設物価を正しく理解することが、プロジェクトの成功と業界の持続的な発展のカギとなるでしょう。
特に2024年問題における対応や労務費の上昇などは、今後の建設市場に大きな影響を及ぼすため、予測と準備が必要です。
建設物価の今後の動向を予測することで、より効率的で経済的な計画と戦略を立てることができます。
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