減価償却費は長期使用が想定される固定資産にかかる費用を計上する際に用いられる、会計上の重要な費目です。
減価償却費についてしっかりと把握しておくことで、節税や損益の把握を適切に行えるようになります。
建築業においても資材運搬用の車両やブルドーザーなどの重機を取り扱う機会が多いため、決して無縁ではありません。
今回は減価償却費について、減価償却を行うメリットや建築業における減価償却の対象資産から、計算方法や仕訳方法など会計上の処理方法まで解説します。
目次
減価償却とは
減価償却とは、長期的に使用できるような固定資産について購入時に一括で費用計上するのではなく使用可能期間で分割して計上する会計処理手続きのことです。
詳しい計算方法については後ほど「減価償却費の計算方法」でお話しますが、例えば300万円の普通自動車を購入した場合、購入した年に一括で300万円費用計上するのではなく50万円ずつ6年かけて費用計上するといった会計処理方法です。
なお減価償却の対象となる資産を減価償却資産といい、減価償却で使用する勘定科目を減価償却費といいます。
また、減価償却を行う際に想定される使用可能期間(上の例では6年)のことを耐用年数といい、減価償却資産の種類ごとに法律によって定められたものを法定耐用年数といいます。
減価償却がなぜ必要なのか、また建設業界における減価償却資産にはどのようなものがあるのかを理解するため、まず以下の2点を確認しておきましょう。
- 減価償却のメリット
- 減価償却の対象
減価償却のメリット
減価償却を行うメリットとしては、主に以下の3点があげられます。
- 法人税の節税
- キャッシュの内部留保
- 損益の正確な把握
法人税の節税
減価償却によって減価償却資産の購入費用を分割して経費計上することで、償却が完了するまでの間コンスタントに法人税額を抑えられます。
これは基本的な経費による節税効果に基づいて考えられるもので、経費計上によって利益を抑えることで節税にもつながるためです。
しかしそう考えると一括で購入費用を経費計上した場合さらに大きな節税効果が得られると想定されますが、減価償却での節税効果は一定期間コンスタントに節税できる点が大きなポイントです。
仮に減価償却を行わず購入年に一括で費用を経費計上すると、その年は大きな節税効果が得られますが翌年以降は全く節税効果が得られません。
一方で減価償却によって分割して経費計上すると、償却を完了するまで一定の節税効果が得られます。
コロナウイルスによって突然経済や社会が変化したことからも分かるように経営を想定通りに進めることは容易ではないため、このようにコンスタントに節税効果を得られることは大きなメリットといえるでしょう。
コンスタントに節税効果が得られる減価償却ですが、取得価格が30万円未満の減価償却資産については「少額減価償却資産の特例」によってインスタントに(即時)全額経費計上することも可能です。
ただし少額減価償却資産の特例は、中小企業のみに認められています。
キャッシュの内部留保
減価償却は会計上の処理であるため、翌年以降の経費分については費用として計上されるものの実際に支出が発生するわけではありません。
このため翌年以降減価償却によって計上した分キャッシュは、実質的に企業内部に留めておくことができます。
ただしあくまでも稼いだ分の資金の流出を防ぐ効果に過ぎないため、減価償却費と同額の現金留保を確約するものでもなく基本として資金を稼ぐ必要がある点には注意が必要です。
損益の正確な把握
そもそも減価償却では、資産が長期的に使用される中でその効用を失っていくことを前提としています。
実際に減価償却の対象となる資産は長年使用するにつれて損耗していくものであり、減価償却を行わずに購入年のみ費用を計上してしまうと翌年以降その資産がどれだけの損益をもたらしているのかを正確に把握できません。
減価償却では耐用年数に基づいて購入費用が計上されるため、使用期間中その資産が損益に与える影響を適切に把握できるようになります。
減価償却の対象
減価償却の対象となる減価償却資産は基本的に、以下のように定義されています。
なお対象となる固定資産には、建物や機械、車両や工具などの有形固定資産のほか、ソフトウェアや特許権、商標権といった無形固定資産も含まれます。
この基本的な定義を踏まえ、建築業において減価償却資産となりうるものは以下の通りです。
- 机や椅子、ロッカーやエアコンなどの事務用設備
- パソコンやコピー機、プリンターなどの事務用機器
- トラックなどの建材運搬用車両
- 普通乗用車などの移動用車両
- 発電機やコンクリートカッターなどの機材
- ブルドーザーやパワーショベルなどの重機
- 排砂菅や可変式コンベヤ、ジーゼルパイルハンマーやアスファルトプラントなどの工事設備
このように建築業における減価償却資産はオフィス内のものから工事用の設備まで大小さまざまですが、これらのそれぞれに法律によって耐用年数が定められています。
減価償却費の処理方法
減価償却の基礎について押さえたら、次に具体的な処理方法について理解しましょう。
実際に減価償却費を計上するために知っておくべき処理方法として、以下の2点を解説します。
- 減価償却費の計算方法
- 減価償却の仕訳方法
減価償却費の計算方法
減価償却費を計算する方法としては、定額法と定率法の2つが存在します。
定額法
定額法とは、減価償却資産の購入費用を毎年一定の額で経費計上する計算方法です。
このため定額法による減価償却費の計算式は、以下のようになります。
定額法の償却率は基本的に取得価格を耐用年数で割ることで求められますが、厳密には「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表第七および第八の定めるところに基づきます。
例えば耐用年数5年の資産を150万円で購入して定額法で減価償却を行った場合、償却率は0.2のため毎年30万円を5年間減価償却費として経費計上します。
なお最終年の計上については、上の例であれば29万9,999円など1円残るように行います。
その減価償却資産がまだ残っているものとして固定資産台帳に記載しておくためのものであり、これを「備忘価格」と呼びます。
ソフトウェアなどの無形固定資産については、備忘価格を残す必要はありません。
定率法
定率法とは、1年目に大きな減価償却費を計上し、その後徐々に償却額が減少していく計算方法です。
定率法による減価償却費の計算は、以下のように一定の償却率をかけて毎年決定されます。
定率法の償却率は定額法同様 「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」 によって定められており、別表第九および第十にて確認できます。
例えば耐用年数5年の資産を150万円で購入して定率法で減価償却を行った場合、償却率は0.4のため1年目の償却額は60万円、2年目は残りの90万円に0.4をかけた36万円、3年目は残りの54万円に0.4をかけた21万6,000円と減少していきます。
なお最終的には定額法と同様、1円の備忘価格を残します。
減価償却の仕訳方法
減価償却費の仕訳方法としては、直接法と間接法の2つが存在します。
直接法
直接法とは、減価償却費を固定資産の金額から直接差し引く方法です。
例えば150万円で取得した資産Aを定額法で減価償却した場合、直接法によって仕訳を行うと以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | 300,000円 | A | 300,000円 |
間接法
間接法とは、減価償却累計額を計上することで間接的に減価償却費を差し引く方法です。
例えば150万円で取得した資産Aを定額法で減価償却した場合、間接法によって仕訳を行うと以下のようになります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
減価償却費 | 300,000円 | 減価償却累計額 | 300,000円 |
まとめ
今回は減価償却費について、減価償却を行うメリットや建築業における減価償却の対象資産から、計算方法や仕訳方法など会計上の処理方法まで解説しました。
減価償却は法人税の節税をはじめ、キャッシュの内部留保や損益の正確な把握につながる重要な会計処理といえるでしょう。
ただしそのような減価償却の恩恵を受けるためには、取り扱う機器や設備について正確に把握しておく必要があります。
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