建設業界では新規着工数自体が減少傾向にありますが、同時に大工も減っています。
新規雇用が減り、高齢の技術者が引退していくためです。
しかし、今後も建設事業を続けていくためには人手不足の問題を解決しなければなりません。
そこでこの記事では、大工の人手不足の概況や人手が足りない原因と対策、今すぐにできる対処法を解説します。
目次
大工の人手不足とは
総務省の国勢調査をもとにしたデータによると、2020年には9万人の大工がいなくなってしまい、建設業界は人手不足になると言われていました。
2022年もこの大工不足はまだ改善されておらず、大工の数が減り若い雇用が確保できない状況です。
熟練の技術を持った大工が減り、身体の事情で引退する人が増えてしまいます。
大工の高齢化と雇用確保の困難さは、建設業界では避けられない議論です。
大工の人手不足が起きる原因
大工の人手不足の原因は主に以下の5つです。
問題に対処するためには原因を知り、そのうえで対策を考える必要があります。
どうして高齢の大工が増えてしまい、若手が入ってこないかを客観的に考えてみましょう。
若い大工志望者の減少
大工の人手不足の一番の原因は、若い大工志望者の減少です。
職人の仕事は3K(汚い・きつい・危険)なイメージがあり、就職したい若者が減っています。
そのため大工を志す若者が減り、新規雇用が難しいです。
熟練大工の引退
熟練技術を持った大工が高齢化し、年齢を理由に引退していくことも人手不足の原因です。
通常は世代交代の際は若手に引き継ぎしますが、若手がいないため技術継承者がいません。
ベテラン大工が減るため単純に人手が減り、ノウハウも失われています。
大工の賃金
求人ボックス 給料ナビの情報によると、大工の平均年収は404万円です。
日本の平均年収と比較して低い傾向にあり、仕事としての魅力が低いでしょう。
現役の大工の方でも収入を上げたいとほかの企業や職種へ転職する人もいます。
大工の労働条件の悪さ
大工の作業の提示は朝8時から17時までですが、残業して片付けをしてその後事務所へ戻って事務作業することもあります。
そのため長時間労働になりやすいでしょう。
現場によっては夜勤が入ったり、週休2日が保証されていないこともあります。
労働条件的に良いとはいえないため、理想の仕事として選ばれづらいです。
ベテラン大工のノウハウの継承問題
大工の技術を承継する困難さも、建設業界では大きな問題になっています。
建設業界では「背中を見て覚える」のが通例化しており、明確なノウハウのマニュアル整備が進んでいません。
作業現場でベテランに質問する機会もなく、判断基準を学ぶ機会が少ないです。
そのためベテラン大工のノウハウや技術が継承されず、技術力不足になり若手が育ちません。
大工の人手不足を解消する具体的な方法
次に、大工の人手不足を解消する具体的な方法について解説します。
建設業界の人手不足を解決するためには、企業や業界全体の体制を変える必要があるでしょう。
具体的にどのような案があるかを説明します。
労働環境の改善
大工の人手不足を解消するために、労働環境の改善が必要です。
労働環境の整備は大手ゼネコンを筆頭に進んでいますが、まだ中小規模の工務店では確立されていません。
例えば建設DXを推進し、作業ロボットを導入して重作業を機械がおこなうようになれば、高齢の大工も軽作業や判断面で働いてくれる可能性があります。
また、きついというイメージを改善できるため、大工になりたい若者が増える可能性もあるでしょう。
作業フローの効率化
現場の作業フローを効率化し、省人化を図る必要があります。
現時点では現場作業は「人がおこなわなければならない」現状がありますが、作業ロボットや建設DX導入により、現場に行かなくても作業可能になるでしょう。
また工事現場の省人化が進み、より効率化されれば作業にかかる人員自体が不要になるため、人手不足も解消します。
雇用を増やすという観点と同時に、作業を軽減する視点をもつべきです。
建設業界の業務改善のアイデアはこちらの記事を参考にしてください。
福利厚生の改善
若者の雇用を促進するために、福利厚生の改善にも着手しましょう。
就職の際に給与面だけでなく、福利厚生面は重視されます。
例えば休日保証や有給の取りやすさ、退職金などを整えて若者が入社したいと思う企業体制を整えるべきでしょう。
しかし福利厚生の保証には経費がかかります。
その経費を捻出するためには作業の効率化や生産管理を進めてコストを抑え、浮いた経費を福利厚生面に使用する必要があるでしょう。
建設業界で週休2日制を導入する方法を以下の記事で紹介しているので、併せて参考にしてください。
若手へのノウハウ共有
若手へのベテラン技術のノウハウ承継に、建設DXが有効です。
例えばウェアラブルカメラを導入し、ベテラン作業員の視点で作業を見せて若手大工に技術を承継させられます。
また、3Dモデルとウェアラブルカメラを組み合わせて録画し、ベテランの作業時の判断を若手大工に視覚的に見せて履修させる方法も開発されました。
建設DXによって実現したベテラン技術の承継を取り入れ、若手の技術者を育てるべきです。
給与の見直し
大工の給与は安い、というイメージを払拭するために賃金の見直しも必要です。
もちろん給与額を増やすことは容易ではありませんが、現実的に400万円以上の年収は見込めないという現状が大工という職業への魅力を損なっています。
効率化をおこなってコストをカットし、無駄な人件費や経費を省いて作業員への給与を高める努力は必要です。
女性の雇用の促進
日本政府も建設業界の人で不足を懸念しており、女性の雇用促進に取り組んでいます。
国土交通省が発表した「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」においても、女性が働き続けられる職場を目指す取り組みがおこなわれています。
女性が働きやすい仕組みづくりに欠かせない産休・育児休暇、フレックス制の導入も必要でしょう。
また、男性と比べて非力な女性でも作業ができる作業ロボの導入で、女性の大工志望者が増える可能性もあります。
大工の人手不足に悩む工務店が今すぐできる改善案
大工が足りずに悩んでいる工務店が今すぐにできる改善案をご紹介します。
取り組めることから、大工の人手不足を解消する方法を考えていきましょう。
建設DXの推進
まず第一に建設DXの導入が考えられます。
大規模作業ロボットなどは経費の面から難しいかもしれません。
そこでおすすめなのが、自社の事務作業の効率化です。
例えば工務店向けの施工管理システムを導入して作業を効率化し、作業を軽減すれば事務所へ戻る必要がなくなり、残業時間も減るでしょう。
また、ウェアラブルカメラなどは比較的安価で導入できるため、作業継承を考えて購入・利用することもおすすめです。
建設DXについてはこちらの記事で紹介しています。
基幹システムの見直し
建設DXの推進は政府をあげて推奨されていて、数年間で建設業界全体でDX化を目指しています。
営業支援ツールやMA(マーケティングオートメーション)システムを利用して営業や顧客へのプロモーションを促進すれば、労働環境の改善が可能です。
また、システムの見直しでより効率的なツールを利用すれば、作業員や現場監督の事務作業や生産管理を効率化できるでしょう。
基幹システムの導入にはコストがかかりますが、結果的に事務作業やアナログ作業を軽減する効果があります。
まとめ
大工の人手不足は建設業界を直撃する深刻な問題です。しかし、建設DXの導入で現場で作業する大工の環境を整備し、新規雇用を促進できます。
建設DXと言われても何もしたら良いのかわからない方は、まずは工務店向けのシステム導入がおすすめです。
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