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建築AIでなにができる?目標は生産性20%アップ!

建築AIでなにができる?目標は生産性20%アップ!

AIとは「人工知能」の意味ですが、全体で統一された定義があるわけではありません。AIが得意とする分野では、人間を超えた能力を発揮します。国土交通省が掲げている「生産性20%アップ」という目標のために、AIなどのICTが求められています。

今回はAIの概要や建築業界で求められる理由、導入事例について解説します。

AIとは

AIとは

AIとは、「Artificial Intelligence」の略語であり、人工知能という意味です。一般的には「人間のように知覚・知性を持つロボット」というイメージを持たれていますが、正確にいえば、一定の定義があるわけではありません。さらにAIの研究は発展途中にあり、SF映画に登場するようなすべての問題に答えられ、人間と同じ感情を有すAIは現時点で存在しません。

一方で特定の分野に絞れば、現在までのAI技術でも人間を凌駕する能力を発揮しています。AIが囲碁の世界トップ棋士を倒したり、平均的な医師よりも正確な診断能力を有したりと、さまざまな事例が存在します。

AIができること・できないこと

AIの機能特徴を大まかにまとめると、以下の通りとなります。

AIができること(得意なこと)AIができないこと(苦手なこと)
・膨大なデータの処理、判断
・単純なくり返し作業
・感情を理解すること
・クリエイティブ作業

膨大なデータの処理、判断

膨大なデータを一つひとつ処理したり、判断したりする作業を人工知能は正確に行います。必要なことはデータを処理・判断するためのルールであり、プログラミングやアルゴリズムなどにより設定できます。24時間365日稼働しても疲れないAIならではの特長です。世界中のデータから瞬時にほしい情報を見つけられる、インターネット検索は最たる例といえるでしょう。

単純なくり返し作業

型の決まっている作業を、ひたすらくり返すことも得意分野です。身近な例には、エクセルの計算表を挙げられます。計算式を入力しさえすれば、エンターキーを押すだけで複雑な計算も正確に行ってくれます。大規模な物流倉庫でも、商品を指定するだけでロボットが自動で運んできてくれます。完全無人のコンビニも米国で登場するなど、単純作業はロボットにとって代わられるでしょう。

感情を理解すること

簡単にいえば、人の気持ちを汲んで「空気を読むこと」を苦手とします。データなどの事実に基づく作業は得意ですが、複雑かつ変動的な感情を認識することは難しいです。例えば「泣いている」という事実があっても励ますべきか、放っておくべきかはシーンに応じて異なるでしょう。

クリエイティブ作業

AIに大量のデータを学ばせることで、絵を書いたり、曲を作ったりすることは可能となっています。しかしながら、まったくのゼロから直感的に、創造性を働かせることは難しいです。デザイン・音楽といったクリエイティブ分野を苦手とします。

建築業界でAIが必要な理由

建築業界でAIが必要な理由

国土交通省は建築業界における政策として、2025年までに現場の生産性20%アップを目標とする「i-Construction」を掲げました。そのために調査・測量から設計、施工、検査、点検といった建設の生産プロセスにICTを活用する、としています。このICTにはIoTやビックデータ、AIが含まれているといわれています。

では、なぜ生産性向上を求められているのでしょうか。

AIが必要な理由
  • 人手不足
  • 労働環境の悪化
  • 生産性の低下

人手不足

日本全体に少子高齢化の波が押し寄せていますが、建築業界も例外ではありません。

2014年に就業していた技能労働者約340万人のうち、約110万人が10年以内に高齢化などで退職・離職する可能性が高いといわれています。(110万人は2014年時点で50歳以上の労働者)一方で、若手人材の入職も少なく、29歳未満は全体の1割にも達していません。

熟練層が抜けた穴をこれまでより少ない人数で埋めることになり、人手不足は免れません。限られた人手で効率的に業務を進めるため、AIの力が求められているのです。

労働環境の悪化

これまで、建設業は他産業と比較しても労働賃金・労働時間・労働災害などの観点で「労働環境が悪い」というイメージを持たれてきました。

実際に、2015年の調査では製造業の労働者よりも、大工・とび・鉄筋など職別工事業労働者の賃金が10%低い水準に。また別の調査では、月間の休日数を約6割が「4日」と答えており、死傷事故の発生率も全産業より高い水準となっています。

若者が入職しない理由にも挙げられており、人材確保のために労働環境を改善しなければなりません。

生産性の低下

少ない休暇日数で、長時間労働を続けていると生産性は低下していまします。業務の幅は現場作業だけでなく、膨大な事務作業も含まれます。書類作成に必要となるデータを、紙やエクセルで管理している会社も多く、非効率を招いています。

これら3つの要素が絡み合って、ますます生産性は低下しています。現状を打破するために、AIの導入が求められているのです。

AI導入事例集

AI導入事例集

以下では3つの事例を紹介します。

AI導入事例集
  • 無尽施工機
  • 工事進捗管理
  • 風速予測

無人施工機

工事現場では重機を操作する人員はこれまで欠かせませんでした。しかし今後は人員を割く必要は無くなるかもしれません。

大成建設は、振動ローラーを無人で操作するシステムを開発しました。振動ローラーを無人で安全に動かすために、自律運転を行う「走行制御システム」と、人・モノと接触しない「人検知止システム」にAIを採用しました。走行の誤差は20cm以下、カメラ画像で人を検知すると止まります。

これを応用することで他の重機も自動で運転できると期待され、生産性の向上につなげられるでしょう。

工事進捗管理

最近では、工事進捗を施工管理者が現場に設置している定点カメラの映像を確認し、状況の判断をしていました。しかし映像だけでは、進捗状況がパッと見ただけでわからなかったり、施工量・距離・面積などの定量的な情報がわかりにくいという課題もありました。そこで登場したのが「工事進捗管理システム」です。

リアルタイムで撮影している映像を、3D映像に変換して関連する施工データを表示することができます。進捗状況を直感的にわかりやすくなるでしょう。また、タッチパネルに触れるだけで任意のエリアの面積・距離を算出できます。さらに、映像内で動いている重機(ダプ・バックホウ・ブルドーザなど)を識別し、30分ごとの運搬台数を把握することも可能です。

遠隔地からでもこれらの情報を確認できれば、スムーズな施工管理を行えるでしょう。

風速予測

高精度かつピンポイントの気象予測を可能とするAIです。工事現場では突風にあおられクレーン転倒などの事故が発生したり、作業の遅延を招いたりといった自体がありました。しかし、一般の天気予報では細かな地域の予報までは見れません。

そこで風速系データ・気象観測データを学習したAIに、工事現場の約6時間後までの風速を予測させました。風速を把握することで、危険を察知したり、効率的な作業スケジュールを組むことができるでしょう。

まとめ

AIを建築現場に導入することでこれまで生じていた「人手不足」「労働環境の悪化」「生産性の低下」などの課題を改善できると期待されています。今後も研究を続ければ、少ない人員でより高い生産性を発揮できるでしょう。