電力の使用状況を詳細に確認できるようになる「電力の見える化」。
省エネにつながるとして、企業や住宅への導入が推進されているため住宅事業者にとっても理解しておくことが必要ですが、電力の見える化と一口にいっても方法はさまざまです。
今回は電力の見える化について、その背景と目的から導入方法、メリットまで解説します。
目次
電力の見える化とは
電力の見える化とは、文字通り電力の使用状況を可視化することです。
ただし電力の使用状況を可視化すると一口にいっても、「月単位で使用状況を可視化すること」と「時間や設備ごとに使用状況を可視化すること」では、把握できることなどに大きな差があります。
このように電力の見える化は、言葉だけでなく内容までしっかりと把握することが重要になるため、理解を深めるためにまずは以下の点について確認しておきましょう。
電力の見える化の背景
電力の見える化が推進される背景には、東日本大震災後に電気需要の平準化が必要となったことがあげられます。
電気需要の平準化とは季節や時間帯によって生じる電気需要のバラつきを小さくすることで、2013年の「省エネ法」改正以降より推進されているものです。
2011年に起こった東日本大震災以降、電気使用の抑制と効率的な運用が求められました。
しかし電気はピーク時の需要に合わせて供給しなければならないため、需要が突出する季節や時間帯があると効率的な運用ができません。
こういった状況を解決するため、夏季と冬季の昼間の電気需要を抑えて平準化しようという取り組みが始まりました。
電気需要の平準化では、季節別や時間帯別での電気使用量を正確に把握する必要があるため、電気需要の平準化に伴って推進が始まったのが電力の見える化です。
電力の見える化の目的
電力の見える化の目的としては、まず見える化による省エネ行動の促進があげられます。
電力の見える化そのものに省エネ効果はありませんが、時間帯や電気設備ごとの使用量や無駄をはっきりと認識することで省エネ行動の促進が可能です。
環境省「電気の「見える化」と「アフターフォロー」」においても、電気を見える化する前と後では電力使用量が1,851kWh削減でき、その割合は3.6%にもなったというデータが発表されています。
また個人や企業など個々の省エネ行動を促進するほかに、スマートコミュニティの形成も期待できるでしょう。
スマートコミュニティとは、エネルギーや電力の消費が効率化された環境負荷が小さい地域のことです。
住宅やビルなどにおいて電力の見える化が普及することで、電力需給の最適化につながりスマートコミュニティの形成にも貢献できます。
電力の見える化の方法
電力の見える化を行うための方法はいくつかありますが、方法ごとに得られる結果や効果が異なるため、ここでは代表的な方法として、以下の3つを解説します。
従来型メーター
電力の見える化を行う最も簡単な方法は、従来型のメーターを使って毎月の検針票などから使用量を確認・比較することです。
新たな機器などを導入する必要がないため簡単かつ迅速に始められますが、月単位の総使用量しか確認できないため時間別や電気設備別など詳細な使用料を確認することはできません。
毎月比較を行うことで多少の省エネ意識につながる可能性はありますが、確実に省エネ効果を得ることは難しいでしょう。
電力計測器
「電力計測器」をさまざまな箇所に取り付けることで、時間単位や設備単位での電力の見える化が可能となります。
電力計測器の例としては、以下のようなものがあげられます。
HEMS・スマートメーター
HEMSやスマートメーターを導入すると、電力を見える化するとともに高い省エネ効果を得られます。
HEMSとは、各電気設備の使用量の見える化に一元管理・制御の機能を加えたシステムのことで、スマートメーターとはHEMSの導入に必要な、通信機能を備えた電力量計のことです。
電気設備ごとの使用状況を期間指定で確認できるほか電気設備の自動制御なども行えるため、非常に高い省エネ効果が期待できます。
電力の見える化のメリット
電力の見える化を行うことで、使用状況を確認できるほかにさまざまなメリットが期待できます。
電力の見える化による主なメリットは、以下の4つです。
無駄の削減
最も基本的なメリットとしては、何といっても電力消費の無駄を削減できることです。
時間別や設備別で電力を見える化することで、「どの時間帯に」「どの電気設備で」「どれだけの電力が」消費されているかが確認可能なため、ピンポイントで無駄を削減できるでしょう。
環境省「電気の「見える化」と「アフターフォロー」」の報告でも、電力の見える化を行う設備の導入後に、3割程の省エネ効果があったと報告されています。
見える化に加えて、電気設備の管理・制御機能を備えたHEMSなどを導入することで、さらに高い効果が期待できるでしょう。
電気代の最適化
電力の無駄を削減することに伴い、電気代も必要最低限に抑えられます。
電力消費量の減少に伴う電気代の抑制はもちろん、電力料金プランまで見直すことが可能です。
電力の見える化を行うと曜日別や時間別で電力使用量を把握できるため、曜日や時間帯で料金が異なる料金プランを検討・選択する際の判断材料となるでしょう。
楽しく省エネ
省エネには我慢するイメージが強いかもしれませんが、電力の見える化を行うと楽しく省エネを行うことができます。
日別や時間帯別、設備別など細かく使用状況が確認できるほか、省エネ対策の効果も一目で確認しやすいため、楽しみながら省エネに貢献することが可能です。
また見える化を実施する機器によっては、目標値の設定や省エネのランキング表示などの機能を備えたものもあるため、社内における省エネに対するモチベーションアップにもつながるでしょう。
不在時の防犯や見守りにも有効
意外に思われる方が多いかもしれませんが、電力の見える化は事務所不在時の防犯や見守りにも有効です。
電力の見える化を行うと、出先からでも電力の使用状況がリアルタイムで確認できるため、外出後であっても事務所・オフィス状況の変化を把握できます。
まとめ
今回は電力の見える化について、その背景と目的から導入方法、メリットまで解説しました。
電力の見える化には従来型メーターを使用する方法や電力計測器を使用する方法、HEMSを導入する方法などさまざまな方法があり、それぞれ得られる効果が異なります。
電力の見える化など、新たな技術を導入する際には既存の業務も見える化・効率化しておくことをおすすめします。
既存の業務を見える化・効率化するためには、工務店向けのソフトウェアを導入すると良いでしょう。
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エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。
電気設備とコンセントの間に取り付けて電力測定を行うため、電気設備ごとの測定が可能。
分電盤に取り付けて電力測定を行うため、リアルタイムでの電力使用状況が確認可能。
また機種によっては使用量を記録することもでき、時間単位や日次、月次での確認も可能。
電力使用状況を24時間監視する企業向けの装置で、リアルタイムでの電力使用状況や期間ごとの使用状況が確認できるほか、あらかじめ設定しておいた消費電力を超えそうになった場合に警告を発することも可能。
またデマンドコントローラーを使用することで、警告時に電気設備を制御して電力消費を抑えることも可能。