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建設業の原価計算はなぜ難しい?効率化する方法を解説

建設業の原価計算はなぜ難しい?効率化する方法を解説

建設業における原価計算は、工事の完成と企業の健全な経営を支えるために欠かせない業務です。

しかし、建設業は他の業種にない特有の要素が多く絡み合うため、計算が非常に複雑です。

本記事では、建設業の原価計算がなぜ難しいのか、その理由を詳しく解説し、効率化するための具体的な方法を紹介します。

本記事は下記のような方におすすめです
  • 建設業の原価計算の難しさを理解したい
  • 建設業特有の勘定科目について知りたい
  • 原価管理を効率化する方法を見つけたい

建設業の原価計算が重要な理由

建設業での原価計算がなぜ重要なのか、その理由を解説します。

建設業の原価計算が重要な理由
  • 工事別の原価管理
  • 建設業許可の維持

工事別の原価管理

建設業では、工事ごとに発生するコストを詳細に把握し、適切に管理する必要があります。

工事別の原価管理によって、以下のようなメリットを得られます。

コストの見える化

工事別の原価を詳細に把握できれば、どの工事にどれだけの費用がかかっているのかが一目でわかります。

【例】現場作業員の過剰配置による労務費の予算超過が発生し、即座に調整を行う

利益の確保

工事別の原価管理の徹底によって、無駄なコストを削減し利益を最大化できます。

【例】工事の進捗に応じて資材を適切に発注し、在庫管理の効率化によってコストを削減

経営判断

工事別の原価を正確に把握し、どの工事が利益を生んでいるのか、どの工事が赤字となっているのかを明確にできます。

【例】収益性の低い工事の受注戦略を見直し、企業全体の収益を改善

建設業許可の維持

建設業法では、一定の基準を満たして建設業の許可を取得し、その後も定期的な更新が求められています。

建設業許可を取得するためには「完成工事原価報告書」を提出し、工事にかかった材料費、労務費、外注費などを正確に報告しなければなりません。

もし、不正確な報告があれば、許可の更新が難しくなり、企業の信用を損なうリスクがあります。

正確な報告を行うには、日々の原価管理を徹底し、工事別のコストの詳細な把握が不可欠です。

建設業の原価計算はなぜ難しいのか?

建設業の原価計算はなぜ難しいのか?

建設業における原価計算は、多くの要因が絡み合うため非常に複雑です。

ここでは、どのような要因が原価計算を難しくしているのかを具体的に解説します。

建設業の原価計算はなぜ難しいのか?
  • 特有の勘定科目
  • 外注費の管理
  • 共通費の存在
  • 売上・原価の計上タイミング
  • 材料費や労務費の変動

特有の勘定科目

建設業会計には、一般の企業会計とは異なる特有の勘定科目が多数存在します。

これらの勘定科目の理解が、建設業の原価計算の難しさの一因となっています。

以下は、建設業特有の代表的な勘定科目です。

建設業会計の勘定科目解説企業会計の勘定科目
完成工事未収入金完成した工事の代金でまだ受け取っていない金額工事が完了し、引き渡したが、まだ支払いが行われていない場合に計上売掛金
未成工事支出金工事が完了する前に発生した費用材料費、労務費、外注費、経費が含まれ、工事完了後に完成工事原価に振替仕掛品
完成工事原価完成した工事の原価材料費、労務費、外注費、経費が含まれ、工事完了後に未成工事支出金から振替売上原価
完成工事高完成した工事の総収入工事が完了し、引き渡し後に得られる収益として計上売上高
未成工事受入金工事が完了する前に受け取った代金工事の進捗に応じて部分的に受け取った場合に計上前受金
工事未払金工事費用のうち、まだ支払っていない金額材料費、労務費、外注費、経費が含まれる買掛金
建設業の会計とは?特徴から勘定科目まで解説

外注費の管理

外注費とは、工事の一部を外部の業者に委託する際に発生する費用です。

例えば、大型ビルの建設工事では、専門的な配管工事や電気工事を外部の業者に依頼します。

外注費の管理が難しい理由は、外注先の業者との契約内容が複雑である点です。

配管工事を外部業者に委託した場合、材料費や労務費などを正確に管理し、原価計算に反映させなければなりません。

そのためには、進捗状況や費用の発生状況を常に把握する必要があります。

定期的な打ち合わせによって進捗を把握して、予算オーバーのリスクを早期に発見し、対策を講じます。

共通費の存在

共通費とは、特定の工事に直接関連せず、複数の工事に共通して発生する費用を指します。

共通費は主に「共通仮設費」「現場管理費」「一般管理費」に分けられます。

共通仮設費

工事を進めるために必要となる仮設設備や、工事用のインフラ整備にかかる費用を指します。

【例】工事現場を囲む仮囲いや足場の設置、工事用の電力供給設備など

現場管理費

工事現場で働く作業員の給与や福利厚生費用、現場管理者の人件費などを指します。

【例】現場の安全管理を担当する現場監督の給与や、作業員の社会保険料など

一般管理費

建設会社の本社で発生する経費を指します。

【例】経理部門や人事部門の人件費、オフィスの賃貸料や光熱費など

複数の工事を同時に進行している場合、共通費をどのように各工事に配分するかが問題となります。

正確な配分を行うためには、工事別の進捗状況や費用の発生状況を詳細に把握しなければなりません。

売上・原価の計上タイミング

建設業における売上や原価の計上タイミングは、他の業界とは異なり非常に特殊です。

他の業界では、商品を仕入れた時に原価を計上し、商品が売れた時に売上を計上するケースが一般的です。

しかし、建設業では工事の進行が長期間にわたる場合が多く、以下のように売上・原価の計上のタイミングが単純ではありません。

工事進行基準の適用

建設業では、工事の進捗に応じて売上や原価を計上する「工事進行基準」が採用されます。

これは工事が完了する前に、進捗度合いに応じて収益や費用を部分的に計上する方法です。

例えば、プロジェクトが全体の30%進行した時点で、その30%に相当する売上と原価を計上します。

未成工事支出金の計上

工事が進行中の場合、発生した費用は「未成工事支出金」として計上されます。

これは、工事が完了するまでの間に発生する材料費、労務費、外注費などを資産として扱う科目です。

工事が完了すると「完成工事原価」として振り替えられ、最終的な原価として計上されます。

未成工事受入金の計上

一方、工事が完了する前に顧客から受け取る前受金は「未成工事受入金」として負債に計上されます。

これは、工事の進捗に応じて部分的に工事代金を受け取った場合に適用され、収益の計上を工事の進捗と一致させるための方法です。

工事が完了すると「完成工事高」として振り替えられ、最終的な売上として計上されます。

新収益認識基準の影響

2021年に新しい収益認識基準が導入されました。この基準では、契約内容の履行に基づいて収益を認識するタイミングと金額が厳密に定められています。

建設業では、履行義務が充足されたかどうかの判断が、工事現場の状況に即して求められています。

【参考】「収益認識に関する会計基準」への対応について|国税庁

材料費や労務費の変動

建設業において、材料費や労務費は市場の状況や季節、その他の外的要因によって大きく変動するため、正確な原価計算が必要です。

例えば、鉄鋼や木材、コンクリートなどの建材価格は、需給バランスや為替レートによっても日々変動します。

また、工事現場では多くの労働者が関与し、賃金は地域の労働市場の状況によって異なります。

このように、材料費や労務費の変動は大きな課題となり、適切な情報収集と予測によって、影響を最小限に抑えなければなりません。

建設業の原価計算を効率化する方法

効率的な原価計算は、建設業のコスト管理を強化し、企業の競争力を高めるために不可欠です。

ここでは、どのようにして原価計算の効率化を図るかについて説明します。

建設業の原価計算を効率化する方法
  • エクセルテンプレートの使用
  • 建設業専用会計システムの導入

エクセルテンプレートの使用

エクセルテンプレートの使用は、建設業の原価計算を効率化するためのシンプルで効果的な方法です。

メリット
デメリット
  • 【手軽に導入可能】多くの企業で既に使用されており、新たなソフトウェアの購入が不要
  • 【カスタマイズ性】企業のニーズに合わせてテンプレートを自由に変更可能
  • 【データの一貫性】統一フォーマットの使用によって、比較や集計が容易
  • 【手動入力のリスク】ミスが発生しやすく、特に大規模工事では管理が煩雑になりがち
  • 【リアルタイム更新が難しい】最新の進捗状況やコスト情報を即座に把握できない
  • 【セキュリティリスク】ファイルが誤って削除されたり、第三者による不正アクセスのリスクがある

エクセルテンプレートは、小規模工事や一時的な利用に最適なツールです。

適切な活用によって原価管理を効率化し、企業のコスト管理能力を向上できます。

建設業専用会計システムの導入

建設業専用会計システムの導入は、原価計算を効率化し精度を向上させる重要な方法です。

メリット
デメリット
  • 【建設業特有の勘定科目に対応】未成工事支出金や完成工事未収入金など、建設業に特有の勘定科目を正確に管理
  • 【リアルタイムデータの更新と共有】工事の進捗状況や原価情報をリアルタイムで把握し、迅速な意思決定が可能
  • 【詳細な分析機能】工事ごとの原価を詳細に分析し、戦略的な意思決定をサポート
  • 【初期投資や運用コストがかかる】ハード、ソフト、インフラの整備が必要で、大きな負担となる
  • 【操作のトレーニングが必要】現場作業員や経理スタッフによる操作の習得が必要
  • 【システム障害のリスク】システムの稼働が停止すると、原価計算やデータ管理が滞る可能性がある

建設業専用会計システムは、長期的に見れば、効率化と精度向上によるコスト削減効果が期待できるため、導入価値は高いといえます。

システムと現場のデータ連携にはクラウド型のツールを使用すれば、どこでもアクセス可能なため非常に便利でしょう。

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まとめ

まとめ

建設業の原価計算は難しい業務ですが、企業の経営にとって重要です。

特有の勘定科目や売上・原価の計上タイミングなどさまざまな要因が絡み合い、難易度を高めています。

建設業専用会計システムの導入は、正確な原価管理とリアルタイムでのデータ共有が可能となり、企業の収益性向上に寄与します。

原価計算の効率化と精度向上を目指して、コスト管理を強化していきましょう。

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【引用】AnyONE

この記事の監修者

せいた

保有資格:建設業経理士1級、国際会計修士(専門職)、日商簿記2級、宅地建物取引士

大学卒業後、スーパーゼネコンに13年間勤務。
経理や財務に8年間、民間建築工事の現場管理に5年間携わる。施工実績は20件に及ぶ。