作業工程とは、建設現場や製造工場などの「ものづくり」の現場で、作業を細分化し時系列で可視化した図表です。
この記事では、作業工程の概要や作業工程表に出来ること、その結果として得られるメリットについて解説します。
また作業工程表作成のポイントについても説明しています。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
目次
作業工程の意味とは?
作業工程とは、工場や現場において仕事や作業を進めていくときの手順や段階を示すプロセスのことです。
この作業工程というプロセスを管理するのが工程管理です。
適切な工程管理を行うことで、一定の品質と作業効率を維持し、適正な人員配備や作業のムダを削減して生産性の向上を実現できます。
品質を維持しながら生産性を上げることで工期を短縮できれば、コストを抑えて顧客満足度を高め、自社の競争力を上げます。
作業工程を適切に管理するためには、作業工程表を可視化して作業者全員と共有し、生産性を管理することが重要です。また受注に見合った在庫量の調節も必要です。
作業工程表の作成には、PDCAサイクルやQC工程表などの考え方を導入することが有効だとされています。
建設業において作業工程管理が重大な意味を持つ3つの理由
建設業において、作業工程管理が重大な意味を持つ理由は、以下の3つを実現できることにあります。
それぞれについて解説します。
人員や設備を適切に配置
現場の設計図書や仕様書、立地条件などを踏まえて練り上げられた作業工程表は、工程管理を行ううえで重要なツールです。
作業工程表によって、作業の時系列と手順、必要な人員や設備が明らかとなります。
この作業工程表にもとづいて人員や設備を配置し、過不足のない平準化を目指して管理するのが工程管理です。
工程管理の目的は、無駄なコストを削減しながら工期内に工事を竣工させることです。
作業工程表の精度が高いほど、工程表と実際の現場の進捗との差が小さくなるため、工程管理が効率化します。
作業工程表は対象となる現場について、さまざまなデータを踏まえて丁寧に作り上げることが重要です。
ムダを削減して生産性を向上
作業工程表を活用して工程を管理すれば、ムダを削減して生産性を向上させることができます。
作業工程表があれば、工事を計画的に進めることができるため、人材や資材、建設機械の手配のミスや過不足がなくなります。
作業者は、次にやるべきことが明確になるため、ムダな手間なく次の作業の準備が可能です。
また途中で不測の事態で遅れが生じても、どのくらいの遅延をどのように取り戻せばいいのか把握しやすくなります。
作業工程表をもとに計画的な工程を管理することで、ムダやミスが削減され生産性は格段に向上します。
品質と顧客満足度を上げる
作業工程表を作成し計画的に工程管理できれば、建設現場が生み出す建築物や土木構造物は高品質なものとなり、顧客満足度を上げることができます。
そのためには、現場にかかわるすべての人員を対象に、作業工程表にある成果物の品質と施工期間を実現するように工程管理することが重要です。
各自がそれぞれの立場で能力を発揮し、顧客の期待以上の品質を目指せば、高品質は維持され顧客の満足度は上がります。
品質と顧客満足度を高いレベルで維持できれば自社の競争力はアップし、市場価値を高めることが可能です。
建設業における工程管理は作業工程表が有効
建設業における工程管理では、作業工程表が有効である理由を3つ説明します。
作業工程を可視化して共有
作業工程の可視化とは、プロセスにおける各作業の情報を、作業工程表という目で見える形にして共有することです。
可視化することで、先入観や思い込みを排した情報を直接的に共有できます。また、工程表は記録として残せるため、いつでも何度でも確認することができます。
最近では、クラウドを含むICTを活用して、作業工程の変更や追加をリアルタイムで情報共有するのが一般的です。
作業者の生産性の管理
作業工程表の重要な役割のひとつが、作業者の生産性の管理です。
作業工程表を作業者全員で共有して生産性意識を高めながら、作業にムダや偏りがないか管理します。
作業者だけでなく、資材や建設機械についても「空き」や「待ち」がなく、滞りなく作業が進捗していくための管理が必要です。
また、想定外のトラブルが発生した場合は、できる限り最小の影響で済むように作業工程を調整します。
受注に見合った在庫量
作業工程表を活用した工程管理では、受注に見合った在庫量を意識することも重要です。
余剰在庫を抱えるということは、余分な支払いが発生するということであり、原価管理上の問題となります。
逆に在庫が足りなくなり、施工に支障をきたすようなことも避けなければなりません。
作業工程表があれば、施工の進捗度と在庫量の両方を日々確認しながら、発注量の調整ができます。
作業工程表を作るうえでの3つの基礎知識
作業工程表を作り工程管理するうえで重要になる基礎知識を3つ説明します。
建設業や製造業など業種を問わず参考にされることが多いPDCAサイクルの考え方、製造業の代表的な工程表であるQC工程表、建設業に多い工程表についての3つです。
PDCAサイクルを活用
建設業では、作業工程表という計画を基に工程管理することで適正な施工を行います。このとき多くの方が参考にする考え方に「PDCAサイクル」があります。
PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という4つの過程を繰り返して作業効率を改善するという考え方です。
PDCAサイクルについて、建設業の作業工程表や工程管理という視点から、以下の表にまとめました。
Plan(計画) 作業工程表の作成 | 必要十分な資料をもとに現場に合った作業工程表を作成する |
Do(実行) 工程管理の実施 | 作業工程表(計画)をベースに工程管理により現場の施工を実施する |
Check(評価) データ収集と分析 | 品質や生産性の向上、コスト削減などが実施されているかをデータ収集と分析から評価する |
Act(改善) 改善策の実施 | 評価の結果をもとに、問題点を洗い出し、改善策を検討して実施する |
このPDCAサイクルは、現場での施工が行われている間は繰り返し行われます。繰り返すことによって、工程管理はブラッシュアップされ、現場の施工へ確実に反映されていきます。
製造業とQC工程表
主に製造業で「品質管理の工程表」として活用されているのが、QC工程表です。正式名称は「クオリティー・コントロール・チャート(Quality Control Chart)」となります。
工程管理においても「品質の向上」は重要な管理項目であり、QC工程表の考え方を理解しておくことは有意義だといえます。
実際、建設業においても「品質管理」という観点から、QC工程表を利用する現場技術者は少なくありません。
以下に、QC工程表の作成手順をまとめました
品質特性を数値で規定し、その確認方法や異常処置の対処方法まで定めておくのが、品質管理の基本です。
建設業に多い工程表
建設業でよく使用される作業工程表のうち、代表的な工程表を3つ、表にまとめて説明します。
バーチャート | グラフ式工程表 | ネットワーク工程表 | |
---|---|---|---|
特長 | 一般的によく使われる工程表であり、縦軸に作業、横軸に日付を記入する。 | 縦軸に進捗率、横軸に日付を記入。曲線により進捗状況が分かる。 | 〇と→で各作業の工数や関係を表す工程表。複雑な建設現場で使用することが多い |
メリット | 作成方法は比較的、簡単である。 | 進捗率と作業予定日時の両方が分かる。 | 作業間の関係とともに、作業全体の流れが明確になる。 |
デメリット | 各作業の関係が分かりにくい。 | 作成方法が難しく、作業間の関連性が分かりにくい。 | 作成方法が複雑で、タスクごとの進捗はわかりにくい |
まとめ
ここまで、工程管理の基本となる作業工程表について解説してきました。
- 作業工程の意味
- 作業工程管理の重要性
- 工程管理における作業工程表の有効性
- 作業工程表を作るうえでの基礎知識
作業工程表は、工程管理に欠かせないものです。
作業工程表通りに工事が進捗しているか管理することで、作業者の生産性を高め、ムダを減らしてコストを削減できます。
一定以上の品質を保持することで、顧客満足度を上げることも可能です。
工事にかかわる全員が作業工程表を共有し、生産性意識と達成意欲を高めることも必要でしょう。
精度の高い作業工程表とムダやムリを排除した工程管理は、作業の効率化を促進し、適正な利益を生みだす現場をつくります。
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また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。
① QC工程表の様式を決め、各工程のフロー(流れ)を記入する
② 対象とする製品や作業工程の情報を収集し各工程で明記する
③ 品質特性(強度、重量など)を規定し、基準の詳細を表記する
④ 手順3で規定した品質特性の確認方法(機器・頻度など)を明記する
⑤ 点検結果に異常処置が見られた場合の対処方法を明記しておく