電気自動車を停電対策に活用する自治体も増え、個人でも電気自動車を導入して災害に備える方が増えています。
施主からV2Hシステムの導入や電気自動車の停電対策について聞かれ、うまく回答できず困っている工務店担当の方もいるでしょう。
この記事では、電気自動車の停電時における5つの活用法とEVで停電をしのげる日数について、給電時の注意点、実際に停電対策に電気自動車が使われた事例を紹介します。
目次
電気自動車(EV)の停電時における5つの活用方法
万が一の停電時に電気自動車を活用する5つの方法を紹介します。
V2Hシステムの導入での停電対策以外にも、電気自動車には活用方法がたくさんあることがわかるでしょう。
工務店の方も、電気自動車の活用方法について知識をつけておき、施主への情報提供に活かしてください。
V2Hシステムで家に給電
停電時の電気自動車活用法の代表例は、V2Hシステムでの給電です。
電気自動車の電流と家庭用の電流は異なるものですが、V2Hシステム経由で変換すれば、電気自動車に蓄電した電力を自宅で使えます。
停電が起きた際に、必要最低限の家電を電気自動車バッテリーから給電できる点は、電気自動車オーナーとなる大きなメリットです。
V2Hシステムについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
緊急時の車中泊
停電や自宅の崩壊によって寝泊まりが難しい場合は、車中泊も可能です。
電気自動車はガソリン車と違って一酸化炭素を排出しないため、安全に車中泊できます。
また、寒い冬や暑い夏もエアコンをつけてアイドリング状態で寝泊まりが可能です。
もちろんアイドリングを維持するためのエネルギーは消費されますが、近場に給電スポットがあれば再充電し、数日間は車中泊をして過ごせます。
避難所などへの移動手段
電気自動車があれば、少々距離がある避難所への移動も容易です。
避難のための荷物を持って避難所まで歩くことは、子供や高齢者にとっては難しいでしょう。
その点電気自動車を持っていれば、荷物を積んで家族を避難所へ運べます。
また災害発生地域では燃料不足が起こりやすく、なかなかガソリンを購入できません。
その点電気自動車であれば給電スポット、自宅の太陽光システムからの充電が可能なため迅速に避難所へ移動できるでしょう。
蓄電池としての代用
太陽光発電システムを導入している家庭なら、電気自動車を蓄電池として利用できます。
昼間に発電したエネルギーを電気自動車のバッテリーに蓄電し、夜間のみV2Hシステムで家庭へ給電したり、車中泊に使えるためです。
蓄電池が自宅にない方でも、電気自動車があれば蓄電池の代用になります。
給電スポットから電力を運搬
電気自動車は電力を運搬できる点で非常に優れた停電対策です。
自宅付近が停電してしまった場合、電気自動車で電力使用が可能なエリアまで移動し、自宅に電力を運搬できます。
V2Hシステムを導入している家庭なら、給電スポットからの電力で数日間は家電を動かせるでしょう。
電気自動車(EV)の電力で停電を何日しのげるか
電気自動車の電力だけで、停電を何日しのげるか紹介します。
電気自動車が万が一の停電対策にどれほど有用か把握しておきましょう。
日産リーフの場合
日産リーフe+(60kWh)を保有している場合、約4日間電気自動車の電力で家中の家電を動かせます。(【参考】日産公式サイト)
日産によると一般家庭の1日の消費電力量は12kWhであり、60kWhの蓄電池容量を持つリーフを所有していれば、掃除機やスマホの充電器、各部屋の照明など家中の家電を動かせるという検証結果が発表されています。
上記は家中の家電を動かした場合の消費電力のため、1部屋に集まって生活するなどの節電対策をすれば、より長期間電気自動車のエネルギーのみで停電を凌げる可能性があるでしょう。
日産リーフの特徴や電気自動車としての性能について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
日産サクラの場合
日産サクラの場合は蓄電池容量が20kWhであり、一般家庭の家電を約1.5〜2日給電し続けることが可能です。
リーフに比べて蓄電池の容量が少ないため短期に感じますが、一般的に災害時のライフライン復旧は電力が最も速いといわれています。
万が一1〜2日の間に電力が復旧しなくても、サクラに乗って復旧完了した地域の給電スポットへ移動して電力を運搬することも可能です。
上記のように電気自動車の蓄電池容量にもよりますが、少なくとも1〜4日間程度は電気自動車の電力のみで停電をしのげる可能性があります。
日産サクラの性能や価格、電気自動車性能については以下の記事で紹介しています。
電気自動車(EV)から電気を取り出すには
万が一停電が発生した際に、電気自動車から給電する方法を紹介します。
施主がV2Hの導入を考えている場合は、災害対策としての電気自動車の使い方も伝えられるように知識をつけておきましょう。
車内の100V電源コンセントの利用
電気自動車から電力を取り出すには、車内にある100V電源コンセントを使用します。
100V電源コンセントを使えば、V2Hシステムがなくても家電を直接コンセントにさして利用可能です。
難点としては電気自動車近くまで家電を運搬する必要があるため、大型家電は利用できません。
スマートフォンの充電やパソコンなど、運搬が可能な家電を動かす際に100V電源コンセントを使いましょう。
急速充電口から給電
V2Hシステムを設置している場合は、急速充電口とシステムを接続して、電気自動車の電力を家庭へ給電できます。
先述した100V電源コンセントよりも出力が高いため、冷蔵庫や電子レンジなどの家電も稼働させられます。
停電時に電気自動車(EV)から電力を給電する場合の注意点
停電発生時に電気自動車から給電する場合の注意点を2つ紹介します。
経済産業省は「災害時における電動車の活用促進マニュアル」を公開しており、電気自動車・家電製品側双方において、注意点があると記載しています。
電気自動車側の注意点
停電時に給電を実施する電気自動車を使う際は、以下の点に注意しましょう。
- パーキングギアを入れてサイドブレーキを引き、輪止めをしてから給電する
- コードリールを用いる場合はリールからすべて引き出し、発熱しないユニする
- タコ足配線による発熱の可能性があるため、使用しない
- 雨水の侵入などにより漏電への注意
- HV・PHVはエンジンが作動し、酸素欠乏や排気ガスの充満のリスクがあるため換気設備のない場所で使用しない
- 外気温の高い場所で使用するとAC宮殿が自動停止するリスクがあるため、車内温度に注意する
- 外気温が-30度など極端に低い場合は、車両を温めてから給電する
家電製品側の注意点
電気自動車から給電を受ける家電製品の扱いにも、十分に注意が必要です。
- 家電製品の取扱説明書の注意事項を熟読したうえで給電する
- 走行中の振動による故障、水平設置が必要な家電は作動しないリスクがある
- アースのある家電を使用する際は、アース線をアース端子に接続して使用する
- 車両の状況によって電力供給が停止するリスクがあるため、医療機器へ使用しない
- AC100V・最大消費電力1,500W以下の電化製品のみ使用する
電気自動車を停電時に使用した事例
実際に電気自動車を停電時に使用した事例を3つ紹介します。
電気自動車とV2Hの組み合わせで停電を乗り切った事例も参考に、施主が望む停電対策を提案しましょう。
北海道胆振東部地震
2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、火力発電所内のボイラー管破裂事故により、大規模停電が発生しました。
札幌市は電気自動車の電力を活用し、札幌市民2,000人に対して携帯電話サービスを実施し、情報収集や連絡が取れる環境を構築しています。
また、室蘭市では避難所へ電気自動車と給電器を設置し、避難所の照明やテレビ、携帯電話の充電に役立てました。
令和元年台風15号 千葉県大規模停電
令和元年台風15号が原因で発生した千葉県大規模停電でも、電気自動車(日産リーフ)が活用されました。
停電発生後はリーフからの給電で冷蔵庫や照明を動かし、避難所へ移動することなくリーフからの給電のみで停電を乗り切りました。
リーフの電力が減ってきたら、すでに電力復旧している場所まで移動し、リーフへ充電して帰宅して電力の運搬も実施していたそうです。
(【参考】日産リーフとV2Hで2日半の停電を乗り切った 千葉 西郡さま)
令和元年東日本台風
令和元年東日本台風では、長野県の復興支援に電気自動車が利用されました。
ボランティアセンターに対して電気自動車から給電が実施され、電動工具の充電、炊事のための電力が供給できました。
電動工具の充電により素早く浸水家屋の撤去作業が進み、地域の復興に大きく貢献した事例です。
まとめ
電気自動車は停電対策としても非常に有用で、地震や台風発生時に電気自動車を使用する自治体、個人も増えています。
施主が電気自動車とV2Hシステムの組み合わせで停電対策したいと考えているなら、ぜひ記事で取り上げた事例も含めて紹介してください。
ただしV2Hシステムの導入は高額であるため、コスト面を気にする施主も多いはずです。
そのような施主には、0円で簡易V2H設置ができる太陽光リースをおすすめします。
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