協力業者への工事代金の支払い条件は、建設業法でルールが定められていることは知っているでしょうか。
工事代金の支払いは、工務店の資金繰りを左右する重要な要素です。
この記事では、工事代金の支払い条件や支払い方法、一般顧客の工事代金の支払い方法について解説します。
目次
工事代金の支払い条件
はじめに一般的な工事代金の支払い方法について解説します。
民法の原則では代金の支払い請求は、工事の完成・目的物の引き渡しがないと主張ができません。
しかし上記の原則に固執してしまうと、資金力のない工務店や工事業者は工事を完了させることができず、工期の途中で倒産してしまう可能性があります。
そのため建物の引き渡し時の一括払い以外にも、以下2つの支払い方法が認められています。
着手金
着手金とは工事を開始する前に受け取る工事代金のことです。
着手金の相場は発注先や工事の規模にもよりますが、工事代金の10%から20%です。
工事を始める前には材料の発注や、仮設工事などでお金がかかるため、着手金からそれらの費用を捻出します。
これまで着手金は、通常一般顧客の工事に関してのみ受け取られていました。
しかし最近では公共工事でも着手金の支払いが浸透してきています。
ただ元請業者が協力業者に着手金を支払うケースはまだ浸透しておらず、出来高払いのケースが多いです。
出来高払い
出来高払いとは工事の進捗度によって支払う方法です。
工事の進捗度に合わせて代金を支払うことで、協力業者の資金繰りをサポートできます。
工事が半分まで完成したら代金の50%を、残りは建物の引き渡し時に受け取るという方法です。
また出来高払いは一般顧客の支払い方法としても浸透しています。
協力業者の工事代金
基本的に工事業者の工事代金の支払い方法は、自由に決められることが原則です。
ただし建設業法にていくつかのルールがあるため、しっかり確認しておきましょう。
また協力業者の方に向けて、工事請負契約書を作成していない場合に工事代金の支払いが受けられないケースについても解説します。
建設業法の決まり
建設業法では工務店をはじめとした元請業者に対し、協力業者がおこなった工事に対して速やかに工事代金の支払いを求めています。
一般的に協力業者は潤沢な資金を持っておらず、資金力が乏しい会社が多いです。
そのため実施した工事に対してすぐに現金が入ってこないと、資金繰りがショートしてしまう可能性が高まります。
そのような事態を避けるために、建設業法では以下のような記載があります。
元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となつた建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。
【引用】建設業法第24条の3- e-Govポータル
引用した条文は以下のことを示します。
- 協力業者から出来高の引き渡しを受け、代金の支払い請求があった
- 発注者から出来高部分の工事代金の請求を受けている
上記のケースに該当する場合は、元請業者は協力業者に対して「発注者から工事代金の支払いを受けた日の1ヶ月以内」に、工事代金を支払わなければなりません。
また建設業法第24条の3の2項では、労務費に相当する部分は現金で現金で支払うよ配慮するとの記載もあり、支払い条件に対しても規定がされています。
工事請負契約書を作成していない場合
原則として工事を発注・受注する場合は、工事内容を定めた請負契約書を作成しなければなりません。
しかし実際の現場では、事前に想定できなかった現場状況やミスにより、口頭のみで契約し工事をおこなうことが珍しくありません。
工事代金が工事代金が回収できれば問題ありませんが、元請会社や発注者によっては工事請負契約書を作成していない工事に対して工事代金の支払いを拒否する場合があります。
工事請負契約書を作成していなくても工事代金の請求は可能です。
メールやメッセージの履歴などの資料から、請負契約が成立したことを証明できれば代金の請求がおこなえます。
しかし一度元請業者とトラブルが発生してしまうと、今後一切工事を発注されなくなってしまうため、実際には泣き寝入りしてしまう会社が多いのが実情です。
そのため簡単な工事であっても、工事請負契約書を作成しておくと、工事代金の支払いを拒否されることを防止できます。
消費者目線での支払い方法
工事代金の支払いについて、一般顧客(消費者)から質問されるケースもあるでしょう。
一般顧客の支払い方法は工事内容や金額によっても異なります。
一般顧客の支払い方法についても熟知していると、お客から信用されやすいため、工務店の営業担当者はこれから解説する内容を参考にしてください。
住宅ローン
住宅は注文住宅はもちろん比較的安価の建売住宅であっても、数千万円以上する高価なものです。
そのため個人でそれだけの大金を用意することは、現実的ではありません。
そこで多くの方は住宅を購入するために、金融機関から住宅ローンを借りて工務店への支払いに充てます。
住宅ローンを使用した場合、一般的に工事代金は下記のように3分割して支払います。
- 着工金:30%
- 中間金:30%
- 完成時金:40%
上記の割合は一例ですが、住宅ローンを活用している場合ほとんどが3対3対4で支払うケースが一般的です。
リフォームローン
リフォームも工事内容によっては数百万円以上の費用がかかります。
そのような大金を用意できない方のために、リフォームローンという商品があります。
リフォームローンでは一般的にリフォーム完了時の一括払いが原則です。
つまり民法の検索通りの支払い方法ということになります。
建物引き渡し後の一括払いとなるため、資金力に余裕のある会社でないとリフォーム工事を受注しにくいといったメリットがあります。
自己資金による支払い
預貯金が豊富にある方は金融機関からの融資を受けず、自己資金で工事代金を一括で支払うことが可能です。
工務店側からすると工事代金の一括支払いは、資金繰りが良くなるため最も嬉しい支払い方法ではないでしょうか。
しかし一括払いは消費者にとって非常にリスクが高いです。
- 建物引き渡し前に工務店が倒産してしまう
- 代金の支払いを受けると工事を頑張らなくなる工務店もいる
工務店に代金を支払うと何かトラブルがあったとしても、回収することは非常に難しいです。
そのため仮に一括払いできる顧客がいたとしても、自社の利益を優先して一括払いを勧めることは避けた方が無難です。
一括払いを勧めすぎると顧客からの信頼を失ってしまう可能性があるためです。
まとめ
この記事では、工事代金の支払い条件や支払い方法、一般顧客の工事代金の支払い方法について解説しました。
工事代金の支払い方法で最も気をつけなければならないのは、協力業者に対しての支払いです。
協力業者は資金に余裕のない会社が多く、建設業法で守られています。
基本的に元請業者は、協力業者の作業完了報告と工事代金の支払い請求を受け、かつその工事代金に相当するお金を発注者から受け取っている場合は、1ヶ月以内に協力業者に代金の支払いをしなければなりません。
また工事請負契約書の作成をしておくことも非常に重要です。
条件を明確にしておけば、後々発注者や協力業者と揉めることがなくなりトラブルを未然に防ぐことができます。
請負契約書に関して詳しく知りたい方はこちらの記事もご確認ください。