建築を行うだけでなく、建物や設備等の持続的な利活用、維持管理が求められる建設業界。
いわゆる12条点検に見られるように定期的な建物調査が求められますが、仮設足場等の設置に伴うコストの問題や高層階等の調査の困難性など多くの課題があるのが実情です。
このように課題や負担が見られる点検作業ですが、近年はそれらの課題を解決する手段としてドローンによる点検が注目されています。
そこで今回はドローンによる点検作業のメリットと注意を中心に、従来の点検方法との比較を踏まえながら解説していきます。
目次
ドローンによる点検を行うメリット
測量や施工管理、資材の運搬など、既に様ざまなシーンにおいて実際に建設現場に導入されているドローンですが、点検にドローンを用いるメリットは以下の4つです。
それぞれのメリットについて、既存点検方法との比較や具体的な活用例を交えながら以下で詳しく見ていきましょう。
調査コストを大幅に削減できる
ドローンを用いた点検を行うことで、金銭的・時間的なコストを大幅に削減することができます。
従来の人による点検では実際に点検箇所を回り、時にはハシゴや脚立等を使いながら目視確認や打検調査を行っているでしょう。
特に高所を点検する場合は、足場を組んだり高所作業車を用意する必要があり、金銭的・時間的なコストがかかります。また、目や手の届かない場所の調査は難しいとう問題もあります。
これらの問題は調査箇所までのアクセスの難しさに起因しているため、ドローンを導入することで解消できます。
国立研究開発法人建築研究所によって行われた6階建て実験住宅を用いた実証実験によると、以下のように金銭的なコストと現場での作業時間が短縮できることが分かっています。
グラフから分かるように、ドローンを用いる事で高所作業車を用意する必要がなく低価格で高所作業点検を実施できるほか、現場での作業時間も削減することができます。
一方で写真撮影後に必要な分析作業にはドローンを用いた場合の方が時間を要するという結果が出ていますが、高解像度カメラや自動処理化技術の導入によって軽減されることが期待されます。
このように点検作業にドローンを用いることによって、既存の点検と比べて金銭的なコストと作業時間を大幅に削減することが可能となります。
安全性を確保できる
点検作業にドローンを用いることは、作業者の安全性を確保することにも繋がります。
高所作業点検のほかにも老朽化が進んだ建物・設備の点検など点検作業には危険が伴いますが、ドローンを用いることで安全な場所から点検作業を行うことが可能となります。
足場やハシゴでは対応ができないような屋根などの危険な場所でも空中からの撮影によって点検を行えるほか、作業員が直接立ち入る必要が無いために調査対処の建物や設備への負荷も最小限に抑えられます。
また万が一倒壊などが起きた際にも人的な被害を出さずに労働災害のリスクを回避することができます。ドローンによる安全な点検を行うことで、いわゆる3K(きつい・汚い・危険)に見られるような建設業界の悪いイメージを払拭する効果も期待できるでしょう。
調査箇所が限定されない
高所や危険箇所の調査ができることからも分かるように、点検作業にドローンを用いることには調査箇所が限定されないというメリットもあります。
人では立ち入ることが難しいような箇所でも到達できるだけでなく、航空機やヘリコプターなどを使わずとも高所から全景を撮影することも可能です。
ドローンの飛行性とアクセシビリティ(調査対象へのアクセスを容易にする性能)は点検作業への貢献度が大きいです。ビルなどの身近な点検対象のほかにも鉄塔や風力発電、煙突やダムなど、あらゆるインフラ点検作業でのドローン利用が海外を中心に進んでいます。
このようにドローンを用いた点検では、従来の点検作業と比べてより広範囲での点検を行うことが可能となります。
また点検の対象物全体を調査できることにより、修繕が必要な際の積算をより正確に行えるといったメリットにも繋がります。
点検対象がマンションなどの場合は、調査時間の削減により入居者の負担を減らすこともできるでしょう。
高解像度・赤外線カメラで欠損箇所を見逃さない
ドローンを用いた点検作業の中でも、高解像度カメラや赤外線カメラを搭載したドローンを利用すれば従来の点検と比べてより高精度な点検を行うことが可能になります。
1億画素などの高解像度カメラを用いることで従来よりも広範囲・高精細な写真撮影が可能です。微細なひび割れやサビなどを発見することができるほか、赤外線カメラを用いることで表面上視認しにくい剥離などの不具合箇所を精確に特定することができます。
これらの高解像度・赤外線カメラを用いた点検は従来から行われていたものの、高所の場合などは地上からの撮影により写真に角度がついてしまい、正確に点検できないという問題がありました。
ドローンの場合は、先に見たように撮影箇所が制限されないため最適な角度からの撮影ができ、高解像度カメラや赤外線カメラの利点を最大限に引き出すことが可能です。
ドローンによる点検を行う際の注意点
点検作業において非常に有用なドローンですが、導入する前に注意すべき点がいくつかあります。
ここではドローンによる点検を行う際の注意点として、以下の4つを確認しましょう。
飛行禁止区域が存在する
ドローンは法律上「無人航空機」という扱いであり、利用する際は航空法で定められたルールに従う必要があります。
特に以下3つの空域での飛行は原則禁止されており、飛行させたい場合は十分な安全を確保した上であらかじめ国土交通大臣の許可を得る必要があります。
航空局からの承認が必要
飛行禁止区域での飛行を行う場合は国土交通大臣の許可が必要ですが、このほかにも航空局からの承認が必要な場合があります。
承認が必要なケースとしては航空法で定められている方法とは異なる方法で飛行を行う場合ですが、実際に点検にドローンを用いる際に考えられる承認が必要な飛行方法例としては以下のようなものがあげられます。
・人口集中地区上空の飛行
・人又は物件から30m以上の距離を確保できない飛行
・催し場所上空の飛行
・夜間飛行
・目視外飛行
【参考】航空 3.許可・承認手続きについて-国土交通省
これらの飛行方法でドローン点検を行う場合は、飛行開始予定日の10開庁日前までに申請書類を提出する必要があります。
天候に左右される
ドローンを用いた点検を行う場合、法令に基づいた制限のほかにドローン固有の性質的な制限についても認識しておく必要があるでしょう。
ドローンは訓練が必要とされるような非常に繊細な操作が求められる機器であり、作業可否が天候に大きく左右されます。
風雨のある環境下ではドローンの飛行自体が難しい上、先ほどご紹介した建築研究所の実証実験においても赤外線カメラによる不具合検出が温度などの環境に依存することが報告されています。
このようにドローンを用いた点検を行う際は、天候・気象状況に注意する必要があるといえます。
安全・周囲への配慮が不可欠
先ほどドローンが繊細な操作を求められる機器であるとお話しましたが、人や建物などに接触したり落下したりしないよう安全への配慮を徹底する必要があります。
またドローンはカメラを搭載して低空で飛行する機器でもあるため、プライバシーや騒音など周囲への配慮も不可欠といえるでしょう。
このように点検作業にドローンを用いる際は、法令・環境による制限だけでなく安全・周囲への配慮も怠らないようにしましょう。
まとめ
今回はドローンを用いた点検作業について、そのメリットから注意点まで解説しました。
ドローンを導入することで、調査コストを大幅に削減できるだけでなく安全で高精度な点検作業の実施が可能です。
一方で分析作業には従来よりも多くの時間を要するといった点も見られましたが、点検をはじめ作業効率化のためには現場作業だけでなく事務作業も効率化していく必要があります。
事務作業を効率化したい場合は、業務効率化ソフトを導入すると良いでしょう。
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