工事見積り書とは、工事にかかる費用や条件を記載した書類です。
施主に提出する書類でミスは許されませんが、記載項目の多さから間違いが起こりやすい領域でしょう。
本記事では、工事見積り書の概要と書き方、工務店で起こり得る見積り作成に関する問題点・工事見積り書作成をデジタル化する方法を解説します。
目次
工事見積り書とは
工事見積り書とは、工事費用の概算を明記した書類です。
契約前に見積りを取り、業者の選定・契約の事前条項の確認に使用します。
適切な工事見積り書を作成するために、まずは工事見積り書の概要を把握しておきましょう。
工事の費用の概算
工事見積り書は、依頼された工事を遂行するために、いくらの費用がかかるかを明記した書類です。
工事には、多数の資材や人材が必要となります。
また、人件費・福利費や機械費など、必要な経費が細かく分類されるため、すべてを記載してわかりやすくまとめた書類が必要です。
工事費用の概算を出すことで、施主が業者を選びやすくなります。
また、施工業者にとっても、想定される利益を計算でき、予算管理が容易となるでしょう。
工事条件を詳細に記載
工事見積り書には、工事条件を詳細に記載する決まりがあります。
工事条件とは、施工範囲や工期、支払い方法や日付を記載した項目です。
大金がかかる工事依頼には、事前に工事条件の提示も判断材料のひとつとなります。
工事条件を明確にしておけば、契約後のトラブルも避けられ、互いに合意したうえで工事契約が締結可能です。
工事費用の明細を提示
工事見積り書には、工事費用の明細も記入します。
工事には大金がかかり、また施工範囲ごとに必要資材や人材が異なるため、明細を必ず作りましょう。
”一式”などと曖昧な書き方をせず、資材の型番なども細かく記入し、施主に対して料金が明朗であることを証明できます。
工事見積り書を詳細に記載すれば、自社の原価管理もしやすくなり、施主・施工業者ともにメリットがあります。
工事見積り書の基本的な構成と書き方
工事見積り書の基本的な構成と書き方を解説します。
工事見積り書は以下3つの書類で構成されます。
表紙
工事見積り書の表紙には、以下の条項を記載します。
- タイトル
- 宛名
- 差出人情報
- 管理番号
- 発行日
- 合計金額
- 工事概要
表紙を見れば見積りの総額や発行日、作成者・工事概要がわかるように表紙を作りましょう。
内訳書
内訳書には、工事にかかる費用の内訳を詳細に記載する必要があります。
一式とまとめて記載する業者がありますが、悪質業者と誤解を生む可能性があるため、資材ごとに料金を記載しましょう。
具体的には以下の項目に分け、明細を記載します。
- 項目
- 仕様
- 数量
- 単価
- 金額
- 備考
項目欄には資材費・人件費など、費用の項目を記載します。
仕様には工事の内容を書き込み、どの場所のどのように施工したかが施主にわかるようにしておきましょう。
そのほか数量・単価などをミスなく書き込んでください。
工事範囲が広い場合は階層をわけ、工事箇所ごとに明細を記入しましょう。
条件書
条件書には、工事条件を記載します。工事条件とは、具体的に以下のような事柄です。
- 支払い条件
- 工事場所
- 工事内容
- 工期
- 見積りの有効期限
支払い条件は、報酬をいつ支払うかを意味します。
通常は施工完了後の支払いが一般的ですが、工期が数年にわたる場合は完成高を計算して、分割で支払う場合もあります。
そのほか工事箇所や内容、後期を明確にして、契約前に合意しておきましょう。
見積りの有効期限を設定しておくことで、原価変更があった際に金額が変わった場合の抗弁となります。必ず見積り期限も記入してください。
工事見積り書の書き方における問題点
工事見積り書の書き方において、業務負荷が高い理由を解説します。
工務店や建設業者では、見積り書作成に時間がかかり、営業の長時間労働に繋がっているケースが多いです。
特に人員が少ない工務店などでは、事務員不足で書類作成を営業が担当することも多いでしょう。
事務員に書類作成を依頼できないため、営業負担が増えてしまいます。
長時間労働の是正や業務負荷の軽減を検討するために、見積り作成の問題点を把握しましょう。
多数の項目
工事見積り書は記載項目が非常に多く、作成自体に時間がかかります。
大量の資材や人員などをすべて書き込むため、慣れていても物理的に時間がかかるでしょう。
工事見積り書の作成は項目が多いため、単純に入力作業の負荷が高い業務です。
施主の工事専門用語への理解
工事見積り書は専門用語が多く、施主にとっては理解しにくい書類です。
見積り書を作成後に提出しても、専門用語が理解できないと施主は内容が把握できません。
意味が理解できない書類を渡しても、施主の合意形成を促す効果は得られないでしょう。
特に建設業者以外からの見積依頼の際は、工事専門用語についての補足を加える必要があります。
用語を選別して補足をつけ、必要なら図解を加えるなどの手間がかかり、工事見積り書の作成に時間がかかってしまうでしょう。
修正作業
工事見積り書は一度作れば終わりではありません。
施主からの値下げ交渉などにより、修正作業が発生します。
何度か見積りを作成し直すケースもあり、その度に手間がかかるでしょう。
情報の抜け漏れ
工事見積り書は記載項目が多いため、情報の抜け漏れが発生するリスクがあります。
必要な箇所を書き忘れたり、計算ミスが起こり得るでしょう。
特に新人営業に起こりがちなミスであり、チェック体制を作っておかねばなりません。
万が一見積りが誤っていた場合は、施主への説明・修正の手間もかかります。
工事見積り書は原価計算が複雑かつ、記載項目が多いためにミスが起こりやすい点が負担となっています。
工事見積り書作成はデジタル化がおすすめ
工事見積り書は正確に作らなければなりませんが、ミスが起こりやすい領域です。
業務量も多いため、自社社員への負担も高いでしょう。
工事見積の負荷を軽減したいなら、デジタル化がおすすめです。
工事見積り書作成のDX化については、以上3つの方法があります。
工事見積り作成システム
工事見積作成システムとは、システム上で工事見積り書の作成・管理・共有がおこなえるシステムです。
クラウド上にデータを保管でき、外部にいても簡単に見積り書を共有できます。
工事見積り作成システムの導入メリット、デメリットを比較しました。
見積作成システムを導入すれば、ひとつのシステムで見積作成から管理が一元化します。
過去の見積り取り込み機能を利用すれば、過去データを参照して見積作成がスピーディになるでしょう。
また、原価管理表を取り込んでおけば項目を選択するだけで、自動入力・計算ができるため、ミスが起こりづらくなります。
施主への説明の付箋追加もワンクリックででき、工事見積り作成が効率化するでしょう。
作成した見積り書は、ワンクリックで印刷・メールでの共有ができます。
送付状や郵送シールの作成も可能なため、事務作業の負荷も軽減するでしょう。
ただし、工事見積り書作成システムの導入には費用がかかります。
予算的にシステム導入が難しい工務店・建設業者の方は、「IT導入補助金」の利用も検討してください。
工事見積り書作成システムの概要や機能一覧、おすすめツールは以下の記事でまとめています。
エクセル使用
工事見積り書はエクセルで作成できます。
エクセルの機能である数式やマクロを使えば、見積り作成作業もある程度自動化可能です。
エクセルを使用して工事見積り書を作るメリットとデメリットを比較しました。
エクセルを既に導入しているのであれば、今すぐ工事見積り書の作成管理ができます。
数式やマクロを使える人がいれば、計算などはある程度自動化できる点も魅力です。
使い慣れたシステムのため混乱も少なく、コストも抑えられるでしょう。
ただしエクセルは見積のオンライン共有には向いていません。
外部から営業が見積りを閲覧することはできない点がデメリットとなります。
また、工事見積の作成はできますが、保管・共有については、別でフローを立てなければなりません。
ファイル名の付け方や保管ファイルのルール、共有時のWチェック体制が必要です。
数式やマクロは便利な機能ですが、扱える人員が限られます。
そのため見積作成作業ができる人が限られるなど、属人化を招く可能性もあるでしょう。
まずはエクセルで工事見積り書を作りたい方は、「AnyONE」が提供する無料エクセルテンプレートの使用をおすすめします。
簡単に体裁の整った見積り書が利用でき、テンプレート作成の手間が省けるでしょう。
エクセルでの見積り書の作り方について知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートとは、オンラインで使用できるエクセルのような機能です。
ブラウザがあれば誰でも情報が閲覧でき、外部から操作できます。
Googleスプレッドシートで工事見積り書を作るメリット、デメリットを比較してみましょう。
スプレッドシートは、外部からも操作できて便利です。
営業が外部からブラウザで見積り書を確認することもできます。
また、数式も使えるため、計算は自動化可能です。
デメリットとしては、セキュリティ面が挙げられます。
スプレッドシートはリンクを共有すれば、誰でも見積りを閲覧できる仕様です。
そのため、誤ってリンクを別取引先へ送れば、ほかの施主の情報が漏れてしまうリスクがあるでしょう。
また、Googleスプレッドシートは、あくまでGoogleのサービスのひとつです。
Googleがサービス終了を発表すれば、急に使えなくなる可能性があります。
またエクセルと全く同じではないため、エクセルと使用感が異なり混乱を招くことがあるでしょう。
まとめ
工事見積り書は入力項目が多く、ミスが起きやすい業務です。
記載項目が多いため、ある程度自動化しないと業務負荷を減らせないでしょう。
工事見積り書の業務負担が高く悩んでいる方は、工事見積り書作成システムを利用してみてください。
どのようなシステムを利用したら良いか迷っているなら、建設業業務を一元管理できる「AnyONE」がおすすめです。
建築現場博士がおすすめする工務店・建築業界の業務効率化ソフトはAnyONEです。
導入実績2,700社超の業界No.1基幹システムで、国交省「第一回 長期優良住宅先導的モデル事業」に採択されています。
エクセルのような操作感で、レイアウトもマウスで変更できるため、ITが苦手な方でも簡単にお使いいただけます。
また、システムの導入後も徹底的なサポートを受けられるため、安心して運用できるでしょう。
大手・中堅企業様から一人親方様まで規模感を問わず、業務状況に合わせて様々な場面でご利用いただけます。