V2Hは電気自動車と家庭の電流を変換して、相互に利用する仕組みです。
EV充電器とは電気自動車へ充電するための家庭用機器であり、両者は全く異なります。
施主からV2HとEV充電器どちらが良いか聞かれ、対応に困った経験がある工務店担当者の方もいるでしょう。
この記事ではV2HとEV充電器の違いとV2Hの導入によって可能になること、メリットとデメリットを解説します。
目次
V2HとEV充電器の違い
V2Hとは、電気自動車の蓄電池にある電力を変換し、家電などに給電できるようにする機器です。
そもそも家庭用と電気自動車の電力は電流が違うため、そのままでは流用できません。
しかしV2H機器を介して電流を変換して初めて、家庭から電気自動車へ、電気自動車から家庭へ給電できるようになります。
この仕組みにより、停電になったときの電力を確保したり自宅充電したり、日常的に電気代を削減する効果があります。
一方でEV充電器とは電気自動車を充電するための機器で、給電機能はありません。
施主から質問があった際に回答できるよう、両者の違いを理解しておきましょう。
V2Hの導入によってできること
V2Hの導入によって実現することを3つ紹介します。
V2Hを設置すると電気自動車への充電はもちろん、充電時間の短縮や家庭への給電など多くのメリットがあります。
家庭から電気自動車への充電
V2Hを設置すると、自宅で電気自動車を充電できます。
充電スポットを探して電気自動車に充電しなくてよくなり、家庭で簡単に充電できる点がメリットです。
EV充電器の主な役割である充電機能も、V2Hで補完できます。
電気自動車の急速充電
V2H機器を導入すれば、電気自動車への急速充電も可能となります。
電気自動車がガソリン自動車に劣るとされる点は、充電時間が長く動力確保に時間がかかることです。
動力が電気であるため充電がないと動かず、一般的な家庭用EV充電器では充電に10時間以上かかることもあります。
例として、バッテリー容量が40kWhの「リーフ」を普通充電すると、フル充電までに12〜13時間かかります。
一般的な家庭用充電器の出力は3kWhです。
V2Hの急速充電を使うと6kWhでの充電が可能になり、満タンになるまで6時間程度と約半分の時間で充電可能です。
電気自動車から家庭への給電
V2HとEV充電器の大きな違いは、電気自動車のバッテリーから家庭へ電気を供給できる点です。
電気自動車のバッテリーを蓄電池の代わりにし、非常用電源として利用できます。
また太陽光発電を併用している家庭は、太陽光パネルで発電したエネルギーを電気自動車に蓄電し、家庭に給電することで電力使用量を削減可能です。
高騰している電力料金の削減など、節約効果も得られます。
EV充電器はあくまで充電目的の製品であり、家庭から電気自動車への充電しかできません。
電気自動車への充電に加えて、電気自動車から家庭への給電を可能にする点がV2HとEV充電器の大きな違いです。
V2Hを使えば電気自動車の急速充電が可能
V2Hで電気自動車を充電するメリットを3つ紹介します。
施主のなかには「充電だけならEV充電器を買えば事足りる」と考える人もいるはずです。
EV充電器にはないV2Hならではのメリットを説明できるようにしておきましょう。
充電時間を短縮
V2Hの急速充電機能を使えば、電気自動車の充電時間を半減できます。
一般的な家庭用EV充電器の出力が3kWhに対して、V2H機器では6kWhの急速充電が可能です。
いざ自動車を使うときに充電がないという事態が発生せず、短時間で充電が完了する点は大きなメリットです。
電力の有効活用
電力の活用効果は太陽光発電設備との併用でさらに効果を発揮します。
例えば太陽光パネルで発電したエネルギーを電気自動車へ充電すれば、充電スポットへ行かずとも動力を確保可能です。
電気自動車に充電した電力は、移動時の動力としても使えます。
また余った電気自動車のエネルギーを家庭へ給電し、夜間の電力使用量を抑制できます。
家庭と電気自動車で相互に電力を行き来させることができるため、無駄なく電力を活用できる点が魅力です。
電気自動車の蓄電池利用が可能
V2Hを設置すれば、電気自動車を蓄電池として利用できます。
一般的な家庭用の蓄電池が10kWhの容量なのに対し、電気自動車のバッテリー容量は20kWh〜60kWh(※車種による)と大容量です。
そのため蓄電池よりも多く電力を備蓄でき、停電時の対策に役立ちます。
例えば、バッテリー容量60kWhの日産「リーフ」を所持していれば、万が一の停電でも4〜5日は家庭へ給電可能です。
一般家庭で1日に使用する電力量を12kWhとして計算しています。
【参考】リーフサービスサイト
蓄電池を設置しなくても、電気自動車が蓄電池の機能を有しているため、停電対策にも利用できます。
また万が一充電がなくなった際も、電力が復旧した地域まで電気自動車で移動し、電気を自宅へ運べる点も魅力です。
電気自動車を蓄電池の代わりに使うメリット、太陽光発電と併用するメリットはこちらで説明しています。
V2Hのデメリットはコストとバッテリー劣化
V2Hは電力の有効活用に非常に有効であり、災害対策としても注目されている機器です。
しかし、デメリットもあることを施主に説明しなければなりません。
施主がV2H設置に対して不安を抱えている場合は、デメリットと解決策を提示することで、安心して導入を決められるはずです。
設置費用が高額
V2H最大のデメリットは、設置費用が高額である点です。
そもそもV2Hを活用するためにはV2H機器と電気自動車が必要なため、電気自動車を所有していない施主にとっては大きな負担となります。
V2H機器の購入費用相場は80〜100万円程度、設置工事は40万円程度必要です。
またV2H対応の電気自動車は、車種によりますが200万円以上が相場となります。
ただしV2Hや電気自動車の購入には補助金が利用でき、数百万円単位での補助が受けられる可能性があります。
V2H機器や電気自動車購入で利用できる補助金制度については、以下の記事で紹介しています。
電気自動車のバッテリー劣化
V2Hを使用して家庭への給電、充電を繰り返すとバッテリーが早く劣化する可能性があります。
電気自動車に搭載されているバッテリーの寿命は、約8年間とされています。
ただし充電サイクルが増えるほど電気自動車のバッテリーは劣化するため、V2Hを活用すると通常より早く劣化するリスクがあるでしょう。
ただし電気自動車メーカーは、電気自動車に搭載されたバッテリー容量に対して保証を設けています。
例えば日産はバッテリー容量「8年16万km」を保証しています。
新車登録から8年間、または16万kmまでのどちらか早い方において、バッテリー容量が9セグメントを割り込んだ場合に、修理・部品交換を実施して9セグメント以上へ復帰させる保証です。
【参考】日産電気自動車 充電について | メンテナンス・保証
※セグメントとはバッテリーの劣化を表す数値です。新車のバッテリーは12セグメントであり、数値が下がるほど劣化していることを意味します。
万が一8年間のうちにバッテリーが著しく劣化した場合は、保証を受けられる点は施主にも説明しておきましょう。
まとめ
V2HとEV充電器はそもそも別の機能を持った機器ですが、V2HはEV充電器の機能も兼ね備えています。
電気自動車の充電のみが目的であれば充電器で事足りますが、停電対策や蓄電池の代用、電力の有効利用を考えるならV2Hが必須です。
施主がV2Hの設置とEV充電器で迷っているなら、それぞれのメリットを伝えられるように知識をつけておきましょう。
電力の有効活用が目的の場合は、V2H機器と電気自動車を、さらに電力の有効活用をしたいなら、太陽光発電の併用も提案してみましょう。
しかし、補助金が利用できるとはいえV2H機器と電気自動車の購入に大金がかかるうえ、太陽光発電設備の導入となると、予算的に厳しい施主もいるでしょう。
そのような方にはリース型の太陽光発電もおすすめです。
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