蓄電池の仕組みは非常にわかりにくく、施主から質問されてもうまく答えられない場面もあるでしょう。
しかし、高額な蓄電池の導入を施主へ勧めるなら基本的な知識はつけておきたいもの。
この記事では、蓄電池の仕組みや充放電で何が起きているのか、太陽光発電との併用メリットとデメリットについて解説します。
目次
蓄電池の仕組みをわかりやすく解説
蓄電池の仕組みについて知ることで、蓄電池のメリットをアピールできるように知識をつけましょう。
そもそも蓄電池とは何か
まず蓄電池とは、電気を蓄える機能を持たせた充電装置のことです。
充電をすれば内部の電気を使い切っても、また電池として利用できます。
身近なモバイルバッテリーなども蓄電池の1つです。
太陽光発電設備で用いる蓄電池は5〜10kWhの容量の電力を蓄えることができ、電力の有効活用や停電対策に用いられています。
蓄電池の概要についてさらに詳しく説明した記事も併せてご覧ください。
蓄電池の充放電の仕組み
太陽光発電における蓄電池の充放電は、主にリチウムイオン電池が使用されます。
日中の太陽光発電で生じた電気エネルギーを蓄電池に充電し、夜間や発電量が少ない時間帯に電力を供給する仕組みです。
充電池は太陽光パネルで発電した電力が蓄電池におくられ、放電時はその電力をイオンの力で放電しています。
充電サイクルは6,000〜12,000回といわれており、膨大な回数の充放電が可能です。
蓄電池の充電と放電のメカニズム
蓄電システムがどのようにエネルギーを貯め、必要なときに供給するのか、その基本的な仕組みについて説明します。
施工業者の営業の方は施主から製品の動作原理について質問を受けることがあるかもしれません。
そのような場合に備えて、蓄電システムの基本的な動作原理を把握しておきましょう。
まずは、蓄電池に充電される際のメカニズムは以下のような流れになっています
- 電力系統からの電気エネルギーを受け入れ、システム内に取り込みます
- 正極に存在するリチウムイオンが負極方向への移動を開始します
- 移動したリチウムイオンは、負極の炭素層内部に取り込まれていきます
- 電子は外部回路を介して負極側へと移動します
- この過程で、電気エネルギーは化学エネルギーとして蓄積されます
次に、放電の際のメカニズムを解説します。
- 蓄積された化学エネルギーが電気エネルギーへの変換を開始します
- 負極の炭素層に蓄えられていたリチウムイオンが解放されます
- 解放されたリチウムイオンが正極へと還流します
- 電子は外部回路を通過して電気として利用可能になります
このように蓄電池は、太陽光発電などで生み出された電力を化学エネルギーとして効率的に貯蔵し、必要なときに電気として供給する重要な役割を果たしています
太陽光発電に使われる蓄電池の種類
太陽光発電システムと連携する際に使われる蓄電池の種類を4つ紹介します。
リチウムイオン電池
最も一般的な製品は、リチウムイオン電池です。
家庭用蓄電池として現在最も主流となっており、太陽光発電システムに最適な特徴を持っています。
エネルギー密度が高く、小型化が可能で、充放電の効率も優れているため、家庭での電力貯蔵に適しています。
スマートフォンやノートパソコンと同じ基本的な仕組みを持ち、太陽光発電で生み出した電気を効率的に蓄え、夜間や曇天時に活用可能です。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は、以前は太陽光発電システムでも使用されていましたが、現在では徐々に淘汰されつつあります。
コストが低いもののエネルギー密度が低く、寿命も短いため、最新の太陽光発電システムではあまり選択されなくなっています。
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池も、かつては太陽光発電用の蓄電池として使用されていましたが、リチウムイオン電池の登場により徐々に数が減ってきています。
エネルギー密度や充放電効率の面で、リチウムイオン電池の方が効率よく充放電ができるためです。
NAS電池
NAS電池は、主に大規模な産業用途向けの蓄電池で、家庭用の太陽光発電システムではほとんど使用されません。
NAS電池は高温環境で動作するという特性があるため、家庭用には不適であるためです。
太陽光発電と蓄電池が連携する際の仕組み
太陽光発電と蓄電池が連携する仕組みについて解説します。
太陽光発電システムと蓄電池の接続
太陽光パネルで発電した電力を蓄電池に貯めるには、太陽光発電システムと蓄電池を連携させる必要があります。
太陽光パネルと蓄電池に互換性があることを確認し、適切な商品を購入するよう説明しましょう。
太陽光パネルで発電
まず太陽光パネルに太陽光が当たると、パネル内の電子がエネルギーを放出する働きで直流の電気を発します。
ただし注意したい点が、直流電流は家庭で使用できないことです。
家庭で使われている電流は「交流電流」のため、このままでは電気を使用できません。
パワーコンディショナーによる制御
パネルで発電した電流は接続箱という機器に集まり、その後パワーコンディショナーへ送られます。
パワーコンディショナーが直流電流を交流電流に変換し、家庭で使えるようにする役割を果たしています。
直流への再変換と蓄電
家庭で使いきれない電気はを蓄電池へ貯めるには、再度電流を直流電力に変換しなければなりません。
ここでもパワーコンディショナーが電力を変換し、蓄電池へ送り込みます。
そして、蓄電池が直流電力をためて、使用する際はパワーコンディショナーへ送電して変換後に家庭で使用するという仕組みです。
蓄電池と太陽光発電を併用するメリット
蓄電池と太陽光発電の併用には、主に以下3つのメリットがあります。
停電対策
停電時でも蓄電池に貯めた電力を使用できるため、災害時などの非常時に電力供給が可能です。
近年の自然災害による停電リスクを考えると、家庭用の非常用電源として大きな価値があります。
一般的な家庭用蓄電池(5〜10kWh)であれば、1日程度の電力を確保できます。
地震が多く、また電力逼迫が頻繁に起きている今の日本には必要な設備だといえるでしょう。
蓄電池による停電対策の概要やより詳しい事例についての記事も参考にしてください。
電力削減
夜間の電力使用を蓄電池からの放電でまかなうことで、電力会社からの購入電力を削減できます。
特に電力料金の高い時間帯(ピークタイム)に蓄電池の電力を使用することで、電気料金の節約につながります。
また、季節や天候による発電量の変動を補うことができ、より安定した電力供給が可能となる点もメリットです。
電力の自家消費
太陽光発電で発電した電力を蓄電池に貯めることで、発電した電力を無駄なく使用できます。
売電価格の低下により、自家消費型の太陽光発電システムが注目されている中、蓄電池との併用は理想的な選択肢です。
日中に発電した余剰電力を夜間に使用することで、自給自足型の電力供給を実現できます。
太陽光発電と蓄電池の併用メリットをさらに知りたい方向けの記事もご覧ください。
蓄電池と太陽光発電併用のデメリット
蓄電池と太陽光発電併用のデメリットについても、施主にきちんと説明できるようにしておきましょう。
初期費用の高額さ
蓄電池システムの導入には、一般的に100万円前後の費用が必要です。
太陽光発電システムと合わせると、総額で200〜300万円程度の初期投資が必要となります。
補助金制度などを利用できる場合もありますが、導入時の経済的負担が大きいため迂闊に勧めにくい点はデメリットでしょう。
太陽光発電システムとの連携可否
既存の太陽光発電システムに後付けで蓄電池を設置する場合、互換性の問題が生じる可能性があります。
特にパワーコンディショナーとの適合性を確認する必要があり、場合によっては機器の交換が必要になることもあります。
新規設置の場合は問題ありませんが、既存システムへの追加設置時には慎重な検討が必要です。
設置スペースの問題
蓄電池システムの設置には、一定のスペースが必要です。
一般的な家庭用蓄電池の大きさは、幅80cm×奥行40cm×高さ100cm程度です。
設置場所の確保が難しい住宅では、導入を見送らざるを得ない場合もあります。
ただし、現在ではコンパクトな蓄電池も開発されています。
施主の自宅の敷地面積に合わせて、設置スペースについても検討すると良いでしょう。
まとめ
蓄電池と太陽光発電の併用は、停電対策や電力費用の削減、自家消費率の向上など、多くのメリットをもたらします。
一方で、高額な初期費用や設置スペースの確保など、検討すべき課題もあります。
とはいえ適切な計画と準備のもと、蓄電池と太陽光発電の併用は、持続可能なエネルギー利用を実現する有効な手段です。
高額な初期費用の問題について解決するためには、太陽光リースという選択肢も検討しましょう。
太陽光リースとは、初期費用無料、毎月リース料を支払って太陽光発電を導入できる仕組みのことです。
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