自家消費型太陽光発電とは、住宅の屋根に設置したソーラーパネルで発電した電力を、自宅で消費するという新しい電源確保方法です。
これまでの太陽光発電システムの強みは、売電で収益が得られることでした。
しかし、近年は自家消費型太陽光発電を取り入れる過程が増加しています。
この記事では、自家消費型太陽光発電の仕組みやメリット、売電型と迷った際の考え方を解説します。
目次
自家消費型太陽光発電の基礎知識
工務店の営業担当が知っておくべき自家消費型太陽光発電の基礎知識をまとめました。
自家消費型太陽光発電とは
自家消費型太陽光発電は、住宅の屋根に設置したソーラーパネルで発電した電力を、家庭内で直接使用するシステムです。
電力会社に売電するのではなく、自宅で生み出した電気をそのまま利用する仕組みが特徴となっています。
売電型と自家消費型の違い
従来の売電型は、発電した電力の余剰分を電力会社に売却するモデルです。
毎年入札価格が決まり、電力会社が定額で買取をしています。
一方、自家消費型は、発電した電力をできる限り自宅で消費することに重点を置いていて、売電は基本的にしないモデルです。
近年の電気料金高騰や固定価格買取制度の変更により、自家消費型太陽光発電を取り入れる施主が増えています。
自家消費型太陽光発電の導入メリット
自家消費型太陽光発電の導入メリットを紹介します。
電気代削減効果
自家消費型太陽光発電の最大の魅力は、電気代の大幅な削減にあります。
経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると、2024年時点での太陽光発電の自家消費率は42%と高くなっており、多くの過程で太陽光発電で生み出したエネルギーを活用していることがわかります。
月々の電気代が標準的な家庭(4人家族)で電気代が3万円だったと仮定すると、約12,600円分を太陽光発電でまかなうことが可能です。
年間に換算すると、約151,200円のコスト削減効果が見込めます。
なお、住宅用太陽光発電の初期投資の回収期間は10〜12年が目安とされており、電気代削減により得られる経済的な効果も魅力です。
補助金や税制優遇制度の活用
太陽光発電設備の導入は高額であり、多くの施主が費用面で難色を示すケースが多いでしょう。
ここで活用したい手段が補助金や税制優遇の活用です。
2022年より国からの太陽光発電設備への補助金は実施されていませんが、自治体の補助金は利用できます。
たとえば東京都では新宿区で1kwあたり10万円(上限30万円)、港区では1kwあたり20万円(上限80万円)の補助金が利用可能です。
また、蓄電池やV2Hなどに対しては国からの補助金が継続されているため、V2Hやトライブリッドの導入を検討している施主の負担を減らせます。
太陽光発電関連の補助金情報についての記事も参考にしてください。
非常用電源の確保
内閣府の防災基本計画によると、災害時の電源確保は重要な防災対策の一つとされています。
太陽光発電システムは、蓄電池と組み合わせることで停電時の電力供給が可能となります。
災害時に必要な最低限の電力(携帯電話充電、照明、情報機器など)を継続的に確保できるため、家族の安全と情報収集に役立ちます。
設置による遮熱効果
PVソーラーハウス協会の調査によると、太陽光パネルは遮熱効果があると証明されています。
同調査によると太陽光パネルがない場合の屋根材の温度は夏に56.5度に達していましたが、パネルがある場合は47.1度までしか温度上昇が見られなかったそうです。(【参考】夏期における太陽光パネル・断熱材の日射遮蔽効果(7月)|PVソーラーパネル協会)
これにより、夏場の室内温度上昇を抑制し、冷房負荷を低減させる効果があります。
また、冬も太陽光パネルが住宅の放射冷却を防ぐ効果があり、暖房効率も良いとされています。
環境への配慮
クール・ネット東京によると、太陽光発電でのCO2排出量は1kWあたり17〜48gです。
これは火力発電の約690gと比較して、CO2排出量を約93%削減できる計算となります。
平均的な家庭(4人家族)で年間約1.2トンのCO2削減に貢献できることになり、これは約80本の杉の木が1年間に吸収するCO2の量に相当します。
環境への意識が高い施主にとっては太陽光導入のきっかけとなるデータであるため、これらの情報も頭に入れておき、メリットとして提示すると良いでしょう。
自家消費型太陽光発電の導入デメリットと解決策
自家消費型太陽光発電の導入はメリットばかりが取り沙汰されがちですが、実はデメリットがあることも忘れてはいけません。
具体的には、自家消費型太陽光発電には以下3つのデメリットがあります。
初期費用の高額さ
住宅用太陽光発電システムの平均的な導入費用は、おおよそ150万円程度です。
まず太陽光パネルの調達費用は以下のとおりです。
- 3kW:78.3万円
- 4kW:104.4万円
- 5kW:130.5万円
さらにパネルに加えてV2Hの導入などを検討している場合は、上記の金額に加えてV2Hの本体価格や設置工事費用が加算されます。
住宅を検討している施主にとって、住宅の建設費用に加えてプラス数百万円単位の予算が上乗せされることは大きな負担です。
ただし、長期的な電気代削減と各種補助金を考えれば、十分に魅力的な投資です。
自家消費型太陽光発電で得られる経済効果とあわせて考えれば、設備回収も十分可能な費用であると説明しましょう。
天候による発電量の変動
自家消費型太陽光発電は、発電量が少ない地域には向かないモデルでもあります。
太陽光発電は太陽が出ているときにしか発電できず、晴れの日と曇りや雨の日では発電量に差が生じることは避けられません。
また、地域や立地によっても発電量が異なるため、事前調査で発電量のシミュレーションを実施し、施主にとって後悔のないようバックアップが必要です。
天候による発電量の変動はデメリットですが、蓄電池の併用により太陽が出ていない時間帯の電気の使用が可能となります。
施主が発電量の変動を気にしている場合は、解決策として蓄電池の併用やV2Hによる電気自動車への蓄電を提案すると良いでしょう。
設置スペースの問題
太陽光発電システムの設置には、十分な日光が当たる屋根や敷地スペースが必要となります。
住宅の立地や向き、周辺環境を事前に綿密に確認することが重要です。
また、V2Hや蓄電池を併用する場合はさらにスペースが必要となるため、敷地面積的に難しい場合があるかもしれません。
最近はコンパクトな蓄電池なども販売されているため、施主の敷地面積に合わせた適切な機器を提案できるようにしておきましょう。
自家消費型太陽光発電の導入に必要な費用
自家消費型太陽光発電の設置費用について、詳しく解説します。
まず自家消費型太陽光発電には、以下の機器が必要です。
- 太陽光パネル
- パワーコンディショナー
- V2Hまたは蓄電池
太陽光パネルの設置費用が5kWで130万円程度、蓄電池の設置費用は60〜250万円、V2H機器も200万円程度必要です。
初期投資は決して安くありませんが、各種支援制度を活用することで負担を軽減できます。
V2Hや蓄電池の設置費用についてまとめた記事も参考にしてください。
自家消費型太陽光発電と売電型で迷った場合の考え方
施主が自家消費型と売電型で迷っている場合にアドバイスする際に役立つ基本の考え方を紹介します。
短期での費用回収を目指すなら自家消費
電気代の即時削減効果を重視する場合は、自家消費型太陽光発電が最適な選択肢です。
もしも太陽光発電で家中の電力を賄った場合、電気代金はかかりません。
総務省の「」によると、2名以上の家庭での電気代平均は13,028円となっており、単純計算で年間15万円以上を節約できる計算です。
太陽光発電の導入費用を200万円とすると、13年程度で回収できる計算となります。
長期的な費用効果が目的なら余剰売電
売電価格の推移や長期的な投資回収を目指す場合は、従来の余剰売電型も検討する価値があります。
一般住宅用の太陽光パネルの平均発電量(年間):6515kWh
一般家庭の売電率:70%
2024年の余剰電力売電価格:16円/1kWhあたり
上記データをもとに計算すると、年間の売電収益は72,968円です。
自家消費よりも経済効果は低いため、初期費用回収に必要な期間はおおよそ20年程度となります。
ただし、売電単価は年々低下傾向にあり、自家消費率が低い場合は経済的効率も低下します。
また、補助金制度の対象から外れる可能性もあるため、慎重な検討が必要です。
施主の皆様に最適な方式を選択するためには、家庭の電力消費パターン、初期投資の回収期間、将来の電力価格予測、環境への貢献度などを総合的に考慮することが重要です。
単なる経済性だけでなく、エネルギーの有効活用や環境貢献の観点も含めて、最適な太陽光発電システムを選択することをおすすめします。
まとめ
自家消費型太陽光発電は、経済的メリットと環境への配慮を兼ね備えた、未来志向のエネルギーシステムです。
初期投資は高額ですが、長期的な目線では売電型モデルよりも初期投資回収が早く、経済的なメリットも大きいです。
ただし、初期費用の高額さは導入を妨げるハードルには変わりありません。
高額の太陽光発電導入費用の負担を軽減するには補助金の利用のほか、太陽光リースの使用もおすすめです。
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