生産性向上は、限られた資源を最大限活用し、大きな成果を生み出すための取り組みです。
建設業界では長時間労働や人材不足といった問題が重要視されています。
これらの問題を解決するために、生産性向上は必要不可欠です。
今回は、生産性向上の言葉の意味や目的、工務店が取り組める生産性向上を説明します。
目次
生産性向上とは?
生産性向上とは、冒頭でも述べたように、企業が保有する経営資源(インプット)を最大限に有効活用し、小さな投資で大きな成果を生み出すことを意味します。
投入したインプットによって、どの程度の成果・価値(アウトプット)を生み出せたかが重要です。
- 業務効率化との違い
- 人手不足解消
- 労働時間の削減
- 事務作業時間の削減
業務効率化との違い
生産性向上と混同されやすい言葉に「業務効率化」があります。
生産性向上とは投資した経営資源に対してどのくらいの成果を上げたのかを示す言葉であるのに対し、業務改善は業務にかかる時間や費用を抑え、投資する経営資源を減らすことを指します。
つまり、生産性向上のための取り組みに業務改善が含まれるということです。
では、建設業界における生産性向上の目的は一体何でしょうか。
以下で解説していきます。
人手不足解消
建設業界では人手不足に陥っている企業が多く、生産性向上に向けた取り組みに人員を割くことが難しいというのが現状です。
中でも多くの人員が必要とされる土工やコンクリート工は、生産性向上がなかなか進んでいません。
しかし、これらの施工に携わる人は他の作業と比べて多いため、改善の余地は大いにあるといえます。
労働時間の削減
建設業界は他の業界と比べ、年間実労働時間や年間出勤日数が高い状況にあります。それだけでなく、長時間労働に反比例して業務効率が低下している可能性も大いにあります。
長時間労働により、生産性を上げるどころか、かえって生産性が下がってしまうのです。
長時間労働から若い人材が集まらず人手不足に陥り、さらに生産性向上が難しくなるといった悪循環に陥っている企業もあるでしょう。
事務作業時間の削減
建設業のメイン業務は現場の管理などですが、実際には膨大な事務作業があり、それらが生産性の向上を阻んでいます。
例えば、建設現場では現場の状況を確認するために写真を撮影しますが、データではなく印刷した写真で管理している場合、膨大な写真の管理が負担になります。
また、工程表の作成や見積書の作成など、本業である管理業務の合間にやらなければならない事務作業は多いです。
このような業務も効率化できれば、生産性向上につながります。どのような事務作業があるのか整理したうえで、効率化できそうな業務を把握することが大切です。
生産性向上のために工務店が取り組めること
生産性向上に向けた取り組みには、以下の4種類があります。
- インプット縮小型
- インプット大幅縮小型
- アウトプット拡大型
- アウトプット大幅拡大型
インプット縮小型
インプット縮小型は、現場業務を効率化したりコストの削減を進めたりすることで、投入する資源(インプット)を減らす方法を指します。
生産量や付加価値(アウトプット)は維持することにより、生産性向上を実現します。
インプット大幅縮小型
インプット大幅縮小型は、採算の取れない部署の縮小や撤退・売却・事業の統廃合・リストラなどを行うことで、事業全体を整理し、経営資源の投入量を大幅に縮小する方法です。
成果の減少は避けられませんが、アウトプットとインプットの値を改善することを目指します。
アウトプット拡大型
アウトプット拡大型は、インプットを維持しつつアウトプットを増やすことを目指す方法です。
従業員のスキルアップやDX(デジタルトランスフォーメーション)を促進することなどにより、労働量あたりの成果を最大化することを目指します。
アウトプット大幅拡大型
アウトプット大幅拡大型は、生産性の高い事業に投資を集中し、インプットとアウトプットを大幅に増やしていく方法です。
また、何をアウトプットととらえ、何をインプットとして位置づけるのかによって生産性の意味も異なります。主に問題とされるのは、従業員1人あたりが生み出す成果で、労働生産性と呼ばれます。
生産性向上のために工務店が取り組めること
工務店が生産性向上のために、すぐに取り組めることは以下の4つです。
- クラウドサービスを利用する
- チャットやコミュニケーションツールを活用する
- ルーティン業務を自動化する
- 住宅フランチャイズに加盟する
クラウドサービスを利用する
クラウドサービスは、書類データや画像をクラウド上で保存できるサービスです。業務で使用するさまざまなデータをクラウド上で共有することで、必要な時にいつでもアクセスすることが可能となります。
インターネット環境さえあればどこからでもアクセスできるため、テレワークとの相性も抜群です。
具体的には、案件の進行データ、日報、顧客情報、工事見積書や発注書などの書類、業務のマニュアルやフローチャート、現場写真や図面などをクラウド化し、社内で共有することが可能となります。
チャットやコミュニケーションツールを活用する
社内での連絡や情報共有をする際には、ビジネス用のチャットやコミュニケーションツールの活用が便利です。
これまではメールを社内ツールとして使用することが一般的でしたが、作成に時間がかかったり、情報の整理が難しいというデメリットがありました。
ビジネス用のチャットやコミュニケーションツールには、チャット機能だけではなく、タスク管理やファイル送信など、あらゆる情報共有機能がついています。
また、映像や音声を使った会話も可能なため、Web会議を簡単に行うことも可能です。
パソコンはもちろん、スマートフォンから利用できるツールが多いため、社内外の人とリアルタイムでやり取りできます。
ルーティン業務を自動化する
工務店の業務には、毎回決まったルーティンで行う業務が多数存在します。ルーティン業務は誰でもできる簡単なものが多く、自動化しやすい業務です。
見積書や発注書、請求書の発行、工程管理、顧客管理などのデータは、エクセルでデータを作成・管理することが一般的でしたが、工務店向けの業務支援システムを導入することにより、簡単な手順でルーティン業務を自動化できます。
今まで書類作成などに費やしていた時間や手間を削減することで、業務全体の効率化につながるだけでなく、ヒューマンエラーなどのミスも無くすことができるでしょう。
住宅フランチャイズに加盟する
営業から住宅の建設、販売までの一連のノウハウを利用できる仕組みを、住宅フランチャイズと呼びます。
加盟した店舗はフランチャイズ本部にロイヤリティを支払い、業務内容の指導やサポートを受けることが可能です。
住宅フランチャイズに加盟し、完成されたノウハウを活用することで大幅な業務効率化になります。
まとめ
今回は、工務店における生産性向上について、目的や具体的な方法を交えながら説明してきました。
生産性の高くない建設業界において、自社のやり方にあった方向性の取り組みを選択することで、生産性を向上させていきましょう。