工務店は、家を建てて施主様に引き渡せば仕事が終わるというわけではありません。「アフターメンテナンス」という重要な仕事があります。
ここでは家を建てた後の仕事となる「アフターメンテナンス」の重要性と、それに付帯する管理の必要性や効率化について紹介したいと思います。
目次
アフターメンテナンスとは

アフターメンテナンスとは、住宅を「建てた後」のサービスの1つ。引き渡した後での一定期間の無償点検・改修を意味します。
住宅は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)によって扱われます。この法律では、新築住宅は構造耐力上主要な部分、外壁、屋根、雨水の侵入を防止する部分は、建ててから10年間、住宅会社が保障義務を負うとされています。
つまり、住宅を施主様に引き渡した後、構造上主要な部分に不具合があった場合には、無償修理で対応しなければなりません。
- アフターサービスとの違い
- アフターメンテナンスの例
アフターサービスとの違い
アフターメンテナンスと似ている言葉にアフターサービスという用語がありますが、似ている様で異なる点もあります。
「メンテナンス」は、実際に行う「修理」や「工事」を指します。そのため、「アフターメンテナンス」には、「修理」や「工事」が必須です。
その一方でアフターサービスは、「メンテナンス」とまでは謳っていないため、「修理」「工事」が含まれず、「相談」のみの場合もあります。
つまり、アフターメンテナンスとアフターサービスでは、サービスの内容と範囲が異なるということです。
ちなみに、サービスを検討する上では、提示するサービスが有償か無償かをはっきりさせておかなければ無駄な混乱を招きます。トラブルの元にもなるため、どこまでが無償で、どこからが有償かをしっかりと施主様に伝えておきましょう。
アフターメンテナンスの例
アフターメンテナンスは、基本的には、品確法で定められた建物の基本的な部分の無償修理です。
例えば屋根が破損して雨漏りが起こった場合には無償修理に応じなければなりません。
屋根には、積雪による荷重や台風が襲来した際に非常に大きな力が加わり、物理的に破損することもあり得ます。
また、屋根は直射日光が容赦無く当たる部分のため、屋根材が化学的に劣化して雨漏りに繋がることも。
この様な状況が建ててから10年以内に起こるのであれば、アフターメンテナンスとして無償修理の対象になります。
アフターメンテナンスが重要な理由

アフターメンテナンスが重要な理由は、主に以下の3点です。
- 顧客満足度アップ
- 施主がリピーターに変わる
- リフォームの受注
顧客満足度アップ
顧客満足度は企業の評判に結びつき、利益に直結するため、とても重要です。
アフターメンテナンスは顧客満足度のアップに繋がります。
前述の通り、家は品確法に守られており、何らかのトラブル発生時にはメンテナンスをしなければなりません。仮に、このメンテナンスの質が悪ければ、同じ箇所でのトラブルの頻発もあり得ます。当然ながら、顧客満足度が落ちてしまいます。
しかし、素早く対応すれば、それほどの深手にはならず、逆に「トラブル時に対応の良い会社」として認知されるでしょう。
施主がリピーターに変わる
さて、住宅のメンテナンスの質の良し悪しは、施主の業者選択にも繋がります。つまり「腕の悪い会社は使えない」と認識され、敬遠されるのです。
これは品確法での時効後の業者選定にも響きます。何らかのトラブルの修繕に、他の会社が選ばれる様にもなり得るからです。
しかし、メンテナンスを地道に、そして確実に対応しておけば企業の信用にも繋がります。そしてリピーターにも変わり得るのです。
リフォームの受注
では、その様な企業は、次にどの様な仕事を施主から頼まれるでしょうか。ケースにもよりますが、大きな物ではリフォームの案件が挙げられます。しかも、間取りの変更を含める様なスケルトンリフォームの仕事も。そして、その収益は非常に大きな物になります。
アフターメンテナンスは不始末の対処とも言えるので、施主の元には行きにくいかも知れません。しかし、しっかりと対応して行くことにより、大きなビジネスチャンスにもなり得ます。小さなトラブルでもしっかりと対応し、顧客満足度のアップを図りましょう。
アフターメンテナンスが不完全な場合

アフターメンテナンスが不完全だと、企業は下記のようなリスクを負う可能性があります。
- 信用失墜
- 会社の評判が悪くなる
- 仕事が減る
信用失墜
まず考えられるのは、会社としての信用失墜です。
家のトラブルは生活の安全性や快適性に直結しています。例えば、雨漏りが起こるならば、困るだけでなく、工務店側に憤りを覚えるかも知れません。
また、雨漏りによって家財が汚れてしまったら、損害賠償にも発展し得ます。
当然ながら、その様な会社は「使えない」という烙印を押され、信用も失墜してしまうのです。
会社の評判が悪くなる
会社の信用が失墜してしまうと評判も悪くなってしまいます。
特に、今はネット上に口コミ情報を簡単に載せられます。また、SNSで不具合を指摘されることもあるでしょう。他にも、施主が家造りに関するブログを立ち上げ、非難される危険性さえあります。
特にSNSでの指摘は拡散性が高いため、多くの人に会社を低評価される可能性があるでしょう。
仕事が減る
会社の評判が悪くなると仕事も減ってしまいます。これは致命的です。
しかも、個人としての住宅の施工だけでは無く、不動産会社の企画する建売住宅のプロジェクトから敬遠されたら、どれほどの痛手になるでしょうか。状況にもよりますが、赤字に転落してしまい、しかも慢性化もしてしまいます。そうなると、運転資金の枯渇や銀行の評価も低くなってしまい、事業の座礁のリスクまで発生し得るでしょう。
アフターメンテナンスは管理の効率化が重要

質の悪いアフターメンテナンスは、会社の信用失墜からビジネスの破綻リスクにまで変わり得ます。物件管理や顧客管理をしっかり行い、確実にアフターメンテナンスに対応しなければなりません。
そこで、管理の質を上げて効率化を図ることが重要です。
- 物件仕様を記録できるから
- メンテナンスの履歴が記録されるから
- スムーズに仕事が進み、顧客満足度が上がるから
物件仕様を記録できるから
アフターメンテナンスを確実に行うためには、物件の仕様を押さえていなければなりません。屋根であればどの様な屋根材を使っているか、断熱材はどの様な仕様か、などが分からないと、対応が後手に回ってしまうためです。
しかし、物件の仕様が確実に記録されていれば、施工前の段階でメンテナンス内容が分かることも多いです。施主から問い合わせや相談が舞い込んだとしても、メンテナンスの工事の察しが付き、先手を取れます。この点で管理が重要であり、効率化が望ましいといえます。
確かにメンテナンスをするためには「現場確認が必要」なことは鉄則です。しかし、顧客から相談が来た時に何も分からない状態よりも、情報を持っておいた方が有利でしょう。
メンテナンスの履歴が記録されるから
メンテナンスの履歴を残すことは、後々に役立ちます。これは、アフターメンテナンス期間が終わった後に、特に使える情報です。
例えば、屋根の雨漏りのアフターメンテナンスを行って長い時間が経つと、「どの部分をどの様にメンテナンスしたか」といった記録がわからなくなることがあります。これは記録の管理が良く無いためです。
情報管理がしっかりしていれば、メンテナンス履歴が残り、後にトラブルが発生した場合も、迅速に対応できます。
スムーズに仕事が進み、顧客満足度が上がるから
管理のシステムがしっかりしていれば、顧客情報や物件の周辺環境の情報なども管理されるため、仕事がよりスムーズに進みます。
それに連動して顧客満足度もアップし、評判も良くなるでしょう。
施主様はリピーターになり、工事の受注が増えるといった好循環が発生します。管理とその効率化はそれほどまでに大切です。
アフターメンテナンスで顧客満足度を向上させるポイント
アフターメンテナンスで顧客満足度を向上させるポイントは、以下の4つです。
- メンテナンス内容・期間を明記する
- 自社で定期点検をおこなう
- 保証内容を手厚くする
- 顧客とのコミュニケーションを丁寧におこなう
アフターメンテナンスを実施する際は、上記のポイントを意識しましょう。
メンテナンス内容・期間を明記する
住宅購入時に提供されるメンテナンス内容や期間について、顧客が明確に理解できる形で提示することが重要です。契約書やガイドブックなどの書面に明記して口頭で丁寧に説明すれば、顧客は自分の家にどのようなサポートがあるかを把握できます。
例えば、外壁の劣化や設備機器の故障といった問題への対応範囲、無償修理の条件や保証期間などを具体的に示しましょう。また、「保証期間終了後も有償で対応可能」といったフォローアップ体制の存在を伝えれば、顧客に安心感を与えられます。
自社で定期点検をおこなう
アフターメンテナンスを外部業者に依頼するケースは少なくありませんが、可能な限り自社で定期点検をおこないましょう。自社で対応すれば、顧客からの信頼を直接得られるだけでなく企業のブランド力向上にもつながります。
自社で定期点検を実施する場合、顧客とのコミュニケーションが密となります。例えば、点検時に住宅の状態を直接説明する・メンテナンスが必要な箇所をその場で提案するなどが可能です。上記の活動により、顧客は企業に対して「親切」「信頼できる」と感じるようになります。
また、外部業者に依頼する場合に比べて問題が発生した際の情報共有がスムーズです。現場のスタッフが直接状況を把握するため、対応のスピードが速く顧客満足度の向上につながります。さらに、自社で点検を行えば、スタッフのスキルアップや知識向上も期待できます。
保証内容を手厚くする
顧客満足度をさらに高めるためには、保証内容を充実させることも有効です。例えば、基礎部分や構造体に関する保証を通常の10年から20年に延長すれば、長期的な安心を提供できます。また、通常は保証対象外とされる消耗品についても一部をカバーすると、顧客に「他社よりも手厚い」印象を与えられます。
保証内容を手厚くする際には、顧客にとってわかりやすい比較資料を用意することがポイントです。他社と自社の保証内容を視覚的に示せば、自社の強みが一目で伝わるようになります。上記のような保証体制の充実は、住宅購入後の顧客ロイヤルティ向上につながります。
顧客とのコミュニケーションを丁寧におこなう
顧客との丁寧なコミュニケーションは、アフターメンテナンスを成功させる鍵です。定期点検時だけでなく日常的なフォローアップを欠かさなければ、顧客の安心感を高められます。
具体的には、定期的なメールや電話で「住宅の状態はいかがですか?」と声をかけるなど、些細な連絡が顧客との信頼関係を築く助けとなります。また、顧客からの問い合わせには迅速かつ丁寧に対応し、不安や疑問を解消する姿勢を示すことが重要です。
さらに、顧客からのフィードバックを積極的に取り入れる仕組みを整えれば、顧客満足度の向上に寄与します。例えば、アンケートを実施してサービス改善に役立てることが効果的です。顧客の声に耳を傾けて期待を超えるサービスを提供する姿勢が、企業の信頼を高めるでしょう。
まとめ
アフターメンテナンスの管理、そして効率化の重要性について述べました。管理の状況によって将来が決まり得ることもイメージ出来たことと思います。
ただし、管理の効率化は簡単では無く、専用のツールが必要です。特に、工務店向けのクラウドベースのソフトや、施主様と簡単にコミュニケーションを図れるアプリがあると、業務を効率化しやすいでしょう。