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建築のライフサイクルコストとは?構成と削減・最適化の方法

近年、建築業界における注目ワードの1つとなっている「ライフサイクルコスト」。

国からも推進されている建築物の長寿命化にかかわる言葉ですが、言葉の意味や具体的な内容がイマイチよくわからないという方もいるのではないでしょうか。

今回は建築におけるライフサイクルコストについて、その意味や内容、管理や最適化の手法を中心に、コストの具体例やライフサイクルコストを把握・管理する重要性も含めて解説します。

ライフサイクルコストとは

ライフサイクルコストとは

ライフサイクルコスト(LCC)とは、建築物が作られてから解体されるまでにかかる必要な費用の合計を指す言葉です。

建築物の一生(ライフサイクル)を通して必要になる費用(コスト)の合計のため、ライフサイクルコストと呼ばれています。

ここでは建築におけるライフサイクルコストを理解するために、まず以下2点について確認しましょう。

ライフサイクルコストとは
  • 建築におけるライフサイクルコストの構成
  • ライフサイクルコストの重要性

建築におけるライフサイクルコストの構成

ライフサイクルコストは建築業界以外でも広く使用される言葉・概念ですが、建築物はその性質上ライフサイクルが長いため、かかるコストも多くかつ大きくなります

建築物にかかる費用と言うと建設費を思い浮かべがちですが、実は運用費や解体費も含めて考えると建築費は全体の20%程度に過ぎないと言われています。

一方で運用や解体にかかるコストを決定づけるのは企画・設計・建設の段階であるため、建設段階でライフサイクルコストについて把握・理解しておくことが非常に重要です。

建築におけるライフサイクルコストの構成としては、大きく分けて以下の3つに分けられます。

建築におけるライフサイクルコストの構成
  • イニシャルコスト
  • ランニングコスト
  • 解体費用

イニシャルコスト

イニシャルコストとは初期費用のことで、建築におけるイニシャルコストは建設費です。

建設費には企画や設計、施工にかかる費用や土地取得にかかる費用が含まれます。

ランニングコスト

ランニングコストとは運用にかかる費用のことで、建築では以下のような費用がランニングコストにあたります。

建築におけるランニングコスト
  • 水光熱費
    電気代・水道代・ガス代など
  • 運営管理費
    点検費・保守費・清掃費・警備費など
  • 修繕・更新費
    定期メンテナンス費・機器や部品、部材等の修理交換費など
  • 税金
    固定資産税など
  • 保険
    火災保険など

このようにランニングコストは種類も多く費用も大きいため、建築においてライフサイクルコストはよく氷山に例えられます。

つまり、ライフサイクルコストの観点からすると建設費は氷山の一角に過ぎず、その他のコストが大部分を占めるということです。

解体費用

解体費用は文字通り役割を終えた建築物を解体する際にかかる費用のことです。

解体作業に必要な撤去や運搬の際にかかるあらゆる費用が解体費用に含まれます。

ライフサイクルコストの重要性

ライフサイクルコストを理解・把握することは重要ですが、その理由には以下の2つがあげられます。

ライフサイクルコストが重要な理由
  • 建築物はライフサイクルが長く、ライフサイクルコストも多く大きいため
  • 政府や地方自治体が建築物の長寿命化を推進しているため

建築物のライフサイクルは非常に長く、法定耐用年数は木造住宅でも22年、鉄筋コンクリート造なら47年となっています。
なお、これらはあくまで法定耐用年数であり、メンテナンス次第でより長い年月を快適に利用できます。

この長いライフサイクルの中で先ほど見たような多くのコストが大きくかかるため、資産価値判断や点検サイクル把握の観点からライフサイクルコストを理解・把握することは重要です。

また、近年政府や地方自治体はさまざまな事業を通して住宅やマンション、ビルなどあらゆる建築物の長寿命化を推進しています。

建築物の長寿命化によって建築にかかるコストや設計時の観点も変わってくるため、今後ますますライフサイクルコストの重要性は高まるでしょう。

こちらには別KW記事「地域型住宅グリーン化事業とは?事業目的から補助額、申請方法まで解説!」の関連リンクを設置することを想定しています。

ライフサイクルマネジメントとは

ライフサイクルマネジメントとは

ライフサイクルコストに関連する言葉に「ライフサイクルマネジメント(LCM)」という言葉がありますが、これは建築においては作られてから解体されるまでの管理を最適化することを指す言葉です。

具体的には企画段階からライフサイクルを把握した上で設計を行い、無理や無駄のない運用と長期的な修繕計画に基づいて資産価値を維持・管理することでライフサイクルを通して管理を最適化します。

ライフサイクルマネジメントによって管理を最適化することでライフサイクルコストも削減・最適化が可能であるため、ここで以下2点について詳しく見ていきましょう。

ライフサイクルマネジメントとは
  • ライフサイクルコストの把握と最適化
  • 資産価値の維持と管理

ライフサイクルコストの把握と最適化

ライフサイクルマネジメントでは、企画の段階からライフサイクルおよびライフサイクルコストを把握した上で最適な設計を行うことがまず重要です。

ライフサイクルコストの把握については「建築におけるライフサイクルコストの構成」に基づいて試算を行うとして、その上で設計時に以下の3点に気を付けることでライフサイクルコストを最適化できます。

ライフサイクルコスト低減・最適化の手法
  • 長寿命・高耐久な部材、機器の採用
  • 省エネルギーを考慮した設計
  • 維持管理に配慮した設計

長寿命・高耐久な部材、機器の採用

ライフサイクルコストにおける大きな費用の1つに修繕や更新にかかる費用がありますが、長寿命や高耐久の部材・機器を使用することでそれらのコストを削減できます。

具体的には耐候性に優れた外装材や超高耐久性のコンクリートを採用することで、長寿命や高耐久を実現することが可能です。

省エネルギーを考慮した設計

日々かかる費用の1つである水光熱などのエネルギー費用を抑えることは、ライフサイクルコストの削減に大きく寄与します。

具体的には高断熱材や人感センサー、蓄電システムを採用することで、エネルギー消費を最小限に抑えて効率的な運用が可能となります。

維持管理に配慮した設計

維持管理費もライフサイクルコストにおける1つの大きな費用ですが、維持管理そのものが容易になる設計をすることでもコストの抑制につながります。

具体的には普段の掃除が簡単になるような設計を行ったり、交換頻度が少なく調達しやすい部材を採用したりすることで短期~長期までのあらゆる段階で、維持管理にかかるコストを削減することが可能です。

資産価値の維持と管理

企画時にライフサイクルコストを把握し最適な設計を行ったら、次に必要なことは資産価値を可能な限り維持できるように管理することです。

資産価値を維持するためには、管理・運用を行っていく上で以下3つに気をつけなければなりません。

資産価値を維持するための管理・運用手法
  • 長期修繕計画の策定
  • 修繕コストの平準化
  • 最新システムを利用した維持保全管理

長期修繕計画の策定

資産価値を維持したまま長期的に建築物を使用するためにはメンテナンスや改修・修繕を行っていくことが必要ですが、問題に直面した場合に行うのではなくしっかりと計画に基づいて行う必要があります。

長期修繕計画を策定する際に重要なことは、企画・設計時のライフサイクル把握に基づいた精確なメンテナンス時期の設定ですが、技術革新や法改正などが起きた際に再度調整することも重要です。

修繕コストの平準化

維持管理においてライフサイクルコストを最適化するためには、長期修繕計画の策定に加えて修繕コストを平準化することも重要です。

建築物におけるメンテナンスや修繕は外壁や電気設備、空調設備など内部・外部にわたって広範囲となるため、同時に行うと効率の悪化やコスト増加につながります。

このためメンテナンスや修繕を行う際は、実施箇所や実施タイミングを調節・分散することでコストを抑制できます。

最新システムを利用した維持保全管理

ライフサイクルコストやライフサイクルマネジメントは近年注目されている言葉ですが、既にそれらに寄与するシステムは登場しています。

例えば「BEMS(Building Energy Management System)」は、ビル内の照明や空調の利用状況・エネルギー消費量を可視化・分析すると共にそれらの設備を制御することで省エネを支援するシステムです。

また「BIM(Building Information Modeling)」は従来の2次元図面情報に加えて使用している部材・機器の性能や仕様といった情報を加えた3次元モデルで、品質管理や維持管理を効率化します。

このように省エネや長寿命化に寄与する最新システムを利用して維持保全管理を効率化することで、ライフサイクルコストを低減・最適化しライフサイクルマネジメントを容易に行うことが可能です。

こちらには別KW記事「HEMSとは?機能や仕組みをはじめ利用条件や導入の課題まで解説!」の関連リンクを設置することを想定しています。

まとめ

今回はライフサイクルコストとライフサイクルマネジメントについて、それぞれの言葉の意味や重要性、最適化のための手法を解説しました。

建築物の長寿命化推進の流れを考えると、建築において今後ライフサイクルの観点は欠かせないものとなるでしょう。

その際に工務店をはじめとした建築事業者に求められるものは適切なタイミングでの精確な定期点検の実施ですが、定期点検は5年後や10年後に実施されるため点検漏れのリスクがあります。

そのようなリスクを避けるためにも、点検予定はソフトウェアを利用してしっかりと管理することをおすすめします。

当メディアがおすすめする工務店向け業務効率化システム「AnyoNE」では、定期点検のアラームを設定することも可能です。

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