建設業は、売上を計上するまでのサイクルが他の業界と比較して長く、独自の会計基準を設けている点が特徴です。
この記事では、建設業の経理業務について、特徴や独自の用語、仕事内容などを解説します。
経理業務は、自社の経営状況を適切に把握するために欠かせない重要な業務です。
建設業で経理業務に従事している方は参考にしてください。
目次
建設業の経理の特徴
建設業の経理業務は、業界自体の特殊性によってほかの業界の経理業務とは異なる点が特徴です。
具体的には、着工してから引き渡しまでの期間が長いため、売上を計上するまでのサイクルが他の業界と比較しても長く、一度に大きな売上高を計上することとなります。
ただし、会計処理自体は、他の業界と同じで企業会計原則がベースとなっており、そこに建設業の特殊性を考慮した独自の会計基準が設けられています。
この独自の会計基準のことを「建設業会計」と呼びます。
経理の作業は一般的な簿記の知識があれば対応可能ですが、そこに建設業会計の知識を加えなければなりません。
建設業独特の用語
建設業の経理では、一般の業界では使用されない勘定科目が使用されます。
経理業務をおこなうにあたっては、まず用語の違いを理解しなければなりません。
ただし、勘定科目が異なるだけで、意味合いは一般の経理用語と同じであるため、それぞれどの用語に対応しているのか覚えられれば、決して理解することは難しくありません。
具体的には、以下のような形で対応しています。
一般会計 | 建設業会計 |
売掛金 | 完成工事未収入金 |
仕掛品 | 未成工事支出金 |
買掛金 | 工事未払金 |
前受金 | 未成工事受入金 |
売上高 | 完成工事高 |
売上原価 | 完成工事原価 |
売上総利益 | 完成工事総利益 |
なお、これらの勘定科目は、建築業法によって定められているため、自社で使いやすい表現に変更することはできません。
経理業務に取り組む際には、必ず覚えるようにしてください。
以下の記事では、建設業の勘定科目の違いや建設業会計の認識基準、注意点などについて取り上げています。
建設業経理の仕事内容
建設業の経理は他の業界と比べるとやや特殊ですが、仕事内容自体は大きく異なることはありません。
多くの業界では、会計業務に会計ソフトが導入しています。建設業の場合も会計ソフトに仕訳を入力することから始まります。
仕訳はお金の動きや理由を把握するための記録で、経理業務のベースとなるものです。
ソフトに仕訳を入力することで、総勘定元帳や補助簿、試算表なども同時に作成できます。
これらの資料をチェックすることで、月ごとの売り上げ状況の把握も可能です。
また、建設業でも決算期末が来ると決算整理仕訳の作成をおこないます。
決算整理仕訳は、貸借対照表や損益計算書を作る際の仕分けとなるものです。貸借対照表・損益計算書などがベースとなって決算書を作成できます。
建設業経理士が役に立つ
建設業の経理業務に取り組む場合、「建設業経理士」の資格を所有していると非常に役立ちます。
建設業経理士とは、その名の通り、建設業の経理業務に特化した内容を扱っている資格です。
試験を通して、建設業経理に必要な知識やスキルを備えていると認められれば取得できます。
なお、建設業経理士は1〜4級に分かれており、3級と4級は「建設業経理事務士」と呼ばれます。
初歩的な知識が問われる4級は、簿記の基本的な仕組みを理解することがポイントとなり、3級となると、建設業簿記や原価計算を理解するなど実務を担えるくらいの知識が欠かせません。
2級は、3級の内容に加え会社会計への理解も必要不可欠で、実践的な実務を遂行できるだけの知識やスキルが求められます。
最も難易度が高い1級は、建設業原価計算や財務諸表、さらには財務分析などの知識が必要です。
建設業経理士の資格取得に伴い学ぶ知識やスキルは実務で役立つだけでなく、2級以上の有資格者は公共事業の入札時に欠かせない経営事項審査における評価対象となるため、各企業としても建設業計理士の有資格者を必要としています。
建設業の経理業務を効率よく進める方法
建設業の経理業務をスムーズに進めるためには、システムの導入が欠かせません。
経理業務は会社にとって必要不可欠な業務ですが、その一方で、同じ作業をくり返すことが多く、そこに人的リソースをさくことは非効率的です。
会計システムあれば、業務の一部を自動でおこなえるため、担当者の負担軽減につながり、作業が少なくなって他の重要業務に注力できるようになるでしょう。
また、過去のデータを踏まえた帳票作成に対応できるシステムやテンプレートを使用して作業を効率化できるシステムもあり、さまざまな業務効率化につなげられます。
企業によっては、経理業務を一部の社員しか把握しておらず、属人化している場合も。業務を把握している社員が病欠する、転職すると経理業務が滞る恐れがあります。
一方で、会計システムでは、誰もがシステムの操作方法に沿って業務ができ、属人化防止にもつながります。
システムを選ぶポイント
建設業者が、会計システムを選ぶ際は、システムのタイプを理解することが大切です。
会計ソフトには、大きく分けて「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。
オンプレミス型の特徴
オンプレミス型は、自社内でサーバーを構築したうえでシステムを利用する形態です。
サーバーの構築から運用まで自社内でおこなわなければならないため、コストがかかるほか、運用するための人員も確保する必要があります。
一方で、自社の作業内容に応じたシステムを組むことができるため、既存システムとの連携を行いやすいという特徴を持っています。
例えば、会計システムと業務管理システムを連携させれば、より業務効率化を図ることができるでしょう。
クラウド型の特徴
クラウド型は、自社でサーバーを構築する必要がなく、システムを提供するベンダーが用意するクラウドサーバーにアクセスすることでシステムを利用する形態です。
サーバー構築の手間がかからず、運用も自社でおこなう必要がないため、導入コストを抑えられるほか、人員をさく必要もありません。
また、インターネット環境さえあればクラウドサーバーにアクセスできるため、社内外場所を問わずシステムを利用できます。
特に建設業では、現場からシステムを利用するため、スマートフォンやタブレット端末からでもアクセスできるクラウド型は大いに役立つでしょう。
一方で、データはクラウド上で管理されるため、セキュリティ面で不安を感じるかもしれません。
クラウド型を利用する際は、事前にベンダーのセキュリティポリシーを確認しておきましょう。
まとめ
今回は、建設業の経理業務について、その特徴や具体的な用語、仕事内容などについて解説しました。
建設業は、他の業界と比べて売上を計上するまでのサイクルが長いという特徴があるため、独自の会計基準を設けています。
それに伴い使用する用語も他の業界とは異なるため、建設業の経理業務に従事する際は、用語の違いを理解することが欠かせません。
経理業務を効率化したい場合は、会計システムの利用がおすすめです。
また、経理業務のみならず業務全体の効率化を図りたい場合は、業務管理システムの導入を検討してみてください。
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