登録・利用することで、技能者・事業者ともに大きなメリットを得られる建設キャリアアップシステム。
本記事では、建設キャリアアップシステムの登録方法を詳しく解説します。これから登録される方はぜひ参考にしてみてください。
目次
建設キャリアアップシステムとは
建設キャリアアップシステムとは、技能者の保有資格や社会保険加入状況等を登録した上で現場での就業履歴を蓄積していくシステムです。
技能者にとっては自分の技能レベルが公平に評価され、その技能レベルに合った処遇が受けられるというメリットがあります。
事業者にとっては施工先や取引先に自社所属の技能者をアピールしやすく、技能者の定着もはかれるという点でメリットの大きいシステムです。
加入義務
建設キャリアアップシステムは国土交通省が『5年ですべての技能者の登録を目標とする』と発表していますが、登録は義務ではありません。
登録する技能者・事業者ともに登録料が発生するため、加入しないという選択をすることもできます。
しかし国としては建設業の次世代の担い手を定着させるため、技能者の処遇の改善をはかりたいと考えています。
そのため、登録には技能者・事業者双方にメリットのあるシステムとなっており、登録して損はないでしょう。
また、自治体によっては公共工事入札時に建設キャリアアップシステムに登録していることが加点となるところもあります。
技能者のレベルを見える化
登録している技能者に交付される建設キャリアアップカードは、技能レベルによって色が異なります。これにより、技能者は自分のキャリアを簡単に証明することができます。
技能レベルは保有資格、就業履歴で判断され、業界統一のルールで評価されるため客観的に自分の技能レベルを示すことができます。
公平な評価、レベルに合った待遇
前述の通り、技能レベルは業界統一のルールで評価されるため、仕事をした現場や仕事内容が多岐にわたっていても公平に評価されます。
そのため、これまでさまざまな現場で仕事をしてきたことで自身の処遇に不満を感じていた方も、これからはレベルに合った公平な処遇を受けることができます。
効率的な現場管理や人材確保
事業者側は、施工体制台帳や作業員名簿、証紙請求書類の作成など手作業で行っていた現場管理作業を、システムを使用することでデジタル化できます。これにより業務効率化をはかることができます。
さらに、「弊社にはこんな資格、経験を持った技能者がいる」と施工先・取引先にアピールしやすいでしょう。
また、技能者に向けて労働環境が整っているイメージを持たせることができ、人材の定着がはかれます。
建設キャリアアップシステムの登録手順
ここでは、建設キャリアアップシステムの登録手順について詳しく解説します。まだ登録が済んでいない方は参考にしてみてください。
①登録申請
建設キャリアアップシステムの登録申請は、原則インターネット申請です。
どうしてもインターネット申請に抵抗がある方は、認定登録機関に出向けば対面での手続きも可能です。
認定登録機関では、申請方法をその場で教えてもらいながら書類作成、登録まで行えます。
②技能者の情報登録
技能者は、まず提出する書類を用意します。提出する書類は以下の5点です。
用意ができたら、申請フォームまたは申請書に必要情報を記入します。
記入する情報は、氏名や住所などの基本的な本人情報から、所属している事業者、保有資格、社会保険加入状況、職種、表彰履歴など多岐にわたります。
上記の登録が完了したら登録料を支払うことで、技能者IDの取得、建設キャリアアップカードの受け取りが可能となります。
またこれらの手続きは、技能者本人から同意を得た所属事業者・元請事業者・上位下請事業者などが代行で申請を行うこともできます。
代行での申請を行った場合は、登録が完了したら代行申請者にメールやはがきなどで登録完了が通知されます。
③事業者の情報登録
事業者の方も、まず提出書類を用意します。提出する書類は以下のうち2点です。
- 社会保険料納入証明書、建退共契約者証などの加入社会保険等確認書類
- 建設業許可がある場合は建設業許可証明書の写し
- 建設業許可がない場合は納税証明書や事業税の確定申告書など、事業者証明書類及び資本金確認証明書類
用意ができたら、申請フォームまたは申請書に必要情報を記入します。記入する情報は、以下の7点です。
- 商号、許可番号、代表者名などの事業者情報
- 業種
- 登録責任者の氏名、部署名、連絡先などの情報
- 社会保険等加入状況
- 所属団体
- 表彰履歴
- 建設キャリアアップシステムと連携している民間システムを利用している場合、利用している民間システムの名称
登録が完了したら登録料支払い依頼のメールが届くため、案内に従って支払いをしてください。
④現場・契約情報の登録
技能者・事業者の情報登録が完了すれば、事業者が現場・契約情報を登録します。
現場・契約情報とは、これからどのような工事をどれくらいの期間で行うかといった情報です。登録を行えるのは元請事業者の事業責任者IDまたは階層管理者IDまたは現場管理者IDを持っている人です。
登録する内容は以下の3点です。
- 現場情報(必須)
- 契約情報(必要があれば)
- 工事情報(必要があれば)
⑤施工体制の登録
現場・契約情報を記入した後、施工体制の登録を行います。
施工体制の登録とは、どの現場にどの下請事業者が対応するかを登録する作業です。
施工体制の登録を行うとその現場で作業をする作業員の名簿が作成でき、現場で作業する作業員の保有資格や経歴等を確認することができます。
また、施工体制の登録を行っていることで、現場管理作業などの事務作業が効率化できます。
⑥書面での登録時注意事項
建設キャリアアップシステムの登録を書面で行う場合は、以下の4点に注意が必要です。
- 登録申請書一式と払込票には同一の申請書番号(14桁)を記入
- 保有資格や表彰等の記入欄が1枚で足りない場合は用紙をコピーして記入
- 添付書類には通し番号を記載
- 従業員の情報等、自分以外の個人情報はマスキング対応
建設キャリアアップシステム登録に必要な料金
建設キャリアアップシステムの登録には、技能者・事業者ともに登録料を負担する必要があり、事業者においては利用料も負担します。
技能者は申請方法によって、事業者は資本金によって登録料が変わるため、ここでは詳しい登録料・利用料について解説します。
技能者の登録にかかる料金
技能者が負担する登録料はインターネット申請が2500円、対面での書面申請が3500円です。
また2021年4月からは以下のように、登録の種類2パターンによって変動する仕組みが取り入れられます。
- 本人情報、社会保険、建設業退職金共済(建退共)の項目だけを登録する『簡略型』の登録:2500円
- 全項目を登録する『詳細型』の登録:4900円
また、『簡略型』から『詳細型』に変更することもでき、その際は追加で2400円が必要です。
事業者の登録・利用にかかる料金
事業者が登録にかかる料金は資本金によって変動し、料金体系(5年ごと)は以下の通りです。
2020年10月から料金が変更されているため、2020年9月までに申請した人とこれから申請を行う人では料金が異なることに注意してください。
利用料については、管理者ID利用料が以下の料金体系(1年ごと)です。
また、現場利用料は利用するごとに以下の料金が必要です。
まとめ
今回は建設キャリアアップシステムの詳しい登録手順について解説しました。
今後登録者が増え、公共工事入札時に加点となるなど登録者に有利となる事象も出てくるシステムであるため、ぜひ登録を検討してみてください。
【参考】建設キャリアアップシステム技能者情報登録インターネット申請‐一般財団法人建設業振興基金