建設業の経常利益率は、売上高の中で自社の本業務で得た収益の割合です。
自社の経営状況を表す指標で、経営者の方なら必ず重視していることでしょう。
今回は建設業の経常利益率の概要や重要性、そして経常利益率を上げる方法について解説します。
目次
建設業の経常利益率とは経営指標のひとつ
建設業の経常利益は、経営指標のひとつとなる非常に大事な要素です。
健全な経営と社内の運営状況を外部に伝えるために、正確に計算されなければなりません。
まずは経常利益の概要と、建設業の経常利益の平均値について解説します。
経常利益とは
経常利益とは、企業が本業務の中で得た利益です。
具体的にいうと企業は、本業のほかに不動産の所有や株式投資など、さまざまな事業から収益を得ています。
しかし、本業以外の利益は会社の主となる業務の利益ではないため、経営状況を判断する際には加味されません。
そこで、本業の利益のみを計上した経常利益を見て、投資家などは会社の経営状況を判断します。
決算書において経常利益が高い企業ほど、自社の主業務で成績を上げている将来性にも期待できる企業といえます。
また、経常利益率とは、自社の利益において主業務で得た利益が占める割合です。
つまり経常利益率が高い企業ほど、主業務で利益が高く投資家にとっては魅力的な企業となります。
経常利益率は以下のように計算します。
決算書には総資本経常利益率という項目もありますが、こちらは株券・不動産などのすべての資産に対する経常利益の割合です。
そのため一般的には売上高経常利益率を見て、経営状況を判断します。
建設業経常利益率平均は4〜5%
東日本建設業保証株式会社が作成した「建設業の財務統計指標(令和2年度版)」によると、東日本における建設業経常利益平均は4%でした。
平成30年発表の「建設業の経営分析」によると、日本全体の売上計上利益率は5%程が平均であり、建設業界の中でも業種によって大きく異なります。
平成30年までは建設業の売上高経常利益率は上昇傾向であり、また設備関連の業種が最も利益率が高いです。
建設業における経常利益率の重要性
建設業だけでなく、一般企業にとって経常利益率は非常に大事です。
利益の額よりも利益率を重視すべきという経営論もあるほどですが、なぜでしょうか。
ここからは建設業の方向けに、経常利益率の重要性について解説します。
企業の信頼性を高める
経常利益率の高さは、企業経営がうまくいっていることの証明となります。
売上のうち経常利益率が高いということは、その会社が本業で収益を多く上げている証です。
投資家としても将来性があり、財務の健全な企業に出資したいはずでしょう。
つまり、経常利益率の高さは、投資家から多くの資金を集められ、資金繰りを良くすることにもつながります。
円滑な融資
企業を経営するにあたり、金融機関から融資を受ける際にも経常利益率は重視されます。
金融機関は、将来的に貸付金を回収できる企業にしか融資しません。
「晴れている時に傘を貸す」と言われる通り、経営状態が不安定な会社にはお金を出せないと判断するからです。
経常利益率が高い企業は、本業が順調であり将来性も見込めるため金融機関としては貸付金の回収率が高いと判断します。
融資額にもよりますが、経常利益率が高い企業には貸付してくれるでしょう。
自社の経営をさらに拡大していくためにも、経常利益率を注視し、なるべく経常利益率を高く保たなければなりません。
自社経営状況の正確な把握
経常利益率を数値化して見ることで、自社の収益性を測れます。
利益額のみを見ていると、自社が何の業務で収益を上げているかがわかりづらいでしょう。
しかし、経常利益率は売上における利益の割合を出せるため、その数字を見て本業がうまくいっているか判断できます。
経常利益率が著しく悪ければ改善の努力を、平均と比較して高い場合は維持してほかの事業を始めるなど、経営陣が意思決定しやすくなるでしょう。
経常利益率の上げ方
経常利益率の重要さがわかったところで、経常利益率の上げ方について解説します。
建設業の利益計算は一般会計基準ではなく、建設業向けの会計基準を用いるためやや複雑です。
工期が長く請負期間も長いため、売上の計上時期に差が出ます。
建設業でどのように利益率を高めれば良いのか知り、自社の経営改善に活かしましょう。
売上高の向上
建設業で経常利益率を上げるにはまず、売上高を向上させる必要があります。
売上高とは企業がサービス・商品を提供することで得た売上額の総額です。
つまり、工事を請け負って施工、納品して得た利益という意味となります。
もちろん施工数を増やせば工事原価も上がるため、原価管理を徹底してコストを下げるようにしましょう。
利益率を高めるには売上高を上げて、経費を削減するのが効果的です。
工事原価の削減
仮に売上高が現状と変わらなくても、工事原価を削減すれば建設業の経常利益率は上がります。
コストが下がれば同じ利益の金額でも差し引く金額が少ないため、利益率は高くなるでしょう。
工事原価の削減とは具体的に以下のような方法があります。
- 省人化
- 原価管理による無駄の削減
- 残業時間の削減
原価管理を徹底して行い無駄を見つけると共に、AIやシステムを利用できる場合は導入して省人化を取り入れると良いでしょう。
省人化が成功すれば残業代も減り、人件費も削減できます。
また業務負荷が減るため労働環境も良くなり、企業の運営も社員のモチベーションアップにつながるでしょう。
工事原価管理を徹底したい方は、以下の記事でおすすめの工事原価管理システムの紹介記事を読んでみてください。
販売管理費の削減
販売管理費とは、広告宣伝料や委託業者へ支払う手数料です。
広告宣伝費を一気に削ることはできませんが、自社アカウントのSNSで情報発信するなど、WEB広告に切り替えるとアナログの宣伝よりも経費は安くなります。
自社の販売管理費の内訳を見直し、費用対効果の悪いものは取りやめる勇気も必要です。
営業外費用の削減
営業外費用とは、企業の本業以外で経常的に発生する費用です。
経常利益は営業利益から営業外利益・費用を共に差し引いて残った金額で計算するため、営業外費用が少なければ営業利益が多く残ります。
営業外費用とは、具体的に支払利息や社債利息、有価証券を売却した際の損金です。
自社の本業以外に投資などで収益を得ている場合は、営業外費用を抑えられないか検討してみましょう。
まとめ
建設業の経常利益率は、対外向けに自社の経営状況が健全であることを示す指標です。
自社の本業がうまくいっていることの証明であり、信用を担保することとなります。
経常利益率の平均は4〜5%であるため、自社の利益率を見直し、今後の経営目標の参考としましょう。
経常利益率を上げるためには利益を上げること以外にも、徹底したコスト管理が重要です。
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売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100