災害時の電源確保に有効な、V2H(Vehicle to Home)について、具体的な仕組みをまだ理解していない方もいるでしょう。
V2Hは停電対策として活用できますが、万全とはいえません。
工務店の営業担当は、V2Hの仕組み・欠点まで理解したうえで、適切な災害対策を提案すべきです。
この記事では、V2Hの概要や仕組み、災害対策に有効な理由と懸念すべきポイントを紹介します。
目次
V2Hとは
V2Hの概要について説明します。
エコカーに興味がある施主は、V2Hにも興味をもつ傾向にあります。
仕組みを理解し、施主からの問い合わせに答えられるようにしておいてください。
V2Hの仕組み
V2Hとは、「Vehicle to Home」の頭文字をとった言葉で、電気自動車に蓄電したエネルギーを家庭で使えるようにする仕組みです。
本来、電気自動車の蓄電池に貯めた電気は、家庭用電気と電流が異なり、自宅で利用できません。
そこで、V2H機器を使用して電流を変換し、自動車の電力を家庭用に変換します。
V2HとV2Lの違い
V2Hと似ているV2Lという言葉の意味を解説します。
V2Lとは「Vehicle to Load」で、車から家電機器などに直接電力を供給する仕組みです。
車載コンセントや外部給電器を使用し、直接電流を電気機器に流して稼働させます。
災害時やアウトドアに活躍する仕組みとして、V2Hと同じく注目を浴びている電源確保の方法です。
V2Hの概要やメリットについては、以下の記事で紹介しています。
V2Hが災害時に有効な理由
近年、災害対策としてV2Hに興味をもつ施主が増えています。
V2Hが災害時に有効とされる理由は、以下のとおりです。
地震や台風による大規模停電に備えて、V2Hを導入したい施主は多いため、工務店側もメリットを理解しておきましょう。
電力復旧の速さ
災害発生でライフラインが停止した場合、電力復旧が最も速いといわれています。
「東京都地域防災計画 (震災編)」によると、電力復旧の目安は1週間です。
ガスの復旧目安が2週間、水道は最大数か月かかると考えると、電力の確保が災害対策に最適な方法です。
例として、東日本大震災発生時の電力復旧状況を紹介します。
3月11日14:46分の地震発生後、466万世帯に及ぶ広域停電が発生。
3日後には約80%、8日で94%の停電が解消しています。
【参考】3月11日の地震により東北電力で発生した広域停電の概要
電気自動車を家庭に給電すれば、2〜4日間最低限の家電を稼働でき、停電を乗り切れる可能性があるでしょう。
そのため、1週間程度の広域停電が発生しても、電力復旧地域で充電できればもち堪えられると考えられています。
電気自動車から電気を取り出すことが可能
なんらかの要因で電力会社からの電気供給が停止しても、V2Hを使用すれば、電気自動車から電力を取り出せます。
電気自動車を、蓄電池の代用品として利用できると考えてください。
一般的な家庭用蓄電池の容量は10〜20kWhですが、電気自動車に搭載されている蓄電池は24kWh以上のため、より多くの電力を備蓄し、取り出せます。
近場の給電スポットから電力を運搬
電気自動車を利用すれば、停電時に近場の給電スポットから電力を運搬できます。
自動車ならではの機動力を利用し、電力が復旧したエリアへ行けば、自宅付近が停電していても電力確保可能です。
たとえば、日産から発売されている電気自動車「LEAF(リーフ)」を使用し、千葉県で起きた大規模停電を乗り切った事例もあります。
オーナーはLEAF(リーフ)に蓄電した電力で家電を稼働させ、充電が減った段階で復旧済みエリアの給電スポットで充電し、数日間の停電を乗り切りました。
【参考】日産リーフとV2Hで2日半の停電を乗り切った 千葉 西郡さま
V2Hシステムを導入しておけば、電気自動車で電力の運搬も可能です。
蓄電池で災害対策はできますが、電気自動車のほうが機動力に優れています。
V2Hのみで災害対策する場合の注意点
災害対策にV2Hシステムの導入は有効ですが、以下のような欠点があります。
万全の対策を提案したい場合は、V2Hの欠点を補う対策が必要です。
停電が長期化した場合の対策
「日産:リーフ[LEAF]電気自動車(EV)|蓄電池として何日間?」によると、60kWhのバッテリーを搭載した電気自動車の電力で4日間、自宅の電力が賄えると試算されています。
しかし、停電が長期化すれば充電がなくなり、家電を動かせなくなります。
復旧エリアの給電スポットで充電して電力を運搬できますが、広域停電の場合は、給電スポットまで遠すぎて、電力が運べない可能性もあるでしょう。
外出中の災害
V2Hの欠点は、電気自動車がなければ電力が使えないことです。
機器自体に発電システムがついていないため、自動車で外出していると、電源がありません。
災害発生時は道路が渋滞するため、通常1時間程度の距離でも帰宅に数時間かかる可能性があります。
電気自動車が自宅にない場合を想定し、ほかの電源確保方法を検討しましょう。
V2Hを災害対策に導入する際の3つのポイント
V2Hシステムで災害対策する場合は、欠点を補う3つのポイントを施主に伝えましょう。
最もおすすめの方法は、太陽光発電の併用です。
そのほか、災害時に役立つ内容を紹介します。
太陽光発電の併用
V2Hシステムを導入する場合は、太陽光発電の併用をおすすめしましょう。
太陽光発電システムがあれば、電気自動車が自宅になくても、家電を動かせます。
また、日常的に太陽光エネルギーを自宅で利用でき、電力料金の削減に役立ちます。
太陽光発電設備の導入には、大金が必要ですが、初期費用無料のリースを利用すれば、安価に導入可能です。
太陽光リースの概要や仕組み、利用メリットについては、以下の記事で解説します。
蓄電池の併用
太陽光発電が自宅にある場合は、蓄電池を併用するとよいでしょう。
蓄電池を設置しておけば、余剰電力を貯蓄でき、万が一自動車がなくても蓄電池の電力で家電を動かせます。
太陽光パネルのみだと、日照時間内しか発電できません。
しかし、蓄電池があれば夜間でも電気が使えるため、停電時でも安心です。
また、V2Hシステムを利用すると、電気自動車の充放電サイクルが多くなり、バッテリーの劣化が懸念されます。
蓄電池の併用により、電気自動車のバッテリー劣化を防ぐ効果が期待できます。
蓄電池についての説明や初期費用を抑えて設置する方法については、以下の記事で紹介しています。
バッテリー容量の大きい電気自動車の購入
太陽光発電設備・蓄電池の導入が難しい場合は、なるべくバッテリー容量が大きい電気自動車を購入しましょう。
電気自動車のバッテリー容量は、24kWhから60kWhが一般的です。
バッテリー容量が小さいと、1〜2日しか充電がもたず、十分な災害対策となりません。
電気自動車は高価ですが、行政・自治体による補助金を使えば、購入者の負担を減らせます。
V2Hシステムの設置費用や電気自動車の購入相場、利用できる補助金をまとめた記事も参考にしてください。
まとめ
V2Hは災害対策に有効です。
電気自動車から電力を取り出し、離れた場所から電力を運搬できます。
ただし、V2H自体に発電の仕組みがないため、電気自動車がないと稼働しない点はデメリットです。
工務店側も、V2Hシステムのメリットとデメリットを把握し、施主に適切な災害対策をアドバイスできるようにしておきましょう。
最もおすすめの方法は、太陽光発電の併用です。
太陽光発電設備の導入費用は高額ですが、補助金や初期費用無料のリースも利用できます。
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太陽光発電システムの設置と災害対策を初期費用0円でおこなえます。
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