工程表で作業の工程や進捗を把握することは、納期厳守につながります。
しかし、工程表の作成に時間がかかりすぎていたり、そもそも工事に適した工程表の選び方がわからない方もいるでしょう。
この記事では、工程表の概要や種類、また工程表の作成意義と作成・管理方法を解説します。
目次
工程表とは
工程表は工期管理に欠かせない表です。どのような役割をもつのか、また工程表とよく似た”行程表”との違いを解説します。
工程表による工期管理をおこなう前に、工程表の大まかな役割や目的を知っておきましょう。
工事期間を管理するための表
工程表とは、工事期間を管理するための表です。
シンプルに工程と日付を管理するだけのバーチャート工程表や、工事の進捗率管理ができるガントチャート工程表など、複数の種類があります。
工程表の種類については後ほど説明しますが、目的や工事の内容、管理したい対象に応じて使い分けるケースが多いです。
いずれの種類もスムーズな工期管理をおこなうために使用されます。
工程表と行程表の違いとは
工程表とは、仕事の進捗や期日、手順などを管理するための表です。
一方の行程表とは、道のりや日程を管理するための表であり、会社においては目標達成のためのロードマップとして使われます。
工程表はひとつの現場の納期を管理するためのものです。
行程表は、企業目標に向けての中間目標の達成を目指す際に使われます。
工程表の種類とは
工程表の種類は大きく分けて5つあります。
それぞれの表の概要と特徴、向いている工事の種類について解説します。
工程管理を始める前に工程表の特徴を理解しておきましょう。
ガントチャート工程表
ガントチャート工程表は、縦軸に工程を入力し、横軸に進捗率を記載していくタイプの工程表です。
工事の進捗率を管理するために用いられるシンプルな表で、作成しやすく、閲覧も容易なことが特徴。
工事現場でも進捗率を管理するために用いられる、ポピュラーな工程表のひとつです。
ガントチャートは、比較的短期間の工事の進捗管理に向いています。
バーチャート工程表
バーチャート工程表とは、縦軸に工程を、横軸で工事の日程を管理する表です。どの工程をいつおこなうかが明確になり、予定の管理に役立ちます。
バーチャート工程表も、ガントチャート工程表と同じくシンプルで、作成・閲覧が容易です。
ただしシンプルが故に、工程同士のつながりはわかりづらく、複雑な工事の管理には向いていません。
バーチャートは、短期間の工事の日程管理に向いているでしょう。
グラフ式工程表
グラフ式工程表とは、バーチャート工程表とガントチャート工程表を組み合わせた工程表です。
縦軸に進捗率を入力し、横軸に日付を入力し、期間内の工事が予定通りに進んでいるかを視覚的に判断できます。
少々複雑な工程表のため、作成に時間がかかること、また工事全体の状況把握には向いていません。
土木工事の現場でよく用いられ、工事期間全体の納期を厳密に管理したい場合におすすめです。
出来高累計曲線
出来高累計曲線とは工程管理曲線とも呼ばれ、縦軸に進捗率を記載し、横軸に日程を入力します。
進捗率をビジュアルで把握でき、工事全体の進捗把握に優れた工程表です。
ただし、工事現場全体の進捗把握には向いていますが、工程ごとの細かな進捗率を把握できないことが難点といえるでしょう。
土木工事や造園施工などに用いられることが多い工程表です。
ネットワーク工程表
ネットワーク工程表とは、大規模な工事などに用いられる表で、手順の多い工程同士のつながりを把握しつつ、工程管理できます。
着工から完成に至るまでの工程を全体で把握できる工程表です。
作業同士の関連性を理解するのに役立ち、同時にできる作業を割り出したり、効率よく工事を進めるのに役立ちます。
反面、記号を用いて工程表を作成する必要があり、作成と読解の難しさがデメリットです。また、進捗率を記入する項目がなく、進捗状況を把握できません。
長期間の工事や複数の作業を並行して行う場合におすすめの工程表です。
工程表を作成する意義は納期厳守
工程表を作成する最も大きな目的は納期厳守です。
クライアントとの納期厳守は、クライアントとの信頼関係の維持と顧客サービスの面で非常に大切な要素となります。
工程表の意義を理解し、正確な工程管理を目指しましょう。
工程の確実な把握
工程表を利用すれば、工程や進捗率を把握できます。
工程表によって得意な管理分野があるため、場合によって使い分けましょう。
最終的な納期までに細かく工程の完了日を設定できるため、作業員も目的意識を持って作業できます。
また監督者も予定通りに工事が進行しているかを中間時点で把握でき、もしも遅れる場合は人員を追加するなどの対策が取りやすくなるでしょう。
効率的な作業
工程表を作成すればすべての工程を把握でき、同時におこなえる作業を見つけられるなど、スムーズに工事を進められます。
また、人員の過不足も事前に把握できるため、「後から作業人員が足りないと気づいて慌てて追加発注する」といったトラブルを避けられるでしょう。
結果的にもっと効率的な作業と人員配分ができ、工事を円滑に進められます。
円滑なトラブル対応
工事期間には、さまざまなトラブルが想定されます。資材や人員が急遽足りなくなったり、近隣住民からの苦情によって一時的に工事を中断せざるを得ないようなことも。
その際に工程表を作っておけば、一時中断または人員・資材が足りない工程をどのように納期までに完成させるかを再構築することが容易です。
万が一、トラブルがあっても、工程表を作っておけば修正対応が簡単になる点がメリットでしょう。
工程表を作成するポイント
工程表を作成する際に意識したいポイントを4つ解説します。
ただ日程や工程を書き出し、工程表を適当に作っていても適切な工期管理はできません。
より効率的な工程管理をおこなうために、工程表の作成時にここから説明する事項を意識してみましょう。
工事の種類に対しての適切な工程表選び
工程表には複数の種類があり、工事規模や期間、管理したい事項によって使い分ける必要があります。
例えば大規模工事で同時並行の作業が多い場合はガントチャートやバーチャート工程表では管理しきれません。
その場合はネットワーク工程表を用いて、効率的な作業をおこなった方が効率的です。
どの工程表が適切なのか、工程表ごとの特性を理解したうえで適切な工程表を作りましょう。
余裕を持ったスケジュール
工程表を作成する時は、期間に余裕を持たせるようにしましょう。納期ギリギリで完成するように工期を設定していると、トラブル発生時における対応期間が取れなくなります。
逆に、余裕を持たせて工程ごとの完成期間を短期にしすぎると、作業員に心理的負荷がかかりミスなどにつながるリスクも。
トラブル対応にかけられる期間を設定しつつ、作業員に負荷がかかりすぎない工期を設定しましょう。
従業員の把握しやすさ
工程表は監督者だけでなく、作業員も確認する表です。従業員が読み解けないと、工程表を作る意味がありません。
特にネットワーク工程表などは複雑なため、作成・共有する場合は読み方などを一度口頭で説明するなど対策しましょう。
また、工程を略称で記載するなすると、外注した職人が内容を理解できないことがあるため、誰でも理解できる書き方をしてください。
監督者の作成・修正効率
工程表を作成する際には、監督者の作成効率や修正のしやすさも重視しましょう。作成や修正の簡便さは、用いるツールによって変わります。
手書きは作成や修正にも時間がかかるため、おすすめしません。
エクセルを使う方法もありますが、数式やマクロを用いる場合は監督者がエクセルに詳しくないと対応できない場合があります。
最もおすすめなツールは工程管理システムです。
工程管理システムとエクセルの使いやすさの比較については、次の項目で解説します。
工程表を作成できるツールとは
工程表を作れる身近なツールは、エクセルと工程管理システムです。
現状、工程管理をまだされていない方のために、それぞれのメリットとデメリットを解説します。
企業規模や予算に応じて、使いやすいツールを利用しましょう。
エクセル
工程表はエクセルで作成できます。すでにオフィスソフトを導入している企業は、今日から簡単に工程表を作成できるでしょう。
エクセルで工程表を作成・管理するメリットとデメリットを比較しました。
エクセルは導入コストなく使い始められる点がメリットです。
また、エクセルの数式や条件付き書式を用いれば、バーチャート・ガントチャート工程表は簡単に作成できます。
また、使い慣れたツールであり作業の方法がわからないなどの混乱が生じづらいことは大きなメリットです。
ただし、エクセルは手入力する部分が多いためミスの起こりやすさが難点。
過去の工程表と連携できないため、同種の工事を参考に工程表を作る場合は、過去の工程表ファイルを探し出し、別ウィンドウで見ながら作業しなければなりません。
また、モバイル端末で閲覧できず、リアルタイムの情報共有には向いていません。数式や条件付き書式を使えば作成を効率化できますが、数式を使いこなせる人員が必要になり、属人化しやすい点もデメリットといえるでしょう。
予算を抑えて工程管理を始めたい場合は、「AnyONE」が提供している無料のエクセルテンプレートを使用することがおすすめです。工程表以外にも、さまざまな帳票のテンプレートを提供しているため、利用してみましょう。
工程管理システム
工程管理システムとは、工程管理表をシステム上で作成・管理できるツールです。
工程管理システムを用いるメリットとデメリットを比較します。
工程管理システムは多くの工務店で利用されており、効率的な工程管理ができます。
入力ミス防止機能や、既存データを引用できるため作成が効率的になるでしょう。万が一、修正時にミスしても、ログが残るため修正前の状態まで簡単に戻せます。
アプリ版を提供しているツールも多く、その場合はリアルタイムで工程の修正情報を共有できることもメリットです。
工事図面なども一括管理できるツールを選べば、工程表とほかの情報を紐付けながら作業できます。
しかし、導入には費用が必要です。
ツールによりますが、初期費用と継続利用費用がかかります。また、新システムを導入すると現場に混乱が生じがちです。これを防ぐために、使用方法のマニュアル配布や研修をおこなう必要があります。
エクセルを用いている工務店の場合は、エクセルと似た使用感の工程管理システムを導入しましょう。
まとめ
工程表は工期管理に用いる図表で、視覚的に工事の進捗や工程を把握するためのものです。
的確な工程管理ができれば、作業が効率化し、長時間労働や仕事の偏りを防止し、業務環境改善にも役立ちます。
工程表の作成はエクセル、または工程管理システムを用いることが一般的です。
将来的に建設DXを進めていきたい場合は、工程管理およびほかの業務も一括管理できるシステムをおすすめします。
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