業務管理や利益向上など経営改善に大きく関係がある原価管理ですが、PDCAサイクルをしっかりと回して管理・改善を行うことが重要です。
PDCAサイクルを回すことで現状について正確に把握することができ、また正確な把握によって適切な分析や必要な改善への対応が可能となります。
今回は原価管理におけるPDCAについて、具体的な手法から実行する際の注意点まで解説します。
目次
原価管理とは
原価管理とは、モノの製造にかかるコストを把握・最適化することで利益向上や業務改善といった経営改善を行うことです。
モノを製造する際にかかるコストは原材料費や人件費から設備費や光熱費までさまざまですが、それらを1つ1つ正確に把握することではじめて無駄や改善箇所がないかを判断できます。
また無駄や改善箇所を見つけることで、製造過程や利益の最適化や改善を行うこともできるでしょう。
このように原価管理はビジネス・経営において非常に重要な役割を担うものですが、住宅や建築物など1つの成果物を製造するために多くの資材や人員を必要とする建築業において原価管理は特に重要であるといえます。
PDCAサイクルを用いた具体的な手法について確認する前に、原価管理の目的について正しく理解しておきましょう。
- 原価管理の目的
原価管理の目的
一般的に原価管理を行う目的としては、以下の3つがあげられます。
- 原価および販売価格の明確化と最適化
- 原価および利益の正確な予測
- 損益分岐点の把握・分析による経営改善
原価管理においてはまず取り扱っているモノの原価や販売価格について明確に可視化を行うことが重要です。
原価や販売価格の明確化を行うことで現状について正確に把握できるだけでなく、状況に合わせてそれらをより適した価格へと設定できるためです。
また、これまでの原価の平均値や変動率を把握しておくことで今後の原価予測や、ひいては利益予測も行えるようになるでしょう。
原価や利益について精度の高い予測ができるようになれば損益分岐点も正確に割り出せるようになるため、経営判断や経営改善につなげられます。
損益分岐点とは、収益からコストを引いた値が0となるような売上高のことを指します。
売上が損益分岐点を上回ると利益、下回ると損失となりますが、損益分岐点を正確に割り出すためには原価など費用の正確な把握が必要です。
原価管理におけるPDCA
冒頭述べた通り、原価管理の具体的な方法としてはPDCAサイクルを用いる方法が有効です。
PDCAサイクルはビジネスにおいて広く用いられるフレームワークですが、品質管理や業務改善などに用いられるように原価管理にも活用できます。
PDCAサイクルについて基本をおさらいした上で、実際にPDCAサイクルを用いてどのように原価管理を行うか見ていきましょう。
- PDCAサイクルとは
- Plan:標準原価の設定
- Do:実際原価の算出
- Check:原価の差異分析
- Act:原価設定・製造工程の見直し
PDCAサイクルとは
PDCAサイクルとは、1950年代に提唱されたマネジメント(管理)のためのフレームワークです。
提唱されたのは1950年代ですが、その仕組みの簡潔さや有用さから現代においてもビジネスシーンで広く採用されています。
「PDCA」とはそれぞれ「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」の頭文字を取ったものですが、PDCAサイクルではこれらを順番に回すことで検証とフィードバックを繰り返してマネジメントの質を向上させていきます。
原価管理においてもPDCAの4段階に分けた上で継続的にサイクルを回しながらマネジメントを行うことで、「原価管理の目的」でお話した原価管理の3つの目的をより高い精度で達成できるでしょう。
Plan:標準原価の設定
原価管理における「Plan」では、モノの製造にかかる目安の原価である標準原価の設定を行います。
モノの製造にかかる原価の予想を立てるといってもいいでしょう。
建築業において想定される原価としては、主に以下のようなものがあげられます。
- 材料費
木材や鉄材などの建材にかかる費用 - 労務費
賃金や手当など現場従業員にかかる費用 - 外注費
下請けなど外部委託を行った際にかかる費用 - 経費
保険料や光熱費など上記3つ以外でかかる費用
標準価格の設定が適切でなければ想定した利益が得られずに損失に繋がってしまうため、過去の製造データを確認したり市場調査を行ったりして可能な限り実際の原価とズレが生じない価格設定を行うことが重要です。
またウッドショックの発生など製造過程において原価に著しい変化が生じたり生産量を変化せざるを得なくなったりする可能性もあるため、さまざまなケースを想定していくつかのパターンを用意しておくことも有効な手段です。
建築業では多くのモノや人が関わって1つの生産物(家屋や建築物)ができあがるため標準原価の設定は困難ですが、この計画段階がPDCAサイクルの起点となる重要な段階であるため可能な限り情報を集めて行うようにしましょう。
Do:実際原価の算出
原価管理における「Do」では、モノの製造にかかった実際の原価である実際原価の算出を行います。
実際原価の算出において重要なことは、「建築業における原価の例」であげたような製造にかかった原価を1つ残らず正確に算出することです。
標準原価の設定と同様実際原価の算出も正確に行えなければ、「Check」で行うそれぞれの差異分析も正確に行うことができず、引いては正しい利益計算も行えないためです。
原価というと材料費や人件費などを思い浮かべがちですが、資材の運搬にかかる費用や設備などの減価償却費、事務用の消耗品費なども含めて製造にかかった費用をもれなく原価として計上するように注意しましょう。
Check:原価の差異分析
原価管理における「Check」では、標準原価と実際原価の差異分析を行います。
「Plan」で設定した標準原価と「Do」で算出した実際価格を比べて、差が生じている場合はなぜ生じたのかといった原因まで分析します。
差異分析を正確に行うことによってはじめて、この後の「Act」で適切な改善を実施できるでしょう。
反対にここでの差異分析が不十分であったり誤ったものであったりすると、PDCAサイクルを回すたびに誤った方向に進んでしまうことになりかねないため注意が必要です。
PDCAサイクルは一度だけでなく継続的にサイクルを回すことでマネジメントの質を向上させていくフレームワークであるため、正確な差異分析を行い次第に差異を小さくしていくようにしましょう。
Act:原価設定・製造工程の見直し
原価管理における「Act」では、これまでの過程に基づいて原価設定や製造工程の見直しを行います。
「Check」で行った原価の差異分析から標準原価の設定を見直したり、製造工程を見直すことで実際原価の改善を図ったりします。
具体的には建材の仕入れ先を再検討したり人員配置の見直しや生産性の向上を図ったりすることで、原価を最適化しながら経営改善を行うことが可能です。
「PDC」で明らかになった課題や改善点をもとに、さらに次のPDCAサイクルにおいても効果測定が行えるような改善策を実施するようにしましょう。
まとめ
今回は原価管理におけるPDCAについて、具体的な手法から実行する際の注意点まで解説しました。
原価管理はコストの把握・最適化や利益向上、業務改善を行うために重要なマネジメントですが、PDCAサイクルを活用することで精度の高い原価管理を行えます。
ただし建築業は1つの成果物を製造するために関わるモノや人が多いため、原価を正確に割り出すことは容易ではありません。
正確に原価を算出するためには、多岐にわたる業務自体の把握が必要となるでしょう。
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