2016年4月より建築業界において「住宅の省エネ性能」を表示する努力義務を定められました。その評価制度の一つが「BELS(ベルス)」です。
BELSの認可を受ければ、補助金の申請対象やブランディングの向上などのメリットを得られます。
この記事では、BELSの概要やZEHとの違い、評価基準、メリットについて解説します。
目次
BELSの基礎知識
最初にBELSの基本知識について解説します。
以下のとおりBELSの意味や、同じく省エネ住宅の一つZEHとの違いに触れていきます。
BELSとは
BELSは「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の略称で、「建築物省エネルギー性能表示制度」の意味を持ちます。
冒頭でも触れましたが、2016年4月から「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)」に基づき、「住宅の省エネ性能」を表示する努力義務を求められています。
この省エネ性能を評価する制度の一つがBELSに当たります。対象は、新築・既存住宅どちらでも構いません。
BELSの評価は「一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」が行います。メーカー独自の評価ではなく、第三者機関が客観的かつ法律に基づいて評価するため信頼性が高いといわれています。
BELSで証明できる事項
BELSの評価を受けた場合、対象となる建築物は以下の項目についてそれぞれ証明できます。
- 一次エネルギーの削減率に応じた5段階評価の結果
- 一次エネルギーの削減率
- 一次エネルギー消費量および外皮性能の省エネ基準への適合可否
適合の可否に関わらず、評価結果は「BELSプレート」で表示できる仕組みとなっています。
評価結果を星マークやグラフで示し、対象となる建築物の名称なども併せて表示できます。
ZEHとの違い
BELSと同様にエコ住宅に関わる言葉として、ZEHやZEH住宅があります。
BELSは先ほども触れたとおり、省エネ住宅の認定基準です。
第三者機関が省エネについて評価して、ランク付けする制度を指しています。
一方のZEHは省エネ性能の高い住宅そのものを指しています。
つまり、BELSは住宅を評価する「制度」であり、ZEHは住宅が持つ「性能」を言い表します。
BELSの評価方法
BELSの評価対象から評価の手法、基準を順に解説します。
BELSの評価対象
BELSは、2016年4月以前では「非住宅建築物」を対象としていましたが、現在では特段の縛りはありません。
例えば以下のような建築物が評価対象です。
- 一戸建て
- 共同住宅
- 複合建築物
- テナント
- 立体駐車場
また、建築物全体でBELSの基準を満たさずとも、一部のみ基準を満たせばBELSの評価を受けられます。
例えば大型複合建築物のひとつのテナントに対し、BELSの評価を依頼することもできます。
BELSの評価手法:建築物により異なる
前提として、BELSの評価指数は「非住宅」や「一戸建て」、「共同住宅」など建築物の種類により異なります。
例えば「一戸建て」と「共同住宅」の評価指数は、「一次エネルギー消費量」や「外皮性能」などにより決まります。
一次エネルギー消費量では、主にBEI値(省エネルギー性能指標)が利用されます。
このBEI値は「BEI=設計一次エネルギー消費量/基準一次エネルギー消費量」で求められます。
分子の小さい方が省エネ性能が高いことを意味するため、BEI値が小さいほど評価が高くなります。
設計一次エネルギー消費量
「設計上の設備・家電・仕様などによって消費されるエネルギー」から「太陽光発電などで生み出すエネルギー」を差し引いたものです。
純粋に消費するエネルギーだけではなく、自然エネルギーを利用して生み出すエネルギーが差し引かれます。
基準一次エネルギー消費量
「建設地の地域区分や建物の面積、設備など」から算出される基準値です。
外皮性能
主にBPI値(建築物外皮性能指数)が利用されます。
このBPI値は「BPI= 年間熱負荷係数(設計値)/年間熱負荷係数(基準値)」で求められます。
分子が小さいほど外皮性能が高いことを意味するためBPI値が小さいほど評価が高くなります。
窓設備の工夫や断熱性能の高い塗料などを利用し、理論的に求められた熱負荷の値です。
非常に複雑な方法を用いて算出されるもので、国土交通省などが支援して提供される「BEST(ビルディング・エナジー・シミュレーション・ツール)」を利用します。
建物の用途や設置されている設備の内容などから算出される、基準となる熱負荷の値です。
BELSの評価基準
BELSの評価方法は前述のとおりBEI値とBPI値を利用したものです。
このBEI値によってBELSで評価されるランク(★の個数)が異なり、以下のとおり定義されています。
★★★★★:BEI値 ≦ 0.80
★★★★:0.80 < BEI値 ≦ 0.85
★★★:0.85 < BEI値 ≦ 0.90
★★:0.90 < BEI値 ≦ 1.00
★1:1.00 < BEI値
基準一次エネルギー消費量よりも多くのエネルギーを消費する建築物は星の個数が1つとなり、省エネ基準を満たされていないと判断されます。
BELSの条件を満たしている物件と認定されるためには、少なく星の個数が2つ以上の評価を受けなければなりません。
また、BPI値は値によって外皮性能が基準を満たしているかが判断され、基準は以下のとおり定義されています。
- 1・2地域:0.40以下
- 3地域:0.50以下
- 4~7地域:0.60以下
あらかじめ定義されている地域の区分に応じて、基準値が変動します。
なお、今回解説している基準は住宅向けのもので、事務所や工場などの建築物については基準が異なります。
住宅よりも厳しい値が設けられているため、もし上記の例と異なる数値を見かけた場合は「住宅向けの基準ではない」と考えてください。
BELSの認定を受けるメリット
BELSの認定を受けられる建築物には以下のとおり3つのメリットがあります。
特定の補助金に申請可能
BELSの認定を受けた建築物は、特定の補助金に申請が可能です。
例えば「令和3年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業)のうちZEH支援事業」や「令和3年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業 次世代ZEH+実証事業 公募情報」の募集要項には以下の記載があります。
本事業では、申請する住宅は建築物省エネ法第7条に基づく省エネ性能表示(BELS等、第三者認証を受けているものに限る)を原則として中間報告前に取得し、中間報告時にその写しを提出できることを交付要件としています。
2021年の経済産業省と環境省のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助金について
このようにBELSの認定を受けていることが補助金申請の前提条件となっている場合があります。
この事例では認定を受けられる建築物を建てるだけではなく、認定を受けて写しを提出する必要があるため、事前にBELSの認定手続きを済ませておく必要があります。
CO2の排出抑制に関する補助金やZEHに関連する補助金にBELSが役立ちます。
対外的な信頼度が高い
BELSの認定を受けることで、対外的な信頼度が高くなります。
建築事業者や不動産事業者が自ら認定を行うと、「自社の物件を過大評価しているのではないか」などの疑念を持たれる可能性があります。
しかし、BELSは第三者機関が客観的かつ法的な基準に基づいて判断するため、信頼感が高まるといえるでしょう。
施主に省エネ性能を示しやすい
BELSを取得できる物件は省エネ性能が高いことを意味します。
本来であれば施主に対して「太陽光発電ができるから」「自然エネルギーが利用できるから」と細かく省エネ性能について説明し、理解を得る必要があります。
しかし、BELSが取得できていると「BELSの星が5つであるため、非常に省エネ性能が高いです」と根拠を持って、端的に伝えることができます。
まとめ
省エネ性能を評価する「BELS」は、申請の向上や補助金の利用といった面で大きなメリットのある制度です。
ただし、BELSの物件を建てるためには省エネ性能を意識した設計や建築を行うなど管理する情報が多くなってしまうでしょう。
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