太陽光発電の普及が進む中、従来のシリコン系太陽電池に加えて、新たな素材や技術を用いた太陽電池が注目を集めています。
特に「ペロブスカイト太陽電池」は、次世代の太陽電池として大きな期待を寄せられている最新の太陽電池です。
この記事では、太陽電池の基本的な種類から、話題のペロブスカイト太陽電池まで、それぞれの特徴や仕組み、価格動向について詳しく解説します。
目次
太陽電池にはどんな種類がある?基本構造と特徴を比較

太陽電池は、使用する材料や構造によっていくつかの種類に分類されます。
まずは、現在実用化されている主要な太陽電池の種類と特徴を見ていきましょう。
シリコン系太陽電池(単結晶・多結晶)
シリコン系太陽電池は、現在最も普及している太陽電池です。
主な材料はシリコンで、結晶構造の違いによって「単結晶シリコン」と「多結晶シリコン」に分けられます。
シリコン系太陽電池は、発電効率・コスト・耐久性のバランスが良く、住宅用から産業用まで幅広く使用されています。
化合物系太陽電池(CIS・CdTeなど)
化合物系太陽電池は、複数の元素を組み合わせた化合物を材料とする太陽電池です。主な種類には以下があります。
化合物系太陽電池は柔軟性や軽量性に優れる一方、コストと毒性の課題があり、特殊な用途での使用が中心となっています。
有機薄膜太陽電池・色素増感型
有機薄膜太陽電池と色素増感型太陽電池は従来の無機材料とは異なり、有機化合物や色素を利用した太陽電池です。
製造温度が低く、軽量で柔軟性に優れる特徴がありますが、発電効率の課題から現在は特殊用途での活用が中心となっています。
これらの太陽電池は軽くて自由な形にできる特徴がありますが、発電効率の低さが課題となっています。
次世代型として注目される「ペロブスカイト太陽電池」とは?

近年、太陽電池業界で最も注目を集めているのが「ペロブスカイト太陽電池」です。
この革新的な太陽電池について、詳しく見ていきましょう。
ペロブスカイト太陽電池の仕組みと構造
ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト構造」と呼ばれる特殊な結晶構造を持つ材料を発電層に使用した太陽電池です。
ペロブスカイト構造は、特殊な結晶の並び方をした材料です。
この構造は太陽光を効率よく吸収して電気に変換する性質に優れており、従来のシリコンとは全く異なる材料でありながら、高い発電性能を実現できることから注目されています。
- ペロブスカイト層が太陽光を吸収
- 光エネルギーによって電子と正孔※3が生成
- 電子輸送層と正孔輸送層によって電荷を分離
- 電極から電流として取り出し
従来型との違いとは?何が革新的なのか?
ペロブスカイト太陽電池が革新的とされる理由として、まず製造コストの大幅な削減があげられます。
従来のシリコン系太陽電池は1000℃以上の高温処理が製造のプロセスで必要でしたが、ペロブスカイト太陽電池は100~150℃程度の低温で製造可能です。
また、印刷技術やコーティング技術での製造ができるため、大面積での連続生産に適しており、製造設備への投資も少なく済みます。
さらに、軽量かつフィルム状にできる点も大きな特徴です。
ペロブスカイト太陽電池は非常に薄く作ることができ、発電に必要な層は髪の毛の太さの100分の1程度の薄さです。
ただし、実際の製品では雨や湿気から守るための保護層なども必要になるため、完成品はもう少し厚くなります。それでも従来の太陽電池と比べると格段に薄く軽量に仕上がります。
この軽量性と柔軟性により、窓・壁・車両などへの設置自由度は格段に高くなることが特徴です。
ペロブスカイト太陽電池の「種類」とその特徴

ペロブスカイト太陽電池は、構造や用途に応じていくつかの種類に分類されます。
フィルム型
フィルム型は、薄いプラスチックの上に作られた曲げることができる太陽電池です。
従来の硬い太陽電池パネルと比べて10分の1以下の軽さで、曲面にも貼り付けることができるため、建物の外壁や自動車のボディ、テントなど様々な場所に設置できる可能性があります。
しかし、水に弱いという弱点があり、雨や湿気から守る技術がまだ十分ではありません。
現在の製品寿命は5~10年程度で、従来の太陽電池の20年以上と比べると短いのが課題です。
また、大きなサイズで作ると品質にムラが出やすい問題もあり、これらの改善が実用化に向けた重要なポイントとなっています。
ガラス一体型
ガラス一体型は、窓ガラスの中に太陽電池を組み込んだタイプです。
普通の窓として光を通しながら同時に発電もできるため、建物の外観を損なうことなく太陽光発電を導入できます。
オフィスビルの窓や住宅のサンルーム、バス停の屋根などでの活用が期待されています。
現在開発中の技術では、光の70~90%を通しながら発電できますが、透明性を保つため発電効率は5%程度と低めです。
そのため、大きな発電量は期待できませんが、建物のデザイン性を高めながら補助的な電力を得られる点で注目されています。
タンデム型(シリコンとの複合型)
タンデム型は、ペロブスカイト層とシリコン層を重ねた構造で、異なる波長の光を効率的に利用できます。
理論的には発電効率40%超も可能とされていますが、実用化された場合の製品としては20~30%台になる可能性があり、今後の改良が期待されている段階です。
既存のシリコン太陽電池設備を活用でき、高効率により設置面積を削減できるため、大規模太陽光発電所での導入に有望です。
ただし、各層の最適な厚さと材料の組み合わせの確立、長期安定性の確保、製造プロセスの複雑化によるコスト増が技術課題となっています。
ペロブスカイト太陽電池のメリット・デメリットまとめ

ペロブスカイト太陽電池のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。
メリット
ペロブスカイト太陽電池の最大のメリットは、製造コストの低さと量産への適性です。
低温プロセスによる製造エネルギーの削減、印刷技術を用いた大面積での連続生産、設備投資の低減により、従来型より大幅なコスト削減が期待できます。
また、設置自由度の高さも大きな利点です。
軽量性による建物への負荷軽減、柔軟性による曲面設置、透明性による建材一体化が可能となり、幅広い用途での活用が期待できます。
特に重量面では従来型の10分の1以下となるため、構造補強不要での後付け設置や屋根への負荷を大幅軽減できる点も大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
一方で、耐水性・耐久性の課題が最大のデメリットです。
水分による性能劣化や長期使用時の安定性に問題があり、技術の更なる向上が必要です。
また、ペロブスカイト太陽電池の研究は2000年代から進められてきましたが、商用化が始まったのは近年のことであり、実用に十分なデータは不足しています。
さらに、材料の安定供給にも課題があることも忘れてはいけません。
特に鉛を含む材料の環境影響、ヨウ素などの原料価格変動、代替材料の開発などが今後の重要なポイントとなります。
ペロブスカイト太陽電池の価格と市場動向(2025年最新)

現在、ペロブスカイト太陽電池は実用化の初期段階にあり、一般的な価格設定はまだ確立されていません。
しかし、コスト試算や初期導入事例から、将来の価格動向を予測することができます。
導入価格の目安(試験導入ベース)
現在のシリコン系太陽電池の平均導入費用は、住宅用で20~30万円/kW程度となっています。
ペロブスカイト太陽電池について、製造メーカーの試算では製造コストがシリコン系の50~70%程度になると予想されています。
仮にペロブスカイト太陽電池が半額(10~15万円/kW)で導入できれば、初期投資の大幅な削減が可能です。
ただし、これらは製造コストベースの試算であり、実際の販売価格には設置工事費や販売マージンが含まれることに注意が必要です。
フィルム型の価格目安(発表ベース)
研究機関・企業の発表では、東芝が製造コスト10円/W以下を目標としており、これはシリコン系の約半分にあたります。
積水化学は建材コストに発電機能を付加する価格設定を検討し、京セラは既存製品の70%程度の価格を目指しています。
シリコン系との価格比較
製造コストでは、シリコン系が40~50円/Wに対し、ペロブスカイトは20~35円/Wが予想されます。
システム価格では、シリコン系の20~30万円/kWに対し、ペロブスカイトは10~20万円/kWを目標としています。
設置工事費も軽量化効果により、シリコン系の5~10万円/kWに対し、3~7万円/kWになると見込まれています。
ただし、これらの価格は試算値であり、実際の市場価格とは異なる可能性があります。
量産効果によるさらなるコスト削減や、耐久性・保証期間の違いも価格に影響する要因となります。
どこで使われ始めているのか?ペロブスカイト太陽電池の導入企業やプロジェクト事例

ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、国内外でさまざまな企業や研究機関が開発・実証実験を進めています。
ここからは、導入を検討している企業のプロジェクト事例を紹介します。
積水化学、東芝、京セラなど国内企業の動向
国内の主要企業では、それぞれの強みを活かしたペロブスカイト太陽電池の開発が進んでいます。
企業名 | 開発の特徴 | 目標・実績 |
---|---|---|
積水化学工業 | 住宅外壁材一体型太陽電池 | 2020年に世界最高効率達成、2025年実用化目標 |
東芝 | フィルム型・車載用途 | 軽量・柔軟性を活かした用途開発、実証実験実施中 |
京セラ | タンデム型(シリコン複合) | 既存技術との融合、産業用大面積化に注力 |
パナソニック | 印刷技術による製造 | 大面積化と量産技術の確立を推進 |
各社とも2025年前後の実用化を目指しており、住宅から産業用途まで幅広い分野での展開が期待されています。
東京都やNEDOの実証実験の事例紹介
国や自治体レベルでも、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた取り組みが活発化しています。
機関・自治体 | 取り組み内容 | 目標・特徴 |
---|---|---|
NEDO | 次世代太陽電池の産学官連携研究開発事業 | 2030年までに発電効率30%、耐用年数20年を目標 |
東京都 | 都有施設でのペロブスカイト太陽電池実証実験 | BIPV性能評価・環境負荷軽減効果の検証 |
大阪府 | 万博会場での次世代太陽電池展示・実証 | 大規模イベントでの技術アピール |
福島県 | 再生可能エネルギー産業集積支援 | 研究開発拠点としての地域振興 |
九州大学 | 農業用ハウスでの透明太陽電池実証 | 農業分野での実用性検証 |
これらの取り組みにより、様々な用途でのペロブスカイト太陽電池の実用性が検証されており、2025年以降の本格的な市場投入に向けた基盤が整いつつあります。
まとめ
太陽電池の種類と特徴を整理すると、それぞれに適した用途が見えてきます。
シリコン系太陽電池は高効率・高信頼性が求められる住宅屋根やメガソーラーなどの主力用途、長期投資回収を重視する案件に適しているといえるでしょう。
一方、ペロブスカイト太陽電池は軽量・柔軟性が重要な建材一体型や移動体搭載、意匠性や設置自由度を重視する案件での活用が期待されています。
現在主流はシリコン系太陽電池ですが、今後太陽電池の市場はさらなる進化を見せることが期待されています。
ペロブスカイト太陽電池は魅力的な技術ですが、実用化にはまだ時間がかかります。
一方で、現在のシリコン系太陽電池でも十分な発電効果と経済メリットを得ることができ、すぐに導入を検討可能です。
太陽光発電の導入を検討されている方には、初期費用の負担を抑えながら始められる太陽光リースという選択肢もあります。
新しい技術の登場を待つ間にも、現在の技術で着実に電気代削減効果を得られる方法として提案すると良いでしょう。
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